セミナー情報

平成18年度「連続セミナー」報告

マンション設備の維持管理について
築20年、30年を超えると、マンションの設備も老朽化し、様々な問題が発生します。より快適で安心な暮らしをおくるために、また大切な資産価値を維持していくためにも、設備の維持管理は大切です。そこで3回連続セミナーを開催し、多角的かつ具体的に維持管理の方法をご紹介しました。

第1回 7月2日
「マンションにおける給排水設備の基礎知識とリニューアル」

●築20年以上のマンションが抱える問題
 配管の劣化は、誤解を恐れずに言えば、起こるべくして起こります。今皆様がお住まいのマンションで、どういう配管が使われているか、市水引込管や、揚水管、共用たて管、専用部分等部位ごとにきっちり理解することがまず必要です。今、ここに出席されている方のマンションは、ほとんど築10年以上、それも20年を超えるところが多いので、おそらく配管の水漏れとか劣化が、すでに問題になっていたり、「これからどうしたらよいのか」先の展望が見えずに戸惑っている状況と思います。その状況を踏まえ、今日のお話にさせて頂きます。
 過去の分譲された経緯で、何年頃に建ったのか、民間分譲なのか、公的分譲なのか。あるいは建築形状や階数などで、使われている管の種類がだいぶ違って来ます。10年、20年、30年前と、遡れば遡るほど、その当時は最新の技術ですけれども、今となっては「なんでこんなことをしていたのか」ということがたくさんあります。

●給水管の種類と特徴
 まず給水管ですけど、最も多いのが水道用硬質塩化ビニールライニング鋼管。VLPと呼ばれる管です。中がビニールで、外が鉄という二重の管です。耐久性のある良い管ですが、ジョイント部分が錆びやすく、いま問題を起こしているのもこの管種です。次に、耐衝撃性塩化ビニル管。HIVPです。ビニル管は安っぽいイメージですが錆びないので、実は耐久性に非常にすぐれています。VLPとHIVPの2つの管が、約9割を占めています。2つのどちらかのマンションが多いので、一度、帰ってから、図面や今まで事故が起きた管を調べてみてください。
 あとは、使われているケースが少ないのですが、30年以上の前のところでは、メーターボックスの中に鉛管が使われているケースが時々あります。鉛管は、自由に曲がるから、メーターボックスの中のような狭いスペースでも配管がしやすく、当時はたくさん使われていました。でも今は、鉛管は使用が禁止されていて、基本的に取り替える必要があります。
 架橋ポリエチレン管とポリブデン管。両方ともプラスチックで、可とう性にすぐれ、自由に配管できます。従ってジョイント部分が非常に少なくて済む。ビニールパイプみたいに割れないし、非常に衝撃に強い。究極の管です。最近の新築マンションはほとんどこのどちらかの管が使われています。配管を今度取り替えるときは、これらの管をぜひおすすめします。
 鋳鉄管は、大阪市内で使われているケースは少ないが、自治体によっては引き込みは鋳鉄管でないと駄目というところもあるので、引き込みに限っては給水で鋳鉄管が使われていることもあります。

●排水管の種類と特徴
 次に排水管です。排水管も主流はビニール管です。VPとVUとがあります。VPは比較的肉厚のある配管で、VUはローコストにするために少し薄くしています。排水は水圧がかかりませんから、支持がきっちりしていれば、VPでもVUでもいいんですが、当然薄い方が割れやすいので、マンションでは一般的にVPを使います。
 ビニール管がなぜ割れるかというと、熱です。お風呂のお湯を流したり、台所で熱湯を流したりする。80度、90度のお湯が一気に流れてくるので、配管が伸び縮みします。それが10年、15年たってくると、ある日、突然、パチッとひびがはいり、じわじわと漏れることになります。基本的には錆びないので、事故が起きる確率は、20年過ぎて100件に、年に1件か2件以下という確率なので、25年たったから全戸取り替えようかというような必要性はないと思います。ビニール管が使われているから安っぽいマンションということではなくて、結果的にはいい選択、長持ちする、重大性の少ない配管です。
 耐火二層管は、ビニール管の外側に繊維モルタルの外管を被覆している火に強い材料です。本来の目的は耐火被覆なんですけど、遮音性もあります。配管用炭素鋼管(SGP)は、排水に用いると内面が錆びるため、耐久性に問題がある管です。SGPが使われているマンションは少なくないので注意が必要です。
 排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP)は、内面がビニールでライニングされた管です。水圧がかからないので、この小口面が多少錆びてきても、水は大量に漏れることは少なくあまり問題はありません。鋳鉄管(CIP)は、特に汚水管、トイレの裏にある管です。汚水は非常に酸もきついし錆びやすいので、昔から鋳鉄管を使っています。耐用年数は30年以上ですが、埋設排水管は20年もたないことが最近、実例としてわかりました。銅管は、耐食性や抗菌性に優れていますが、最近、銅管のジョイント部分(鋳鉄)から漏れるケースが最近よく出てきています。特殊コーティング管は、何社かメーカーがありますが、鋼状の非常に硬い鋼管の内面に、硬い樹脂をコーティングした管です。

