11月6日(日)第1日目−1
適切な管理運営によって大切な個人の財産、 共有の財産を守るため管理規約について考える。〈講師〉
(公財)マンション管理センター 大阪支部長 長田 康夫(おさだ やすお)
1 マンション住まいの 基本的な考え方
■共同生活をおくる上での区分所有法
全国のマンションストック戸数(平成27年 末現在 )は 約 623万戸 、築30年 以上が約162万戸という現状があります。マンション は一つの建物に共有でない複数の所有権(区分所有権)が存在する物件で、専有部分と共用部分があるため、昭和37年に「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」が制定されています。共同生活をおくる上での最低限のルールであり、共用部分の持分のみの処分は不可であることや、共有物の分割請求の不可など、民法上の共有の概念とは異なっています。
■管理の実務面での管理規約について
マンションの管理組合では法律に即して 全員の合意形成で定めた管理規約が、最高自治規範としてあり、当該マンションの中では法律と同等の効力を有し、区分所有法では管理をするのは一般にいう管理組合となっています。集会を開き規約を定めて管理者を置きますが、その管理を実務面で手助けするのが管理のプロである管理会社で、委託契約を結ぶことが一般的に行われています。
区分所有法以外に、国は法律や指針を用意していますが、専門家に管理の助言や指導を頼むことがあります。管理していくための道具としては、マンション管理適正化指針、マンション標準管理規約及びマンション標準管理規約コメント、マンション管理標準指針などがあります。
2 管理規約の基本的事項
管理規約は法律と同等の効力を有し、諸決議について総会で決める手間を省くことができます。
①管理規約に定められる事項…管理または使用に関する区分所有者相互間の事項。
②管理規約の効力…中古購入の区分所有者はもちろんのこと、賃借人は住まい方のルールとして遵守しなければならない。
③管理規約の改正…区分所有者および議決権の各3/4以上の特別決議で可能。これは強行規定で遵守しなければならない。
④管理規約の衡平性…改正時は組合員相互の利害の衡平性を図り、それに至る経緯等を総合的に考慮する必要がある。
3 管理規約の改正の時期は?
①法律・標準管理規約が改正されたとき
(標準管理規約が平成28年3月14日に大幅に改正されています。)
②管理規約の内容が守れなくなったとき規約違反の状態を放置すれば、これは管理組合の怠慢です。
③管理規約内容があやふやで組合内で解釈が異なる意見が出たとき たとえば共用部分を明確にするために図示で記載も可能。
④マンションの将来における適正な管理のために問題を未然に防ぐとき
4 標準管理規約の改正の背景
改正の経緯および背景については「高齢化等を背景とした管理組合の担い手不足・管理費滞納等による管理不全、暴力団排除の必要性、災害時における意思決定ルールの明確化などの課題が指摘され、これら課題に対応した新たなルールの整備が求められて いる」(国土交通省 )ことから、今回改正に 至ったとされています。
■管理の適正化に関する指針の改正
①コミュニティ形成の積極的な取り組みを新たに明記
②外部専門家を活用する場合の留意事項を明記
■標準管理規約改正の主要項目は主に3つ
①選択肢を広げるもの
・外部の専門家の活用・議決権割合
②適正な管理のための規定の明確化
・コミュニティ条項等の再整理・管理費等の滞納に対してとり得る各種措置
③社会情勢を踏まえた改正
・暴力団等の排除規定・災害時の管理組合の意思決定・管理状況などの情報開示
5「マンションの管理の適正化に 関する指針」および「マンション標準管理規約」改正事項
①外部の専門家の活用…外部の専門家の就任 も可とし、利益相反取引の防止、監事の権限 の明確化等の所要の規定を措置。外部の専門 家が直接管理組合の運営に携わることも想定
し(、1)理事・監事外部専門家型又は理事長外 部専門家型、(2)外部管理者理事会監督型、(3)外部管理者総会監督型の3つの基本的パターンを示した。
②駐車場の使用…駐車場が全戸分ない場合における入替制などの公平な選定方法、空き駐車場の外部貸しに係る税務上の注意喚起等の解説を追加した。
③専有部分等の修繕等…理事会の承認等を得て実施とした。承認必要工事の確定、工事後の区分所有者の責任と負担、承認不要工事の届け出義務(第17条専有部分の修繕等)を明確にした。緊急時などはこの限りでない。
④暴力団等の排除規定…暴力団の構成員に部屋を貸さない、役員になれない、とする条項を整備した。
