平成19年度「連続セミナー」報告

マンション設備の維持管理について
マンションライフを安全かつ快適に過ごすためには、設備の維持管理は欠かせません。管理組合の役員になられた方などを対象に、専門家が様々な角度からマンション設備を取り上げ、わかりやすく説明しました。 7月8日(日)
給排水設備配管の知識、給排水方式など、自分が住んでいるマンション設備について知ることの大切さ、そして、マンション管理のマニュアル化、自主点検などをテーマに開催しました。 講座1 マンション設備の維持管理

●築20〜30年を超えるマンションの急増
 築20年、30年を超えたマンションが増えています。お住まいのマンションがどういう設備を採用しているかを知るだけで、設備のことを気にしなくても大丈夫なのか、あるいは、しばらく先に何らかの手に打つべきか、そういう目安が立ちます。
●給排水設備配管の知識
(a)主な給水管と特徴
 給水配管で一番多いのが鉄管の内部にビニル管を挿入したVLPですが、20年から30年くらいで問題が出てきます。耐衝撃性ビニル管HIVPは、衝撃に強く、VLPの半分以下の値段ですが、強くて長持ちします。最近出た高性能ポリエチレン管は、今後VLPやHIVPから高性能ポリエチレン管に入れ替わるでしょう。架橋ポリエチレン管やポリブデン管は、柔軟性があって非常に強い管です。新築マンション専有部分ではほとんどこのどちらかが使われています。鉛管は、規制で10年くらい前から使えません。鋳鉄管は、一番強いと言われていますが、30年くらいで腐食します。
(b)主な排水管と特徴
 ビニル管VPは安っぽいイメージがありますが、強くて長持ちする管です。耐火2層管はVPのパイプのまわりにモルタルが巻いてあり、耐久性も耐火性もいい管です。SGPは、一番寿命の短い管で現在は殆ど使われません。鋳鉄管は、汚水管や屋外の排水に使われます。銅管は錆びずに、耐菌性があり、中身がヌルヌルになりにくい管です。
●給水設備
 高置水槽方式は、受水槽から揚水ポンプで屋上に上げて、いったん貯めて、自然流下で各戸に給水する方式です。一番シンプルな方式ですが、衛生面や上部の階は水圧が低いなどの問題点があります。それを改良したのがポンプ圧送方式です。高置水槽をなくして、ポンプで直接圧送して供給されます。ポンプシステムの進化で、ポンプ圧送方式が増えています。自治体により制約がありますが最近、直結増圧給水方式に変わってきています。ポンプ圧送方式との違いは受水槽がないことです。
 直結増圧給水方式のメリットは、水の安全性が高い、省エネ、メンテナンスがらく、上階の水圧の低さを解決できる、受水槽ポンプ跡地が有効利用できる、ポンプの耐用年数が向上する、などが挙げられます。詳しくは水道局に問い合わせてください。増圧給水方式への改修費用は、戸数やマンションの状況にもよりますが400万から900万円くらいです。
●排水方式
 排水方式の一般的な系統は、トイレだけ単独で集めて縦管で降り、トイレ以外の台所、お風呂、洗面所、洗濯を4つまとめて一つの管で縦で降りているもので、汚水と雑排水の分流方式と呼びます。もう一つが、集合管というシステムです。配管は一回り太いのが1本だけ。ここにトイレの水も、お風呂、台所、洗面、洗濯、すべての水を1本に入れてストンと落とします。いま、超高層の場合はほとんどこのシステムです。
●給水管、排水管の更新と更生
 配管の内部を掃除して、コーティングすることを管更生といい、配管を取り替えることを更新といいます。
 給水管改修の場合、専有部分、共用部分、まとめて工事をするというのが、正しいスタンスです。まず配管の取り替えができるかどうか検討します。どうしても無理な場合は、共用部分は取り替え、専有部分の内部はライニングでいく方法が妥当かなと思います。
 排水管の場合、最近はライニングが主流です。各社しのぎを削って、いろいろな工法で実績をつくり、信頼性が上がってきています。一番のメリットは、1系統1日でできるということ。それに材質的な安全性を確かめる必要もなく手軽にできるので、排水のライニングがここ4、5年くらい脚光を浴びています。

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ミニ講座1 管理組合活動報告「自主点検から中・大規模修繕へ」 自主点検でデータを集積。その上で修繕をすればいい 講師 平松 英伸(ひらまつ ひでのぶ)
グレーシィ天神橋 管理組合 監事
私らの管理組合には、維持管理取扱説明書があり、維持管理の方法をマニュアル化すれば管理組合主体の維持管理はそう難しいものではありません。
 例えば、マンションの点検には日常点検、定期(自主含)点検、臨時点検があり、自主点検は管理組合主体で、時期は総会の約3ケ月前に行い、今どのような状態にあるかを総会に報告します。また点検目的は補修、修繕、改修と長寿化対策です。判断のもとは点検結果や情報収集で、管理組合が主体で、その補佐として管理会社、コンサルタントが居り、修繕工事内容と時期を計画することです。
  自主点検もせず、いきなり中・大規模修繕を計画するのは不可解です。  ※(注)講座1〜3&ミニ講座1〜2の講師の役職、部署等は講演時のものです。

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平成18年度「管理組合交流会&相談会」報告

「管理組合交流会&相談会」報告
管理組合運営を円滑に行うために、管理組合の皆さんが日頃どのような活動をされているのか情報を交換し、今後 の参考にしてもらえるよう交流会を開催しました。 「管理組合交流会&相談会」報告
 当日は28名の方が5組のグループに分かれてテーマ別に意見交換。様々なマンションの管理組合役員の皆さんが、各自の問題や苦労を共有しあい、大阪市マンション管理支援機構のコメンテーター(弁護士・建築士)からアドバイスを受け、解決のヒントを得て有意義な時間を持つことができました。
 指定された席につくと、初対面の管理組合役員の皆さんは、交流会が開始される前から仲良くおしゃべりを始められ、日頃からマンション居住者のコミュニケーションに気を配っておられるお人柄が出ていました。
 支援機構の常任委員が司会をつとめるなか、各マンションのプロフィール紹介、話し合いたい内容を説明し、交流が始まりました。
 話し合われた内容の一例を紹介します。

テーマ「管理組合運営」

  • 理事をどうやって決定しているか
  • 理事長の組合運営のやり方が強引
  • 規約改正
  • 管理会社が動かない
  • 町会費の事
  • 管理組合の理事に報酬
  • 管理費の滞納問題
  • 運営は、頻繁に皆で話し合う事が大事
  • 理事の判断が大切
  • 自主管理のメリット・デメリット

テーマ「修繕」

  • ブースターポンプのメリット、デメリット
  • 修繕積立金問題
  • 給排水管の取替工事
  • 瑕疵の疑いのある部分の修繕
  • 修繕履歴の残し方
  • 大規模修繕の意思決定のプロセス
  • 修繕委員の選出
  • 業者選定
  • 建築士の費用等
  • シックハウスの問題

テーマ「住まい方・防犯」

  • 防犯カメラの設置と規則・細則
  • ペット問題、マナー問題
  • 自転車置場問題
  • 維持管理、掃除や植栽の手入れ
  • 植栽の管理はシルバー人材センターに

コメンテーターまとめ

【弁護士】 裁判よりも、できれば話し合いで 解決してください

 マンションの場合、通常、弁護士が関係する案件と違って、争った後も、争う前も、争っている最中も近くに住んでいないといけない。そういう関係があるので、どちらが正しいかという結論を突き詰めていって、最後には裁判にしましょうという解決の仕方は不毛な結論を導くことになります。
 そういう意味で、コミニケーションをどうとるか、要望があればそれを多数の要望としてどう出すか、そういった行動や話し合いで解決できる問題はなるべくその解決をして、どうしても必要なことだけ最小限、裁判をすること。

【建築士】 自分のマンションは自分で健康診断を してください

 お住みのマンションを身体に例えてください、とご説明しました。身体は見た目は若くても、実は年をとっている。皆さんも定期的に健康診断を受けられる。その時に悪い所は早く見つけて、早く手を打つ。これをするには、やっぱり専門家集団に意見を求められるのがいいじゃないですか、ということで、長期修繕計画の重要性をお話しました。
 皆さん、自分のマンションは自分で守ろうという気概に燃えていますので、自分のマンションは自分で健康診断をして、維持管理に努めて資産価値を保っていただくようにお願いします。
  コメンテーターのまとめを受け、会が終了しました。話が盛り上がったため、予定時間をオーバーしての閉会となりました。
  「他のマンションではどうしているんだろう?」といった疑問をお持ちの管理組合さんは、解決方法を見つけるためにも、次回の交流会にはぜひご参加ください。

<個別相談会>

 当日は専門家による個別相談会も実施。弁護士・建築士・マンション管理専門相談に6組の管理組合さんが問題解決のアドバイスを受けました。
  相談内容は、管理組合運営について、管理費や修繕積立金について、耐震診断、管理会社についてなど様々でした。

平成18年度「大規模修繕工事見学会」報告

大規模修繕工事見学会
コスト削減と説明責任を果たすため
コンサルタント2社を併用!

