7月4日(日) 第1日目-1
講座
マンションに住むということ
管理組合が法律を身につけて
自ら管理監査を行う努力が大切です。
(講師)
大阪弁護士会所属弁護士
山之内 桂(やまのうち かつら)
●建物所有に関する基礎知識
マンションを持つということは、憲法29条に定められた財産権の一種である所
有権を持つことです。ひとつの建物にはひとつの権利しか発生しない、という考え方が民法の原則ですが、マンションで
は一棟の建物の中に多数の所有権を観念する必要があるので、1962年に区分所有法が制定されました。
この法律は、建物の中に区分所有権を持てる対象として専有部分を認めていることが、一番のポイントになっています。権利関係や管理についてまとめられており、専有部分、共用部分、管理組合や建て替えに関しても定められています。 ●区分所有権の特徴 専有部分には、「共同の利益」による権 利の制限があり、そこに住む人々の一種の私的な利益も、合意があれば制限されます。例えばペット。飼わないと決めれば共同の利益になり、規約に反してペットを飼えば、共同の利益に反する行為とみなされます。
共用部分に関しては、「7階の住居に接続した下水管が破損して6階の専有部分が被害を受けた」というトラブルの事例があります。この場合、壊れた部分が専有部分か共用部分かによって、誰が責任を取るかが違ってきます。
この他にも、専有か共用かで争いになるケースも多いので、管理規約や決議決定をしっかり定めて管理運営することが、トラブルを防ぐ有効な手段になると思います。 ●管理規約 管理規約はマンションを管理していくうえでの憲法ともいえます。マンションの建物や敷地、これに付属するものに関 する共同ルールです。
管理規約であっても、法令に反する規約あるいは管理組合がもともと決める権限がない事項を規定した規約は無効です。例えば、管理費を滞納した人には専有部分を使わせないとか、共用部分に立ち入ることを禁止するというようなことはできません。これを行うためには法律上の手続きが必要です。極端な制裁は違法行為になりますので注意してください。
また、マンション区分所有者やそのマンションの購入希望者から要求があれば,管理規約を必ず見せなくてはいけません。見せないと罰則の規定がありますので、必ず閲覧に供してください。 ●強硬手段 ルール違反者に対して、法律では4種類の強硬手段を認めています。1つ目は区分所有法57条に規定される行為の停止、 行為結果の除去、行為の予防措置。これらは通常決議で採決できます。
2つ目は58条に規定される専有部分の使用禁止。3つ目は59条の区分所有権を競売にしてしまうという手続きに関する定めです。これは、共同生活上の障害が著しく、使用禁止では対応ができない場合に限り認められているものです。ただ、実際には管理費の滞納で59条の競売が認められる例もたくさんあります。4つ目は60条に規定される占有者に対する引渡し請求です。普通は、他人の間の契約を第三者が勝手に解約できませんが、60条の規定を使えばできるのです。58条から60条は特別決議が必要となります。 ●暴力団排除条項 暴力団排除条項は、多くの管理組合の規約に入っていないと思うのですが、これはぜひ入れてください。他の業界、ホ テルや旅館などはほとんどこの条項を入れています。暴力団とは関係を持たないことは非常に重要です。暴力団排除条項の例文が、「住まい情報センター」のホームページの「住まいに関する相談」に掲載されていますので、参考にしてください。
→「住まい情報センター」暴力団排除条項の例文 ●マンション管理適正化法 適正化法は、大きく言うとマンション管理士という国家資格を作ること、マンション管理業者を登録させることを目的にした法律です。今後のマンションの管理、あるいはマンションのスラム化問題への対策が打てるのではないかということで制定されました。
管理業者登録制度は、マンション管理業者が国に登録する制度です。国土交通省ネガティブ情報検索システムで、過去の処分情報が開示されています。一概に、ここに載っているからどうだということではありませんが、管理会社を変えたい場合はここを調べて、過去に処分歴がないかどうか、参考にしてください。 ●管理委託契約 管理委託契約については、国土交通省から標準管理委託契約書が出ています。平成22年5月以降の契約分について改定があり、財産の分別管理や、会計収支報告、業者の立入検査の際の身分証明などに関する取り決めが改定されています。
管理業者は管理にどこまで関与するのか、管理委託契約書を見れば分かるのですが、例えば管理費の滞納に対しては督促までで、あとは管理組合がやってください、あるいは住民同士のトラブルについては注意まではしますが、あとはやってください、などまちまちです。管理会社任せという発想ではなく、管理組合がしっかり監視監督し、みんなで努力することがマンション管理を円滑にしていくポイントだと思います。
この法律は、建物の中に区分所有権を持てる対象として専有部分を認めていることが、一番のポイントになっています。権利関係や管理についてまとめられており、専有部分、共用部分、管理組合や建て替えに関しても定められています。 ●区分所有権の特徴 専有部分には、「共同の利益」による権 利の制限があり、そこに住む人々の一種の私的な利益も、合意があれば制限されます。例えばペット。飼わないと決めれば共同の利益になり、規約に反してペットを飼えば、共同の利益に反する行為とみなされます。
共用部分に関しては、「7階の住居に接続した下水管が破損して6階の専有部分が被害を受けた」というトラブルの事例があります。この場合、壊れた部分が専有部分か共用部分かによって、誰が責任を取るかが違ってきます。
この他にも、専有か共用かで争いになるケースも多いので、管理規約や決議決定をしっかり定めて管理運営することが、トラブルを防ぐ有効な手段になると思います。 ●管理規約 管理規約はマンションを管理していくうえでの憲法ともいえます。マンションの建物や敷地、これに付属するものに関 する共同ルールです。
管理規約であっても、法令に反する規約あるいは管理組合がもともと決める権限がない事項を規定した規約は無効です。例えば、管理費を滞納した人には専有部分を使わせないとか、共用部分に立ち入ることを禁止するというようなことはできません。これを行うためには法律上の手続きが必要です。極端な制裁は違法行為になりますので注意してください。
また、マンション区分所有者やそのマンションの購入希望者から要求があれば,管理規約を必ず見せなくてはいけません。見せないと罰則の規定がありますので、必ず閲覧に供してください。 ●強硬手段 ルール違反者に対して、法律では4種類の強硬手段を認めています。1つ目は区分所有法57条に規定される行為の停止、 行為結果の除去、行為の予防措置。これらは通常決議で採決できます。
