セミナー情報

平成28年度「大規模修繕工事見学会」報告

開催日時:平成28年11月12日(土)実施

平成28年度マンション大規模修繕工事見学会は、大阪市城東区にあるパラシオ大阪城公園管理組合様のご協力のもと開催いたしました。
大規模修繕工事の最中にもかかわらず、当日は管理組合の役員の皆様をはじめ、設計・工事監理をご担当された(株)こま設計堂、施工をご担当された大和技研株式會社の皆様方にもご出席いただきながら、安全な環境のもとで、実際の工事中の様子を見学させていただきました。


●管理組合役員の入念な準備と工事に向けた熱心な活動

当管理組合の大規模修繕工事について、当時の理事長様、現在の修繕委員長様に、修繕委員会の立ち上げから工事に向けた合意形成などについて、ご説明いただきました。
こちらのマンションでは、はじめて大規模修繕工事を行うにあたり、当初は手探りの状態からスタートされたそうです。
最初は、平成26年度大阪市マンション管理支援機構主催の大規模修繕工事見学会に参加されました。次いで、住まい情報センターの専門家相談を受けられ、大阪市分譲マンションアドバイザー派遣制度による専門家派遣を活用し、住民対象の勉強会を重ね、専門的な知識を深めるとともに、大規模修繕工事に対する住民間の意識を高めてこられました。
平成27年3月には修繕委員を公募し、同年5月の臨時総会では、役員任期の規約を改正、同年8月、設計事務所を決定されています。


●調査診断における課題を専門家のサポートと創意工夫で解決

平成27年9月、設計事務所が実施の建物の劣化診断において、想定以上に多くの外壁タイルの浮きが発覚し、屋上防水の劣化も進んでいたため工事費が膨れ上がり、これまでの修繕積立金では賄えない状況になっていました。そこで修繕委員の方々や理事会の役員の方々は諦めることなく、設計事務所からのアドバイスを受けながら、修繕内容の見直しに着手し、さらには将来の長期修繕計画書の調整や、修繕積立金の額の値上げ等を検討されました。
同年12月には、設計事務所作成の全240ページにもなる建物の劣化診断の報告書を、設計事務所とともに報告し、マンション建物の正確な現状認識について、住民間で共有してこられました。
平成28年5月には、公募のうえ、施工会社を決定。同年7月の通常総会では、「大規模修繕工事実施」と「修繕積立金の見直し」について、正式に決定されています。
大規模修繕工事は、調査診断から工事のための合意形成まで2~3年の期間を要するため、次の大規模修繕工事を見据えて準備していくことが重要になっていると、これまでの活動を振り返りながら感想を述べられていました。


●設計者・工事監理者の対応

設計事務所による建物の劣化診断では、外壁タイルを可能な限り打診棒を使って叩き、その音でタイルが浮いているかどうかチェックするそうです。足場を架けてからでなければ、すべては叩けないそうですが、今回のケースは調査段階において、タイルの浮きが多いと想定出来たそうです。また、屋上防水については劣化が著しく、全面補修が必要であると判断したそうです。こうした結果、当初想定の予算から大きく上回り、今回の大規模修繕工事で実施すべきものと、次回の大規模修繕工事に送れるものを選定、さらには資材の選定や工事費の精査など調整されました。
これまで、修繕委員会は隔週で計12回も開催されたそうです。
今年10月には、修繕委員会や理事会の役員の方を対象に現場検査、確認の機会を設けながら、工事完成まで住民の皆様方に関心を持ち続けていただけるように、さまざまな工夫をしながら、情報の共有化を意識して進めてこられました。


●施工者の対応

工事の施工にあたっては、設計時から課題であるタイルの補修工法を決定するため、足場設置後、すぐに工事監理者立ち会いのもと再調査が行なわれました。その結果、浮きがひどい箇所は、撤去張り替え。ひどくない箇所は穴をあけて、接着材を注入する再圧着の工法で進めていました。
タイルの張り替えについて、既製品に同じものがないため、特注で、新たに窯でタイルを焼くところから始めなくてはならず、資材調達に2ヶ月要したとのことでした。このため、スケジュールに影響し、足場設置の期間が長くなり、住民の方々が洗濯物を干せないなど日常生活に支障が出たことや、バルコニー側の防犯対策の延長など、工事の苦労話を聞くことができました。
このほか施工者からは、音が出る工事の日や、洗濯物が干せる日などをお知らせする掲示板や、アンケートボックスを1階エントランスに設置するなど、住民の方々との意見交換の方法について説明がありました。


●補修工事を間近で見学。その後の質問にも丁寧な対応

工事の見学では、外部足場を使いながら、外壁タイルの補修状況を間近で拝見させていただきました。また、屋上にも上がらせていただき、防水の補修状況を拝見させていただきました。
見学後の質問受付では、参加者から管理組合の役員の方々に①施工業者選定のための具体的な面接方法や決定方法②管理会社に依頼しなかった理由③合意形成の進め方や注意点 ④修繕積立金の見直しの対応などについて質問がありました。
また、設計・監理、施工の担当者の方々には、①屋上防水の工法、工事単価 ②工事費が予算と乖離した際の解決方法などの質問がありました。
いずれの質問、意見に対しても、管理組合の皆様をはじめ、設計・監理、施工の担当の方々は丁寧にご対応してくださいました。
参加者からのアンケートでは、大変参考になった、今後の見学会にも是非参加したい、アドバイザ-派遣制度を活用したいとの感想も寄せられました。参加された皆様におかれましては、それぞれの管理組合に戻り、この経験を生かされることと思います。


<見学マンションと工事の概要>

パラシオ大阪城公園(大阪市城東区)
平成13(2001)年3月 竣工(築16年)
RC造10階建・総戸数99戸・委託管理方式
工事内容
  1. 大規模修繕工事(1回目)
  2. 共通仮設・直接仮設・タイル補修・屋上防水・鉄部等の塗装等
工期 平成28年8月~平成29年1月予定
施工
見学マンション