12月3日、大阪市マンション管理支援機構として第3回目の大規模修繕工事見学会を弁天第2コーポ管理組合のご協力により開催しました。弁天第2コーポは、地下鉄・JR弁天町駅から徒歩7分の場所に建ち、SRC造11階建(1〜3階が区民センター、4〜11階が住宅)・総戸数55戸のマンションです。築24年を経過し、今回が2回目の大規模修繕工事です。

<見学マンションと工事の概要>

弁天第2コーポ
(大阪市港区弁天1-2-27)
SRC造11階建(1〜3階は区民センター等、4〜11階住宅)
総戸数55戸/築24年
工事内容(1)下地補修 (2)壁面塗装 (3)鉄部塗装 (4)防水 (5)シーリング (6)各戸玄関扉取り替え修繕 (7)オートロック設備 (8)その他
工 期平成18年8月〜平成18年12月
施工業者選定(株)シーアイビー
設計・監理(株)スリーエース総合設計
施工アキツ工業(株)

● 効率的に、施設部と住宅部を一体工事

(写真) 昭和57年発足当初より自主管理で頑張っておられる弁天第2コーポ管理組合。大規模修繕工事着手までの経緯を、理事長さん、大規模修繕委員会の委員の方、そして同管理組合が顧問契約しているマンション管理士の杉田氏から説明がありました。
 同マンションの場合、3階までが区民センター(施設部)、4階以上がマンション(住宅部)となっているため、過去の大規模修繕では、施設部と住宅部がそれぞれ別個に実施していたが、合理性・経済性を考え、今回は一体として行えるように平成15年より両者で話しあいをもち、規約を改訂。そして現在、このように2者共同で大規模修繕することができました。

● 段階的に修繕積立金を値上げする

 資金計画においては、段階的に修繕積立金を値上げした他、機械式駐車場の運用を見直し、収入増加を見込んだこと。また、工事代金のうち、施設負担分は大阪市民の税金であることから、コスト削減とコストおよび費用対効果などの説明責任を十分に行う必要があることから、コスト削減と大規模修繕工事に実績のある2社にコンサルタント業務を委託しました。1社は建物診断調査と改修工事設計と監理を担当し、もう1社は、施工業者選定作業を担当しました。

● 工事費用削減方法に興味

(写真) 続いてコンサルタント2社がスライドを用いて具体的に説明。特に施工業者選定作業は、通常、元請施工業者3〜10社ほどの見積もりをとって進めるのに対して、まず孫請け、ひ孫請けを排除したうえで、元請施工業者21社、専門工事業者のべ80社から見積もりを取って絞り込み、交渉とヒアリングを重ねて元請業者を決定。そして元請業者と専門業者が見合いをして専門業者を決定する工事費用削減方式に、参加者は関心を寄せられていました。
 続いて狭き難関を勝ち抜いた元請業者が、掲示板や各戸へのチラシ配布などを通じて工事内容を丁寧に知らせるなど、工事で心がけている点などを述べられました。

● 質疑応答で活発に意見交換。そして現場見学へ

(写真) 質疑応答では、コンサルタントの採用と選定経過、業者決定のポイント、将来の建て替え計画の有無など多くの質問がありました。続いて行われた現場見学は4班に分かれて、施工会社とマンション管理士、設計士の引率により実施。参加者の皆さんは、施工状況を興味深そうな様子で見てまわられ、無事終了しました。
 実は、今回の工事見学会は、マンション管理士の方からのはたらきかけで実現したもの。「工事見学会を行うことで、見てもらって恥ずかしくない工事をしようという管理組合、各コンサルタント、施工業者のモチベーション向上に役立つと思い、管理組合の総会で見学会開催の決議を取ってもらいました」。
(写真) マンション管理士の役割等、専門家の活用と重要性もわかり、とても有意義な工事見学会でした。ご協力いただいた弁天第2コーポ管理組合の方々、および関係者の方々に心よりお礼を申し上げます。

平成18年度「らいふあっぷ基礎講座&相談会」報告

模擬総会〜総会を実演し、解説〜
模擬総会では、総会運営をスムーズに行うために標準的な進行と、注意するポイントを念頭に、5場面を設定。各場面で演技を行い、その後でポイントについて専門家の方に解説をしていただきました。第1場面から第5場面まで演じましたが、紙面の都合上、一部を割愛しています。
出演者

久保井

川島 裕理
大阪弁護士会

久保井

山田 由美子
近畿税理士会

久保井

川畑 雅一
(社)大阪府建築士会

【第1場面】受付対応での問題 (写真)


ポイント


賃貸居住者の問題と、議決権行使の届け出者以外の者の出席の取り扱いについて


解説:川島


 賃貸居住者が出席したいと言ってきた場合ですが、区分所有法44条1項に「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる」と定められています。賃貸居住者は議決権はありませんが、総会に出席して意見を陳述する権利が認められています。ただ、今回のような修繕工事に関する議案は、法律上の利害関係はないと考えられており、賃貸居住者に出席して意見を陳述する権利はありません。ただ、賃貸居住者に参加してもらって意見を聞くということには問題はないので、賃貸居住者にも参加してもらうことが組合のためにはいいのではないかと思います。
 次に、事前に共有者の一方を議決権行使者として届出をしていたのに、それとは異なる人が出席して議決権を行使したいと言ってきた場合です。区分所有法40条には「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない」と定められていますが、法律上、特に届出時期・届出方法に限定はありませんし、一度届け出た行使者を変更してはいけないといった定めもありません。また、管理規約46条3項には、「議決権を行使する者を1名選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない」と定められていますが、総会の開会までに理事長に申し出ています。そういうわけですので、具体的な状況下で、他の共有者も行使者を変更する意思があると判断できれば、行使者の変更を認めることができます。 【第2場面】開会と議長、書記、記事録署名人選出


ポイント


管理費等の未収金の会計処理の問題とペイオフ対策について。
そして自治会行事の参加費に関して


解説:川島


 議長の選出については、区分所有法41条に「集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる」と定められています。「規約に別段の定めがある場合」として、管理規約42条5項に、「総会の議長は、理事長が務める」と定められていますので、議長の選出について特に決議をとる必要はありません。ここで「異議あり」と仮に誰かが言っても、異議を却下することができます。
 管理組合で何か重要な事項を決定するときには総会決議が必要になります。総会決議の種類としては、普通決議と特別決議があります。区分所有法の39条に普通決議として「集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する」と定められています。特別決議事項として、過半数以上の決議をとることが定められていない限り「区分所有者及び議決権の過半数で決する」ということで、普通決議でよいことになります。 【第3場面】事業報告、決算報告、監査報告 (写真)


ポイント


管理費等の未収金の会計
処理の問題とペイオフ対策について。
そして自治会行事の参加費に関して


解説:山田


 まず滞納について、収支計算書の収入の部にあげる金額は、入金があった時点ではなく、未収が確定した時点で収入すべき金額を計上します。これを発生主義と言います。発生主義処理で計上しないと、予算と対比ができにくかったり、未収金が決算書に現れてきません。未収金を管理しておかないと、滞納者が出て管理費を支払っていなくてもその事が分かりにくくなります。そういう事がないためにも、発生主義によって未収金計上をすることが求められています。
 ペイオフ対策については、17年4月より当座預金や利息がつかない預金である決済性預金については全額保護されますが、一般預金等については、1金融機関について元本1,000万円と利息までしか保護されないようになりました。ですので、幾つかの金融機関に分散して預け入れるのも一つの方法です。あと、自治会行事参加費についてですが、マンション標準管理規約コメント第27条第2項を要約すると、管理組合の役員が町内会に出席するのは管理組合活動であると認め、管理費からの支出を認めると書いてあります。 【第4場面】修繕工事の実施について (写真)