2つ目は58条に規定される専有部分の使用禁止。3つ目は59条の区分所有権を競売にしてしまうという手続きに関する定めです。これは、共同生活上の障害が著しく、使用禁止では対応ができない場合に限り認められているものです。ただ、実際には管理費の滞納で59条の競売が認められる例もたくさんあります。4つ目は60条に規定される占有者に対する引渡し請求です。普通は、他人の間の契約を第三者が勝手に解約できませんが、60条の規定を使えばできるのです。58条から60条は特別決議が必要となります。 ●暴力団排除条項 暴力団排除条項は、多くの管理組合の規約に入っていないと思うのですが、これはぜひ入れてください。他の業界、ホ テルや旅館などはほとんどこの条項を入れています。暴力団とは関係を持たないことは非常に重要です。暴力団排除条項の例文が、「住まい情報センター」のホームページの「住まいに関する相談」に掲載されていますので、参考にしてください。
→「住まい情報センター」暴力団排除条項の例文 ●マンション管理適正化法 適正化法は、大きく言うとマンション管理士という国家資格を作ること、マンション管理業者を登録させることを目的にした法律です。今後のマンションの管理、あるいはマンションのスラム化問題への対策が打てるのではないかということで制定されました。
管理業者登録制度は、マンション管理業者が国に登録する制度です。国土交通省ネガティブ情報検索システムで、過去の処分情報が開示されています。一概に、ここに載っているからどうだということではありませんが、管理会社を変えたい場合はここを調べて、過去に処分歴がないかどうか、参考にしてください。 ●管理委託契約 管理委託契約については、国土交通省から標準管理委託契約書が出ています。平成22年5月以降の契約分について改定があり、財産の分別管理や、会計収支報告、業者の立入検査の際の身分証明などに関する取り決めが改定されています。
管理業者は管理にどこまで関与するのか、管理委託契約書を見れば分かるのですが、例えば管理費の滞納に対しては督促までで、あとは管理組合がやってください、あるいは住民同士のトラブルについては注意まではしますが、あとはやってください、などまちまちです。管理会社任せという発想ではなく、管理組合がしっかり監視監督し、みんなで努力することがマンション管理を円滑にしていくポイントだと思います。
7月4日(日) 第1日目-2
講座
日常の修繕、長期修繕計画について
適切な修繕とコミュニティの力があれば
マンションは美しく老い価値を維持します。
(講師)
社団法人大阪府建築士会
今井 俊夫(いまい としお)
●マンション余りの時代に価値を維持するには
マンションのストック数は年間約17万戸ずつ増え続けており、現在、全国で562万戸。関西圏では140〜150万戸になります。一方で、2015年ころから日本の世帯数が減り始めると言われています。その結果、いよいよマンションが余ってきます。超高層マンションでも売れ残っている今、中古マンションにも資産価値の低下と空き家、賃貸の増加というかたちで影響が現れています。
こうした状況下で、皆さんはマンションをどう管理していかなければならないのでしょうか。建物が古くなることは避けられないけれど、管理組合がきっちりと管理して適切な修繕を適時に行い、そこにコミュニティの力が備われば、建物は美しく老いていきます。そうしてマンションとしての本来の価値を維持させていくためにはどうしたらいいのか。建物のハード部門、適時適切な修繕について話をさせていただきます。 ●自分たちのマンションは自分たちで管理を マンション管理には自主管理と委託管理があります。自主管理の場合は、当然自分たちでやらないといけないので、理事や理事経験者の方々は一通りのことは理解されていると思います。委託管理は、管理会社に任せておけば心配ないという印象が強いと思いますが、10年、20年先、人の住んでいない部屋があちこちにできても、同じように管理し続けられるかというと、結構厳しい。やはり自分たちが関心を持って、自分たちのマンションの建物、設備のことを詳しく知りたいものです。
そのために普段、管理人さんがどういうことをしているのか、管理会社やメンテナンス会社が行っていることに関心を持つことが第一歩です。例えば、排水管洗浄の際、職人さんにあれこれ聞くと、うちの配管は鉄管だからもう何年も持たないのでは?というようなことが情報として分かってきます。また、エレベーターの点検について報告書を読んだり、話を聞いたりして常に気にしていれば、それじゃここを取り替えないといけないとか、それを何のために、いつやらないといけないかが見えてきます。そういう判断ができる情報を、皆さんで持っておくということが必要なのです。 ●建物部位と施設、設備ごとに要点を覚えよう 日常の点検等で建物や設備の状況を見ておいて、不具合が起きたときにあわてないようにすることが必要です。
建物や設備を把握するため、まず部位を整理しましょう。建物は「住棟」「施設、外構」「建築設備」に分けられます。
「住棟」は建物のうち人の住む部分で、(1)屋上・塔屋、(2)外壁、(3)バルコニー、(4)共用廊下・階段、(5)屋外鉄骨階段など。
「施設、外構」は、(1)管理事務所、(2)集会室、(3)エレベーター機械室、(4)電気室、(5)受水槽ポンプ室、(6)高架水槽、(7)ごみ置き場・ロータリードラム、(8)駐車施設、(9)駐輪施設、(10)植栽外構施設など。それぞれ使い方や建物の構造、入っている機械などに違いがあります。
「建築設備」は、(1)給水設備、(2)排水・通気設備、(3)換気・空調設備、(4)ガス設備、(5)電気設備、(6)消防設備などをいいます。
こうした部位をどう維持していくかには、それぞれに異なるチェックポイントがあります。その設備がどんな役割を果たしているか、どんな構造になっているか、正常な状態はどのようで、過去、どこに手を加えたかなどを把握し、できれば実際の修繕にも立ち会って、情報をつかんでおくことが大切です。 ●過去の定期報告書を見比べてみよう 特殊建築物の定期報告はご存知の方が大半だと思いますが、3年に1度実施される制度です。このとき、前回の定期報告と今回の定期報告を見比べてみてください。あるいは、過去の記録が残っていれば、それ以前のものと見比べていただいたら、今回の定期点検の報告書は相当いろいろなところで変わっているというのが分かります。当然、指摘されている事項も少なからずあるはずで、それらが今後、修繕していくべき項目ということになります。 ●長期修繕計画は日々の修理の積み重ね 最後に長期修繕計画のことを話します。
築何十年後にもわたる計画を立てるところから始めると、不安になる材料が多いと思いますが、結論を言えば、一般のマンションなら戸あたり月に1万2千円から1万5千円くらいの積立金を貯めておけば、築30年以上経ってきてもまかなうことができるのではないかと思います。
