マンションリフォーム、IT化、大規模修繕の進め方など建物の維持管理に関してのポイントをテーマとした講座を開催しました。
私は業界団体の事務局長をやっていますが、自分が住んでいるマンションでは建設問題委員会の委員長を務め、大規模改修工事について検討してきましたので実際の体験から具体的な話をしたいと思います。
まず、調査、診断が一番大切だと思いますので、各委員の調査診断に対する認識を同じにすることに努力しました。当初、建設問題委員会には技術系の方がほとんどでした。その後、自治会長や専門分野ではない方にも入ってもらって、一般の社会通念で判断してもらうようにしました。具体的には2年目からで、スケジュールを立て、調査診断会社を選ぶところからスタートしました。調査診断会社を選定するに当たって、居住者に逐一広報するために「大規模改修便り」を発行。そして平成14年の12月25日に、マスタープランを作り、大規模改修便りの4号に掲載しました。マスタープランは、工事完了までのスケジュールを全て落とし込んだものです。平成15年1〜3月まで調査診断会社を募集、4月に定時総会を開き、調査診断会社を決定しました。5〜8月で調査を行い、9月の臨時総会で改修工事の項目と金額を承認してもらいました。10〜12月にかけて施工会社を選定し、平成16年1月に工事説明会を開いて着工し、6月には工事がほぼ完了する予定です。われわれが用意した過去の工事資料を活用してくれた調査診断会社に対して調査診断業務の他、コンサルも含め発注し、非常に安く収まったと感じています。施工会社からは20社ほど応募が来ていますが、このうち6社くらいから見積もりをお願いしようと思っています。
次に専有部分のリフォームについて注意する点をお話しします。まず依頼したいリフォームの内容と業者の能力が合うかどうか、規模が小さな業者なら「どんな工事が得意か」を聞く必要があります。2番目は、その会社がどんな資格を持っているか、どんな団体に所属しているかです。また建設業者登録をしているか、会社案内が依頼者からみて分かりやすく作られているかどうかも見ればいいと思います。そして施工実績、経験年数、どんな資格者がいるかも確かめる必要があります。そして信頼できる営業担当かどうかも大きな要素です。こういう要素を考えて、少なくとも2、3社を決めて、1社1社呼び、「あなたのところだけではないよ」とはっきり言ってください。リフォームの規模、目的をはっきり伝えます。重要なことは「安いから良い」ということではありません。高い値段を出してきた業者の中には、提案が入っているものがあるかもしれません。また契約を強要したり、その場でローン契約まで持っていくような契約は絶対にしないでください。工事には、変更が出たり、予測しない下地まで直さなければならない部分が出てきます。そのときには、途中で確認し、できればお金の精査までしておくことが必要です。またリフォームの前には管理規約を必ず確認してください。基本的にリフォームは管理組合理事長の承認を取ることになっています。禁止事項、注意事項がありますので注意してリフォームに取り掛かってください。
長期修繕計画は、管理組合の理事会や総会などで問題提起されて始まるのが一般的です。総会で長期修繕計画の実施の合意を得るのが一番目の問題点です。まず修繕委員会を設けます。理事会の役員が1年で交代するのに対し、修繕委員会の委員は2、3年のスパンで役をやるのが一番やりやすい方法だといわれています。
その次は、マンションがどのように劣化しているかを専門家に調査してもらう必要があります。調査は施工会社より設計事務所の分野です。見積もりを立てて入札し、専門の事務所に調査、修繕プラン作りをお願いすることになります。調査が終われば、調査結果をフィードバックして工事の仕様書を作ります。どういう工事をするか、材料、工法を決めていきます。仕様書には「特記仕様書」と「標準仕様書」の2種類があります。特記仕様書には、材料や工法が書いてあります。標準仕様書は、官公庁や民間で使われている共通仕様書です。仕様書が作成されると、施工業者から見積もりを徴収しますが、4、5社は集めて、調査会社にチェックしてもらい、妥当な施工会社を提示してもらうことになります。重要な事は見積もり項目を共通にしておくことで、こうすれば比較対照がしやすくなります。業者選定が終わると、工事工程を決めなければなりません。マンションは居住者が生活しながら工事を進めるので、住戸内で工事することもあり、入居者との工事工程上の取り決めが重要です。これは業者任せではなく、管理組合、とくに修繕委員会には工事をスムーズに進めるための潤滑剤の役割が大きくなります。着工すれば、入居者の見学会を開きます。工事についての理解が得られ、工事がスムーズに進んで行きます。竣工したら、竣工検査を行い、設計事務所の監理者、修繕委員会、管理組合が立会い、一つ一つ説明を受けながら引渡しを受けます。
具体的な修繕計画を立てる時には、共用部分、専有部分に分けて入居者にアンケートに答えてもらい、それを長期修繕計画のベースにすることが重要です。工事は仕上げに関するものと構造体に関するものと大きく分けます。マンションの長期修繕計画でポイントになるのが躯体部分、構造体の劣化です。昭和56年、建築基準法に耐震構造の考え方を盛り込んだ新耐震基準が取り入れられました。それ以前に作られたマンションは、耐震診断をされたほうがいいと思います。
ミニ講座2 マンションにおけるインターネット活用術〜管理組合活動に役立つ使い方〜
VDSL方式で手軽にブロードバンド化、マンション専用ホームページも活用できます
講師 芳野 昌(よしの まさる)
関西電力(株)大阪北支店 グループ総合提案チーム
第一営業部長代理
ブロードバンドを前提としたインターネットのマンションにおける活用例は、マンション専用ホームページです。ごみの収集日や、管理組合の集会、総会議事録、管理会社からのお知らせ、「宅配便が届いていますよ」といったお知らせ、集会室や来客用駐車場の予約状況、マンション内コミュニケーションなどの活用が考えられます。(ホームページの開設・運営費用が必要となる場合があります)
マンションにおけるブロードバンドのインターネット設備には、ADSL、同軸ケーブル、光ファイバーによる方法がありますが、光ファイバーが技術的に最も優れており、今後、需要が高くなると思います。光ファイバーをマンションに導入するにはマンション内に通信装置を置くことになります。通信設備から各戸に配線する方法として最近電話線を活用した方法が開発され、棟内の配線工事が不必要になりました。その方式がVDSL方式で、配線工事費が不要ということから既設マンションで最も一般的に採用されています。 ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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