ポイント


アスベストの除去と、修繕工事の採決を普通決議で行うことについて


解説:川畑


 アスベストの除去については「大阪市民間建物吹付けアスベスト除去等補助制度」があります。申込の対象条件は、大阪市内のマンションでの共用部で、申込者が管理組合の代表者であることです。アスベストの含有調査に対する補助金と、アスベストの除去工事等に対する補助金の2つの補助金制度があります。
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「マンションらいふあっぷ基礎講座」報告

11月26日
大規模修繕の進め方やガス設備の更新、そして管理組合の最高の意思決定の場である総会の進め方のポイントを「模擬総会形式」で再現し、解説しました。 大規模修繕の進め方(建替・修繕・耐震強度チェックポイント)

●工事の準備段階こそ重要な部分です
 大規模修繕工事の準備は、一般的に以下の順番で進められます。
 [1]アンケート→[2]現地調査→[3]修繕項目範囲の検討→[4]改修工事の検討→[5]仕様・工法・工期の検討→[6]概算予算の検討→[7]組合財政との調整→[8]修繕項目・範囲・改善・改造・仕様の決定→[9]工事中の生活への影響問題の検討→[10]仕様書の作成→[11]仕様書の最終確認→[12]見積参加会社の検討→[13]施工者決定のルール検討→[14]見積参加会社の決定→[15]現場説明→[16]質疑応答→[17]見積書徴収・検討・接渉・決定→[18]理事会又は総会の承認→[19]契約→[20]居住者への工事説明会→[21]着工前打合せ→[22]着工。
 準備段階から検討事項を経て、工事施工者を決め、工事にかかりますが、この一つ一つを確実にやっていけば大規模修繕工事は間違いなくできます。とくに工事の準備段階が非常に重要で、工事が始まった時点で、もう7割くらいプロジェクトとして経過しています。足場が立って一般の人が「うちのマンション、大規模修繕工事が始まったな」と思った時は、残りは3割ほどです。また、工事後の点検も重要です。1年点検は最近でよくやられていますが、3年点検、5年点検はあまりされていません。最初の契約時点で含めておいていただきたいと思います。
●修繕だけでなく、改修工事も必要に
マンションも20年30年たつと、修繕だけでは済まなくなります。修繕以外に、エントランスホールのグレードアップや自転車置き場、駐車場等の外構改修、バリアフリー工事など、マンション共用部分の改修工事を合わせて行うケースが増えています。なぜ改修工事が必要になるか。まず、高齢化と世帯数の減少という社会問題があります。世帯数が減ると住宅が余ってきます。でも不思議なことに、マンションは今もどんどん建ち続けています。そういう状況の中で、生き残っていくマンションは、常に住まい方を管理組合として考えて改修を加えているマンションです。居住者から何を不便と思っているか、何を足りないと思っているかなどを意見聴取します。そして「ずっと住もう」と思うマンションに変えていく。費用対効果もありますが、今私が幾つかやってきている中で、いいと思ってやった事で、後で費用についてのクレームが来たことはありません。必要なことをやるためには躊躇せずに決心をして進めていくことが必要です。

ミニ講座3 マンションのガス設備更新におけるお役立ちセミナー
16号から24号への変更で ガス給湯器の能力不足を解消
講師 岩崎 聡史(いわさき さとし)
大阪ガス(株)大阪リビング事業部

 給湯設備の種類は100以上あります。大きくは設置場所・能力・機能などで分類されます。たとえばマンションに設置するタイプなら、設置場所によりチャンバ式・PS(パイプシャフト)設置式・屋外式などがあります。ガス給湯器の能力で言えば、以前は代表的なものが16号、今出ている能力の大きいのは24号です。「号数」とは水温より25℃高いお湯を1分間に出せる湯量の数値です。16号はワンルームマンションや2カ所給湯に、24号はファミリータイプや3カ所給湯に付けています。ご家族が増えると24号の方がいいですね。お風呂のお湯を張る時間も24号なら10分程度です。給湯器は家の設備ですので、給湯器の取り替えでお金を払うのは区分所有者さんですが、設備更新の際に共用部の変更をともなうことがあります。共用部分の変更となると管理組合様で検討していただく必要があり、私どもでは工事仕様書を作成・検討することで、マンションの美観を保ちながらより快適な生活ができるようお手伝いさせていただいております。また、設置可能な給湯器の号数は私どもで調査をしていますので、気軽にお問い合わせください。

 ※(注)講座1〜6&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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「マンションらいふあっぷ基礎講座」報告

11月12日
多くの管理組合さんが悩んでおられる管理費等滞納への対策や、マンション共用部分 リフォーム融資、管理組合会計などをテーマに開催しました。 管理費等滞納への対策

●管理費等の滞納に対する予防策
 予防策としては、まず徴収方法を明記する。それも自動振替にしておくことが望ましいでしょう。次に、遅延損害金等の定めを管理規約にしておくこと。管理規約に定めがなくても、民法上5%の遅延損害金を請求できます。ただ高めの利率を設定すれば、滞納に対するプレッシャーになります。さらに弁護士費用・訴訟費用も、滞納者に負担してもらうことを管理規約に書いておくのも一定の意味があります。次に対応マニュアルを作り、周知徹底する。同時に滞納者リストの作成と滞納状況の不断のチェックが必要です。水道や電気等の滞納者に、水道や電気を止めることが許されるのか。駐車場使用契約を一方的に解除することが許されるのか。滞納者の氏名を公表してもいいのか等の問題がありますが、問題が大きくなる前の最大の予防策は、信頼関係を築くことではないかなと思います。
●管理費等の滞納が発生した場合の解決策
 管理費等の滞納が発生した場合の解決策として、まず滞納理由を聞くことです。意図的に悪意をもって払わない人と、経済的な理由から払えないという人と区別して対応する必要もあります。まず口頭によって請求。それでも払ってくれない場合は、文書による督促になります。(1)ポストに直接投函、(2)掲示板での通知、(3)配達証明付郵便の送付、(4)内容証明付内容証明郵便の送付の順になります。(4)は、消滅時効(消滅時効期間は5年)を中断する手段にもなります。これらの措置をとった結果、分割弁済などの合意を取り付けた場合は、合意書、念書を作成すること。でも確信犯的に「私は絶対払わない」と言っている人には、合意書や念書は作れない。その場合には裁判になります。5年経過する前に、最後は裁判をしないといけない。あるいは、区分所有法の競売申立が使えます。

わかりやすい管理組合会計

●収支予算表を作成し、総会で承認を受ける
 管理組合は予算会計でやります。一般の会社でも予算会計ですが、少し違うのは、管理組合は、各区分所有者からお金を供出していただいて、そのお金を管理組合の目的達成のために使う。それが管理組合の会計の目的です。管理組合の収入は、管理費と修繕積立金です。これは必ず払わないといけない。標準管理規約の第25条に「区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費等を管理組合に納入しなければならない」と書いています。支出は、第27条に、管理組合は区分所有者から預かった大事なお金を、「通常の管理に要する経費に充当する」と書いてあります。それで収入と支出の予算表を作り、総会に提出して皆さんの承認をもらう。1年が終わると今度は実際に使った収入と支出を収支予算表に書いて、実際の出費と予算の差異を分析して、区分所有者の了解をもらう。これが予算会計と言われるものです。
●非営利会計だから損益計算書はなし
 管理組合会計の特色をいくつか紹介しましょう。管理組合会計の一番大きな考え方は、非営利会計ということです。一般の企業は営利企業ですから、お金もうけですね。また、会計処理は一般会計原則に基づいて処理します。真実性及び明瞭性の原則ですね。ですから収支計算書や貸借対照表などの財務諸表は真実でなくてはいけない。目的別会計とは、「修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない」とされています。管理費会計と修繕積立金会計は区分して管理しろという考え方です。一緒にすると必ず問題が起こります。また、一般企業会計は損益計算書ですが、管理組合会計は収支報告書です。というのは管理組合は基本的に損益がありません。ですから収支報告書でいいのです。