日々の修繕計画と大規模修繕計画がすべてひとつにつながって長期修繕計画にたどりつきます。たゆみなく、問題をひとつひとつ解決しながら修繕していくというのが管理組合の姿勢であって、それを続けていけば資産価値も維持できて、美しく老いていけるマンションになるだろうと思います。是非そういうマンションを目指していただきたいと思います。
こうした状況下で、皆さんはマンションをどう管理していかなければならないのでしょうか。建物が古くなることは避けられないけれど、管理組合がきっちりと管理して適切な修繕を適時に行い、そこにコミュニティの力が備われば、建物は美しく老いていきます。そうしてマンションとしての本来の価値を維持させていくためにはどうしたらいいのか。建物のハード部門、適時適切な修繕について話をさせていただきます。 ●自分たちのマンションは自分たちで管理を マンション管理には自主管理と委託管理があります。自主管理の場合は、当然自分たちでやらないといけないので、理事や理事経験者の方々は一通りのことは理解されていると思います。委託管理は、管理会社に任せておけば心配ないという印象が強いと思いますが、10年、20年先、人の住んでいない部屋があちこちにできても、同じように管理し続けられるかというと、結構厳しい。やはり自分たちが関心を持って、自分たちのマンションの建物、設備のことを詳しく知りたいものです。
そのために普段、管理人さんがどういうことをしているのか、管理会社やメンテナンス会社が行っていることに関心を持つことが第一歩です。例えば、排水管洗浄の際、職人さんにあれこれ聞くと、うちの配管は鉄管だからもう何年も持たないのでは?というようなことが情報として分かってきます。また、エレベーターの点検について報告書を読んだり、話を聞いたりして常に気にしていれば、それじゃここを取り替えないといけないとか、それを何のために、いつやらないといけないかが見えてきます。そういう判断ができる情報を、皆さんで持っておくということが必要なのです。 ●建物部位と施設、設備ごとに要点を覚えよう 日常の点検等で建物や設備の状況を見ておいて、不具合が起きたときにあわてないようにすることが必要です。
建物や設備を把握するため、まず部位を整理しましょう。建物は「住棟」「施設、外構」「建築設備」に分けられます。
「住棟」は建物のうち人の住む部分で、(1)屋上・塔屋、(2)外壁、(3)バルコニー、(4)共用廊下・階段、(5)屋外鉄骨階段など。
「施設、外構」は、(1)管理事務所、(2)集会室、(3)エレベーター機械室、(4)電気室、(5)受水槽ポンプ室、(6)高架水槽、(7)ごみ置き場・ロータリードラム、(8)駐車施設、(9)駐輪施設、(10)植栽外構施設など。それぞれ使い方や建物の構造、入っている機械などに違いがあります。
「建築設備」は、(1)給水設備、(2)排水・通気設備、(3)換気・空調設備、(4)ガス設備、(5)電気設備、(6)消防設備などをいいます。
こうした部位をどう維持していくかには、それぞれに異なるチェックポイントがあります。その設備がどんな役割を果たしているか、どんな構造になっているか、正常な状態はどのようで、過去、どこに手を加えたかなどを把握し、できれば実際の修繕にも立ち会って、情報をつかんでおくことが大切です。 ●過去の定期報告書を見比べてみよう 特殊建築物の定期報告はご存知の方が大半だと思いますが、3年に1度実施される制度です。このとき、前回の定期報告と今回の定期報告を見比べてみてください。あるいは、過去の記録が残っていれば、それ以前のものと見比べていただいたら、今回の定期点検の報告書は相当いろいろなところで変わっているというのが分かります。当然、指摘されている事項も少なからずあるはずで、それらが今後、修繕していくべき項目ということになります。 ●長期修繕計画は日々の修理の積み重ね 最後に長期修繕計画のことを話します。
築何十年後にもわたる計画を立てるところから始めると、不安になる材料が多いと思いますが、結論を言えば、一般のマンションなら戸あたり月に1万2千円から1万5千円くらいの積立金を貯めておけば、築30年以上経ってきてもまかなうことができるのではないかと思います。
日々の修繕計画と大規模修繕計画がすべてひとつにつながって長期修繕計画にたどりつきます。たゆみなく、問題をひとつひとつ解決しながら修繕していくというのが管理組合の姿勢であって、それを続けていけば資産価値も維持できて、美しく老いていけるマンションになるだろうと思います。是非そういうマンションを目指していただきたいと思います。
7月11日(日) 第1日目-1
講座
規約の活用とコミュニティ力で円滑な管理組合運営を
ルールは大事だけれど、対立を起こさない。
人間的な温かさをベースに見直してほしい。
(講師)
財団法人 マンション管理センター総合研究所 主席研究員
廣田 信子(ひろた のぶこ)
●状況に合わせ規約の改正を
マンション住民が豊かな集住生活を送るために何が必要か、という観点で管理規約の意味を問い直し、温かいつながりがあるコミュニティを育てること。それが、円滑な合意形成、管理組合運営につながります。
マンションの規約は、管理組合が独自で作ればqいいのですが、国土交通省が標準管理規約をモデルとして公表しています。平成16年の改正では、建て替えに関する規定などが入り、管理組合の業務に、竣工図書の管理や修繕履歴情報の整理、コミュニティの形成などが加わりました。改正された標準管理規約を参考に、それぞれのマンションで必要箇所の見直しをして、管理規約を改正することが必要だと思います。 ●標準管理規約活用で留意したいこと 標準管理規約を参考にする際、いくつか注意することがあります。
まず見直しの時期ですが、法令等の改正があった場合や居住者の構成等の変化があった場合が適切でしょう。一度も見直しをしていない管理組合もありますので、新しく役員になられた方は、そのマンションの管理規約がいつ改正されたかも調べておいたほうがいいかもしれません。
次に法的に認められる範囲の規約であるかどうか。区分所有法では規約を定める範囲は建物またはその敷地、もしくは付属施設の「管理」か「使用」のいずれかに該当する事項となっています。例えば自分の部屋を誰かに売ったり貸したりするときに、こういう人はダメと規約に定めても、裁判になった場合は法的拘束力を発生させることは難しいでしょう。しかし、暴力団排除に関する規約などがあっても良いと、個人的には思います。ほかにも区分所有法において必ず守らなければならない強行規定に反していないか。あるいは地権者にとても有利な規約の設定になっていないかなどに留意する必要があります。 ●管理規約見直しのヒント (1)役員資格(第35条2項)
