平成22年度「管理組合交流会&相談会」報告

会場での様子

分譲マンションの管理組合には、それぞれに様々な問題が発生します。管理組合の皆様が他の管理組合と情報交換を行い、今後の組合活動の参考としていただけるよう、交流会を開催いたしました。当日の参加者は23名。各グループでは、マンション管理の専門家による進行のもと、管理組合1年目の方から経験豊富な方まで、活発な意見交換が行われました。

 最後に、各グループから意見交換の内容の発表があり、コメンテーター(弁護士、建築士)から交流会の総括をしていただきました。その中で、マンションを長持ちさせるためには、人間が定期的に健康診断を受けるのと同じように、建物の点検・修繕を計画的に行っていくことが大切であることや、管理会社に任せきりにするのではなく、管理組合が主体となって自分達の財産を守っていく気持ちを高めることが重要であるとの話がありました。

平成22年度「マンション管理の基礎知識」基礎講座報告

  2010年度「基礎講座&相談会」報告  

開催日時:2010年11月6日(土)・13日(土)・20日(土)

11月6日(土)   11月6日に開催された設立10周年記念パネルディスカッションのテーマは「マンション管理を考える」。
これまで寄せられた相談の中から特に多かった事例について、マンション管理支援機構常任委員の専門家が様々な角度からディスカッションしました。

基調講演1 管理組合運営についての諸問題 [ソフト面の問題点]
管理組合運営についての諸問題 [ソフト面の問題点] 講師

滞納問題の予防にマニュアルづくりを
(講師)
大阪弁護士会
木野 達夫

区分所有者全体で構成される管理組合は、マンション管理の主体であるという意識が必要です。また管理組合では、始めに理事を選び、その中から理事長を選んで運営しますが、 区分所有者の総意が活かせる体制づくりが必要です。
管理規約はマンションの憲法のようなもので、強い効力を持ちます。 そのマンションにおけるルールが分かりやすく書かれていることが大切です。 管理規約の変更には全区分所有者の4分の3以上と議決権の4分の3以上の賛成が必要ですが、規約の精神に反していなければ、2分の1以上の賛成で成立する使用細則に定めることもできます。
「マナーの悪い区分所有者から違約金を取りたい」という相談がよく寄せられます。管理規約で規定されていればそれも可能ですが、どの程度で警告するか、強行措置を取るかは、 理事会や総会でよく話し合われたほうがいいと思います。悪質な区分所有者に対しては法的手段を取ることもできます。 管理費の滞納問題は予防が大事で、スムーズな督促活動をするためにも、1か月遅れたらこうする、2か月遅れたらこうするといったマニュアルの作成をお勧めします。
また、管理会社に対する不満もよく聞きますが、まず契約内容を確認しましょう。約束ごとが履行されていない場合は強く主張できます。管理組合と管理会社は契約関係であることを意識しておくことが重要です。

 

基調講演2 管理組合運営についての諸問題 [ハード面の問題点]
講師 長田 康夫(おさだ やすお)

情報発信と進捗状況の開示でトラブルを回避
(講師)
社団法人 大阪府建築士会
西野 宏

  大規模修繕の流れに沿ってポイントをお話しします。
まず、建物診断と居住者アンケートで建物の現状を把握します。修繕が必要かどうかは早く判断しなければ手遅れになりますので、的確に手を打つことが重要です。 次に、どの部分をどのように直すかを検討します。新しい建築技術や材料にシフトしていくこともマンションの評価を下げないために必要なことです。総会で工事の合意をとりますが、 意見を集約し合意を取ることは理事会の大きな役目です。
また、常に情報発信や進捗状況の開示を行っていれば、トラブルを回避することができます。工事予算を確認し、詳細な設計図を作ったら、公募の上、数社から見積りを取り、 技術力と経験の豊富な施工会社を選んでください。契約時にはコンサルタントに支払条件、工期、近隣の関係などを記載した現場説明事項を添付してもらいましょう。 工事内容、金額などは総会で決議し、資金の出し入れについてもきちんと決議してください。その後、住民説明会などの手順を踏んで工事に入ります。 「言った、言わない」と後でもめないためにも、施工側と施主側(管理組合)の進捗状況の打ち合わせの内容は、必ず文書化します。 一方、壁の内側など、事前調査で分からなかった部分に問題が発生することがあります。追加工事、追加金額が必要になるので、事前にコンサルタントや業者と相談し、 資金計画には余裕を持っておくことが必要です。また設備の入れ替えが必要となるおよそ25年目以降の修繕では多額の費用が必要となりますので、計画的な修繕計画が重要となります。
パネル
ディスカッション 管理組合の主体的な管理で資産価値も向上

【参加者】
〈コーディネーター〉
川畑 雅一氏(社団法人大阪府建築士会)

〈パネリスト〉
木野 達夫氏(大阪弁護士会)
西野 宏氏(社団法人大阪府建築士会)
沖 健補氏(大阪司法書士会)
笠井 靖彦氏(社団法人大阪府不動産鑑定士協会)
和田 淸人氏(大阪土地家屋調査士会)
吉岡 哲史氏(近畿税理士会)
清水 明氏(独立行政法人住宅金融支援機構まちづくり推進部)

講師 長田 康夫(おさだ やすお)
  ●「公正」「透明」な管理組合運営と滞納対応のマニュアル化
川畑マンション管理の諸問題について、ソフト面とハード面から、パネリストの皆さんにお話しいただきたいと思います。 まず、ソフト面について、マンションの理事長も経験されたことのある和田さん、お願いします。
和田私が理事長の時に心がけたことは、「私自身も区分所有者のひとり」ということです。また、「理事会が勝手に決めた」と言われないために「公正」「透明」をキーワードにしました。 私のマンションでは不法駐車の常習者に警告の紙を貼ったら逆にこちらが怒られたことがありました。しかし、私の代で決着をつけようと覚悟し、管理規約や駐車場使用細則のコピー、 本人が印を押した管理規約の同意書、区分所有法のコピーを添えて、「駐車をやめなければ不本意ながら法的な手段をとらざるをえません」ということを書いて投函したところ、解決しました。 区分所有者には、自分の財産を守るためにもっと管理に関心をもっていただきたい。それを継続的に発信するのが理事長の役割と考えています。
木野すばらしい心がけですね。理事や理事長に対する不満は、見えていないところで勝手にやっている、と思われるのが原因でしょう。 総会で決めるべきことを理事会で決めることは法に反しているので、重要事項は理事会で決めてしまわないよう、注意したほうがいいですね。迷うときは「原則として総会で決める」という運営が大事だと思います。
管理組合の資金管理の面ですが、「修繕はしたいがお金が足りない」という話をよく聞きます。築年数の古い、また大規模なマンションの多くは資金を持っていますが、 心配なのは新築分譲で、売る時に管理費と積立金の設定を低くしている業者がいることです。将来、修繕費が足りなくならないよう、資金計画は計画的に行ってほしいですね。
川畑資金に関して専門の立場である吉岡さん、資金を管理、運用する点で留意することはどのようなことでしょう。
吉岡管理費や特別修繕費等には消滅時効がありますから、1か月でも滞納がある場合は厳しく対応して、滞納がないよう心がけることが大事です。 管理費等の保管は信用できる金融機関を探し、1社だけでなく分散して防衛策をとっていただければと思います。共有部分についての火災保険や地震保険、 マンション総合保険といった保険に当てるのも資産運用のひとつです。住宅金融支援機構さんで扱っているマンションすまい・る債は金利もつきます。綿密に計画を立てても、 修繕費が足りない場合は管理組合向けのローンもあるということを知ってほしいですね。 清水すまい・る債は、修繕積立金を安全に積み立てていただくために、平成12年より発行しています。評価していただいている最大のポイントは安全性です。 現在(平成22年度募集分)は、10年満期まで預けた場合の利回りが0.563%。大口定期のプラス0.1%くらいです。分散化は一般的に必要だと思うので、一考いただければと思います。 全国の管理組合の1割くらいが利用されています。
川畑修繕積立金は滞納という問題があります。弁護士としてのご意見を伺いたいと思います。
木野滞納は予防が大事です。1か月遅れたら手紙を入れる、2か月遅れたら理事が複数で訪問する、3か月目はこうする、 というマニュアルを明確に作っておくと躊躇せずに行動に移せます。様子を見ようか、と言っている間に、気がついたら1年となってしまいます。法的手続きは何種類かあり、ひとつには調停があります。 裁判まではいかずに話し合い、裁判所から督促状を送ってもらう方法もあります。少額訴訟という簡易な訴訟も比較的使い勝手がいいのですが、判決が出ても回収は容易ではありません。 ですから、予防が大事なのです。また、管理組合と管理会社の役割分担を決めておくことが好ましいと思います。
和田理事会として大事なことは、区分所有者全員と管理会社に対して、滞納は絶対許さないという姿勢を発信することだと思います。私たちは管理会社に対して、 基幹事務は会計と出納と長期修繕計画の3つであり、お金のことを頼んでいるのだから滞納を何とかしてください、とお願いをして、結局2年くらいかけて大口と中口の滞納を全額回収してもらいました。 こういう姿勢を貫き通すことによって、管理会社が契約内容以上のことをやってくれた事例です。
笠井木野先生のマニュアル化に大賛成です。滞納には、「うっかり残高不足になってしまった」ものと、「ない袖は振れない」というものがあります。「ない袖は振れない」の場合は、 厳しい選択ではありますが競売の申し立てをするしかありません。競売で決着がついたら落札者から必ず、滞納分をいただいてください。本来の金額から滞納分の金額を引いた金額で売り出しをかけるので、 「引いてもらった分は返してください」と言えます。「ちょっと負けて」と言われるかもしれませんが、「裁判所は滞納分を引いているはず」と、管理組合は言うべきです。
ぜひ利用していただきたい機関をご紹介します。大阪市中央公会堂の近くにある弁護士会館の1階に、全国初の総合紛争解決センターができました。 ADR法に則ってできた調停機関です。これは非常に便利で、裁判外ですから気安く行くことができ、専門家が3人ついて相談に乗ります。
パネルディスカッション