ミニ講座2 マンション共用部分リフォーム融資
1戸あたり150万円まで 無担保で融資が受けられます。
講師 工藤 俊則(くどう としのり)
住宅金融公庫大阪支店 まちづくり推進グループ長
 公庫の「マンション共用部分リフォーム融資」の特長はいくつかありますが、まず、管理組合名義で申込みができるため管理組合代表者の“個人名義”での借入とはならないことがあげられます。また、管理組合の法人格の有無も問いません。ご融資額は1戸あたり150万円以内で工事費の80%まで融資が受けられます。なおかつ、財団法人マンション管理センターが管理組合の保証をし、無担保での借入が可能ですので、理事長様個人の物件に抵当権を設定することもござませんので安心してご利用いただけます。返済期間は管理組合申込みの無担保コースの場合、最長10年の固定金利でのご利用となります。金利は申込み時点の金利が適用されますので、返済計画が立てやすいことも特長の一つです。また、耐震改修工事をされる場合は通常より0.3%金利が優遇されます。マンションの大規模修繕も築年数が経過し、2回目、3回目ともなると修繕積立金が不足する場合も出てきますので、そのような場合は是非公庫融資の活用をご検討ください。  ※(注)講座1〜6&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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平成18年度「らいふあっぷ基礎講座&相談会」報告

らいふあっぷ基礎講座&相談会
円滑な管理組合運営と適切な維持管理による快適なマンションライフをめざし
新しく管理組合の役員になられた方などを対象に、円滑な管理組合運営などに必要な基礎的な知識について専門家がわかりやすく説明。計3日間にわたり合計9講座を開催しました。別途、個人相談会も実施しました 10月29日
管理組合とは何をするのかという基礎的な知識から、実践的な防犯対策、マンション管理 標準指針の利用方法などをテーマに開催しました。 管理組合って何をするの!?(初めて役員になった1年間)

●管理の善し悪しは組合員が握っています
 マンションとは、2以上の区分所有者が存する建物で、人の居住の用に供する専有部分のあるもの、並びにその敷地及び附属施設のことです。そしてマンションの管理の主体は、区分所有者の団体である管理組合です。つまり、マンション管理の良し悪しは、組合員が握っています。スムーズな管理組合の運営は次のようなことを認識する必要があります。管理主体は管理組合であり、管理組合は自治組織であること。直接、総会で集まって議決します。管理会社との付き合い方は、管理会社はパートナーであるということ。全部お任せにしては駄目です。一緒に、快適なマンションライフができるように管理会社の管理業務をチェックします。それから専門家を利用する。それから管理組合の将来計画を立てます。
●共同で管理することの大切さ
 管理組合運営の具体的な方策は、まず具体的な「計画を立てる」。次に、管理規約や長期修繕計画を見直したり、きちんとした管理体制をつくるなど「実行する」。次に管理標準指針などを使って、管理組合がうまく運営されているかを「評価する」。次に、高齢者も住みやすい居住環境づくりや、民主的な管理組合の運営に「改善する」。そして。管理組合が自立的に継続的で、計画的で、連続的な運営ができるように「自立する」。その際、理事会、管理組合、専門委員会の情報を公開してください。いま議論していること、やっていることを掲示板に張るだけでもいいんです。そして住民の意見を反映できるようにする。それから健全な会計にする。管理組合同士の情報の交流も必要です。こうした形でマンション自身が自立することが重要です。つまりマンションは一戸建てと違って、顔を知る、助け合うだけではなくて、共同で管理することなのです。

マンション管理標準指針〜マンション管理の一層の適正化のために
●「標準的な対応」と「望ましい対応」を紹介
 「マンション管理標準指針」や「マンションみらいネット」がなぜ構築されたのかについてご説明いたします。平成13年8月にマンション管理適正化法が施行されて、マンション管理の主体は管理組合であることが謳われました。そして平成16年1月の標準管理規約の改正で、修繕履歴の整理、設計図書等の保管が組合の業務として新設されました。では我々管理組合の人間は、具体的に何を基準に管理したらいいのか知りたいというご要望等にお応えするために、昨年12月、国土交通省が「マンション管理標準指針」を策定して公表しました。本指針では重要性の高い項目を選定。管理組合の運営から管理業務の委託まで5分野、66項目書かれています。この指針は、管理組合の方が一般的にはこの程度の事はやってくださいよという「標準的な対応」と、次の目標としてやってほしい「望ましい対応」、そしてなぜそうなるのかというコメントが付いています。皆様方は、マンション管理を見直されるときに、これを参考にしてください。
●マンションみらいネットも上手に活用
 でも役員が、毎日管理事務所に詰めて事務をやっているわけではありません。そこでうまくシステム化するために、国の補助事業として「マンションみらいネット」が誕生しました。例えば、理事会や管理組合の活動状況、修繕履歴、設計図書等の保管場所などをセンターのコンピュータに登録することで、インターネットでいつでも見ることができます。さらに中古マンションを買おうと思っておられる一般の方も閲覧検索できます。現在、このみらいネットに、全国で約330件の管理組合が登録しています。大阪府下では26管理組合です。7月からインターネットで見ることができますので、ぜひ一度、他のマンションも見ていただきたいと思います。
ミニ講座1 管理組合活動報告 防犯モデルマンションの紹介
防犯に強いマンションづくりに 皆様方も取り組んで下さい。
講師 池田 正隆(いけだ まさたか)
ルモン・夕陽丘学園坂 管理組合 副理事長


 私どもは平成17年8月に申請して、防犯モデルマンションに認定されました。防犯モデルマンションとは、各都道府県警察の外郭団体で防犯協会連合会が認定を行う、犯罪に遭いにくいマンションのことです。基準は、外部から侵入しにくい構造。共用部分の見通しを確保した構造。エレベータ内に防犯カメラ、非常通報装置を付けておくこと。駐車場、駐輪場等の明るさの確保。ピッキング困難な鍵と補助錠の設置です。詳しい内容や、申請から認定までの手順についても、「大阪府防犯協会連合会」のホームページで内容が公開されていますので、ご覧ください。
  泥棒の侵入経路ですが、建物内・共用部分へは玄関オートロック、外壁、屋上、この3つをきちんと押さえておけば建物内に侵入することを抑えることができます。住戸内への侵入経路としては、玄関ドアと、バルコニー、窓の部分になります。防犯対策をするにあたって、業者のいいなりにならず、ぜひ皆さんで調べて相場等を認識し、対策してほしいと思います。  ※(注)講座1〜6&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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「マンションらいふあっぷ連続セミナー」報告

第3回 7月30日
「水漏れ事故の事例とマンション損害保険」

●マンション保険における水漏れ事故対応
 水漏れ事故はマンションの中のどこから発生するかわかりません。実際に夜中に水漏れが起こったときに、皆さん、慌てられるわけですが、実際、マンション保険にお入り頂いている中で、水漏れが起こった時に、使える場合、使えない場合、いろんなケースがあります。これを具体的にご説明させて頂きたいと思います。
 マンション保険には、次のような特約があります。「施設賠償責任保険」は、加害者側が管理組合様の場合に使う保険です。「個人賠償責任保険」は、住民のお住まいのところからの水漏れ事故の時等に使います。「水濡れ原因調査費用保険」は、水漏れ事故の原因を突き止めるために壁や床をはがすときの費用です。

●水漏れ事故例
 例えば、共用部分の屋上タンクないしは給水管や給湯管から水が漏れました。その水は、Aさんの住宅に被害を与えてしまいました。加害者は屋上タンクを管理している管理組合様です。Aさんは、管理組合様に対して、「うちの被害を全部弁償してくれ」と訴えることができます。管理組合様がマンション保険にご加入されておりますと、施設賠償責任保険の部分からAさんの被害についてお支払いできます。
 今度は、Aさんの住宅から水が漏れたと仮定します。階下にお住まいのCさんは、住宅を汚されてしまったわけですから、被害者です。AさんはCさんに対して修理代を全部弁償しなければなりません。ところがマンション保険がありますと、個人賠償責任保険で、Cさんの住宅の修理代を支払うことができます。次に、Aさんから漏れた水が共用部分に行ってしまった場合。管理組合様が被害者です。加害者は住民のAさんです。管理組合様は、住民に対して、弁償してくれ、と言わなければいけませんが、マンション保険がありますと、先ほどの個人賠償責任保険を使いまして、ここの部分は直します。
 今までは単純な水漏れということでご説明さし上げましたが、例えば、縦管の部分、横引き管の部分、どこから水が漏れたか分からないけど、被害者がいらっしゃるというようなケース、けっこうあるかと思います。原因をはっきりさせるために、あちこちめくり、いろいろ調査します。お風呂場の奥とかでしたら、そこを壊さないといけないわけです。そうしますと、下の階の修理代以上に、工事費用、調査費用が高くつきます。ところが、先ほどの水濡れ原因調査費用保険という特約が付いていますと、調査修理代金についても保険金から出ます。