⑤災害等の場合の管理組合の意思決定…緊急時の応急修繕は理事会で決定すること等とした。
⑥緊急時の理事等の立入り…災害や事故が発生した場合の緊急避難措置として理事長が専有部分に立ち入ることができることとした。
⑦コミュニティ条項等の再整理…防災・防犯、美化・清掃などのコミュニティ活動は可能である ことを明確にし、各業務を再整理した。
⑧議決権割合…新築物件における選択肢として議決権について、住戸の価値割合に連動した設定も考えられる旨を追加した。
⑨理事会の代理出席…事前に理事の代理出席についてあらかじめ代理者を定めておく等を追加し、議決有効性を巡るトラブル防止を図った。
⑩管理費等の滞納に対する措置…滞納者に対する段階的フローチャート等を提示した。
⑪管理状況などの情報開示…情報を開示する場合の条項を整備した。
⑫その他所要の改正等…建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律の施行等 に伴う改正、字句の修正等を行った。
その他改正項目ではトラブルを防止するために、役員の欠格条項・役員の誠実義務等・利益相反 取引の防止、理事長自身の利益相反行為に関し代表権の喪失・監事の権限の改正等を行った
11月6日(日)第1日目−2
マンションの民泊・シェアハウスについて プラス面とマイナス面をしっかり理解し管理組合の今後の対応を考える
〈講師〉
大阪弁護士会 辻岡 信也(つじおかしんや)
民泊に法令上の定義はなく、住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供することを指して「、民泊サービス」ということが一般的です。シェアハウスも法令上の定義はなく、主として個々の賃借人が賃貸人との間で賃貸借契約を締結し、寝室を単独で使用し、キッチンなどを共同で使用する住宅を指します。一つの小さい部屋にたくさんの人が押し込まれている場合、衛生面・騒音面で問題となる違法なケースが多く、社会的にも問題になっています。
■民泊のプラス面とマイナス面
・プラス面として…外国人旅行者の急増の対応として宿泊施設不足対策・民泊ならではの宿泊体験・空き家の有効活用・不動産市場の活性化。
・マイナス面として…騒音やごみ、生活習慣の違い、日々変わる入居者との摩擦、犯罪の舞台になりうる(殺人・傷害・薬物使用・盗撮など)、セキュリティの弱体化、治安の悪化、他の住民の管理費にフリーライド(住民負担の増)などがあげられる。
■民泊の現状
平成28年4月現在、民泊施設の件数は約3万4千件で、東京都、京都府、大阪府のシェアが74%。特に大阪市中央区のシェアが大きい。ほとんどの民泊が違法状態で、経営しているのは日本人、中国人、その他外国人が1/3ずつ。近年は中国人による不動産購入がブームで、違法を認識しつつも制裁を恐れていないというのが現状です。理由は、客単価が高く、民泊仲介サイトの台頭で稼働率も大幅に向上しているため、賃貸するよりはるかに利益が大きいからです。ほとんどが大手「Airbnb」や中国人を対象にした「自在客」など民泊仲介サイトで利用客を得ています。
2民泊に関する法令
■旅館業法…個人が、自宅や空き家の一部を利用して行う場合(民泊サービス)であっても、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」にあたる場合には、旅館業法上の許可が必要です。許可を受けていないと罰則6か月以下の懲役又は3万円以下の罰金(旅館業法第10条)が課せられます。
■国家戦略特別区域法第13条第1項…外国人観光客の受け入れを目的として制定され、東京都大田区、大阪府、大阪市で条例が施行されています。大阪府の認定件数は、平成28年4月以降わずか2件しか認定されていません。最低宿泊日数の6泊7日の制約が、民泊の申請が少ない最大の理由と考えられており、政府は更なる制度緩和を検討しています。
■大阪市の現状(平成28年11月6日現在)
大阪市でも、平成28年10月31日に民泊条例が施行され、同日から申請受付が開始されました。違法民泊の通報窓口が設置されています。
市内分譲マンションで民泊を行う場合には、認定の申請に際し、管理規約で民泊が禁じられていないことを事業者が証明する必要があります。また、住民説明会の開催か、全戸訪問等による事前に説明を実施することとなっています。このほか、消防や衛生上の設備を整える必要があります。
最低宿泊日数は、現在のところ6泊7日ですが、平成29年1月には2泊3日に短縮し、緩和する予定と聞いています。