●資産価値を高めるバリューアップ工事
川畑では次に、ハードの問題に移りたいと思います。住まい情報センターにも、大規模修繕について多くの相談が寄せられています。 大規模修繕と資産価値はどのような関係にあるのでしょうか。
笠井私は皆さんのマンションの価値を鑑定する立場です。中古マンションが新築マンションよりも高いということは、よほどのことがない限りほとんどないと思いますが、 しっかりした管理をしているマンションは値下がりが少ないと言えます。それは、適切な時期に適切な修繕を行った、あるいは適切な修繕を行いうるマンションです。そのためのキーワードは3つ。 (1)修繕積立金が積み上がっているか、(2)滞納はないか、(3)居住者の高齢化が進んでいないか、です。 特に、築年数が経過するとともに居住者が高齢化すると、年金生活者が増えます。年金生活者にとって一時負担金は負担しづらいものです。2回目、3回目の修繕にはお金がかかるということを念頭において、 綿密な修繕計画を立ててください。駐車場収入を修繕積立金にするというのもひとつの方法といえます。
西野大規模修繕では、「コンサルタントをどう探すか」という話が必ず出てきます。コンサルタントには、設計を監理し、マンションについてアドバイスができる、 経験を積んだ方が適切だと思います。探す方法は、公募をする、知人にコンサルタントがいれば検討する、周辺で大規模修繕をやっているマンションの管理組合に問い合わせる、の3つくらいです。 コンサルタントは、情報を集めて新しい建材や工事方法をマンション側に提供するという、非常に労力のいる仕事を行います。コンサルタントへの委託料の考え方はいろいろありますが、 一般的には工事費の7〜8%くらいと言われています。
川畑長期修繕というのは、現状を維持するに留まらず、マンションの価値をさらにアップするバリューアップのための資金計画も必要になってきますね。
清水私どもは昭和60年から共用部分リフォームの融資をしており、バリューアップ工事もあります。資産価値を高めるという観点に立った場合、IT化、耐震、 断熱などいろいろ要素はあると思います。それから共用部分の集会室、ごみ置き場、駐車場もそうですね。駐車場の例で言うと、最初は機械式駐車場だったが車の利用が減り、 メンテナンスの費用がかかるという場合があります。原状回復ではなく、メンテナンス費用がかからない自走式駐車場にするというのは、一歩踏み込んだ修繕だと思います。このように、 当初は予想していなかったことが必要になることもあると思います。急なことで積み立てがない時、ひとつの方法として「借り入れを活用しては」というのが私どもの提案です。
川畑マンション管理には様々な問題がありますが、主体はあくまでも管理組合であるという意識が必要であると思います。ディスカッションの内容が、 皆様の問題解決のヒントになれば幸いです。本日はありがとうございました。

11月13日(土)  

講座1 犯罪被害にあいにくいマンション

犯罪防止の4原則「光・目・時間・音」 (講師)
NPO法人大阪府防犯設備士協会
副理事長 清水 啓介

大阪府下における平成21年度の住宅対象侵入窃盗(空き巣・忍込み・居空き)の発生件数は5838件。1日換算にして約16件もの窃盗事件が発生しており、全国ワースト3位になります。 そのうち空き巣が4626件を占め、空き巣だけで被害総額は約28億円にも及びます。発生場所は、戸建てが56%、中高層住宅が26%。侵入方法と侵入場所については、戸建ての場合はガラス破り、 戸締まり忘れが多いのに対して、マンションの場合は大半が玄関の鍵を開けて入るという方法です。さらにどの住戸も同じ種類の鍵であるため、開ける手順が分かると横並びの侵入が可能となり、 被害が大きくなってしまいます。またマンション1階のバルコニー側は、施錠されていても足がかりがあったり、植栽などで死角ができたりします。 最上階であっても、屋上への通路が施錠されていないと屋上からバルコニーに侵入されるおそれがあります。
 犯罪防止には「光・目・時間・音」の4原則があります。具体的には、ライトで照らす、防犯カメラで監視する、防犯建物部品によって侵入しにくくする、 セキュリティシステムで警報音を鳴らすといったこと。なかでも5分以上かかると、7割の侵入犯があきらめるというデータがあり、侵入しにくいドア構造、建物構造がいかに大事かが分かります。
 防犯対策として、ハード面では、まずしっかり戸締まりをすること。次に補助錠やピッキングに強い鍵などの防犯建物部品、テレビドアホンなどの防犯システムを導入すること。 「侵入に5分以上耐え得る」ことを認定されたCPマーク付の建物部品もおすすめです。ソフト面では、近所での声かけ運動、見回りが有効です。
 最後に防犯モデルマンション登録制度について。大阪府防犯協会連合会認定の一級建築士と防犯設備士の審査により、犯罪にあいにくい構造、設備の基準を満たしていると認められるマンションを登録する制度であり、 是正すべき点のアドバイスも行っています。また大阪府防犯設備士協会が無料の防犯診断を実施しています。
講座2 管理規約の解釈、改正等について

トラブルを起こさないために きっちり決めて、しっかり伝える。 (講師)
大阪市立住まい情報センター
マンション管理相談員 宇都宮 忠

分譲マンションでは隣人同士が気持ちよく生活するためには、役員選出、ペット問題、駐輪場問題などについて管理規約や細則に定められたルールを守っていただく必要があります。 国土交通省からは標準管理規約が示されていますが、役員資格の見直しなどが近々行われる予定となっています。
現時点で、役員資格は、「現にそのマンションに居住している組合員」に限定されています。組合員の配偶者や賃借人は当てはまりません。建て替え推進決議をめぐって役員資格に関する訴訟が起きている例もあり、 注意が必要です。
しかし、組合員は仕事で参加できず、理事会に出席するのは配偶者という実状も多々あります。そこで、できるだけ居住組合員が役員になることを大前提に、 規約の変更によって役員の資格拡大を図るという方法もあります。平成20年の国土交通省の調査では、拡大範囲は同居配偶者や親族まで、同居の親族は成年に達した一親等までとしているところがほとんど。 役員任期は1年か2年の輪番制で、規約の但し書きによって留任を認めているケースが多いようですが、歯止めは必要と考えられます。
次にペット問題。ペットは生き物であり、簡単に解決できない問題です。最近の新築マンションではペットOKのところも増えてきていますが、勝手な飼育方法では他の住民に迷惑がかかりますし、 実際のところ苦情が出ているケースも多いようです。飼ってはいけないにしろ飼っても良いにしろ、きちんとしたルールを作り、それを守ってもらうことが重要です。ルールとしては、 (1)飼育禁止、(2)一代限りにつき承認、(3)登録などの一定条件に限って認めるという3つがあり、アンケート等で住民全体の考えを把握したうえで検討を進め、 掲示板や広報誌を利用して日頃から飼育のルールを周知しておくことが大事です。
最後に駐輪場と駐車場問題です。どのマンションでも家族が増えると自転車も増える傾向にあり、通行の邪魔になるといった問題が起きています。自転車置き場の利用料金を取っているマンションも多く、 有料にすることで一世帯あたりの台数が制限できるというメリットがあります。整備にあたっては自転車置き場の増設も考えられますが、共用自転車の活用も考えられます。
機械式立体駐車場は多くの維持管理費用がかかり、受益者負担を原則として、耐用年数からみた駐車場料金を一度検証してみる必要があるでしょう。