●損害保険を付けることが、標準的な対応
 今まで区分所有法や標準管理規約などマンションに関する法律中で、管理組合様が共用部分にマンション保険をつけなければならないという記載はありませんでした。ところが、国土交通省が「マンション管理標準指針」を策定致しました。これは平成17年12月15日に公表されています。「管理組合が、マンションの構造、築年数、区分所有者の要望等を勘案し、適切な火災保険その他の損害保険を付保している」ことを標準的な対応と策定、ということで、管理組合様に何かあったときに、共用部分に損害保険を付けているのが標準的な対応と、初めて言及されております。
  マンション建物の適正な維持に向け、万一の場合の原状回復に損害保険の果たす役割は大きいと思われます。

「修繕資金の調達方法」

●工事費がかさみ、資金が足りなくなったら
 平成19年4月に住宅金融公庫は、独立行政法人住宅金融支援機構に引き継がれますが、今後ともマンション維持管理の支援を行ってまいります。
 さて、外壁工事や屋上の防水工事などは定期的に行われますが、そこに設備関係の工事が加わる20年後、30年後になると、どうしても工事費がかさみます。それまでは修繕積立金でまかなえた工事費が足りなくなり、一時的に借り入れに頼らざるを得ない状況が多々あろうかと思います。そんなときに活用をご検討いただきたいのが、公庫の「マンション共有部分リフォームローン」でございます。

●完全固定金利で、個人保証や担保も不要です
 マンション共用部分リフォームローンの特長として、次の4つが挙げられます。特長1は、最長10年間のローンで、完全固定金利です。固定金利と変動金利。住宅ローンは大きく2つに分かれます。民間金融機関が比較的多くだされているのは変動金利ですが、今のような金利の上昇傾向の場合は、固定金利にシフトするお客様が非常に増えています。特長2は、融資額は工事費の80%までで、1戸あたり150万円が限度額となります。平均すると、1戸あたり約40万というのがご利用実態です。
 特長3は、管理組合の法人格の有無は問いませんので、法人格がなくてもご利用できます。特長4として、融資には必ず保証人や担保がついて回りますが、(財)マンション管理センターが保証人になります。だから理事長様がご自分の専有部分を担保に入れたり、保証人になる必要はございません。
 他にも、ご利用いただける管理組合の要件等がございますが、ご利用をお考えの方は、気軽に私ども公庫へご相談ください。


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「マンションらいふあっぷ連続セミナー」報告

第2回 7月16日
「トラブルの事例と対処法」

●トラブル発生の要因とは
 今回は設備関係ということで、漏水をメインにトラブル事例をご紹介します。
 まずは、機器類が古くなったことが原因による漏水の例を挙げますと、ガス給湯器の給水管、袋ナット部の緩み、食器洗浄機の故障、ユニットバス周りのシール切れや壁面シートの剥離、洗面台の給湯側止水バルブの袋ナットの緩み、洗面排水管U字トラップ袋ナットの緩み、洗面台シャワーヘッドとホース接続部分の取付不良、流し下の給湯配管の接続不良、台所排水管の接続不良、ウォシュレットへ接続している給水管の袋ナットの緩み、エアコンのドレンホースの接続不良などがあります。その他に高置水槽や受水槽の劣化による漏水もあります。
 さらに、排水管、給水管、こういった管類のトラブルも非常に数多く起こっています。配管が古くなると、どうしても材料が劣化し、錆こぶができたり、ピンホールができて、それが原因で漏水を起こします。これらのことは、もちろんガス管にも同じことが言えます。
 また、漏水には「取扱不備」のケースもあります。例えば、単純ミスで漏水を起こす。洗濯機なんかですと、ホースの接続不備のまま水を流してしまう。給水栓を閉栓するのを忘れている。こういった単純ミスが原因で漏水を起こすというようなことがあります。

●さまざまなトラブル対応策
 専有部機器類の漏水の対応策としては、まず機器類についている止水栓をとめること。それでも止まらないときは水道メーターの止水バルブを止めること。こうすれば専用部へ水は行きません。この対応策をしっかり覚えておくことは、とても大切です。
 次に劣化配管の対応策としては、更生工事。これは配管内部をコーティングするなどして延命させる方法です。もう一つは、更新工事。これは取り替えることです。最近は、更生工事も更新工事も、費用的にはそう変わらなくなりました。それに最近は技術の進歩で優れた配管が出ておりますので、更新することを私はおすすめします。 
 ここで、漏水の見分け方をお教えします。本当に微量な漏水の場合はなかなか分かりません。水道メーターの下側になるパイロット針をみれば、使用中は普通動いているわけですね。そこで、使用している水栓(蛇口)を一度全部閉めてしまいます。それでもパイロット針または1指針が動いていれば、どこか漏れているということです。一度帰ってからメーターをご覧になってください。

●メンテナンスの管理責任者は、管理組合です
 
次に、維持管理は誰が行うのか、ということですけど、これは法律行為なんですね。建築基準法の第8条1項には、「建物の所有者、管理又は占有者は、その建物の敷地、構造及び建物設備を常時適法な状態に維持するように務めなければならない」となっています。そして、メンテナンスは、共有部は管理組合さんが全部責任をもってやるべきだと。ただし管理組合さんは、専門の方ばかりがおられるわけではありません。そこでサポートために、こういったマンション管理士、管理会社、建築士などがおられるわけですから、そういった方々の協力を得て、しっかり維持管理していて頂きたい、というのが結論です。

「事例から学ぶガス設備のリニューアル」

 ガス配管も、経過年数によって老朽化が考えられます。とくに埋設ガス配管は、土中の水分等の影響により腐食が進行し、ガスの漏洩につながる恐れも考えられます。大阪ガス管内では、幸いなかったのですが、九州や関東で、ガス管老朽化による死亡事故が発生しており、経済産業省から、全国のガス事業者に対して、地中埋設されているガス管の取り替えを促進しなさいという通達がございました。
 大阪ガスでは、平成11年から皆様にPRをしながら、おおむね20年以上経過した、主に埋設ガス配管の取り替えをおすすめしております。取り替えする材料には、腐食や地震に強いポリエチレン管を使用いたします。
 ちなみに、敷地外のガス管は大阪ガスの資産ですが、敷地内のガス管はすべてお客様の資産です。ですから改修費用もお客様のご負担になります。今後とも安心して都市ガスをお使い頂くためにも、ご自身で安全管理をするという考え方が大切です。実際、費用がいる話ですので、改修の検討をしていただき、改修時期などの相談をさせていただきながら進められればと思っております。よろしくお願いします。

「事例から学ぶ電気設備のリニューアル」

 古い集合住宅の課題として、近年の家庭用電気機器の急速な普及に伴って、住戸内の回路数が不足していること。分電盤さらには建屋内電気幹線(受電設備から各戸までの配線)の容量不足が顕在化して、各住戸で電気機器の使用制限のケースが発生してきています。それから旧式の分電盤にはメインのブレーカがない場合があり、電気を使い過ぎると、各住戸の影響が他の住戸まで影響が及ぶことがあります。さらに無理して電気を使うと、細い電気配線に過大な電流が流れることがあり、それと配線等の経年も影響して、火災発生の危険性も高まってきています。つまり、経年の集合住宅においては、現状では、現代の生活水準に合わなくて、そろそろリニューアルしないといけない時期にきているということです。
 これは関西電力の調べですが、昭和40年頃は、30Aくらいの分電盤で4回路というのが主流でしたが、現在では、最大で100A、24回路。これくらいの分電盤の容量が主流になってきています。通常のマンションでは60A、12回路くらいが中心です。
  リニューアルには、当然費用がかかります。関西電力では、貸付配線制度等を用意して皆様の電気設備リニューアルをお手伝いしておりますので、気軽にご相談ください。


