セミナー情報

平成16年度「第10回分譲マンション管理セミナー&相談会」報告

第10回分譲マンション管理セミナー&相談会
快適なマンションライフのためには円滑な管理組合運営を行う必要があります。今回は、セミナーと個別相談会が開催されました。
セミナーの様子 セミナーでは、(社)日本建築家協会・メンテナンス部会の星川晃二郎元部会長に、マンションを良好に維持管理するための大規模修繕の進め方のポイントと、改修によるグレードアップの事例紹介を、(社)大阪府不動産鑑定士協会の八杉茂樹副会長に、マンションの資産価値を高める管理の重要性について、分かりやすく解説していただきました。

大規模修繕のポイントとグレードアップ
●大規模修繕のポイント (1)大規模修繕委員会の発足
 理事会は1、2年でメンバーが替わります。大規模修繕は継続性が必要です。そのために修繕委員会を発足させます。管理規約になければ、管理規約の中に委員会の項目を作って発足させます。いつ発足させるかということですが、遅くとも工事の3年ぐらい前で、早ければ早いほど良いです。委員会のメンバー構成は、理事の経験者、内部の専門家や技術者などです。

(2)パートナーの選定
 設計監理方式の場合、費用の多寡よりも信頼できるところが良いです。設計監理費は、工事費と比べれば絶対額としては少なく、決める際には信頼できる、ここぞと思うところに決めて頂きたいと思います。それから責任施工方式の場合、チェック機能は必要です。監修方式は、施工会社や管理会社が責任施工で工事を行うが、設計事務所が、管理組合の立場に立って重点的にチェックしていく方式です。小規模マンションでは有力な方法です。

(3)調査診断時点でのポイント
 調査診断で大事なのは、経年劣化か工事の不備かということです。工事の不備は、瑕疵の問題に該当します。原因究明と瑕疵対策ということで、10年目までにめどをつけます。また、調査診断した時点で、大規模修繕の内容と時期を決めなければなりません。足場をかけて一斉に良い性能と状態に戻すのが大規模修繕です。だから、まとめていつ行うのかを決めます。さらに改良・改善提案すべきところを診断の中に織り込みます。光ケーブルやセキュリティをどうするか。そのあたりがポイントになるかと思います。

(4)修繕設計時点でのポイント
 調査診断が終わりますと、修繕の設計をしなければなりません。材料・工法・性能の保証をどうするか、というのが非常に大事です。何年を目標とするのか。例えば屋上防水や外壁塗装の保証を何年にするか、この対応年数が決まれば、それにあった材料や工法を選ぶことになります。また、メリハリのきいた修繕やカラースキームで、グレードアップやイメージアップを図ります。カラースキームとは、外壁の色を変えてイメージを変えることです。それから工事予算との関係ですね。優先順位をつけてやらなくてはいけません。足場がなければできない工事が第一優先です。外まわり、建物周りは、足場が無くてもいつでもできるので後回しになります。

(5)施工会社選定時点のポイント
 施工会社選定時のポイントとして、最近は、透明性、公正さが言われます。ですからマンションの中に掲示したり、業界紙に出して公募します。募集要項をみながら見積もり業者を決めていきます。施工会社の決定は、施工会社の改修実績、技術力、ソフト力、保証能力、現場の所長の人間性などで選びます。

(6)合意形成のポイント
 合意形成のポイントで一番大事なのは、情報をたくさん流すことです。区分所有者へのPRすなわち広報やアンケートですね。あとは、団地型になりますと、棟委員会や階段委員会があります。いろいろ連絡をとりながらできるだけ理解を深めてもらいます。あと、居住者説明会をやります。大規模修繕の時には、調査診断が終わった時点や、修繕設計が終わった時点などでやります。資金計画のポイントでは、不足時の対応として、一時金にするのか、借り入れにするのか、返済をどうするのか、きっちり対応を考えておかないといけません。また、予備費がないと、基本的には満足のいく工事はできません。例えば外壁等の改修工事だと、実際に足場をかけてやってみないとわからないことや、確定できないことが多々あります。それに対応するために10%ぐらいはみておくと良いでしょう。

(7)工事施工時点でのポイント
 工事施工時点でのポイントは、管理組合と居住者と施工者と監理者、この4社が力を合わせてやること。密な連絡、打ち合わせ、工事報告会をしながらやることが一番大事です。それから施工確認・検査も、当然、施工者、工事監理者、居住者、管理組合の4段階で行います。追加・変更・工事費の増減に対しては、実費清算方式で行います。例えば、外壁タイルの改修は外から見ただけでは、剥がれそうかどうか分かりませんし、補修枚数も決められません。最初予想もつかなかったことも出てきます。臨機応変の処置も必要になってきます。また、早めの変更協議が大事です。全部終わった後から、これを承認してくださいといっても、管理組合も大変です。工事報告会や協議会で、早めに出して対応していきます。

(8)竣工、アフターケア
 検査も済んで、竣工ということになりますと、竣工図書を引き渡します。竣工図書は、工事の記録、工事の保証書、アフターケア体制等です。アフターケアは、請負者が、どういうことを今後してくれるのか、定期点検内容や問題が起きた時の対応もこの中に書いて入れていく。非常に大事なものですから、きっちり保管をしておきます。

●グレードアップの対象部位と項目例  グレードアップの対象部位としては、屋根の防水、外壁塗装、床防水、鉄部の塗装、建具、金物。あと、玄関ホールだとか、共用室の内装だとか、床の貼り替えなどもこの中に入ります。項目例として、耐震性能、バリアフリー、エコロジー、省エネルギー、防犯性、機能性・利便性、耐久性・維持管理性、快適性・美装性などがあげられます。
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