理事および監事は、マンションに居住する組合員のうちから選任する、というのが標準管理規約の定めです。しかし、マンションによっては配偶者の方や賃借人の方にも協力してもらわないと運営が難しいこともあります。これからは高齢化の問題もあり、外に住む息子さんや娘さんにもマンションの管理組合の運営にかかわってもらうということも、考える必要があると思います。 (2)修繕等の履歴情報の整理及び管理等 (第32条6号)
経年が進むほど、修繕の履歴を把握しておくことは、重要になってきます。管理組合の業務とされており、国の事業である「マンションみらいネット」を利用して、管理組合の運営状況や修繕履歴等を電子化して安全に預けておくこともできます。 (3)地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(第32条15号)
この規定は、日常管理を円滑にするのも、大規模修繕工事の合意形成をするのも、人間関係がうまくいっていないとできないということで、標準管理規約に規定されています。お祭りの費用や、近隣の集まりにいくときの会費など、必要な費用を管理費から支出することができるようになりました。自治会などでやっていなければ、管理組合で取り組んでみましょう。 ●より進化した管理規約に 管理規約は自分たちで工夫していただいて結構ですが、法律的な文言の齟齬(そご)がないように専門家のチェックが必要です。規約を口語体の分かりやすい文章にしたり、できたばかりのマンションなので、建て替えの章を作って、それに関する規定は全部そこに入れたという管理組合もあります。 ●人間関係の中で問題解決 規約を細かく見直そうとしていたある管理組合では、「どういうペットが飼育可能か」というときに、犬の種類によって体 長を細かく規定しようとしていた時に気がつきました。結局、「周りの迷惑にならないようにして、何かあったら話し合って解決する」としたといいます。問題が起こったらまず、自分で周りの了解を得る。それがだめだったら、コミュニティの中で解決策を見出していく。管理組合オンリーではなく、自治会を含めた人間関係の中でいろいろな問題を解決されています。こういうやり方もあるという事例です。 ●江戸の集住の知恵 江戸時代には、「お互い様」「ちょっと見て見ぬふり」など、集住の知恵がありました。ルールは必要だけれど、ほどほど の良い加減が大事なのです。「あの人が言うなら」といった人間力が、これからのコミュニティには必要になってくるでしょう。規約は大切ですが、運用には知恵を絞ってください。 ●合意形成の鍵を握るコミュニティ マンション住民がお互いを尊重し、豊かな集住生活を送るために何が必要かという観点で、管理規約の意味を問い直し、豊かな知恵でルールを使いこなして、個人が尊重されながら、その根本には安心で暖かいつながりがあるコミュニティを育てましょう。それが、円滑な合意形成、管理組合運営につながります
マンションの規約は、管理組合が独自で作ればqいいのですが、国土交通省が標準管理規約をモデルとして公表しています。平成16年の改正では、建て替えに関する規定などが入り、管理組合の業務に、竣工図書の管理や修繕履歴情報の整理、コミュニティの形成などが加わりました。改正された標準管理規約を参考に、それぞれのマンションで必要箇所の見直しをして、管理規約を改正することが必要だと思います。 ●標準管理規約活用で留意したいこと 標準管理規約を参考にする際、いくつか注意することがあります。
まず見直しの時期ですが、法令等の改正があった場合や居住者の構成等の変化があった場合が適切でしょう。一度も見直しをしていない管理組合もありますので、新しく役員になられた方は、そのマンションの管理規約がいつ改正されたかも調べておいたほうがいいかもしれません。
次に法的に認められる範囲の規約であるかどうか。区分所有法では規約を定める範囲は建物またはその敷地、もしくは付属施設の「管理」か「使用」のいずれかに該当する事項となっています。例えば自分の部屋を誰かに売ったり貸したりするときに、こういう人はダメと規約に定めても、裁判になった場合は法的拘束力を発生させることは難しいでしょう。しかし、暴力団排除に関する規約などがあっても良いと、個人的には思います。ほかにも区分所有法において必ず守らなければならない強行規定に反していないか。あるいは地権者にとても有利な規約の設定になっていないかなどに留意する必要があります。 ●管理規約見直しのヒント (1)役員資格(第35条2項)
理事および監事は、マンションに居住する組合員のうちから選任する、というのが標準管理規約の定めです。しかし、マンションによっては配偶者の方や賃借人の方にも協力してもらわないと運営が難しいこともあります。これからは高齢化の問題もあり、外に住む息子さんや娘さんにもマンションの管理組合の運営にかかわってもらうということも、考える必要があると思います。 (2)修繕等の履歴情報の整理及び管理等 (第32条6号)
経年が進むほど、修繕の履歴を把握しておくことは、重要になってきます。管理組合の業務とされており、国の事業である「マンションみらいネット」を利用して、管理組合の運営状況や修繕履歴等を電子化して安全に預けておくこともできます。 (3)地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(第32条15号)
この規定は、日常管理を円滑にするのも、大規模修繕工事の合意形成をするのも、人間関係がうまくいっていないとできないということで、標準管理規約に規定されています。お祭りの費用や、近隣の集まりにいくときの会費など、必要な費用を管理費から支出することができるようになりました。自治会などでやっていなければ、管理組合で取り組んでみましょう。 ●より進化した管理規約に 管理規約は自分たちで工夫していただいて結構ですが、法律的な文言の齟齬(そご)がないように専門家のチェックが必要です。規約を口語体の分かりやすい文章にしたり、できたばかりのマンションなので、建て替えの章を作って、それに関する規定は全部そこに入れたという管理組合もあります。 ●人間関係の中で問題解決 規約を細かく見直そうとしていたある管理組合では、「どういうペットが飼育可能か」というときに、犬の種類によって体 長を細かく規定しようとしていた時に気がつきました。結局、「周りの迷惑にならないようにして、何かあったら話し合って解決する」としたといいます。問題が起こったらまず、自分で周りの了解を得る。それがだめだったら、コミュニティの中で解決策を見出していく。管理組合オンリーではなく、自治会を含めた人間関係の中でいろいろな問題を解決されています。こういうやり方もあるという事例です。 ●江戸の集住の知恵 江戸時代には、「お互い様」「ちょっと見て見ぬふり」など、集住の知恵がありました。ルールは必要だけれど、ほどほど の良い加減が大事なのです。「あの人が言うなら」といった人間力が、これからのコミュニティには必要になってくるでしょう。規約は大切ですが、運用には知恵を絞ってください。 ●合意形成の鍵を握るコミュニティ マンション住民がお互いを尊重し、豊かな集住生活を送るために何が必要かという観点で、管理規約の意味を問い直し、豊かな知恵でルールを使いこなして、個人が尊重されながら、その根本には安心で暖かいつながりがあるコミュニティを育てましょう。それが、円滑な合意形成、管理組合運営につながります