11月20日(土)  

講座1 マンションの資産を守るために

さまざまなリスクを想定し 情報を集めて対策を立てましょう。 (講師)
NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
溝部 理恵

 リスクを回避し、安全に生活を送っていただくために、マンション資産の守り方についてお話をします。
まず修繕積立金ですが、マンション管理組合理事長名で通帳をつくり、一つの銀行に多額の定期預金を預けておられる組合も少なくありません。 しかし、先日のペイオフ発動という事態になった場合には1000万円までしか弁済されません。一方当座預金等の決済性預金といわれるものは全額戻ってきますので、 両方を抱き合わせで持っておくことはひとつのリスク回避となります。分散することも大事です。1000万円以内を複数の銀行に預けておけば、怖れることもないわけですから。
では、リスクにはどんなものがあるのでしょう。まず倒産リスク。マンションの管理会社や建築設計事務所が倒産すると、あとあと面倒なことになります。資産を投資しているなら、 インフレや信用リスク。直接影響のあるものでは、災害リスクや建物劣化リスク。一番大変なのは滞納リスクで、将来の予定の変更を余儀なくされることも。 住環境の変化による市況変動リスクも考えておく必要があります。
マンションは個人の集まりで、いろいろな考え方をお持ちなので、まとめるのは大変な作業なのですが、こうしたリスクを納得してもらい、企業情報をつねにチェックして時には資産の保管場所を動かしたり、 万一に備えて損害保険を掛けたり、滞納者に法的措置を施す手続きを決めておいたりと、管理組合としてはさまざまな対策を講じていくことが大切なのです。
講座2 吹付アスベスト除去等補助制度

含有調査と対策工事の費用を大阪市が支援する制度です。 (講師)
大阪市計画調整局
建築指導部 黒川 寛浩

吹付けアスベストの有無を調べるには、まず建物の内外を見て、手で触ると崩れるようなものがあるかどうかを探し、あれば建物が建った時期や製品から確認してください。 一般的には耐火被覆材として、倉庫や駐車場、玄関扉横のメーターボックス、エレベーターシャフトやタワーパーキング内によく見られ、また、防音材・断熱材として機械室や電気室に使われていることもあります。 製品名などが分からなければ、専門機関による含有調査が必要です。その結果、アスベストがあると分かった場合には、除去、封じ込め、囲い込みといった対策工事が必要です。
大阪市では、露出した吹付け材等の含有調査や対策工事の費用を補助するアスベスト除去等補助制度を設けています。対象となるのは多数の方が利用する部位や共用部位、 メンテナンスで出入りする機械室・電気室で、調査は全額かつ上限金額(1試料あたり10万円、3試料以上25万円)まで、対策工事は3分の1かつ上限金額(戸建住宅20万円、 その他100万円)まで費用を補助します。補助には事前に現地確認が必要なのでご連絡ください。
講座3 築20年からの大規模修繕工事

100年持たせる強い思いで 長期計画を立てることが大切。 (講師)
社団法人大阪府建築士会
今井 俊夫

 2回目の大規模修繕工事をいまからやろう、でもどうしたらいいのか? そういう待ったなしの課題を持っている方も多いと思います。しかし、今日はわかりやすい内容で、できるだけ問題提起していこうと思います。
まず、2回目の大規模修繕工事で必要なことは、コミュニティを活用することと、少子化・高齢化への対応を踏まえた工事内容とすること。また今後20年、30年を見越した計画を立てることです。 おおまかなもので構わないので、建物維持管理に関して、築50年を見据えた、長期計画があるということが大切なのです。
実質的な修繕積立金は、一戸あたり月1万円は最低ライン。できれば駐車・駐輪場使用料、管理費余剰金繰り入れなども含め月1万3000円を確保します。 2回目の大規模修繕工事の費用は、1回目をきっちり行えば案外少なくてすみます。逆に1回目をなおざりに行えば2回目はかなり厳しくなります。長期修繕計画を踏まえて、 その範囲であわてずに、適切な修繕をやっていくということが重要なのです。
では、マンションはどのくらい持つのか。重要なのは「どれくらい持たせたいか」という意識です。たとえば、法隆寺は世界で一番古い木造の建物で、築後1300年以上経っています。 これは、棟梁が近くに住んで毎日見回って直す。50〜60年に1回、瓦の修繕をしたり、約400年ごとに解体修理という大規模修繕工事を繰り返す。斑鳩の人たちがこの寺を誇りに思い、 「持たせよう」としてきた結果です。同様に、マンションも、住んでいる人たちに建物を持たせる意志があり、適切な修繕をおこなえば、100年以上充分持つのではないかと、私は思っています。

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平成22年度「大規模修繕工事見学会」報告

「大規模修繕工事見学会」報告
約10年ごとの大規模修繕工事で長く快適に住まえるマンションに
7月31日、大阪市住之江区の新北島コーポ管理組合のご協力により、大規模修繕工事見学会を開催しました。新北島コーポは、地下鉄「住之江公園」駅から徒歩8分、4棟から成る総戸数435戸の分譲マンション。竣工から34年が経過し、今回で3回目の大規模修繕工事となります。 現場のようす

●丈夫で長持ちするマンションに

 新北島コーポでは入居開始から30数年が経過し、これまで定期的に大規模修繕が行われています。それでも経年により外壁やコンクリート躯体、バルコニーなどの劣化が進行。3回目の大規模修繕工事は、これらを補修し、丈夫で長持ちするマンションへのオーバーホールが目的です。
 現場見学にさきだち、新北島コーポ管理組合の服部副理事長が、「コンサルタントの先生からアドバイスを受けながら抜本的な改修を進めています」と挨拶。続いて施工会社から、工事の趣旨や流れ、安全管理、補修工法などが説明されました。
 また、今回の工事では、計画段階で分からなかった部分的な鉄筋の腐食が、施工中に発見され、急遽、特殊工法を用いた補修を追加するというハプニングも。見学会でも特殊工法や、鉄筋コンクリートの劣化のメカニズムについての解説に時間が割かれました。

●実践的な現場見学に参加者も納得

 工事の見積り方法や耐震検査などへの質疑応答の終了後は、いよいよ3班に分かれての現場見学です。建物に入ると、壁の随所に緑や黄色のマークが。「ヒビ、浮きなど、補修部分の種類を色分けしている」との説明に、「これは分かりやすい」と感心の声が上がります。
 また、コンクリートの小さなヒビ割れと大きなヒビ割れとで、それぞれ異なる方法で補修している現場を見たり、「モルタルの浮き」を叩いて音を聞き、浮きが発生している部分への注入作業をすぐ傍で見学するという実践的な体験は、参加者がそれぞれのマンションで大規模補修工事を実施する際の良い参考になった様子。

 見学後の質疑応答では、工事費用や居住者の属性など具体的な質問があり、工事費用は1世帯当たり約60万円であること、また300人前後の高齢者が居住しており、高齢化社会を象徴するような年齢構成になっていることなどが紹介されました。
 今回の参加者には、同じような課題をもつ管理組合の皆さんも多く、関心の高さと前向きな姿勢が印象的な見学会となりました。

<見学マンションと工事の概要>

新北島コーポ(大阪市住之江区新北島)
1、2号棟:鉄骨鉄筋コンクリート造・11階建
3、4号棟:鉄筋コンクリート造・7階建
管理事務所棟:鉄筋コンクリート造・2階建
総戸数:435戸
築35年(1975年竣工)
工事内容(1)躯体修繕工事
(2)シーリング新設打替工事
(3)外壁等の塗装替工事
(4)鉄部等の塗装替工事
(5)バルコニーなどの防水工事
(6)その他改修工事
工 期平成22年2月20日〜平成22年9月20日予定 施 工 (株)カシワバラコーポレーション