■民泊新法…旅館業法とは前提が異なり、宿泊施設としてではなく住居として貸し出す仕組みです。そのため、現在旅館営業が出来ない場所での営業が認められる可能性があります。登録は義務付けられますが、これにより適法化のハードルはかなり下がることが予想されています。インタ-ネットによる届出も可能となる予定です。
3賃貸人(分譲貸ししている区分所有者)の自衛
■民泊・シェアハウスの法律関係
・民泊…賃借人が利用者を宿泊客として利用させれば旅館業法違反。これを潜脱するため、賃貸借契約により利用させることもありますが、この場合は無断転貸で契約解除事由となります。(民法612条)。
・シェアハウス…原則として寄宿舎にあたり、用途変更に確認申請を要しますが、面積が100㎡までなら用途変更にあたっての建築確認申請は不要です。ただし、法適合性は必要ですので、法適合していない場合は違法な利用として解除事由となります。また、無断転貸や目的外利用としても契約解除事由となります。
■契約解除
・無断転貸…賃貸借契約で特に許可したり個別に許可したりしない限り、解除事由となります(民法612条)。一般的な賃貸借契約書では無断転貸の場合の無催告解除が認められています。
・目的外利用…賃貸借契約で用法を定めた場合、目的外利用が用法違反として解除事由となります。
4管理組合の自衛
■マンション標準管理規約の現状
マンションで民泊営業は許されるのか、管理組合が差し止めできるのかについては管理規約を確認する必要があります。
標準管理規約第12条(専有部分の用途)では、「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」とあります。標準管理規約のままで民泊が実施可能かは、この「専ら住宅」に民泊利用が含まれるかの解釈によります。
国土交通省は、これを解釈に任せず、管理規約における民泊の許可、不許可の明示をすべきだとし、記載例について関係団体に通知し、周知すると言っています。したがって、プラス面、マイナス面をしっかり理解し、住民が安心して暮らしていくための対策が求められます。
■マンション管理規約による民泊・シェアハウスの明示的禁止
マンション管理規約の変更手続きは、管理組合の集会の特別決議(組合員総数および議決権総数の各3/4以上の議決)を経る必要がありますので(区分所有法第31条)、事前にしっかり根回しすることが必要だと思います。なお、民泊を禁止する場合の規約については、国土交通省のHPの「民泊サービス」のあり方に関する検討会(平成28年2月29日)第6回資料1「管理組合法人ブリリアマーレ有明Tower&Gardenご提出資料」が参考になります。
■訴訟手続きによる民泊、シェアハウス営業の差し止め
◇禁止事由…根拠条文には、区分所有法第
57条第1項違反と管理規約規定の用法違反がある。
◇証拠収集…宿泊者の証言、映像、写真
この場合プライバシーや肖像権侵害に注意が必要、その他周辺住民の複数の証言、民泊仲介者サイトの登録情報(Airbnb、自在客等)などで対応することができる。
◇難点
・民泊を営業する所有者が不明の場合
訴状や申立書の送達が困難だが適切な住所調査を経れば相手の受取を確認しない簡易な送達は可能。住所等は必ず管理組合に届けさせる仕組みを作って形骸化させないようにすること。個人情報保護の観点から組合員個人に対して開示することには注意が必要。
・民泊営業する所有者が海外在住の場合
海外への送達は国家間の条約に基づき大使館等を通じて行われる。送達や翻訳など付随する費用が発生するほか、相当の期間も要する。
・管理規約での外国人所有者の排斥
平等原則の関係で非常にデリケートな問題。外国籍であることだけを理由に排斥することは不可能。
5まとめ
民泊・シェアハウスとしての利用には光と影があります。今後、国等の規制緩和がなされていく方向にあることは間違いありません。管理組合として民泊利用を受け入れるのか、受け入れないのか早急に話し合わなければいけない時期にあります。受け入れるのであれば明確なルール作りをする。受け入れないのであれば管理規約の改正を急ぐ必要があります
11月13日(日)第2日目−1
快適で安全なマンションライフ実現のため設備への心がけと的確なメンテナンスを〈講師〉
公益社団法人 大阪府建築士会 津村 泰夫(つむら やすお)
これまで受水槽と言えば、コンクリート製で六面点検ができないものや、屋上に設置した受水槽に鳩の糞が入るもの、躯体を利用した水槽で蓋のサビが入るものなど多くの課題がありました。できるだけFRP(繊維強化プラスチック)製やステンレス製の受水槽に取替えることをおすすめします。