7月11日(日) 第1日目-2
講座
管理会社との契約について
多くの方がマンション管理に興味を持つことで
管理組合と管理会社の関係は向上します。
(講師)
社団法人高層住宅管理業協会 関西支部
田坂 昭博(たさか あきひろ)
●管理組合と管理会社はパートナー
マンション管理に対する関心度は管理組合によって格差があり、管理会社にお任せで、30〜40年経っても大規模修繕もできておらず、廃屋へ一目散というような状況も見受けられます。できるだけ多くの管理組合の方が管理業務に興味を持ち、いい意味で管理会社を厳しく追及されてもいいのではないでしょうか。
お互い、パートナーなのですから。
●既存マンションの管理業務の委託
既存マンションの管理業務の委託において、要求水準をどうするのかは、組合によって千差万別です。どの仕事を管理会社に任すのかということをきちっと決めた上で、管理会社に要求していくということが大事です。
管理費等滞納に対する督促については、滞納してから何ヵ月で督促するのかなどを十分検討して下さい。所有者の所在地が場合によっては海外ということもあり、管理業者が自宅を訪問して督促をするのはマンション内に限るというケースが多いです。
管理会社の選定については、不具合があったときなどに、どこまでスムーズに来てくれるかが重要です。緊急対応の基地がどこにあって、どういう体制をとっているのかなどを聞くことが重要です。
また、情報の開示と説明責任。これが結構重要です。管理会社を変えるにあたって、理事会が勝手にやった、理事長が勝手にやった、そんな話は聞いていない、ということで管理組合が真っ二つに割れて、泥仕合が始まったということは結構あります。管理組合から住民に、徹底して説明してほしいとお願いしています。 ●管理組合財産の分別管理 一部の管理会社による横領事件などにより、管理組合の財産が毀損される事態も生じており、そういった現状を踏まえ、 今年の5月1日に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が施行されました。今回、改正された省令のなかでも大きなものとして「財産の分別管理」があります。管理会社に委託した出納の毀損リスクを低減するためのものです。 (1)管理会社の出納業務は、収納口座※1に保管された毎月の管理費等・修繕積 立金から、翌月末までに管理費等残額・修繕積立金を保管口座※2に移換することが原則となります。収納口座に名義の規定はなく、管理会社でも管理組合でもかまいませんが、保管口座と収納・保管口座の2つについては、管理組合が管理するので管理組合名義でなくてはなりません。 (2)管理組合名義の保管口座の印鑑やキャッシュカード等を管理会社が保管することが禁止されました。 (3)管理会社は、毎月収支状況報告書等を作成し、翌月末日までに管理組合に交付しなければなりません。 (4)管理会社は、収納口座に入金された管理費等・修繕積立金については、不慮の事故等に備えて1カ月分相当額以上の保証措置を講じることになりました。 分別管理方法の種類は次の3つ。 イ)収納口座から、管理事務に要した費用、経費を引いた残額と修繕積立金を、保管口座に移し換える方法 ロ)修繕積立金が直接、保管口座に入る方法 ハ)修繕積立金等金銭を収納・保管口座に預け入れし、管理する方法 どう違うかというと、保証措置について、イの方法であれば修繕積立金等金銭ということで、積立金、管理費、全部含めた金額の1カ月分相当額となり、ロの方法は、積立金は直接、管理組合口座に入るので保証対象からはずれ、1カ月分の管理費用だけの保証額となります。ハの方法では保証措置は不要となります。 ※1
マンションの区分所有者等から徴収された修繕積立金と管理費用を預け入れし、一時的に預貯金として管理するための口座。 ※2
預貯金として管理するための口座。 ●よりよい管理のために こうした分別管理をはじめとして、今回の改正は管理会社に厳しいものです。しかし、管理組合にも同じように、お金や通帳の管理をどうしたらいいか、印鑑を同一人物では持たない、といったことをよく考えていただかないといけません。
実際問題として管理業務をすべて組合が自力で行うことは不可能に近く、管理会社は不可欠な存在となっています。その意味でどの会社を選ぶかは、重要な課題です。私どものホームページには、数社の管理会社から見積りを取るとき、公平な比較検討ができるよう協会でまとめた標準書「マンション管理業務共通発注仕様書について」をアップしています。
また、国交省近畿地方整備局のホームページに「マンション管理に係るQ&A」があります。私ども高層住宅管理業協会の関西支部との1年にわたる意見交換会の結果を、行政として分かりやすくQ&Aにしてまとめたものです。これらを、マンション管理会社とよい関係を築き、よりよいマンション管理を行うために、ぜひ、活用していただきたいと思います。
管理費等滞納に対する督促については、滞納してから何ヵ月で督促するのかなどを十分検討して下さい。所有者の所在地が場合によっては海外ということもあり、管理業者が自宅を訪問して督促をするのはマンション内に限るというケースが多いです。
管理会社の選定については、不具合があったときなどに、どこまでスムーズに来てくれるかが重要です。緊急対応の基地がどこにあって、どういう体制をとっているのかなどを聞くことが重要です。
また、情報の開示と説明責任。これが結構重要です。管理会社を変えるにあたって、理事会が勝手にやった、理事長が勝手にやった、そんな話は聞いていない、ということで管理組合が真っ二つに割れて、泥仕合が始まったということは結構あります。管理組合から住民に、徹底して説明してほしいとお願いしています。 ●管理組合財産の分別管理 一部の管理会社による横領事件などにより、管理組合の財産が毀損される事態も生じており、そういった現状を踏まえ、 今年の5月1日に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が施行されました。今回、改正された省令のなかでも大きなものとして「財産の分別管理」があります。管理会社に委託した出納の毀損リスクを低減するためのものです。 (1)管理会社の出納業務は、収納口座※1に保管された毎月の管理費等・修繕積 立金から、翌月末までに管理費等残額・修繕積立金を保管口座※2に移換することが原則となります。収納口座に名義の規定はなく、管理会社でも管理組合でもかまいませんが、保管口座と収納・保管口座の2つについては、管理組合が管理するので管理組合名義でなくてはなりません。 (2)管理組合名義の保管口座の印鑑やキャッシュカード等を管理会社が保管することが禁止されました。 (3)管理会社は、毎月収支状況報告書等を作成し、翌月末日までに管理組合に交付しなければなりません。 (4)管理会社は、収納口座に入金された管理費等・修繕積立金については、不慮の事故等に備えて1カ月分相当額以上の保証措置を講じることになりました。 分別管理方法の種類は次の3つ。 イ)収納口座から、管理事務に要した費用、経費を引いた残額と修繕積立金を、保管口座に移し換える方法 ロ)修繕積立金が直接、保管口座に入る方法 ハ)修繕積立金等金銭を収納・保管口座に預け入れし、管理する方法 どう違うかというと、保証措置について、イの方法であれば修繕積立金等金銭ということで、積立金、管理費、全部含めた金額の1カ月分相当額となり、ロの方法は、積立金は直接、管理組合口座に入るので保証対象からはずれ、1カ月分の管理費用だけの保証額となります。ハの方法では保証措置は不要となります。 ※1
マンションの区分所有者等から徴収された修繕積立金と管理費用を預け入れし、一時的に預貯金として管理するための口座。 ※2
預貯金として管理するための口座。 ●よりよい管理のために こうした分別管理をはじめとして、今回の改正は管理会社に厳しいものです。しかし、管理組合にも同じように、お金や通帳の管理をどうしたらいいか、印鑑を同一人物では持たない、といったことをよく考えていただかないといけません。
実際問題として管理業務をすべて組合が自力で行うことは不可能に近く、管理会社は不可欠な存在となっています。その意味でどの会社を選ぶかは、重要な課題です。私どものホームページには、数社の管理会社から見積りを取るとき、公平な比較検討ができるよう協会でまとめた標準書「マンション管理業務共通発注仕様書について」をアップしています。
また、国交省近畿地方整備局のホームページに「マンション管理に係るQ&A」があります。私ども高層住宅管理業協会の関西支部との1年にわたる意見交換会の結果を、行政として分かりやすくQ&Aにしてまとめたものです。これらを、マンション管理会社とよい関係を築き、よりよいマンション管理を行うために、ぜひ、活用していただきたいと思います。
7月24日(土) 第1日目-1
講座
マンション設備のトラブルと解決方法
設備を理解し予防に心がけておくことで
トラブル発生時もすみやかな対処ができます。
(講師)
大阪ガスコミュニティライフ株式会社 エンジニアリング部
大澤 春仁(おおさわ はるひと)
山田 正昭(やまだ まさあき)
私たちの日頃の業務は、主に技術面において管理組合をサポートすることです。今回はマンション設備のトラブルと解決方法について説明します。
●受水槽のトラブル
マンションの1階や屋上に設置されている受水槽は、水道局が供給する水を受けて貯水し、居住者に供給する大事な施設です。
あるマンションでは、タンクの底にあるパネルの取り付け部分から漏水がありました。当初は、メーカーによるボルトの締め直しで対処したものの、今後のことを考えて、ジョイント部分をガラス繊維強化プラスチックでコーティングしました。普通のタンクなら15年はもちますし、このような処理を施せば、それからさらに10年はもちます。
別のマンションでは、タンクの中を見ると、パネルを固定するための金具に錆が発生していました。
受水槽は、年に1回の清掃が義務付けられているので、その時に錆をチェックし、錆取りや補修をしていただけたらと思
います。
●漏水のトラブル
漏水の場合は、どこから漏れているのか、まず場所の特定が必要です。真下に漏れていれば非常に分かりやすいのですが、水がコンクリートの上で横に走り、思わぬところから漏れてきている場合もあります。私たちは、水圧試験をして、その場所を突き止めます。
あるマンションでは、押入れに水漏れがあったのに、実際の漏水箇所は上階の台所でした。台所からの水が居室の廊下を通って、下の家の押入れで漏れていたのです。
また、別の例では、トイレの天井から水漏れがあり、上階の風呂場などで水張り試験を行いましたが異常はありません。結局、給水管からの水漏れで、給水管の改修を行いました。
漏水で調査に行きますと4割くらいの方が、「私は何もしていない」とおっしゃいます。「過失ではない」という意味だと思いますが、原因を調べて階下のお宅に報告に行く際に、「一緒にご挨拶に行っていただけませんか」と声をかけるようにしています。たとえ過失でなくても、居室の上下関係の、気持ちの問題も大切だと思います。
また、管理人さんには漏水時の緊急対応について、「取り扱いミスか配管のトラブルかを確認し、住戸部分の漏水は住戸の給水バルブを閉める」よう、お願いしています。 ●排水配管の詰まり どこの配管が詰まったかによって対応は変わるため、それぞれ適切な予防や対処が必要です。 台所の排水管は、食用油を流したものが固形化して詰まる場合があります。油は、極力流さないようにしてください。配管内の錆びた鉄片が剥離して固まり、詰まることもあり、定期的な清掃が必要です。
以前、大雨が降った後に「駐車場で車がタイヤの半分まで水に浸っている」という通報がありました。車路と立体駐車場の間が配管でつながっていて、そこにプラスチックごみが詰まっていました。車路の排水ポンプは良好に作動していましたが、その間の配管がうまく清掃できていなかったのです。
また、木の根が配管の隙間から入りこんで成長し、管を詰まらせることも最近、多発しています。 ●電気関係のトラブル あるマンションでは、外灯の中の配線が劣化し、漏電したため改修しました。この現場では、改修工事をいろいろされています。しかし、さまざまな電気屋さんが次から次へと来ているため、どの配線がどこへ行っているのか分かりにくくなっていました。
また、あるところではアンテナに不具合があり、近くの電気屋さんに頼んだそうですが、アンテナは取り替えたけれどテレビが映らなくなったということでした。システム全体をちゃんと調整してくれる業者を選んでおかないと、トラブルになりますので注意してください。改修業者は、信用できる数社に絞っておくことも必要です。 ●費用の負担先 漏水などのトラブルは、箇所によって費用の負担先が変わります。住戸の中なら個人の支払い、共用部の場合は管理組合の費用になります。そこを明確にするために、図面を色分けし、「この色の部分は共用部」などと区分しているマンションもあります。
ほかにも、火災報知機が誤報を発した(消防設備)、オートロックの扉が開いたまま(防犯設備)、いたずらで非常ボタンが押された(エレベーター設備)など、マンションでは多種多様なトラブルが起こっています。
これらに効率よく正確に対応するために必要なのは、設備のカテゴリーに限らず、まずシステムを理解していただくことと言えるでしょう。