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平成18年度「連続セミナー」報告

マンション設備の維持管理について
築20年、30年を超えると、マンションの設備も老朽化し、様々な問題が発生します。より快適で安心な暮らしをおくるために、また大切な資産価値を維持していくためにも、設備の維持管理は大切です。そこで3回連続セミナーを開催し、多角的かつ具体的に維持管理の方法をご紹介しました。

第1回 7月2日
「マンションにおける給排水設備の基礎知識とリニューアル」

●築20年以上のマンションが抱える問題
 配管の劣化は、誤解を恐れずに言えば、起こるべくして起こります。今皆様がお住まいのマンションで、どういう配管が使われているか、市水引込管や、揚水管、共用たて管、専用部分等部位ごとにきっちり理解することがまず必要です。今、ここに出席されている方のマンションは、ほとんど築10年以上、それも20年を超えるところが多いので、おそらく配管の水漏れとか劣化が、すでに問題になっていたり、「これからどうしたらよいのか」先の展望が見えずに戸惑っている状況と思います。その状況を踏まえ、今日のお話にさせて頂きます。
 過去の分譲された経緯で、何年頃に建ったのか、民間分譲なのか、公的分譲なのか。あるいは建築形状や階数などで、使われている管の種類がだいぶ違って来ます。10年、20年、30年前と、遡れば遡るほど、その当時は最新の技術ですけれども、今となっては「なんでこんなことをしていたのか」ということがたくさんあります。

●給水管の種類と特徴
 まず給水管ですけど、最も多いのが水道用硬質塩化ビニールライニング鋼管。VLPと呼ばれる管です。中がビニールで、外が鉄という二重の管です。耐久性のある良い管ですが、ジョイント部分が錆びやすく、いま問題を起こしているのもこの管種です。次に、耐衝撃性塩化ビニル管。HIVPです。ビニル管は安っぽいイメージですが錆びないので、実は耐久性に非常にすぐれています。VLPとHIVPの2つの管が、約9割を占めています。2つのどちらかのマンションが多いので、一度、帰ってから、図面や今まで事故が起きた管を調べてみてください。
 あとは、使われているケースが少ないのですが、30年以上の前のところでは、メーターボックスの中に鉛管が使われているケースが時々あります。鉛管は、自由に曲がるから、メーターボックスの中のような狭いスペースでも配管がしやすく、当時はたくさん使われていました。でも今は、鉛管は使用が禁止されていて、基本的に取り替える必要があります。
 架橋ポリエチレン管とポリブデン管。両方ともプラスチックで、可とう性にすぐれ、自由に配管できます。従ってジョイント部分が非常に少なくて済む。ビニールパイプみたいに割れないし、非常に衝撃に強い。究極の管です。最近の新築マンションはほとんどこのどちらかの管が使われています。配管を今度取り替えるときは、これらの管をぜひおすすめします。
 鋳鉄管は、大阪市内で使われているケースは少ないが、自治体によっては引き込みは鋳鉄管でないと駄目というところもあるので、引き込みに限っては給水で鋳鉄管が使われていることもあります。

●排水管の種類と特徴
 次に排水管です。排水管も主流はビニール管です。VPとVUとがあります。VPは比較的肉厚のある配管で、VUはローコストにするために少し薄くしています。排水は水圧がかかりませんから、支持がきっちりしていれば、VPでもVUでもいいんですが、当然薄い方が割れやすいので、マンションでは一般的にVPを使います。
 ビニール管がなぜ割れるかというと、熱です。お風呂のお湯を流したり、台所で熱湯を流したりする。80度、90度のお湯が一気に流れてくるので、配管が伸び縮みします。それが10年、15年たってくると、ある日、突然、パチッとひびがはいり、じわじわと漏れることになります。基本的には錆びないので、事故が起きる確率は、20年過ぎて100件に、年に1件か2件以下という確率なので、25年たったから全戸取り替えようかというような必要性はないと思います。ビニール管が使われているから安っぽいマンションということではなくて、結果的にはいい選択、長持ちする、重大性の少ない配管です。
 耐火二層管は、ビニール管の外側に繊維モルタルの外管を被覆している火に強い材料です。本来の目的は耐火被覆なんですけど、遮音性もあります。配管用炭素鋼管(SGP)は、排水に用いると内面が錆びるため、耐久性に問題がある管です。SGPが使われているマンションは少なくないので注意が必要です。
 排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP)は、内面がビニールでライニングされた管です。水圧がかからないので、この小口面が多少錆びてきても、水は大量に漏れることは少なくあまり問題はありません。鋳鉄管(CIP)は、特に汚水管、トイレの裏にある管です。汚水は非常に酸もきついし錆びやすいので、昔から鋳鉄管を使っています。耐用年数は30年以上ですが、埋設排水管は20年もたないことが最近、実例としてわかりました。銅管は、耐食性や抗菌性に優れていますが、最近、銅管のジョイント部分(鋳鉄)から漏れるケースが最近よく出てきています。特殊コーティング管は、何社かメーカーがありますが、鋼状の非常に硬い鋼管の内面に、硬い樹脂をコーティングした管です。

●増圧給水方式に改修
 次に給排水設備のリニューアルについてです。最近はブースターポンプを取りつけ、受水槽高架水槽を設けずに直結増圧給水方式に取替えるケースが増えています。
 大阪市の基準で110戸までのマンションで施工できます。階数も15階程度までですから、この条件のマンションだったら、ブースターポンプ取り替えをぜひ検討してください。それ以上の戸数は水道局へ相談してみてください。
 ブースターポンプによる増圧給水方式の長所は、まず水の安全性が高いこと、省エネ、維持管理費の低減などです。さらに上階で水圧が低いのが解消されます。それと、受水槽ポンプ室の跡地が有効利用できます。建物の中に設置していたら、それがごそっとなくなりますから、集会場や倉庫に有効利用が可能です。外構に設置にしていたら駐車場にするとかもできます。

●給水管、排水管の更新と更生
 更新と更生。ともにわかりにくい業界用語ですが、更新は取り替えのことで、更生は内面ライニングのことです。
 給水管の場合の工事区分は非常に明快で、共用部分の工事をしようと思ったら、メーターまでの工事をすればいいし、専有部分の工事をしようと思ったらメーターから内側の工事をすればいい。管理組合としたら、専有部分の工事なんかほっておけ、という話が今まで主流でしたが、問題が起きるのは、専有部分が多いのが実情です。だから専有部分の改修も管理組合が主体的に取組むことが望まれます。一般的に共用部分は更新、専有部分は更生が多くなっています。
 排水管のライニングは難しい技術がいります。給水管のライニングは25年から30年ほどの実績がありますが、排水管のライニングは、ここ5、6年くらい。でもこれからは共用部分と専有部分の排水管の改修はライニングが主流になってくると思います。

「大阪市民間建築物吹付けアスベスト除去等補助制度」のご案内

●所有建物のアスベスト有無・飛散性をご存知ですか?
 アスベストを含む建材には、劣化や損傷により飛散するおそれのある吹付けアスベスト等と破損や切断のない限り飛散の恐れのないアスベスト成形品(ボード類)等に大別できます。建設時期や図面情報等からアスベスト含有の疑わしい吹付け材がある場合、専門機関での含有調査を行い、含有が判明したら、「除去」(当該建材を取り除く。場合によって要代替材)、「封じ込め」(特殊な薬剤を当該建材に散布し固める)、「囲い込み」(当該建材の周囲を囲い、飛散を防ぐ)の何れかの対策が必要です。

●今年度はマンションの定期報告実施年度です。
 地上3階建以上のもので1000m2または地上5階建以上のもので500m2をこえる大阪市内のマンションは、建築基準法12条に基づく定期報告を行っていただく必要がありますが、この報告事項にもアスベストの有無等が含まれています。

●法改正で増改築等時の対策が義務化:本市補助は期間限定
 建築基準法が改正され、吹付けアスベスト等がある建物には増改築・大規模改修等実施時にその対策を併せて実施するよう義務付けられます。
「大阪市民間建築物吹付けアスベスト除去等補助制度」(詳細は下欄「大阪市住宅局情報」参照)は、平成20年度までの時限制度。建物状況を把握され、必要に応じて本制度をご利用頂くなど、早期にご対応下さい。ご相談はお早めに、お気軽に。