昔の設備配管と言えば、鉄管や塩ビライニング鋼管が主流でしたが、継手の部分にサビが溜まる欠陥があります。給水方式も昔は分岐配管方式のいわゆる数珠繋ぎ配管でしたが、今はどこで水を出しても同じ圧力が得られるさや管ヘッダー方式に変わってきています。赤水が出る原因は、給水配管が錆びていることが多く、土の中や、特に線路近くで配管が錆びることがよくあります。異種金属の接続部分で錆びる場合もあります。
■排水設備
大阪市の下水は、雑排水と雨水を合流させています。排水管は、鋳鉄管や最近は塩化ビニル管がよく使われています。地下室があれば必ず地下ピットがあり、そこに排水ポンプが設置されています。多くのマンションは、建設後に建物の周りが地盤沈下し、建物本体から出ている排水管が潰れたり、外れてしまうケースがあります。敷地周囲で異臭がする場合は、排水管が外れていると疑ってみるとよいと思います。 屋上の通気管は、雨ざらしのため、錆びていることが多いので、大規模修繕の際に補修されるとよいと思います。
■消火設備
火災の際に消防隊が使用する消火栓や連結送水管設備などがあります。連結送水管には水を満たしておくために屋上などに補給水槽があるのですが、管理会社等の点検記録を見ると「OK」ですが、水槽を開けて見ると水が入っておらず、錆びてボロボロになっていることが時々あります。新築時にステンレス製になっていれば良いのですが、大抵は鉄製の為、12、13年から15、16年程度経過すれば、ステンレス製に取替えることが多いので参考にしてください。
原則11階建以上のマンションは、スプリンクラーの設置が必要となっています。また地下に駐車場がある場合は、泡消火設備が必要となります。
■ガス設備
ガス管については、ガス会社がよく点検されているので、それほど心配することはないと思います。
■給湯設備
給湯設備は、電気温水器とガス給湯器があります。取扱いが難しいものでは、セントラルヒーティング設備があります。電気温水器は、最近は小型化し、これらを採用しているマンションが増えていますが、湯量の問題で苦情が寄せられ、トラブルになっているケースがあります。
■空調換気設備
換気設備は、共用部分では、管理人室、集会室、受水槽、エレベータ機械室、電気室などの設備室に設置されていますので、動作点検を行ってください。専有部分は、居室、水回り、台所のレンジフード、トイレに換気扇が取り付けられています。20年ほど経ってきたら、管理組合で一括し取替え工事をするケースがあります。
給排気口が目詰まりしていることもよくありますので、時々点検し清掃してください。お風呂の換気扇は、天井裏でダクトが外れていることがよくありますので、ユニットバスの天井裏を時々確認していただきたいと思います。中には建築当初からダクトと繋がっていないケースがありました。
2電気設備
■受電設備
電力会社から6600Vの高圧で引き込みマンション内の受電室で200Vと100Vの低圧に変圧し、各戸に送るための高圧受電設備では、高圧部分は電力会社、低圧部分は管理組合で管理しなければなりません。施設的には柱上開閉器が責任分界点になります。配電盤の開閉器の交換は30年を目安にしてください。
マンション一括受電サービスは、第三の電力会社が高圧電力を変換して各戸に提供するサービスです。電気代は安くなりますが、3年に一度の点検の際に停電します。既存マンションで導入する場合、全員同意がなければ契約できません。
■幹線設備
電気を各戸の分電盤や共用部の電灯・動力盤へ送る設備です。配管や配線、ケーブルラック等があります。
近年、IHなど電化製品の設置希望の増加により電気容量をアップする場合、回路数を増やすだけでなく、幹線を太くし、受電室変圧器の容量増加が必要です。
■動力設備
給水ポンプ等を制御する電力や制御機器、受水槽や高架水槽に設置される電極などに使われています。
■共用電灯設備
白熱灯からLEDに替えるのは良いと思いますが、直管型の蛍光灯の場合なら消費電力に差がないので、蛍光灯の寿命まで使用された方が良いと思います。
■電話配線設備
電話配線は、電話会社が行いますが、配管や接続を行うための盤は管理組合が維持管理します。複数の盤がある場合、一箇所にまとめるとすっきりします。
■テレビ共聴設備
屋上に設置されたVHF・UHFアンテナから電波を混合分配し、増幅して各戸までケーブルで送る設備です。不要になった近隣対策用アンテナ等が残置されたままとなっている場合がありますので、影響の有無を確認し、不要なら撤去が望ましいと思います。
■自動火災報知設備
全戸必ず点検することが重要です。点検内容によっては、火災保険の費用が変わることがあります。これら設備は、点検の都度、不具合があれば補修していると思います。
■避雷針設備
高さ20mを超える建築物には必要です。避雷針から導線で建物鉄筋に接続され、地上の接地銅板に接続されています。