平成21年度「基礎講座&交流会&相談会」報告

2009年度「基礎講座&交流会&相談会」報告

会場の様子分譲マンション管理組合向けセミナー。
基礎講座では、適正に管理組合運営を行うための基礎知識を分かりやすく学びます。また日頃の管理組合運営で発生する問題や悩みを語りあう交流会と、個別の問題を相談する相談会も開催しました。
開催日時:
2009年11月1日(日)・14日(土)・28日(土)

7月12日(日)
  平成20年度マンション総合調査からみるマンションの最近の現状、管理規約を見直すべき項目や見直すときの注意点、そして管理会社との上手な付き合い方をテーマに開催しました。  

講座 平成20年度マンション総合調査からみえてくるもの
講師 長田 康夫(おさだ やすお)

国が行ったマンション調査です。
管理組合運営の参考にしてください


(財)マンション管理センター
講師 長田 康夫(おさだ やすお)


 昭和55年度から始められたマンション総合調査です。
ほぼ5年に一度おこなわれており今回で6回目、前回は平成15年度に実施されました。管理組合と区分所有者へのアンケート結果となっており、マンションの管理状況や意識などが調査されました。 ●世帯主の年齢  「60歳代」が26.4%で最も多く、次いで「50歳代」が24.1%、「40歳代」が22.9%、「70歳以上」が13.0%、前回と比べ高齢化しています。 ●永住意識  「永住するつもりである」が49.9%。「いずれは住みかえるつもりである」が19.4%で、永住意識が高くなる傾向にあります。 ●管理費の滞納状況   3カ月以上滞納している住戸がある管理組合が38.5%。築年数、規模が大きくなるほど滞納住戸のある管理組合の割合が増えています。 ●長期修繕計画の作成状況   前回と比較すると長期修繕計画を作成しているマンションは78.1%から89.0%へ増えています。長期修繕計画の作成はかなり浸透してきています。 ●建替えの必要性   「建替えが必要である」は3%程度ありますが、「建物が相当老朽化または陳腐化しているが、修繕工事または改修工事さえしっかり実施すれば建替えは必要ない」と考える方が24.9%です。 ●専門家の活用状況   専門家を活用している管理組合は43.6%。このうち建築士の活用が一番多く、22.7%です。マンション管理士の活用は13.1%、「活用していないが知っている」が40.2%で認知は進んでいますが、まだまだ不十分です。
このほか、マンション居住の状況、マンション管理と管 理事務委託の状況、建物・設備の維持管理状況につい ての様々な項目について調査報告がなされています。

「平成20年度 マンション総合調査結果」はこちらから
講座 管理規約見直しにおける注意点
講師 宇都宮 忠(うつのみや ただし)

ぜひとも改正していただきたい
項目を紹介します


マンション管理専門相談員
講師 宇都宮 忠(うつのみや ただし)


国土交通省が策定をして公表している標準管理規約は、区分所有法の改正等を踏まえ、平成16年1月に改正しています。平成16年以降、ご自分のマンションの規約の見直しを行っていない管理組合は、この改正標準管理規約(以下、改正規約)を参考に点検していただくことが望ましい。管理規約条項の見直しを図るうえで、ぜひ改正してほしい項目をいくつか紹介します。 ●「総会の会議及び議事」条項の変更   議事の賛否が可否同数の場合は改正規約では否決としています。従前の議長が決するという定めは削除されています。
それから特別多数決議事項で、共用部分などの変更は、「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。」とされていましたが、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。」と金額に関する表記が変更されています。 ●「書面決議」条項の変更  区分所有法の45条が改正されたことに伴い、総会決議以外に、区分所有者全員の承諾があれば、書面又は電磁 的方法による決議をすることができるという条項が追加されています。 ●「議事録の作成・保管」条項の変更  以前の標準管理規約では総会議事録の署名押印者は議長と議長の指名する2名の総会に出席した理事でしたが、改正規約では議長と総会に出席した組合員ということで、理事という表現がはずされています。 ●「管理者=理事長権限」条項の追加   損害保険契約に基づく保険金の受領で、共用部分等に生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求 及び受領について区分所有者を代理するということで、理事長権限が少し広がっています。 ●「合意管轄裁判所」条項   合意管轄裁判所を管理組合の所在地を管轄する裁判所としておきますと、地元の簡易裁判所や地方裁判所に 訴えを起こすことができます。そうしない場合、訴訟相手が別の場所に住んでいると、そこを管轄する裁判所に訴えをおこさないといけません。こうなると非常に面倒です。

 以上の項目は、ぜひ規約の内容を確認していただきた いと思います。
講座 管理会社とのつきあい方
講師 和田 淸人(わだ きよひと)

管理会社と連携しながら
解決できた3つの事例


マンション管理専門相談員
講師 和田 淸人(わだ きよひと)


 わたしが理事長として心がけたことは2つです。1つ目は、区分所有者同士の対立は避けること。2つ目は、管理会社とは発注者と受注者の関係であることを忘れないことです。今日は、2年間の理事長の経験の中で、管理会社と連携しながら解決できた事例を3つご紹介させていただきます。  1つ目は滞納問題です。私が理事長に就任した時点で、滞納が52万円ありました。管理会社との管理委託契約書では、滞納者に対して電話、訪問、郵便の督促を行い、3カ月で免責となっています。そこで、管理会社に対して、マンション管理適正化法74条に規定された、再委託できない基幹事務(=会計、出納、長期修繕計画)はひとえにお金に関することであること、滞納問題の解決もそれに当たることを伝えてアクションをおこしてもらいました。結果的には2年後、52万円あった未収金を2万7000円まで減らしました。  2つ目は違法駐車です。警告の張り紙をしてもどうしても駄目な車がありました。いろいろ調べると区分所有者の息子さんの車でした。そこで区分所有者であるお父さんに入居時に提出した実印付きの管理規約同意書のコピーと一緒に「息子さんの違法駐車をやめさせてほしい」という文書を投函したところ、それから一切、敷地の中でその車を見かけることはなくなりました。  3つ目は、補修工事のトラブルです。4年ぐらい前の地震でマンションの外壁のタイルが崩落しました。前理事会が、管理会社経由でクレームをいれても、施工会社からは「それは天災ですから」と一蹴されました。管理会社がデベロッパーの子会社であるため、フロントマンが親会社にクレームを言いにくい状況も明らかに見えました。そこで、建築士に設計図書と現地を見てもらい、設計図書と現地との相違点について、管理会社経由でデベロッパーおよび施工会社に質問状をファックスしてもらいました。この時、フロントマンはメッセンジャーとして動いてもらいました。その結果、修理費用も全部デベロッパー持ちで、補修工事を完了させることができました。  管理会社はあくまでも受注者です。発注者である区分所有者が「自分たちのマンションをどうしたいのか」という合意形成をすることが重要だと思います。

7月25日(土)   ぜひとも知ってほしい管理組合会計の基礎知識と注意点、および大規模修繕工事の進め方や修繕積立金の設定をテーマに開催しました。  

講座 管理組合会計の基礎知識と注意点
講師 笹岡 憲一(ささおか けんいち)

予算準拠の原則と区分経理、
この2つは絶対に守りましょう


近畿税理士会 税理士
講師 笹岡 憲一(ささおか けんいち)


管理組合会計の基本原則ですが、会計基準がありませんので、公益法人会計の一般原則を適用して会計をしています。それよりも管理組合会計の特有原則の方が重要です。 特有原則には、予算準拠の原則と区分経理があります。予算準拠の原則は、予算の範囲内でいかに維持管理の費用を使っていくかというものです。予備費の科目を設けている組合もありますが、お薦めできません。 予算の範囲内で運営していくことがベストだと思います。区分経理は、管理費会計と修繕積立金の2つを必ずわけるということです。一緒にされているケースもありますが、これは必ず分ける必要があります。 ■こまめにチェックしてください  管理組合会計の注意点としては、チェックのクセづけが大事です。面倒くさい、忙しい、そんな時間はないという話になりますが、できるだけこまめにチェックする必要があります。 1年に1回よりは毎月する方がいいですね。たとえば預金残高の残高証明書をとってチェックする。未収入金表もチェックする。契約書も必ず内容をチェックし、把握しておくことが大切です。