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平成17年度「大規模修繕工事見学会」報告

大規模修繕工事見学会
修繕委員の募集、設計監理者、
施工業者の選定などに知恵を絞る。

3月18日、大阪市マンション管理支援機構としては、第2回目の大規模修繕工事見学会を、ベイシティ大阪管理組合のご協力により開催しました。ベイシティ大阪は、地下鉄朝潮橋駅から徒歩12分の場所に建ち、3棟でSRC造8〜21階建てからなる・総戸数435戸の大規模マンションです。築12年を経過し、今回が初めての大規模修繕工事です。

<見学マンションと工事の概要>

ベイシティ大阪(大阪市港区池島3-5-1)
SRC造8〜21階建て3棟/総戸数435戸/築13年
工事内容(1)下地補修 (2)壁面塗装 (3)鉄部塗装 (4)防水 (5)シーリング (6)取り替え修繕 (7)その他
工 期平成17年9月〜平成18年6月
設計・管理建物診断設計事業協同組合
アーバンスペース建築事務所
施工(株)長谷工コミュニティ

● 大規模修繕委員会設立までの経過説明

 まず、大規模修繕委員会設立までの流れを、佐古理事長からご説明いただきました。
 「2年前の総会で、築10年以上経過しているということで、11期の業務計画に建物診断を承認してもらいました。 管理組合だけの人間だけではできないので、3社のコンサルタント会社からプレゼンテーションを受け、実際に設計監理されたマンションを訪れ、そこの理事長さんや大規模修繕に携われた委員長さん等々から意見を聞きました。 費用については、調査診断と設計監理の見積もりを提出してもらいました。 その中で、建物診断設計事業協同組合(以下、建診協)アーバンスペース建築事務所に決めた理由は、費用の他に、大規模修繕時にマンションに足を運んでもらえる回数の多さでした。
(写真) そして、この時期に大規模修繕委員会を設立し、委員を公募しました。残念ながら立候補は1名だけでした。あとは、過去の理事経験者や建築の専門家などの方に依頼状を出したり、面接をさせていだいて、管理組合の理事2名も加えて、何とか9名の委員で発足しました。同時に委員会の目的や議決の総数などの内規を定めました」。

● 施工業者選定までの経緯説明

 次に、施工業者選定までの経緯説明を、平野理事からしていただきました。
 「一昨年の12月にアンケート調査を実施しました。 住まわれている方の関心も非常に高く、90%の回収率をあげました。 そして1月に建物診断調査とバルコニー立ち入り調査を実施し、劣化状況の確認をしました。 その後、3月に住民説明会を開き、写真やスライドを見て頂いて現状を確認してもらいました。
 それから本題である施工業者さんの選定に入りました。選定に当たっては、コンサルティング会社を中心に、共通工事 仕様書と見積書を作成。 そして年間2億円の工事実績や、直近の工事実績、資本金の規模など業者さんのレベルを決めて公募をしました。 応募企業は7社ありました。 選定には採点制を採用。 70点を工事金額、ヒアリング調査を20点、経営の健全性を10点とし、総合点で判断したわけです」。
 最終的に3社に絞り、同規模マンションの施工実績を見たり、ヒアリングをして、同じ採点制で、最終的にベイシティ 大阪の管理業務を委託されている長谷工コーポレーションに決まりました。

● 建物調査診断結果および工事内容の説明

 次に建物調査診断結果および工事内容の説明を、建診協の松本さんにしていただきました。
 「建物がコの字型に曲がっている他、海の近くで風も強くふいています。そこで調査診断も、通常ではやらない方法もやっています。 その前に管理組合さんからお話しがあったように、住民の方にアンケートをとりました。 回収率も90%もあり、おかげでいいデータを取ることができました。 バルコニーも60数件入らせていただいています。 高い意識を持った方がたくさん住んでおられ、とても役立ちました」と説明。 さらに診断方法と、具体的な工事内容、改修工事の手順などが説明されました。

● 活発な質疑応答

(写真) 続いて行われた質疑応答では、多くの質問が寄せられました。
 「うちのマンションでは、修繕委員のなり手がいないので悩んでいるところです。 どういう方法をとられたのか」と質問に対して、担当の平野理事から説明がありました。 「まず理事の経験者に手紙を書きました。 “こういうことで立候補者を募集していますが、ぜひご参加ください”と60通ぐらい出しました。 さらに個別依頼して最終的に9名の方に了解いただけました。 うち2名が女性ですが、デザインや色決めなどでは 女性の意見は欠かせません。 だから女性にお願いした方がいいと思います」。
(写真) この他にも、「共通仕様書はどんなふうに作られたのか?」 「竣工検査の基準は?」「材料の出荷証明と現物の検査をどうされたのか?」 など、かなり突っ込んだ質問もあり、それに対する答えがありました。

● 現場見学&質疑応答

(写真) そしていよいよ現場見学が行われました。
 当日は、あいにくの雨。 コース変更をしての見学でしたが、参加者は3つの班に分かれ、建診協の松本さん、長谷工コーポレーションの2名が班長となって参加者を引率。 班長による施工状況の説明に、参加者たちは興味深く見て回りました。 現場見学を終えた後で、会議室に戻り、再び質疑応答が行われました。 「塩ビシートを貼られている廊下の日常清掃と定期清掃の方は?」という質問に続いて、 「管理会社と施工会社が同じでは、管理会社にリードされて決めたのではないかと疑われる。 それをどう克服されたのか?」という質問に対して、佐古理事長より、 「業者選定に当たっては透明性の確保が何よりも大切。 決め方について居住者の皆さんに細かくご説明いたしました」との答えがあ りました。
 ちなみに当日は、26名の参加者がありました。 「管理組合の生の声が聞けて、とても参考になった」と大好評でした。
 今回、会場をご提供いただき、 とても貴重な体験をお話いただいたベイシティ大阪管理組合の皆様には、心よりお礼申し上げます。
(写真)

平成17年度「管理組合交流会&相談会」報告

「管理組合交流会&相談会」報告
分譲マンションの管理組合で抱えている課題について、 他の管理組合がどのように取り組んでいるのか情報交換することは、 管理組合運営を円滑に行うためには大変重要です。
支援機構では他の管理組合と情報交換していただく場を提供しています。 管理組合の日常活動の中での経験、悩みやアイデアなどについて、 意見交換していただく場として2005年度も交流会を開催しました。
また、個別相談会も同日に開催しました。
今交流会での意見交換では、それぞれの問題について経験者からのアドバイスや情報提供が受けられ、 悩みを共有しながら解決方法について熱心な発言がたくさんありました。 管理組合役員さんの生の声の一部をご紹介 します。

管理組合交流会

日時:平成18年2月26日(日)13:30〜16:30
場所:大阪市立住まい情報センター3Fホール
参加者:28名の参加があり、5組のグループに分かれて意見交換しました。
※交流会参加者は、原則としてマンション居住者とし、管理会社や管理員等の参加は不可としています。
参加費: 無料

大規模修繕関係

Q 大規模修繕(工事内容、業者の選び方)の進め方および状況 について、情報交換したい。

  • 過去に大規模修繕は1回実施した。外壁と共用廊下、照明設備、鉄部塗装の修繕を行った。 修繕委員会を立ち上げ、見積 を10社程とった。 業者の決定は、実績と社員の対応を見て、決めた。 工事着手後も、納品書などによって、支出金額と明細数量をチェックした。
  • 大規模修繕については2,3年後に考えている。修繕委員会を設置したところである。 今回は初めての大規模修繕なので、現在の修繕積立金で工事が賄えるのかどうか、 みなさんの経験談を参考にしたい。
  • 修繕なども、見積もりの取り方によって金額がまったく変わる。
  • 16年目に大規模修繕した。まず建築士に劣化診断してもらった。 64戸で3,000万円弱だった。
  • 構造1級建築士に劣化診断してもらい200万かかりました。 その建築士は仕様書まで作成してくれ、5社程度の相見積りをとった。
  • 素人では分からない事が多いので、月2.5万円(年間30万)でコンサルタントを常駐させている。
  • 地震で5階より上階のガラスが割れたのですが全て保険会社が補償してくれた。