●増圧給水方式に改修
 次に給排水設備のリニューアルについてです。最近はブースターポンプを取りつけ、受水槽高架水槽を設けずに直結増圧給水方式に取替えるケースが増えています。
 大阪市の基準で110戸までのマンションで施工できます。階数も15階程度までですから、この条件のマンションだったら、ブースターポンプ取り替えをぜひ検討してください。それ以上の戸数は水道局へ相談してみてください。
 ブースターポンプによる増圧給水方式の長所は、まず水の安全性が高いこと、省エネ、維持管理費の低減などです。さらに上階で水圧が低いのが解消されます。それと、受水槽ポンプ室の跡地が有効利用できます。建物の中に設置していたら、それがごそっとなくなりますから、集会場や倉庫に有効利用が可能です。外構に設置にしていたら駐車場にするとかもできます。

●給水管、排水管の更新と更生
 更新と更生。ともにわかりにくい業界用語ですが、更新は取り替えのことで、更生は内面ライニングのことです。
 給水管の場合の工事区分は非常に明快で、共用部分の工事をしようと思ったら、メーターまでの工事をすればいいし、専有部分の工事をしようと思ったらメーターから内側の工事をすればいい。管理組合としたら、専有部分の工事なんかほっておけ、という話が今まで主流でしたが、問題が起きるのは、専有部分が多いのが実情です。だから専有部分の改修も管理組合が主体的に取組むことが望まれます。一般的に共用部分は更新、専有部分は更生が多くなっています。
 排水管のライニングは難しい技術がいります。給水管のライニングは25年から30年ほどの実績がありますが、排水管のライニングは、ここ5、6年くらい。でもこれからは共用部分と専有部分の排水管の改修はライニングが主流になってくると思います。

「大阪市民間建築物吹付けアスベスト除去等補助制度」のご案内

●所有建物のアスベスト有無・飛散性をご存知ですか?
 アスベストを含む建材には、劣化や損傷により飛散するおそれのある吹付けアスベスト等と破損や切断のない限り飛散の恐れのないアスベスト成形品(ボード類)等に大別できます。建設時期や図面情報等からアスベスト含有の疑わしい吹付け材がある場合、専門機関での含有調査を行い、含有が判明したら、「除去」(当該建材を取り除く。場合によって要代替材)、「封じ込め」(特殊な薬剤を当該建材に散布し固める)、「囲い込み」(当該建材の周囲を囲い、飛散を防ぐ)の何れかの対策が必要です。

●今年度はマンションの定期報告実施年度です。
 地上3階建以上のもので1000m2または地上5階建以上のもので500m2をこえる大阪市内のマンションは、建築基準法12条に基づく定期報告を行っていただく必要がありますが、この報告事項にもアスベストの有無等が含まれています。

●法改正で増改築等時の対策が義務化:本市補助は期間限定
 建築基準法が改正され、吹付けアスベスト等がある建物には増改築・大規模改修等実施時にその対策を併せて実施するよう義務付けられます。
「大阪市民間建築物吹付けアスベスト除去等補助制度」(詳細は下欄「大阪市住宅局情報」参照)は、平成20年度までの時限制度。建物状況を把握され、必要に応じて本制度をご利用頂くなど、早期にご対応下さい。ご相談はお早めに、お気軽に。


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