 それから2期比較会計書類を作成していただきたいと思います。前期より自分の管理組合のお金がいくら増えているかなどが分かるようにする。これは非常に重要です。 そして内部けん制制度をしっかりしていただきたいと思います。いまだに通帳と印鑑を同じ方が保管している管理組合もあります。ひどい話になると、管理組合のキャッシュカードをつくっている。 できるだけお互いがチェックできるようにすることが大切です。
講座 大規模修繕工事と長期修繕計画、修繕積立金について
講師 末広 和雄(すえひろ かずお)

成功の決め手は資金計画。
均等積立方式がお薦めです


マンションリフォーム推進協議会近畿支部
講師 末広 和雄(すえひろ かずお)


■大規模修繕工事  大規模修繕工事がなぜ必要か。例えば外壁についてですが、使われているコンクリートが温度の変化を含む乾燥・収縮によってひび割れを起こします。これを放っておきますと、ひび割れから中に水が入り鉄筋が錆びてきます。鉄筋が錆びてくると建物としても弱くなり、放っておくとコンクリートが剥がれて落ちてきます。これを防ぐために定期的に修繕が必要になります。

 建物の保全には維持保全と改良保全があります。現況そのままの状態を維持しようというのが維持保全で、ようというのが改良保全です。
さらに維持保全には、予防保存と事後保全があります。予防保全は、悪くなる前に処置するものです。とくに給排水管や電気系統などの設備関係、生活に関わる部分は事前に直していかないといけない。事後保全は、悪くなったところを直しましょうというものです。

 保全行為の回数を多くすれば長く持ち、少なければ耐用年数が短くなります。保存処置をしなかったら30年、40年。保全行為があれば約60年、最近の建物であれば、コンクリートの性質がよくなっているので、70年、80年は大丈夫かなという状態になっています。
 一般的に、大規模修繕工事の周期は、10年から12年。国交省が出した「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」では12年とうたわれております。

 大規模修繕工事の検討を始めるきっかけは何でしょうか。一つは、長期修繕計画の中で修繕工事をする時期が近づいていれば、そろそろ考えていきましょうということです。もう一つは、至る所で不具合が目立ちはじめ、このまま放っておくと、住民が怪我をするとか、いろんな問題が出てきそうだということになれば、大規模修繕工事を検討しようということになります。

 大規模修繕工事の進め方は、(1)大規模修繕(検討)委員会の設置、(2)建物調査・診断の実施、(3)仕様書(案)の作成、(4)共通仕様書と内訳明細書の作成、(5)概算金額・資金計画の検討、(6)仕様書の確定、(7)見積参加業者の決定、(8)現場説明会開催・現地調査、(9)見積書提出、(10)プレゼンテーション・ヒアリングの実施、(11)施工業の内定、(12)工事説明会開催、といった流れで進められ、続いて工事着手、竣工・引渡しとなります。
 工事そのものは通常、4〜5カ月くらいで終わりますが、検討から含めれば全体では2年くらいかかります。だから12年目に大規模修繕工事を実施するとしたら、10年目くらいからスタートを切らないと、12年目に実際の工事をすることは難しくなります。

 また、大規模修繕工事を実施するにあたって、足場を組むなどの仮設工事が必要ですが、その費用が全体工事費の20%から25%かかることも覚えておいて下さい。最近の30階を超える超高層マンションの場合は、仮設工事にかかる費用は全体工事の40〜50%になることもあります。 ■長期修繕計画   大規模修繕工事はむやみやたらに実施するのではなく、長期修繕計画という計画を立てて、計画に基づいて実施しなければなりません。当然、実施するに当たってはお金が関わってきますので、そのお金をどうするのかという問題、資金計画もたてなければなりません。

 修繕計画には、修繕項目(何を、どのように直すのか)、修繕時期(いつ直すのか)、修繕費用(どの範囲をおおよそいくらで直すのか)を決めます。例えば、修繕項目では、屋上のアスファルト防水の部分を直しましょう。修繕時期では、大規模修繕工事に合わせて12年目、次は24年目に直しましょう。修繕費用は500万円をかけて直しましょう、といった具合に決めていきます。

 また、修繕計画は、1回作成したらそれで終わりということではなく、定期的な見直しが必要です。つねに現状の把握をして、必要があれば、改良も加えて、軌道修正をすることが必要です。

 そういった計画とおおよその費用が出ますと、10年間、20年間、30年間のトータルの修繕費用の累計金額が出てきます。それをもとに資金計画を立てます。成功の決め手は資金計画です。お金がなければ、決めたはずの修繕ができなくなります。  資金計画には、均等積立、段階増額積立、一時金徴収の3つの方法があります。均等積立は毎月一定額を積み立ていくものです。段階増額積立は、初年度は低くして、所得が上がっていくにつれ段階的に、積立金を上げていきましょうという考え方です。一時金徴収は、一定額を積み立てますが、大規模修繕工事を実施するに当たって、お金が足りない。だからその時に、戸数で割って、一戸当たりいくら出してくださいというものです。基本的には均等積立か段階増額積立のどちらかで実施されているケースが多いと思います。国土交通省が出した「長期修繕計画作成ガイドライン」では、均等積立方式が推奨されてます。

 ちなみに大規模修繕工事で使うお金は、1住戸あたり平均80万円前後と言われています。平均ですから、5戸、10戸の小規模のマンションだとそれ以上のお金がかかりますし、400戸、500戸の大規模マンションだと、スケールメリットで下がる傾向があります。修繕積立金の参考例として、255戸の物件のケースでは、修繕積立金の月額は、専有面積1m2当たり161円。75m2で1万2000円となっています。
建物の構造や建物劣化の原因など、予備知識についても分かりやすく説明
建物の構造や建物劣化の原因など、予備知識についても分かりやすく説明
  
支援機構で実施したセミナーのビデオが住まい情報センターで視聴できます
詳しくはこちらから(PDFファイル)

7月25日(土)  

ベイシティ大阪管理組合
理事長 嶋川利昭

「大規模修繕を12年目に実施しましたが、区分所有者に1級建築士の専門家もおられたため、比較的スムーズにできました。
現在、築17年目に入っているため、電気や機械など設備関係の交換時期にきています。今年はインターホン、来年は地デジに取り組む予定です。
悩みは賃貸率が高いため無関心層が多いことでしたが、最近の賃貸率低下とともに改善され、前回の理事会の出席率は100%でした」


ベイシティ大阪管理組合
監事 葛籠洋子

「集会所がないことが最大の悩みです。総会や打合せ会は玄関ホールなどで行っています。
過去に10年間ほど自主管理を行った時期があり、全員で清掃を始めましたが、それをきっかけにコミュニティがまとまり、広報誌の発行を始めました。
この他にも駐車場で焼肉、ゲーム大会、ガレージセールを行ったり、盆踊りや大阪市が推進している「子ども見守り 隊」などを通じて地域とのコミュニティも深めています」


会場の様子 管理組合報告後の会場との意見交換では、理事の選び方や広報の方法(回覧板、全戸配布など)、ユニークな事務局制度、管理組合ホームページなどについての質問や意見交換が行われました。
続いて、規模別に4つのグループに分かれて意見交換を行いました。コミュニティ活動や管理組合会計、ペット問題など、自分たちのマンションが抱えている問題を中心に活発な話し合いがありました。 様々な解決のヒントを得ることができた様子でした。

各グループで話し合われたテーマ

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「マンション管理フェスタ2009」開催速報

「マンション管理フェスタ2007」開催速報 お役立ち情報がいっぱい!平松市長も見学に訪れました。


9月6日、第2回目の「マンション管理フェスタ」を、2年ぶりに開催。支援団体、協力団体が一堂に会したこのイベントに、250名以上の参加者が集まり、大いに賑わい ました。今回は、大阪市の平松市長も訪れ、「大阪市を暮らしやすいまちにしたい」と挨拶。また、メインステージではマンション内のサークル活動の発表や、「マンション管理とコミュニティ活動」をテーマにした講演会の他に、住まいに関する楽しい落語もあって、会場は笑いに包まれました。参加者からは、「前回よりも、さらにパワーアップした感じですね」「専門家の方に相談できて、ともて助かりました」「組合活動のヒントになりました」といった声が数多く寄せられました。

≪発表≫ フェスタで発表会!