また、別の例では、トイレの天井から水漏れがあり、上階の風呂場などで水張り試験を行いましたが異常はありません。結局、給水管からの水漏れで、給水管の改修を行いました。
漏水で調査に行きますと4割くらいの方が、「私は何もしていない」とおっしゃいます。「過失ではない」という意味だと思いますが、原因を調べて階下のお宅に報告に行く際に、「一緒にご挨拶に行っていただけませんか」と声をかけるようにしています。たとえ過失でなくても、居室の上下関係の、気持ちの問題も大切だと思います。
また、管理人さんには漏水時の緊急対応について、「取り扱いミスか配管のトラブルかを確認し、住戸部分の漏水は住戸の給水バルブを閉める」よう、お願いしています。 ●排水配管の詰まり どこの配管が詰まったかによって対応は変わるため、それぞれ適切な予防や対処が必要です。 台所の排水管は、食用油を流したものが固形化して詰まる場合があります。油は、極力流さないようにしてください。配管内の錆びた鉄片が剥離して固まり、詰まることもあり、定期的な清掃が必要です。
以前、大雨が降った後に「駐車場で車がタイヤの半分まで水に浸っている」という通報がありました。車路と立体駐車場の間が配管でつながっていて、そこにプラスチックごみが詰まっていました。車路の排水ポンプは良好に作動していましたが、その間の配管がうまく清掃できていなかったのです。
また、木の根が配管の隙間から入りこんで成長し、管を詰まらせることも最近、多発しています。 ●電気関係のトラブル あるマンションでは、外灯の中の配線が劣化し、漏電したため改修しました。この現場では、改修工事をいろいろされています。しかし、さまざまな電気屋さんが次から次へと来ているため、どの配線がどこへ行っているのか分かりにくくなっていました。
また、あるところではアンテナに不具合があり、近くの電気屋さんに頼んだそうですが、アンテナは取り替えたけれどテレビが映らなくなったということでした。システム全体をちゃんと調整してくれる業者を選んでおかないと、トラブルになりますので注意してください。改修業者は、信用できる数社に絞っておくことも必要です。 ●費用の負担先 漏水などのトラブルは、箇所によって費用の負担先が変わります。住戸の中なら個人の支払い、共用部の場合は管理組合の費用になります。そこを明確にするために、図面を色分けし、「この色の部分は共用部」などと区分しているマンションもあります。
ほかにも、火災報知機が誤報を発した(消防設備)、オートロックの扉が開いたまま(防犯設備)、いたずらで非常ボタンが押された(エレベーター設備)など、マンションでは多種多様なトラブルが起こっています。
これらに効率よく正確に対応するために必要なのは、設備のカテゴリーに限らず、まずシステムを理解していただくことと言えるでしょう。
7月24日(土) 第2日目-2
講座
共同受信施設の地デジ対応等について
住民へのフォローを徹底し、
地上デジタル放送時代を迎えよう。
(講師)
総務省 テレビ受信者支援センター
衣笠 泰博(きぬがさ やすひろ)
●電波障害対策共聴施設のデジタル化対応
来年7月24日の地上デジタル放送完全移行にあたり、マンションの障害対策共同受信施設については、管理組合や周辺住民で改修工事など、今後の共同受信施設の扱いを検討するようお願いしています。
共同受信施設は、大阪では、アナログもデジタルも生駒山から電波が飛んできます。マンションの影響により電波障害が発生します。建物に電波が反射して、跳ね返った電波と飛んでくる電波が二重になる地域を反射障害地域、ビル陰になる部分を遮へい障害地域と呼びます。この電波障害について法律はありません、建設時にゼネコンと近隣住民の話し合いで対策を決め、自治体から建設許可を取るのです。
マンションが原因で電波障害が起きる場合、マンション屋上からケーブルを張って障害地域もテレビが見られるようにするのが通常です。そのため地デジ対応についても、当事者相互の協議による自治的処理が原則です。 ●基本的考え方 地上デジタル放送は、アナログ放送と電波の特性が異なるため、反射障害の問題は解消されます。また、遮へい障害のエリアも小さくなり、1/10ほどしか受信障害は残らないといわれており、受信障害が大幅に改善されます。
ポイントは二つあり、受信障害が解消される世帯は障害地域ではなくなるため、個々にアンテナを建ててもらって下さい。管理組合として対策は不要ということが一つめ。一方、受信障害が残る地域は、マンションの管理組合と当時者で協議する必要があるということが二つめ。共同受信施設の改修か、CATVの利用か、協議の上での決定が必要です。 ●電波障害対策共聴施設のデジタル化改修 改修する場合は施設の機器の調整が必要となります。2011年7月アナログ放送が終了するとVHFアンテナはいらなくなりますが、UHFアンテナをきっちり立ててください。障害対策施設はいろいろなシステムがありますが、ブースターの見直しが必要になるかもしれません。こうした共聴施設改修に係る費用の支援もおこなっており、9月から追加の申請受付が始まる予 定です。
受信障害がなくなる地域はいままでのケーブルがいらなくなり、不要な施設を撤去する責任があります。外さなければ関電に共架料を払い続けることになります。 ●22年度のデジサポ活動の展開 デジサポが活動を行っている支援や指導について説明します。デジタル化の対応では、まず受信障害対策共聴施設の状況確認をお願いしています。デジタル放送への移行により、電波の映る地域、映らない地域を線引きするための個別調査が大切。一部でも電波障害が残る場合はマンションの理事会等で対応方針を決め、映る世帯にも個別対応のお願いを周知する必要があります。
1.デジタル個別受信可否調査
昨年の7月から8月、電測車で受信状況の測定を行いました。アナログ放送の受信障害地域のデジタル放送の受信可否を調べて色分けしたデータを総務省のホームページで公開しておりますのでご覧ください。管理組合から詳しいデータを求められた場合、その共聴施設のデータをお渡しすることもできます。受信可否が不確実な場合は、個別の再調査も行います。
2.相談サポート
何も対策していないマンションや個人オーナーのマンションに対して相談サポートを行っています。管理組合の理事会等に出向いて説明することも可能です。また、個別受信の周知については公民館などで説明会を開催してきたほか、マンションの管理組合、管理会社を訪問。その中で簡易な受信状況の説明もやってきました。
【デジサポ・法律家相談に『法律家出張相談』追加】
我々の説明だけでは心配な部分については、法律家の出張相談も行っております。弁護士費用は我々が負担し、住民ともめているケースや、管理組合が苦情を聞いてくれないという住民からの相談も受け付けています。
3.共聴施設スーパー装置による告知
