セミナー情報

平成17年度「大規模修繕工事見学会」報告

大規模修繕工事見学会
修繕委員の募集、設計監理者、
施工業者の選定などに知恵を絞る。

3月18日、大阪市マンション管理支援機構としては、第2回目の大規模修繕工事見学会を、ベイシティ大阪管理組合のご協力により開催しました。ベイシティ大阪は、地下鉄朝潮橋駅から徒歩12分の場所に建ち、3棟でSRC造8〜21階建てからなる・総戸数435戸の大規模マンションです。築12年を経過し、今回が初めての大規模修繕工事です。

<見学マンションと工事の概要>

ベイシティ大阪(大阪市港区池島3-5-1)
SRC造8〜21階建て3棟/総戸数435戸/築13年
工事内容(1)下地補修 (2)壁面塗装 (3)鉄部塗装 (4)防水 (5)シーリング (6)取り替え修繕 (7)その他
工 期平成17年9月〜平成18年6月
設計・管理建物診断設計事業協同組合
アーバンスペース建築事務所
施工(株)長谷工コミュニティ

● 大規模修繕委員会設立までの経過説明

 まず、大規模修繕委員会設立までの流れを、佐古理事長からご説明いただきました。
 「2年前の総会で、築10年以上経過しているということで、11期の業務計画に建物診断を承認してもらいました。 管理組合だけの人間だけではできないので、3社のコンサルタント会社からプレゼンテーションを受け、実際に設計監理されたマンションを訪れ、そこの理事長さんや大規模修繕に携われた委員長さん等々から意見を聞きました。 費用については、調査診断と設計監理の見積もりを提出してもらいました。 その中で、建物診断設計事業協同組合(以下、建診協)アーバンスペース建築事務所に決めた理由は、費用の他に、大規模修繕時にマンションに足を運んでもらえる回数の多さでした。
(写真) そして、この時期に大規模修繕委員会を設立し、委員を公募しました。残念ながら立候補は1名だけでした。あとは、過去の理事経験者や建築の専門家などの方に依頼状を出したり、面接をさせていだいて、管理組合の理事2名も加えて、何とか9名の委員で発足しました。同時に委員会の目的や議決の総数などの内規を定めました」。

● 施工業者選定までの経緯説明

 次に、施工業者選定までの経緯説明を、平野理事からしていただきました。
 「一昨年の12月にアンケート調査を実施しました。 住まわれている方の関心も非常に高く、90%の回収率をあげました。 そして1月に建物診断調査とバルコニー立ち入り調査を実施し、劣化状況の確認をしました。 その後、3月に住民説明会を開き、写真やスライドを見て頂いて現状を確認してもらいました。
 それから本題である施工業者さんの選定に入りました。選定に当たっては、コンサルティング会社を中心に、共通工事 仕様書と見積書を作成。 そして年間2億円の工事実績や、直近の工事実績、資本金の規模など業者さんのレベルを決めて公募をしました。 応募企業は7社ありました。 選定には採点制を採用。 70点を工事金額、ヒアリング調査を20点、経営の健全性を10点とし、総合点で判断したわけです」。
 最終的に3社に絞り、同規模マンションの施工実績を見たり、ヒアリングをして、同じ採点制で、最終的にベイシティ 大阪の管理業務を委託されている長谷工コーポレーションに決まりました。

● 建物調査診断結果および工事内容の説明

 次に建物調査診断結果および工事内容の説明を、建診協の松本さんにしていただきました。
 「建物がコの字型に曲がっている他、海の近くで風も強くふいています。そこで調査診断も、通常ではやらない方法もやっています。 その前に管理組合さんからお話しがあったように、住民の方にアンケートをとりました。 回収率も90%もあり、おかげでいいデータを取ることができました。 バルコニーも60数件入らせていただいています。 高い意識を持った方がたくさん住んでおられ、とても役立ちました」と説明。 さらに診断方法と、具体的な工事内容、改修工事の手順などが説明されました。

● 活発な質疑応答

(写真) 続いて行われた質疑応答では、多くの質問が寄せられました。
 「うちのマンションでは、修繕委員のなり手がいないので悩んでいるところです。 どういう方法をとられたのか」と質問に対して、担当の平野理事から説明がありました。 「まず理事の経験者に手紙を書きました。 “こういうことで立候補者を募集していますが、ぜひご参加ください”と60通ぐらい出しました。 さらに個別依頼して最終的に9名の方に了解いただけました。 うち2名が女性ですが、デザインや色決めなどでは 女性の意見は欠かせません。 だから女性にお願いした方がいいと思います」。
(写真) この他にも、「共通仕様書はどんなふうに作られたのか?」 「竣工検査の基準は?」「材料の出荷証明と現物の検査をどうされたのか?」 など、かなり突っ込んだ質問もあり、それに対する答えがありました。

● 現場見学&質疑応答

(写真) そしていよいよ現場見学が行われました。
 当日は、あいにくの雨。 コース変更をしての見学でしたが、参加者は3つの班に分かれ、建診協の松本さん、長谷工コーポレーションの2名が班長となって参加者を引率。 班長による施工状況の説明に、参加者たちは興味深く見て回りました。 現場見学を終えた後で、会議室に戻り、再び質疑応答が行われました。 「塩ビシートを貼られている廊下の日常清掃と定期清掃の方は?」という質問に続いて、 「管理会社と施工会社が同じでは、管理会社にリードされて決めたのではないかと疑われる。 それをどう克服されたのか?」という質問に対して、佐古理事長より、 「業者選定に当たっては透明性の確保が何よりも大切。 決め方について居住者の皆さんに細かくご説明いたしました」との答えがあ りました。
 ちなみに当日は、26名の参加者がありました。 「管理組合の生の声が聞けて、とても参考になった」と大好評でした。
 今回、会場をご提供いただき、 とても貴重な体験をお話いただいたベイシティ大阪管理組合の皆様には、心よりお礼申し上げます。
(写真)