フェスタで発表会!天神橋だんじり保存会「どうらく」の皆様によるだんじりばやしと、エバーグリーン淀川「ますみ会」の皆様による踊りが披露されました。

≪講演≫13:15〜14:15 マンション管理とコミュニティ活動

マンション管理とコミュニティ活動マンション学をテーマに研究されている藤本佳子教授(千里金蘭大学)が具体的な事例を交えながらコミュニティづくりの大切さについて講演されました。

≪発表≫14:30〜15:15 住まいの落語

住まいの落語落語家・笑福亭伯枝さんよる「牛ほめ」。間違いだらけの新築見舞いのはなしで、皆さん、大笑いの連続でした。

専門家とお話してみませんか?!

大阪市マンション管理支援機構の専門家6団体※と自由におしゃべりできるコーナーを設置。多くの方が熱心に相談されていました。

※大阪弁護士会、大阪司法書士会、大阪土地家屋調査士会、(社)大阪府不動産鑑定士協会、近畿税理士会、(社)大阪府建築士会

マンションの取り組み紹介

熱心なコミュニティ活動をされている管理組合をパネルで紹介。このほか、以前らいふあっぷに掲載された管理組合だよりも抜粋して展示しました。

マンション管理組合ミニ交流コーナー

コミュニティ作りのコツを、ほかのマンション管理組合 さんから聞いたり、成功事例や経験を伝え合うミニ交流会を5階の研修室で開催しました。後半は市長も参加して「マンション管理とコミュニティ活動」について意見交換を行いました。
支援団体・協力団体が、役立つ情報コーナーを設置 情報提供コーナー1

大阪市、大阪市住まい公社、(独)住宅金融支援機構からマンションの建替や改修、関連資金のことなどの役立つ情報を提供しました。

情報提供コーナー2

大阪市マンション管理支援機構の6賛助団体※の活動を紹介しました。
※(社)高層住宅管理業協会、( 社)大阪府宅地建物取引業協会、( 社)不動産協会、マンションリフォーム推進協議会、大阪ガス(株)、関西電力(株)

情報提供コーナー3

協力団体※により、地上デジタル放送、光インターネット、防犯関連の情報など、マンション管理に役立つ情報を提供しました。

※総務省、NTT西日本-関西、NPO法人大阪府防犯設備士協会、NPO法人大阪府錠前技術者防犯協力会。(財)マンション管理センター、大阪市消防局、(社)再開発コーディネーター協会、( 財)大阪府建築防災センター、(社)日本エレベータ協会関西支部

映像で見る、管理組合応援コーナー

大規模修繕工事・建替え事例・超高層住宅の防災対応など、マンションに関する様々なビデオを放映しました。

平成21年度「マンション管理の基礎知識」基礎セミナー報告

「マンションらいふあっぷ基礎セミナー」報告

会場の様子大阪市マンション管理支援機構・
大阪市立住まい情報センター主催

2009年度「基礎セミナー」
「マンション管理の基礎知識」

開催日時:2009年7月12日(日)・25日(土)

7月12日(日)   マンション居住者がお互いに快適に住むために、最低限知っておきたい法律知識、そして日常トラ第1日目ブル解決のヒントをテーマに開催しました。  

講座 マンションに住むということ
トラブルを避けて快適に住むために

基本的な法律について学びましょう



大阪弁護士会 弁護士
講師 木野 達夫(きの たつお)
■区分所有法の基本的な考え方  区分所有法の前に、一番の基本は民法になります。 民法の206条で「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権限を有する。」とされており、所有者が所有物をどう使うかは自由だというのが大原則です。
 しかし、マンションには複数の住戸が集まっていて、自分の所有する部分がどこまでなのかが必ずしも明らかでありません。まず所有関係を明らかにする必要があります。次に、ここはみんなの部分だとなった場合、誰がどのように管理するのか、だれが費用を出してどのように管理するのかも決まっていないとトラブルになります。
 また自分の所有する部分でも、民法の原則通り所有物は好きなように使っていいということではなく、やはり一定のルールが必要であり、その基本的なルールを定めたものが区分所有法という法律です。 ■管理規約   区分所有法につづいて重要なものは管理規約です。
区分所有法30条1項に規定があります。「建物の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」つまり区分所有法では大きな枠組みしか書いてないので、区分所有法に書いていないものについては管理規約で定めたらいいとあります。マンションについてのルールは自主的に管理規約で定めるということになります。
 管理規約は法律ではありませんが、かなり強い効力が認められています。区分所有法の46条1項に「規約及び集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても、その効力を生ずる。」と規定されており、管理規約を総会で決めたり変更した後に、マンションを購入して区分所有者になった方にも効力を有するということです。
 標準管理規約は、国土交通省が発表している管理規約の標準モデルで、それ自体は法律ではありませんが、実践的な内容になっています。この標準管理規約を参考にしている管理組合も多いと思います ■専有部分と共用部分   専有部分と共用部分について、基本に立ち返って考えてみたいと思います。たとえば区分所有者が自分の判断で変更できる部分はどこまでなのか。管理組合が立ち入ってもいい範囲はどこまでなのか。修繕などを行う場合に管理費から費用を支出するのはどこまでなのか。保険が保障する範囲はどこまでなのか。こういう観点で専有部分なのか共有部分なのかをみた場合に、後々問題になることがあるので、やはりきっちりと規約で定めておく必要があります。
 専有部分とは、構造上区分され、独立して住居等の建物としての利用ができることが要件になります。
 共用部分は3つあります。一つめは専有部分以外の建物の部分、二つめは専有部分に属さない建物の附属物、三つめは規約により共用部分とされた部分となっています。 ■共同生活におけるルール   マンションは近い距離でいろいろな方々が住んでおられるので、共同のルールを定める必要性が高いため、区分所有法では大枠の規定を設けています。
 基本的な規定が6条の1項です。「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」。当たり前ですが、建物の強度に問題が起きることをしては困りますし、共同の利益に反してはならない。宣言的な規定ですね。
 ルール違反があった場合どうすればいいのか。一般的には特別な法律がなくても、(1)違反行為を止めなさいと警告する、(2)規約に定めがあれば違約金を請求する、(3)違反行為の差し止めを請求する、(4)違反があって損害が生じたら、損害賠償請求をする、(5)違反行為者が不在で、緊急の場合には、同意なしに専有部分に立ち入る、といったことが可能です。 ■マンションの管理   管理組合は「建物、敷地付属施設の管理をおこなうための団体」と規定されています。分譲されて区分所有者が決まった段階で自動的に管理組合はできあがっているとみなされています。
 総会は管理組合の最高意思決定機関であり、重要な事項は総会で決めることになります。迷う場合は理事会ではなく総会で決議をとられるほうがいいと思います。
 管理会社の業務の範囲については、管理会社と締結した管理委託契約書に、管理会社がどこまでするかの範囲が定められています。ぜひ契約書を読んでいただきたいと思います。 ■マンションの管理の適正化の推進に関する法律   平成12年にマンションにおける良好な居住環境の確保を図るために、新たに「マンション管理適正化法」が定められ、管理組合の運営等について相談に応じる専門家としてマンション管理士制度が作られました。また、マンション管理業者についても登録を義務付け、適正に業務を行うように規定が定められています。
 管理組合についても「マンションを適正に管理するよう努めなければならない」とあり、法律としてはマンション管理士という資格制度をつくったり、管理業者を登録制にしたりしていますが、やはり最後は管理組合の努力がなかったらマンションの管理はうまくいかないという意味で書かれているのだと思います。
講座 日常のトラブルと解決のヒント

上手なコミュニケーションこそが
トラブルを解決するポイントです


講師 NPO法人 シヴィル・プロネット関西

 

