セミナー情報

平成29年度「 大規模修繕工事見学会」報告

開催日時:平成30年3月11日(日) 実施

平成29年度の「マンション大規模修繕工事見学会」は、大阪市港区にあるベイシティ大阪管理組合様のご協力のもと開催いたしました。
大規模修繕工事の最中にもかかわらず、見学会当日は、管理組合の役員の皆様をはじめ、設計・工事監理をご担当されたアーバンスペース建築事務所、施工をご担当された(株)長谷工リフォームの皆様方にもご出席いただき、安全な環境のもとで工事中の様子を見学させていただきました。


●事務局を配置し、管理組合が主体的に運営


 当見学会に先立ち、管理組合理事長様からマンションの特徴や大規模修繕委員会の立ち上げ、運営などを説明いただきました。
 同マンションは3棟で構成されており、約1200名の方がお住まいです。特徴の一つは、マンションだけで町会が形成され、管理組合のメンバーが町会員を兼任していることです。管理組合と町会が車の両輪のように機能することで、円滑なコミュニケーションが取られています。さらに管理組合に設けられた事務局に専任のスタッフを配置し、修繕や点検などに直接かかわり、管理組合と管理会社、町会のパイプ役を担っているそうです。
 2016年1月に発足された大規模修繕委員会には、管理組合役員が監査として、また、理事会には修繕委員長が顧問として参加しています。理事会と大規模修繕委員会はそれぞれ月に2回開催され、加えて理事長様、副理事長様のほか、事務局や管理会社、修繕委員長様による三役会も開催され、問題点を話し合うなど密に連絡をとりあっているそうです。


●住民の要望に寄り添い、時間をかけて業者を選定


 大規模修繕委員会の委員長様からは、2回目となる今回の工事に対するスケジュールを説明いただきました。
 1回目の大規模修繕工事では、着工までに9カ月しかないタイトなスケジュールだった反省から、今回は1年9カ月前に大規模修繕委員会を立ち上げ、資産価値の維持・向上はもとより、住民の要望を聞き、できる限り透明性をもって進めていくことを重要視されたそうです。工事を監理するコンサルタント、施工会社の選定では公募を行い、複数社からの見積もり・プレゼンを受けられました。また、進捗については、その都度、住民説明会を開き、住民アンケートも併せて実施されました。今回は、国土交通省の補助金事業(玄関ドア取り替え工事)も同時期に実施し、大規模修繕委員会の主導で、メーカーや業者が選定されました。
 コンサルタントの選定ではどれだけ管理組合の想いに寄り添い、どれだけの監理日数を確保してくれるのか、施工会社は工事内容の把握に加え、金額、安全対策、アフターメンテナンスなどを総合的に判断して候補を絞りました。工事着工の2カ月前には定期総会で承認を受け、万全の体制で9月の着工を迎えたと話されていました。


●建物 劣化診断の実施で修繕箇所を決定


 コンサルタントからは大規模修繕工事の流れなどを説明いただきました。
 建物の劣化診断調査では、漏水、塗膜のはがれ、外壁タイルの浮き、コンクリートの劣化の状態を確認し、立ち入り調査ができないバルコニーなどは個別アンケートを実施されました。その結果、長期修繕計画で予定されていた屋上防水工事は、状態が良好だったため見送ることになるなど、必要に応じて修繕箇所を見直すことの重要性が説明されました。
 また、理事会や大規模修繕委員会の間で最も多くの時間を費やしたのが、改修設計の作成だそうです。2カ月間で4〜5回の打ち合わせを行って、建物の状態に適した修繕仕様書を作り、工事着工後は、ほとんど毎日のように現場に通い工事監理をしたと話されていました。


●工事着工前に3回の説明会で住民に協力を呼びかけ


 施工会社からは、工事の具体的な内容を説明いただきました。工事の着工前に3回の住民説明会と子ども向け説明会が開催され、準備も入念に行われたそうです。
 工事中の対応として、緊急時の年中無休のコールセンターの設置、住民とのコミュニケーションツールとして、棟ごとの連絡箱、専用掲示板の配置、パソコンやスマートフォンでチェックできる洗濯物干状況表などについて説明されました。


●限界マンションにならないための対策


 見学現場でも参加者から、塗装やタイルの補修基準、外部からの侵入を防ぐ警報システムなど、次々と質問が飛び交いました。
 見学後に集会室で行った質疑応答では、コンサルタントには①工事における設計業務の比重 ②監理や修繕箇所のチェックの体制 ③アフターメンテナンスの流れに関する質問があり、管理組合の皆様には①防音状況 ②耐震の問題 ③コンサルの選定基準 ④住民の皆様の同意の取付方法 ⑤資金面での工夫などに関する質問がありました。
 いずれの質問や意見に対しても、管理組合の皆様をはじめコンサルタントや施工会社の皆様が丁寧にご対応いただきました。最後に同マンションの管理組合、大規模修繕委員会から「資金と計画に余裕を持って取り組むことが重要です。限界マンションにならないために、早め早めの対策が必要です。」というアドバイスがありました。
 参加者からは、大変参考になった、次回も是非参加したいとの感想が寄せられ、大好評でした。
 この貴重な経験は、今後の活動に活かされると思います。
 今回、会場をご提供いただきましたベイシティ大阪管理組合の皆様には心からお礼申し上げます。


<見学マンションと工事の概要>

ベイシティ大阪(大阪市港区)
平成6(1994)年竣工
鉄骨鉄筋コンクリート造(一部鉄筋コンクリート造)
地上21階・地下1階・総戸数435戸
工事内容
  1. 共通仮設・直接仮設・下地補修・シーリング・一般壁塗装・鉄部塗装・
  2. 屋根等防水・その他
工期 平成29年9月1日〜平成30年5月31日(予定)
施工
見学マンション