■エレベータ設備
地震時の自動着床、管制運転システム、耐震構造強化、ドア廻りの安全強化、車椅子への対応等リニューアルが考えられます。耐用年数を25年としているメ-カ-が多いです。更新の場合、工期が5~7日程度かかります。特に油圧式エレベータは早めにロープ式への更新が望ましいと思います。その場合の工期は1か月程度を要します。
■集合インターホン設備
住戸数が多いとエントランスドアを解除する鍵穴が故障しやすいので、その際は、タッチセンサー方式やノンタッチキーシステムに改良すれば、防犯強化も図れて良いと思います。また、駐車場の勝手口をセンサ-方式の自動ドアに改良すれば、利便性もアップすると思います。
■機械式駐車場
非常に維持費がかかる設備なので、将来、どのぐらい費用負担が必要か試算し、修繕計画を立てることが大切です。採算が合わなければ撤去も考慮した方が良いでしょう。
11月13日(日)第2日目−2
まずはしっかりとした滞納予防策を。滞納が生じてしまったらすみやかに回収に向けた対応を
〈講師〉 大阪弁護士会 弁護士 郷原 さや香(ごうはら さやか)
管理費は、主に管理組合が行う日々のマンション管理全般に要する費用で管理員人件費、理事長報酬、備品等事務費、ごみ処理費、エレベータ・防災等の設備点検費用などに充てられます。修繕積立金は、共用部分などの定期的・計画的修繕工事や災害などの不測の事故などによって発生する修繕に必要な場合に備えて積み立てられる費用です。共にマンションという共有財産を保全するための維持管理費用といえます。これらの負担割合は原則的に、区分所有者の共用部分の持分に応じます。
管理費や修繕積立金に滞納が生じると、管理水準が低下し、居住上の安全性や地域環境へ悪影響が及び、区分所有者間に不公平感が生じ、マンションの価値自体が下がる危険性があります。
2滞納が生じた場合の対応
滞納が生じてしまった場合の請求方法には、裁判所を利用するかしないかで大きく二つの方向性に分かれます。もう一つ、事実上の措置がありますが、これも裁判所を使わない手続きの一つとして考えてください。
裁判所を使わない手続きとしては、手紙や訪問による督促、内容証明による請求の二通りあります。
裁判所を使う手続きとしては、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、民事調停の四つが考えられます。
手紙や訪問による督促をする場合、手紙であればそのコピーを取って何日に送付したかも記録しておきます。また、戸別訪問の際は感情的になったり、言った言わないなどのトラブルを避けるためにも一人では行かないようにし、内容についても記録を残しておくこと。確認すべき点は①相手方に支払能力があるのかないのか。②返済意思があるのかどうか。この二点をしっかりと確認してください。
まず、支払能力がない場合には、その後内容証明を送っても支払ってくれる見込みはないので、そうした手順を踏む必要は基本的にはありません。もし支払能力がある場合は、何に不満があって支払をしてくれないのか、問題点を探る。その問題点を解決することで支払いに応じてもらえるよう導くことが必要です。また話し合いの結果、分割でなら支払えると言った場合には、合意書や念書、公正証書を作成する必要があります。公正証書の場合は、文書に強制執行承諾文言を入れることによって、約束が守られなかった際に裁判を通さずに強制執行を行うことができますので、出来れば公正証書の作成をおすすめします。内容証明によって本来五年で時効を迎える管理費の請求権が半年だけ時効の完成を延ばせます。ま た、威嚇の効果もあり、弁護士名を入れた場合などは、裁判も辞さないという強い決意で請求してきていると相手方にも伝わります。
3裁判所を使う手続きとしては四つの方法が考えられます。
■支払督促…まずは相手方が住んでいる住所地の裁判所書記官宛に支払督促の申立てをします。証拠の提出は不要で書面審査を経て問題がなければ、相手方に支払督促を発送します。支払督促が相手側に届いて二週間以内に異議が申し出されなかった場合、かつ支払いもされなかった場合は、30日以内に仮執行宣言の申立てを行います。書記官が審査のうえ相手方に発送し、二週間位内に異議の申し出がなければ支払督促が確定します。最短で約四週間もあれば済み、証拠の提出が不要で通常裁判より費用も安くできる迅速かつ簡単な手続きですが、申立てをしても相手が異議を唱えた場合には、結局、通常訴訟に移行しますので、この手続きを選択するメリットはなくなります。