■裁判以外での紛争解決方法を研究   シヴィル・プロネット関西では日常の様々なトラブルに対して、当事者同士の話し合いによる紛争解決方法を提案しています。トラブルについていろいろ研究しているうちに、その原因の一つは、コミュニケーションの問題があるんじゃないかと気づきました。トラブルになってしまうと、当事者間の対話関係が断絶し、当事者が感情的になっており、そのために話し合いができない。この状態からどうやって対話を復活させていくのか、ということを少し勉強していただければと思います。 ■挨拶はコミュニケーションの一つ   挨拶は、人間関係の土台を築く非常に素晴らしいコミュニケーションの一つです。コミュニケーションの話をする前に、「まず、挨拶をしてください」と言っています。ポイントをいつも語呂合わせでお伝えしております。「あ」は、明るく、「い」は、いつでも、「さ」は、相手より先に、「つ」は、ついでに一誉めです。その4つ、ちょっと覚えておいていただけますでしょうか。
 皆さんのマンションでは挨拶を、声に出してなさっていますでしょうか。挨拶一つでいろいろと変わってまいります。ただの挨拶と思わず、コミュニケーションの一つだと思って積極的にご利用いただけたらと思います。
 皆さんにこんなに挨拶をお勧めする理由は、挨拶のないマンションは些細なことが大きなトラブルになりやすからです。挨拶がないということは、コミュニケーションが普段からとれてないということですよね。同じことがあっても顔見知りだったら許せるのに、全然知らない人だったら無性に腹が立ったりするものです。 ■相手に認められないと苦痛を感じる   ではコミュニケーションについて少しお話をしたいと思います。ポイントは3つの「こ」です。まず「心」が大事、その次に「行動」、どんな行動をとるかということが大事、そして「言葉」選びも大事です。
 心理学の中で、交流分析という心理学がありますが、そのなかで「人は自分の存在を認めてくれるようなよい触れ合いがないと、心と体に障害がでてくる」というふうに言われています。自分を認めてもらえない状態に人間は非常に弱く、ものすごい苦痛を感じる動物なんだそうです。 ■言葉より大きな影響を与える「態度」   アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンという方が1971年に提唱した法則(メラビアンの法則)というものがあり、それは「曖昧なメッセージが発せられた時、人の行動が相手にどのような影響を及ぼすか」を調べたものです。
 それによると、目からの情報が55%、耳からの情報が38%、そして言語の情報が7%という結果が出ました。言葉と態度とで分けますと、言葉7%、それ以外の態度93%という率になります。
 ですから皆さんがお話を聞く時は、意識して態度を考えていただくことが大切だと思っています。まず相手の目を見ること。目を見るというのは他の誰でもないあなたの話を聞いていますという、これだけでメッセージなんです。その次、うなずく。これも大切なメッセージですね。これはあなたの声がちゃんと私の耳に届いていますということをお知らせしているわけです。そして相づちを打つ。これは相手のお話の内容がちゃんと伝わっているというショートメッセージです。それに加えて、相手のお話の内容を、たとえ自分と意見が違っても否定しないでとりあえずそのまま最後まで聞いてあげてください。 ■私メッセージで、お願いする   では最後に相手に届ける言葉についてお話をします。ここでは「私メッセージ」ということをお話したいと思います。これは私ということを主語にもってきていただくとわかりやすいと思います。あなたを主語にすると、相手を責めがちな感じになりがちです。実際に自転車の置き場の問題で考えてみたいと思います。
 まず、あなたを主語にすると、「あなた、ここへ自転車を置いたらだめでしょう」。これを、私を主語に変えてみます。「私はここに自転車をおかれると困るんです」。それに続けてお願いをする気持ちで言葉を続けます。「奥の駐輪場へ止めてくれませんか」。さあどうでしょう。皆さんならどちらで言われたほうが気持ちいいですか? 本日はトラブルを防ぐ聞き方、自分の意見の伝え方、そして話し合いというものに対しての考え方というものをお話ししてまいりました。トラブルの解決へのヒントとなればと思います。

7月25日(土)
建物の日常の維持管理を行う場合のチェックポイント、法律で義務づけられている定期報告制度、マンション管理が資産価値に与第2日目える影響などをテーマとして開催しました。  

講座 建物の日常の維持管理

日常点検を行っていると、
緊急時に慌てず迅速に対応できます


(社)大阪府建築士会 1級建築士
講師 今井 俊夫(いまい としお)

■建築設備の日常管理にタッチしよう  マンションの日常維持管理ですが、まずマンションの設備や施設は難しくないということです。
 自主管理の場合は、理事さん、役員さんが常日頃から建物設備の日常管理にタッチしておくことが重要です。大半は管理会社に委託し、日常管理は管理会社にまかせていますが、いざという時に管理会社任せにはできない状況も出てきます。深夜の漏水であるとか、思わぬ突発事故は、管理人さんがいる間に起こる保証はありません。少なくとも理事、役員さんは管理会社任せにしないでください。
 おそらくマンションの中の日常管理は、管理人さんがよくご存じだと思います。建物の排水の洗浄、消防点検、地下水槽、高架水槽の点検、いろいろな専門会社が日常の維持管理にかかわっています。どういう会社がどういう作業をしているか、まずそれを知ることが一番です。
 たとえば、エレベータやポンプ給排水設備などの点検報告書チェックはしていますか。点検報告書が出てきても、そのまま書棚にすぐに入れてしまうことも多いと思いますが、点検報告書に記載されている異常箇所など注意事項を見落としている可能性もありますから、毎回点検報告書を確認することは非常に重要です。 ■建物部位と施設・設備ごとに管理の要点を把握  建物の施設・設備について知るには、まず施設・設備ごとに要点を分類することが必要です。住棟、施設外構、建築設備のなかでは、給水設備、排水・通気設備、換気、空調設備、ガス設備などの項目があります。こういう分類に沿って維持管理を行うと、非常に貴重な建物の資料になります。いわゆる修繕カルテが皆さんの手で仕上がってくることになりますから、この項目はぜひ参考にしていただければと思います。

(1)住棟
1.屋上、塔屋、2.外壁、3.バルコニー、5.屋外の鉄骨階段(屋外の鉄骨階段は、建物の中で一番先に傷んでしまい、大きな修繕工事になる場合が多いので、注意が必要です)

(2)施設、外構
1.管理事務所、2.集会所、3.エレベーター機械室、4.電気室、5.受水槽ポンプ室、6.高架水槽、7.ゴミ置き場、ロータリードラム、8.駐車施設、9.駐輪施設、10.植栽、外構施設。
これ以外で、例えばプレイロットや別棟の付帯設備などがある場合はプラスアルファで考えていきます。

(3)建築設備
 建物の日常の維持管理というのは、6、7割方は設備の維持管理になります。
1.給水設備(ポンプ給水、揚水管、給水本管、系統バルブ、PS内系統縦管、枝管、量水器、止水バルブ)、2.排水・通気設備(汚水、雑排水立て管、排水横管(埋設管)、屋外会所桝、通気管)、3.換気、空調設備(管理事務所、集会所、共用トイレ等)、4.ガス設備(屋外埋設管、横引き、立ち上がり管)、5.電気設備(変受電設備、専用部分系統ブレーカ分電盤、送電配線、共用部分分電盤、照明等電気設備、テレビ共同視聴設備、電話設備、インターホン設備、防犯設備、避雷針設備)、6.消防設備(消火設備(消火器、屋内消火栓、連結送水管))、(警報設備(自動火災報知器、避難誘導備品))、(避難設備(避難設備、誘導灯及び誘導指標))、7.エレベータ設備、8.集塵設備 ■異常が起きたときでも慌てないですむために  日頃から緊急対策を検討して、日常点検をきっちりと行っていると、緊急時に慌てずに迅速に対応ができます。 「緊急時対応マニュアル」等を皆さんのマンションで独自につくって、それを運用していれば、皆さんのマンションで何がおこっても、たとえ大きな地震が起こっても、慌てることなく対応できると思います。
講座 特殊建築物の定期報告制度について

定期報告制度は、法律に定められた制度。
今年は、報告しなければならない年です。


(財)大阪建築防災センター
講師 大西 康之(おおにし やすゆき)