個別対応をお願いする世帯に対しては周知のチラシを配布していただきますが、周知が不十分な場合は、共聴施設スーパー装置を貸し出しします。「地上デジタル放送移行によって電波障害が無くなりますので、共聴施設を撤去します、住民の皆様ご自身で受信アンテナを・・」という意味の文言を共聴施設を利用している世帯のみに電波で流す装置で、個々にアンテナを建てるか、CATVに入ってくださいといったお願いを表示します。
4.地デジ専用簡易アンテナ利用ガイド
ベランダのアンテナでデジタル放送が映るかどうかを確かめていただくため、簡易アンテナを貸し出ししています。アンテナの交換というのは、機材よりも工事費が高いのですが、ベランダ設置型であれば自分で取り付けられることが利点です。
5.デジサポが担当する地デジ関係の相談窓口
デジタル化に移行するための対応窓口を設けており、助成金と紛争処理について大阪は同じ窓口です。
また、我々が回り切れない地域や、情報の遅かった方々に十分なサポートをするためにも、電気商業組合に110番窓口をつくっていただき、高齢者世帯などへの個別訪問をお願いしています。日本CATV連盟にも技術的な場面を含めたサポートをお願いしています。
地上デジタル放送への移行という改修費用のかかることをなぜ行うのかと、疑問を持たれるかもしれません。しかし、未来を見据えるとデジタル化は必要なことであり、携帯電話端末を使った救急医療情報の発信など可能性が広がります。対応をよろしくお願いいたします。
でんわ急げ! デジサポへ
◆地デジコールセンター◆
TEL.0570-07-0101
◆デジサポ大阪◆
TEL.06-7637-1010
◆助成金・法律家相談の窓口◆
TEL.06-6944-8879
共同受信施設は、大阪では、アナログもデジタルも生駒山から電波が飛んできます。マンションの影響により電波障害が発生します。建物に電波が反射して、跳ね返った電波と飛んでくる電波が二重になる地域を反射障害地域、ビル陰になる部分を遮へい障害地域と呼びます。この電波障害について法律はありません、建設時にゼネコンと近隣住民の話し合いで対策を決め、自治体から建設許可を取るのです。
マンションが原因で電波障害が起きる場合、マンション屋上からケーブルを張って障害地域もテレビが見られるようにするのが通常です。そのため地デジ対応についても、当事者相互の協議による自治的処理が原則です。 ●基本的考え方 地上デジタル放送は、アナログ放送と電波の特性が異なるため、反射障害の問題は解消されます。また、遮へい障害のエリアも小さくなり、1/10ほどしか受信障害は残らないといわれており、受信障害が大幅に改善されます。
ポイントは二つあり、受信障害が解消される世帯は障害地域ではなくなるため、個々にアンテナを建ててもらって下さい。管理組合として対策は不要ということが一つめ。一方、受信障害が残る地域は、マンションの管理組合と当時者で協議する必要があるということが二つめ。共同受信施設の改修か、CATVの利用か、協議の上での決定が必要です。 ●電波障害対策共聴施設のデジタル化改修 改修する場合は施設の機器の調整が必要となります。2011年7月アナログ放送が終了するとVHFアンテナはいらなくなりますが、UHFアンテナをきっちり立ててください。障害対策施設はいろいろなシステムがありますが、ブースターの見直しが必要になるかもしれません。こうした共聴施設改修に係る費用の支援もおこなっており、9月から追加の申請受付が始まる予 定です。
受信障害がなくなる地域はいままでのケーブルがいらなくなり、不要な施設を撤去する責任があります。外さなければ関電に共架料を払い続けることになります。 ●22年度のデジサポ活動の展開 デジサポが活動を行っている支援や指導について説明します。デジタル化の対応では、まず受信障害対策共聴施設の状況確認をお願いしています。デジタル放送への移行により、電波の映る地域、映らない地域を線引きするための個別調査が大切。一部でも電波障害が残る場合はマンションの理事会等で対応方針を決め、映る世帯にも個別対応のお願いを周知する必要があります。
1.デジタル個別受信可否調査
昨年の7月から8月、電測車で受信状況の測定を行いました。アナログ放送の受信障害地域のデジタル放送の受信可否を調べて色分けしたデータを総務省のホームページで公開しておりますのでご覧ください。管理組合から詳しいデータを求められた場合、その共聴施設のデータをお渡しすることもできます。受信可否が不確実な場合は、個別の再調査も行います。
2.相談サポート
何も対策していないマンションや個人オーナーのマンションに対して相談サポートを行っています。管理組合の理事会等に出向いて説明することも可能です。また、個別受信の周知については公民館などで説明会を開催してきたほか、マンションの管理組合、管理会社を訪問。その中で簡易な受信状況の説明もやってきました。
【デジサポ・法律家相談に『法律家出張相談』追加】
我々の説明だけでは心配な部分については、法律家の出張相談も行っております。弁護士費用は我々が負担し、住民ともめているケースや、管理組合が苦情を聞いてくれないという住民からの相談も受け付けています。
3.共聴施設スーパー装置による告知
個別対応をお願いする世帯に対しては周知のチラシを配布していただきますが、周知が不十分な場合は、共聴施設スーパー装置を貸し出しします。「地上デジタル放送移行によって電波障害が無くなりますので、共聴施設を撤去します、住民の皆様ご自身で受信アンテナを・・」という意味の文言を共聴施設を利用している世帯のみに電波で流す装置で、個々にアンテナを建てるか、CATVに入ってくださいといったお願いを表示します。
4.地デジ専用簡易アンテナ利用ガイド
ベランダのアンテナでデジタル放送が映るかどうかを確かめていただくため、簡易アンテナを貸し出ししています。アンテナの交換というのは、機材よりも工事費が高いのですが、ベランダ設置型であれば自分で取り付けられることが利点です。
5.デジサポが担当する地デジ関係の相談窓口
デジタル化に移行するための対応窓口を設けており、助成金と紛争処理について大阪は同じ窓口です。
また、我々が回り切れない地域や、情報の遅かった方々に十分なサポートをするためにも、電気商業組合に110番窓口をつくっていただき、高齢者世帯などへの個別訪問をお願いしています。日本CATV連盟にも技術的な場面を含めたサポートをお願いしています。
地上デジタル放送への移行という改修費用のかかることをなぜ行うのかと、疑問を持たれるかもしれません。しかし、未来を見据えるとデジタル化は必要なことであり、携帯電話端末を使った救急医療情報の発信など可能性が広がります。対応をよろしくお願いいたします。
でんわ急げ! デジサポへ
◆地デジコールセンター◆
TEL.0570-07-0101
◆デジサポ大阪◆
TEL.06-7637-1010
◆助成金・法律家相談の窓口◆
TEL.06-6944-8879