理事会の熱意と専門家のサポートが、耐震改修工事を成功へと導きました。
●色々な人とタッグを組んでいくことが重要
メゾンドール帝塚山は1977年(昭和52年)に竣工したマンションで、耐震改修工事が概ね完成し、引き続き大規模修繕工事が行われている状況です。最初に、メゾンドール帝塚山管理組合の役員の方にお話を伺いました。
理事会が耐震改修に向けて動き始めたのは、平成24年度に大阪市主催の出前講座を受けたことがきっかけでした。同年度に耐震簡易診断を実施し、平成25年5月には耐震診断を実施、そして平成27年3月に耐震改修工事に着手しました。耐震改修の発案から4年の歳月をかけられたそうです。
居住者の方が少しでも耐震改修に興味を持つように、理事会と専門委員会は、耐震改修に関する情報を正確に発信するだけでなく、外観をおしゃれにすることや子供が安心して遊べる中庭にするなどの提案も合わせて発信されたそうです。
このような取組みの結果、専門家の協力もあり、総会では入居者の全員が参加し、耐震改修工事および大規模修繕工事の実施は4分の3以上で賛成決議されたそうです。
「大切なことは、将来の夢を居住者とどれだけ語り合えるか」「専門家の方とは、信頼し合ってタッグを組んで頂きたい」と、強調して説明されていました。
●理事会のパワーを活かして補助金制度を活用
次に、アゴラスの担当者からお話を伺いました。最初に理事会から相談を受けた時は「耐震化とは、何をどうすることか?」という内容から始められたそうです。当初は、居住者の中には耐震診断に反対の方もいたようですが、理事会の方が「今せずに、いつ誰がするのか?」といった強い熱意で説得されながら進めてこられたエピソードも紹介されました。
また、実際に住民説明会で説明された耐震補強工法の内容についてもご説明いただきました。当時アゴラスから理事会に以下の3つの工法を説明され、最終的には(2)アウトフレーム工法が採用されたそうです。
1)グレース工法…耐力は大きく費用は安いが、見映えが悪い。
2)アウトフレーム工法…すっきりした見た目だが、敷地に制約がある。
3)免振・制震工法…コストが非常に高い。
このほか、大阪市の補助金制度の手続きを同時に進めるなど、大変なことも多かったようですが、理事会の熱意、居住者の協力、専門家と大阪市住まい公社のサポートが、ここまで進められた要因であると説明されました。
●アウトフレーム工法の特徴と工事について
次に、耐震改修工事を施工した矢作建設工業株式会社の担当者から、実際に行った「セスレットアウトフレーム工法」について説明して頂きました。今回採用されたセスレットアウトフレーム工法の主な特徴は以下のとおりです。
1)バルコニー、廊下などを残すことができる。
2)補強後も採光や動線が維持できる。
3)外観デザインが損なわれることなく、外観のグレードアップが図れる。
4)入居しながら工事ができるため、引っ越しが不要である。
5)現場での工期短縮が図れる。
工事写真や設計図を交えながら非常にわかりやすく説明していただきました。
●現地見学を終え、建物のモダンな雰囲気に感心しきり
現地見学では、すでに外部足場がなくなり、建物の外観が
しっかり確認できるような状況でした。新たに補強されたフレームは鮮やかな塗装が施され、モダンな雰囲気の建物でした。平成28年6月末(予定)には、全ての工事が完成するとのことです。このような耐震性能の向上と合わせた大規模修繕の事例について、管理組合等をはじめとした、工事に関わった方々の協力により、生の声に触れながら実際の建物を見学できたことは、参加者の皆さんにとって、大いに参考になったのではないでしょうか。
<見学マンションと工事の概要>
昭和52(1977)年竣工(築39年)
RC5階建3棟・総戸数79戸・委託管理方式
工事内容 |
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工期 | 平成27(2015)年3月~平成28(2016)年6月末(予定) |
施工 |