■定期報告制度とは?   定期報告制度は、使用されている建築物の維持保全のために法律で定められた制度です(建築基準法12条)。
また、建築基準法8条には、建物の所有者・管理者が建物の維持保全に努めなければならないと、あります。
 定期調査報告は3年ごとに行い、大阪府の場合は平成21年が共同住宅の報告する年です。また、新築の場合は建築確認完了済証の交付を受ければ、初めの対象年は免除になります。
 消防設備点検との違いは、消防設備は、消火・避難設備・警報などの設備の点検をしますが、定期報告は、建物本体の防火性能とか避難性能、それと建物の劣化損傷状況なども踏まえて建物本来の性能・耐力・使用状況などを現状把握することを目的にしています。 ■定期報告のしくみ   報告義務があるのは建物の所有者・管理者で、管理組合の場合は理事長です。調査は1級・2級建築士または特殊建築物等調査資格者が行い、所有者・管理者が押印し報告書を提出する必要があります。 ■対象の共同住宅と定期報告の構成   マンションは共同住宅という位置づけで特殊建築物に当たります。定期報告を出していただく対象は、階数と規模で決まっています。まず3階以上の共同住宅であるかどうか。3階以上の場合でも、1000m2を超えているかどうか。もう一つは、5階以上に共同住宅があれば、500m2でも対象になりますので気をつけてください。
 特殊建築物の定期報告には、建物本体のチェックが主となる、特殊建築物等の定期調査と、建築設備の定期検査があります。ただし、大阪府内の場合は非常用エレベーターが設置されているような高層のマンション(31mを超えているマンション)が対象で、それ以外のマンションは、建築設備の定期報告は対象外になっています。もう一つ、昇降機等の定期検査。これはエレベーターが設置されていれば定期報告をしていただきます。 ■定期調査の内容   定期報告の調査内容ですが、構成は常日頃の維持保全につながる内容となっており、全部で144項目あります。
基本的には調査項目の8割は目視でチェックをします。 敷地および地盤について、建物の外部について、屋上及び屋根について、劣化損傷状況や防火性能が保たれているかどうか、避難経路が取れているかどうかなどについて目視を中心にチェックします。
 建築物の内部についても、防火区画が改変されていないか、防火戸がちゃんと閉まるようになっているか。避難施設等については、一番大事なのは2方向避難ですね。階段等も2方向に逃げられるかどうか、そういったことを見ます。その他にも、石綿(アスベスト)が使われている場合はチェックしたり、避雷針や煙突、福祉の配慮などを見る項目もあります。
 皆様方には、今後も維持保全を続けていただきながら、定期報告制度のご理解を深めていただきたいと思います。
講座 マンション管理と資産価値
北谷 奈穂子(きたや なほこ)

競争厳しい中古マンション市場で
資産価値を左右するのは「管理」だけ


(社)大阪府不動産鑑定士協会 不動産鑑定士
講師 北谷 奈穂子(きたや なほこ)

■鑑定評価の3手法   私たち不動産鑑定士がマンションを鑑定評価をする際には、三つの手法で試算価格を出し、最終的にこれらを調整して評価額を決定します。

(1)原価法
 原価法は、費用性に着目して価値を評価します。新築時の販売価格は土地の値段、建物の値段、間接費を積み上げたものです。その後、築年数に応じて価値が下がっていきます。その減価を計算して積算価格を算出します。

(2)取引事例比較法
 取引事例比較法は、競争相手になる他のマンションと比較して値段を出す方法です。基本的にはライバルになるような取引事例を4、5件集めてきて、それぞれのマンションの持つ要因を細かく分析し、評価します。

(3)収益還元法
 収益還元法は、収益性に着目します。今住んでいるマンションが賃貸に出されたときに、いくらで貸せるのかに着目して評価を行います。 ■変更が可能なのは「管理」だけ   マンションの資産価値を形成する主な要素は、土地、建物、管理の3要素です。土地は、後から何とかすることはできません。理事長さんがいくら頑張っても、駅に1メートルでも近づけることはできません。建物も、基本の設計施工は、新築時に決まっています。ところが管理は、購入後、マンションが朽ち果てるまで関係しますし、どれくらい頑張るかによって資産価値が大きく左右されます。皆さんが頑張るとしたらここしかない、というふうに強く認識していただきたいと思います。 ■マンションを取り巻く状況   マンションは毎年20万戸が分譲されており、平成20年には545万戸を越えました。それにもかかわらず、一般世帯総数の推移を見ると、そろそろ天井で、これ以上増えない予測になっています。
 また、これからマンションを買おうという消費者の意識も、だんだん変わってきています。マンションを買う際に、専門家にお金を払って同行してもらい、問題のない建物かどうか、管理はどうか、修繕積立金はどうか、ということをチェックしてもらう人も見られるようになりました。
 消費者ニーズの高まりに伴って、情報開示も進んでいます。例えば、(財)マンション管理センターが行うマンションみらいネットでは、登録マンションの管理情報が詳細に開示されています。 ■管理は、コミュニティの形成から   鑑定士がマンションの評価をする際に、管理の善し悪しを判断するには、どこを見るか。日常管理では、エントランス、ホール、エレベーター、階段、廊下、建物の内部です。外部は、敷地内の駐輪場、植栽の清掃。郵便受けなどもチェックします。修繕という意味では、外壁、内壁、床のひび割れ、鉄部の錆、屋上防水のシートの剥がれ、水漏れなどの有無を見ます。
 また、長期修繕計画があればいいというものではなくて、それが必要にして十分な内容かどうか。その計画に対して積立金は十分かどうか。それから修繕費、管理費の滞納はないかを見ます。このように、日常の管理と修繕、それから滞納等の会計面などがしっかりしていれば、おおむね管理は良好じゃないかと判断します。 ■コミュニティを形成して頑張ってください   所有者全員が資産価値としての維持について自己責任の意識を持つことと、共同住宅に住んでいるんだという自覚を持って組合活動に参加してもらえる仕組みにしていくことが重要と思います。というのも、所有者の皆さんの合意が得られないと、必要な場合に管理費や積立金の増額ひとつできません。そうなると資産価値が守りたくても守れません。
 マンションの中で共通認識が生まれ、円滑な合意形成が生まれるには、コミュティの形成が大切です。いきなり「増額しますよ」と総会で無理に通すのではなくて、必要性を皆さんが納得し、その上で意志決定できるようなコミュティを形成できるよう頑張っていただきたいと思っています。  

 

平成21年度「大規模修繕工事見学会」報告

「管理組合交流会&相談会」報告
6月27日、大阪市マンション管理支援機構として第6回目の大規模修繕工事見学会をオークプリオタワー管理組合のご協力により開催しました。オークプリオタワーは、JR・地下鉄弁天町駅近くに建ち、SRC造地下2階・地上50階建・総戸数353戸の超高層マンションです。築16年を経過し、今回が初めての大規模修繕工事です。
5つのテーマについて活発に意見交換。他のマンションの実情から解決のヒントを

●9年前から積立金の改定に着手

地上50階建てのオークプリオタワーは、関西における超高層マンションの草分け的存在。
築16年を迎えての本格的な大規模修繕工事ということで見学会への関心も高く、定員よりも多くの参加者の方々が集まりました。
まずオークプリオタワー管理組合の高道理事長から、「超高層マンションの大規模修繕工事は、先行事例がなくて大変でした。私どもの経験が少しでもお役に立てばと思い、引き受けました」と挨拶が あり、稲嶺監事からは経緯の説明がありました。 「約9年間の助走期間がありましたが、最初に着手したのは、長期修繕計画の策定と修繕積立金の改定です」。最初1m2当たり50円だった積立金を100円、130円、150円と段階的に改訂しながら積立金を準備したことや、コンサルタントや施工業者の選定方法などについて説明がありました

●関西で初の「昇降式移動足場」を採用

続いて施工会社から、工事の手順や品質管理、近隣安全対策などについて説明。
住民のプライバシー確保と作業員の安全確保のための工夫として、ベランダのパーテーションの下部を開閉式にする工夫などが紹介されました。また、マンションの外壁工事の足場は、20階建てまで なら枠組足場が一般的ですが、ここは50階建て、高さ150m以上の超高層マンション。そこで風の影響を受けやすい吊り下げゴンドラ足場よりも安全で、多くの作業員が作業できる「昇降式移動足場」が関西のマンションで初めて採用されました。

●超高層マンションの工事現場を見学

3班に分かれての現場見学では、さっそく昇降式移動足場を下から見上げるなど興味津々。
外壁タイルの修繕工事の様子などを見た後で、マンション内に入り、外壁等の塗装工事、シーリング改修工事の様子などをつぶさに見学。また、昇降式移動足場のデッキも間近で見ました。デッキ幅は32mもあり、かなりの迫力です。
現場見学終了後は、質疑応答。修繕積立金の基準、業者選定方法、建物診断の方法、次回の大規模修繕工事の計画などについての質疑応答の後、無事に終了しました。参加者の中には、超高層マンションに住んでおられる理事の方もおられ、「とても参考になりました」と満足そうな様子でした。

<見学マンションと工事の概要>

オークプリオタワー(大阪市港区弁天)
SRC造・地下2階・50階建・総戸数353戸/築16年
工事内容(1)躯体及びタイル修繕工事
(2)シーリング改修工事
(3)外壁等塗替工事
(4)鉄部等塗替工事
(5)防水改修工事
(6)床改修工事
(7)その他改良・改善工事
工 期平成21年2月2日〜平成21年12月20日予定 施 工 (株)長谷工コミュニティ