耐震診断

Q 私のマンションでも耐震診断の声が出ています。

  • 耐震診断はまずは図面(書類)チェックから。 大阪市の建築指導部建築指導課では耐震診断の補助等も行っている。それから、構造計算→現場のチェックとなるが、これらは多くの費用がかかる。
  • 図面だけを信じてはいけない。大手の会社だからと言って安心してもいけない。

管理委託会社

Q 現在までの管理組合の運営等に関する書類が一切保存されていない。 管理会社は20年間変更していない。

  • 管理会社の変更に取り組んでいるが、私一人で検討している。 最近わかったのだが、管理会社と委託契約書を作成していないことがわかった。 調べてみると、設備点検や雑排水管の清掃など実施していないこともわかった。 どのように進めていくの がよいか、皆さんのアドバイスをいただきたい。

Q 皆さんのマンションの管理費を教えてほしい。

  • 当初契約では170万円/月だった。 これは、管理会社がすべての保守費用を負担するという内容だったが、 実際は何も保守することがないのに毎月払っている状況だった。 だから、会社を変更した。 そうしたら、55万/月になった。年600万円の経費が節減できた。

(写真)Q 管理会社の変更は大変か。

  • もちろん容易ではない。 みんなが払っている管理費が当初設定ではこういう形で支出されているということを、 全戸に伝えた上で、理事会で変更を決定した。

Q 管理会社の探し方を教えてほしい。

  • インターネットやこのような交流会で情報を集めている。
  • 管理会社は実務がよいところを選ぶべきである。
  • フロントマンの対応の良し悪しも大切だ。

管理組合運営

Q 役員の集め方と、住民の意見の集め方について、教えてほし い。意見箱を設置したが誰も入れてくれない。

  • アンケートをとることが適しているかも。あと、広報や掲示など で情報伝達も日ごろから意識しておくことも重要だ。

Q 管理費の滞納対策はどうしているのか。

  • 管理会社が理事名で督促を出す。管理会社が、相手と交渉も している。
  • 内容証明を送っている。
  • 滞納は時効5年ではなく、6ヶ月くらいが勝負の分かれ目であ る。あまりに滞納すると払えない。

住まい方

Q ごみのマナーが悪くて困っている。

  • ごみだしは1,2年かけてきれいに保つように管理を実践した結果、マナーが浸透してよくなった。
  • グループ長が責任を持って、当番制でごみ置き場の鍵を約束の時間だけ開けるようにしている。

Q ペット禁止マンションだが、内緒で飼育している事例が多い。

  • 高齢者も多く、ペットの飼育を無理に禁止できない。
  • ペットクラブを作って、ルールの徹底化を図っている。 人間に危害を加えた場合は、全面禁止にする約束とした。
  • ペットクラブを作ると、今現在持ってない人まで加入して、 ペットの数が増える事態 にもなるので、あまり賛成できない。
  • ペットクラブと管理組合は、接触しないことにしている。
  • 苦情等の窓口は、入居者同士だと角が立つので、管理人へ集約するようにしている。
  • 1代限りのペットを認めているので、固体判別のために3ヶ月ごとに写真提出させている。

その他

(写真)放置自転車問題・不法駐車対策・不法投棄・マンションみらいネットへの取り組み・ 外国人 の入居者の場合の言葉の壁、文化の違い・アスベスト問題・ 耐震問題・光ファイバーの導入などのテーマで意見交換ができました。

「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」報告

会場全員参加によるクイズ形式「マンション管理Q&A」


初の試みである「マンション管理Q&A」は、以下のように進められました。

  1. 大阪市マンション支援機構の構成団体である専門家団体より、専門分野に関連する問題を出題します。
  2. 専門家の方々の方から回答1と回答2をお答えいただきます。
  3. 会場の皆様は、回答1が正解だと思われれば赤の色画用紙を上げ、回答2が正解だと思われれば、青の色画用紙を上げます。
  4. 最後に専門家に正解の発表と、解説を行います。

全部で14問出題されましたが、ここでは紙面の都合上、5問に絞り、解説は省かせて頂きました。読者の皆さんもクイズに挑戦してみください。
(正解は、下段にあります)

出題(解説)者及び回答者
久保井

左から
大阪弁護士会/五島 洋
(社)大阪府不動産鑑定士協会/笠井 靖彦
近畿税理士会/中島 一晶

久保井


大阪司法書士会/沖 健補
大阪土地家屋調査士会/和田 清人
(社)大阪府建築士会/川畑 雅一

【問題1】
あなたは、交通接近条件、場所的環境及び購入予算限度額内にあると思っている右記2物件のうち、どちらのマンションを選択しますか?
久保井 【回答1】 Aマンション
同時期に建てられたマンションで、物件の概要(面積・間取り・階数位置)がほぼ同じであり、価格がBマンションより安いということであれば、Aマンションを選びますね。おまけに、修繕積立金もBマンションに比べて低いのも魅力です。ただ、ペット禁止マンションのはずがエレベーターから犬を連れた婦人がおりてきたというのがやや気になりますが。

久保井 【回答2】 Bマンション
大規模修繕計画が決まっているBマンションは管理がしっかりしているように思います。修繕積立金の価格もBマンションの方が高いのですが、これから古くなるマンションにとって管理がしっかりしていることは資産価値の上でも重要だと思います。それに引っ越してすぐマンションのハイキングにも参加できそうだし。
【問題2】テーマ:管理組合が行うコンピューター講座の収益
私達の管理組合は、集会所を利用して毎週1回、組合員であるA氏を講師として、コンピューター講座を開催しています。A氏に支払う講師料を差引いても1回の講座につき、1万円程度の収入がありますが、この収入に対して法人税が課税されるのでしょうか。
【回答1】 課税されない
コンピューター講座の実施は収益事業ではないから課税されない。
【回答2】 課税される
1回の講座につき1万円の利益があれば、年間で50万円程度相当な利益が見込まれるので、法人税が課税される。 【問題3】テーマ:マンションの大規模修繕工事の設計・工事監理と施工業者の決定について
●管理組合理事長の佐藤さんの悩み
「ライフアップ」マンションの管理組合理事長佐藤さん任期中に大規模修繕工事を実施する時期が迫っています。どのように進めれば良いのでしょうか。
【回答1】 建築関係の区分所有者に任せる
「ライフアップ」マンションの区分所有者である田中さんが建築関係の仕事をされているから、あの人にお願いして施工業者を紹介してもらって、その業者が大規模修繕工事を施工し、設計と工事監理を田中さんかその紹介の人に任せればいいと思います。田中さんは区分所有者だから安心だし上手くいくに違いないと思います。よって「建築関係の区分所有者に任せる」案を理事会に諮ればいいと思います。
【回答2】 第三者の設計事務所に委託する
ちょっと回りくどいかも知れませんが、住まい情報センターでは分譲マンションアドバイザーの派遣をしてもらえると聞いています。管理組合の理事会としても勉強して、やはり第三者の設計事務所に大規模修繕の設計と工事監理を委託し、施工業者も設計事務所と管理組合とで相談の上、決定するべきだと思います。よって「第三者の設計事務所に委託する」案を理事会に諮ればいいと思います。 【問題4】
隣接地の所有者から境界確認の書類に理事長の押印を求められました。従来から境界杭も入っており境界そのものには異論はないのですが、押印するについて、管理組合としてどのような手続が必要なのでしょうか?
【回答1】 総会の決議の上でなければ、押印してはいけない。
土地の境界は、区分所有者にとって重要な事項だから、総会の承認が必要である。
【回答2】 理事会決議のもとに、押印すれば良い。
境界杭により以前から誰もが認識している事実であるし、それだけのために臨時総会を開く必要はない。 【問題5】
管理組合の役員である監事は、理事会で議決権をもつのでしょうか。
【回答1】 議決権をもつ
監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告する義務があるため、理事会の議決権をもつ。
【回答2】 議決権をもたない
監事は、理事ではないため理事会で議決権をもたない。

上記の問題に対する正解

【問題1】 → 2:Bマンション
【問題2】 → 1:課税されない
【問題3】 → 2:第三者の設計事務所に委託する
【問題4】 → 2:理事会決議のもとに、押印すれば良い
【問題5】 → 2:議決権をもたない
 ※(注)講座1〜6&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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