■少額訴訟…請求額が60万円以下の場合しか使えません。原則審議は一回、即日判決。マンションの近くの裁判所で申立てすることができます。裁判当日和解をすることもでき、場合によっては分割払いの判決を出してくれることもあります。
■通常裁判…通常の裁判になると、分割払いの判決は出ません。請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に申立てます。裁判所が時間をかけて審理を行うので、権利関係が複雑な場合などに利用しやすく、被告の住所が不明でも公示送達によって判決が出ます。
■民事調停…簡易裁判所で調停委員を間に入れて話し合う制度で、印紙代が通常の裁判の半額になります。調停が成立すれば判決と同じ効力があるので、支払義務に応じなければ強制執行ができます。しかし、話し合いである為、交渉が決裂すると一切結論が出ません。この制度では、話し合いを上手く解決するためにお互いを説得する役割を持った調停委員が間に入ることが最大のメリットです。
◇滞納者への事実上の措置がとれるかについては、ケースバイケースです。
①滞納者に対して5か月間の給湯停止→30万円の慰謝料支払いの判決(権利の濫用にあたり違法。【)東京地裁平成2年1月30日】
②滞納者一覧表の立て看板を別荘敷地内に設置→慰謝料は成立しなかったがプライバシーの侵害に該当する可能性がある。【東京地裁平成11年12月24日】
◇管理費を請求するのは管理組合法人又は、管理組合か管理者です。管理会社は督促業務のみであることをしっかりと認識しておくことが重要です。請求の相手方は、当該区分所有者、特定承継人(買主)の他、転々譲渡の中間取得者も含める傾向にあります。請求の範囲としては、弁護士費用は原則請求できません。但し、管理規約で制裁金として弁護士費用全額加算して支払うことを予め規定しておくことで可能となることもあり、制度を整えておくことが必要です。なお、将来の管理費もよほどのことがない限り、通常は請求できません。
4管理費の強制的な回収方法について
確定判決に基づく強制執行、先取特権に基づく競売、区分所有法59条に基づく競売があります。
■確定判決等に基づく強制執行
確定判決や調停調書、公正証書に基づく強制的な回収方法は、強制執行になります。動産・不動産・債権に対して強制執行することができます。債権の中には、銀行預金や給料も含まれます。ただ、不動産を強制競売しても抵当権の優先順位から全額銀行に配当されてしまうことも多く、この場合は無剰余取消しが考えられます(競売の手続きが取り消される)。判決後に延長された10年の時効中に、折を見て強制執行を考えることも一つかもしれません。
■先取特権に基づく競売
先取特権とは判決を取らなくても強制競売を行える権利のことで、管理費・修繕積立金は、一般先取特権と解釈されています(共益費用の先取特権)。ただ、この権利も抵当権が優先され、無剰余取消しの可能性があります。
■区分所有法59条に基づく競売
特殊な方法として、区分所有法59条に基づく競売があります。その区分所有者がいると共同生活上の障害が著しいなど、お金を回収する云々よりもまずその人を追い出すという手続きになります。
限られた場合ですが、滞納も該当する場合があります。この場合は、追い出した後に、競売による新しい買受人に請求することで回収します。
5滞納予防の方策
①口座引き落としにする。
②遅延損害金、違約金としての弁護士費用や督促に要した費用等の加算規定を設ける。
③滞納状況に関する書類の作成、滞納策についてマニュアル化しておく。
④各区分所有者の管理費・修繕積立金への理解を深める。
11月20日(日)第3日目−1
管理会社は敵外視せずに 味方につける。
関係改善して上手に付き合うことが大切。〈講師〉
住まい情報センター マンション管理相談員 宇都宮 忠(うつのみや ただし)
日頃から感じているのは、皆さんあまり管理会社との付き合い方が上手ではないのではないかということです。管理会社に委託すると、管理会社に任せきりになってしまっていますが、管理の主体はあくまで管理組合です。マンション管理の業務には、資格がないとできないものがありますので委託することは仕方ありませんが、何でもやってくれるかというと、決してそうではありません。ご承知のように管理会社は委託契約書に基づいて仕事をしています。管理組合が行う業務は規約に書かれていますが、その中のいくつかを管理会社に委託してやっていただくということです。組合業務を全面的に委託するということはありえないのです。
管理会社を変更するということは、非常にエネルギーがいることです。そう簡単ではありません。管理会社を変更するには、なんらかの理由があると思います。変更する必要があるという結論を出す前に、管理会社が委託した仕事を本当にきちんとやっているのかを評価する必要があります。評価もせずに任せきりなら、管理会社の担当者もこの程度でいいのかと思ってしまうこともあります。大小の管理会社がありますが、いずれにしても仕事をするのは、人、なんです。管理会社が仕事をするわけではなくて担当者や管理員が実際には仕事をするのですから、担当者の良し悪しで管理会社の評価も変わってくるというところがあります。皆さん、管理会社とうまく付き合って、管理会社をうまく使っていただきたいと思います。
管理組合の役員は、素人ではないが管理組合の仕事をこなすエキスパートかといえばそうではない。ところが管理会社は、基本的にはエキスパート、プロです。ときに、担当者がエキスパートではない場合もありますが、少なくとも管理会社はエキスパート、プロです。皆さんが、プロに対抗しようとすれば、ある意味アマチュアとプロ、そういう間柄でプロに勝とうと思うとなかなか大変です。少なくとも役員になった時は、マンションの管理規約や細則など、居住者が守らなければいけないルールをまずひと通り読んでいただきたい。それと管理会社との委託契約書と仕様書。読んでもわからなければ、管理会社の担当者に聞いてもいいし、住まい情報センターの専門家相談へ来て聞いていただければと思います。管理会社に何をお願いしているのか、ということをま ず理解していただくことが肝心です。
管理会社は何でもしてくれるかというと、言えばやってくれるかもしれませんが、言わなければやりません。契約書に書いてあることは最低限やります。何を委託して何をやってもらいたいのかをお互いに理解しておかないと、こんなはずではなかったということになってしまう。これがトラブルになりやすいのです。管理会社とはそういう委託契約の関係ですから、管理会社が何をしてくれるのかということを、具体的に知っておくことが非常に大切です。
なにも管理会社を敵外視する必要はありません。管理会社は悪だ、ということはないので、やはり管理会社とうまく付き合うことを考えていただきたいと思います。そのためには、相手はプロですから、管理会社にどういうことをやっていただいて、どういうことを処理していただけるのかということを皆さんが知っておいていただきたい。管理組合の役員さんも、管理会社も、お互いにこんな仕事をしますよという役割分担についての認識を一つにしておいていただくことが必要なのです。
2管理会社との契約書類にひと通りしっかりと目を通す
管理会社は法律上どういうことになっているのかということですが、これはマンション管理適正化法に記されています。中でも、管理会社が行う基幹事務は三つあります。
(1)管理組合の会計の収入及び支出の調定
(予算・決算案の作成・収支報告)
(2)出納(収納業務・督促業務・支払や帳簿等の管理)
(3)マンション(専有部分を除く)の維持または
修繕に関する企画または実施の調整これらは管理会社にとってはいわば生命線で、三つの業務を、全部外部に委託することは一括再委託ということで、法律で禁じられています。
基幹事務以外の業務は外部への再委託が可能とされています。内容としては、理事会支援業務・総会支援業務・その他の管理業務、管理員業務、清掃業務、建物・設備管理業務などです。
また、管理業者に対して義務付けられている「重要事項説明」は11項目ありますが、その中でも特に「管理事務の内容及び実施方法」 「管理事務に要する費用及びその支払の時期及び方法」「管理事務の一部の再委託に関する事項」の三項目は特に大切なので、最低限ここはしっかりと見ていただきたい。具体的にどのようなことをするのか?担当者がどこまで具体的に説明しているのか?たとえば、出納業務における管理費等滞納者に対する督促業務は、担当者から毎月受ける滞納督促の報告について、督促した結果を細かく聞きだす。そこから滞納理由を推測し、万が一の法的措置に備えておくことが必要です。さらに、管理会社との契約の中で大切なことは、(1)管理会社が管理費や積立金をどう処理していくのか、その事務処理方法(2)管理会社への費用(3)管理事務の再委託の有無と内容です。管理費・修繕積立金がどのように流れるのかを確認して、知ってもらいたい。お金の流れを理解することで流用・横領事故が防止できます。また、管理会社が行う管理事務の報告に関する事項と、宅建業者から求められる情報提供についての対応なども、きちんと把握しておいていただきたい。管理委託契約に関わる留意点を理解することが重要です。管理会社とうまく付き合っていくために、管理会社も管理組合も委託契約でどのような仕事を委託しているのか、その内容をお互いに同じ認識にしておくことが重要です。
3管理会社を変更し、新たに選ぶときの注意点
これは、やってみなければわからないところがあります。管理会社を変えたからといって必ず良くなるとは言えないので、変えるときには慎重にやっていただきたい。場合によっては前より悪くなる可能性もあります。たとえば、マンションに近い管理会社はその地域に対する地の利がありますし、緊急時にも速やかな対応をしてくれるかもしれません。管理会社を変えることはエネルギーの要ることなので、どんどん担当者と話をして、注文を出して欲しい。管理会社はプロです。他にも色々な管理組合をサポートしているので、他の管理組合ではどのようなことをしているのかなど情報をもらえるような関係を構築して欲しい。ただ、くれぐれも現在の管理会社を変える前には、今の管理会社に改善を求め、場合によっては担当者を変えてもらうなど、今の管理会社と関係を改善していく方向で努力することが大切です
11月20日(日)第3日目−2
管理会社と管理組合の関係も マンションのコミュニティも人と人とが育みます。 相互理解し、楽しく暮らそう。
〈コーディネーター〉 大阪司法書士会 沖 健補(おき けんすけ)
〈パネリスト〉 大阪弁護士会 山本 浩貴(やまもと ひろき)
〈パネリスト〉
(公社)大阪府建築士会 橋本 賴幸 (はしもと よりたか)
〈パネリスト〉 住まい情報センター マンション管理相談員 宇都宮 忠(うつのみや ただし)
沖 本日の基礎講座を受け、管理会社を変更するメリット・デメリットについてお話し願います。
宇 管理会社を変更するというのは、最終手段として考えて欲しいのです。変えたからといって良くなる保証は誰にもできない。やってみないとわからないというところがデメリットと言えます。変えてみたら良くなったとなれば一番いいですが、そのためにはまず皆さんが、管理会社に何をお願いしたいのかを明確にしておく必要があります。そのうえで、いまの管理会社がきちんと仕事をしてくれているのかを評価すること。その結果、やっていないということになれば、まずは管理会社に改善を求めていただきたい。馴れ合いの関係は良くない。今の管理会社をうまく使うことが、もっともやりやすい方法です。改善を求めてもやってくれなかった場合にはじめて管理会社を変えるということになりますが、非常にエネルギーが要ります。一般の居住者の方々への意見聴取や、新しい管理会社のピックアップなどの調査にはじまり、事務処理方法の変更、新規口座への自動振替の手続き等々。一年程度じっくりと時間をかけて、慎重に進めていただきたいと思います。
沖 建築士の立場からはいかがでしょうか。
橋 大規模修繕のコンサルタントを外部の建築士に頼もうという場合には、管理会社に対して不信感や不満があることも多いです。次第に「実は管理会社とうまくいっていない」「フロントが信用できない「」管理会社を変えたいと考えている」などのお話が出てくることもよくあります。そうした時には、私たちも、皆さんがよりよく暮らすための建築的なアドバイスを含め、さまざまなお話をさせていただきます。たとえば、「皆さんはいま、管理会社に頼んでいる内容をきちんと把握していますか?」という質問から現状の見直しを行う。管理会社を変えるなら、新しい管理会社に見積りを出してもらうために条件や仕様を準備し、依頼したい内容を整理する必要があります。そうしていくうちに、管理会社についての認識を管理組合がしっかり持つようになり、もつれた話もだんだん整理され、関係が改善していくこともよくあります。発注者である管理組合が、管理会社に何をして欲しいのかを明確に出す、管理会社はそれを実現するための手伝いをしてくれる存在という意識を持つことが必要です。
■管理規約の制定と効力について
沖 次は、管理規約と規制について、お願いします。
Q 標準管理規約に基づいていない規約は無効ですか?
山 無効ではありません。何もないところで自分たちのルールを決めてくださいと言われても何を決めればいいかわからないので、国がサンプルとして提供しているものが標準管理規約です。多くのマンションにこれを当てはめればトラブルを相当程度予防できるだろうという、参考となる位置づけのものだとご理解ください。自分たちのマンションに合ったものを自主的に考える為の材料として捉えればよいです。
沖 これに関連した質問です。
Q 規約でどこまでの規制ができますか?
山 そのマンション内のルールとして定めるのであれば、色々なことが決められます。裁判になって無効になるということはあるので実際の効力がどうかということはさておき、色々なことをあらかじめ決めておけばトラブルを予防できます。
沖 他に補足はありますか?
宇 標準管理規約は参考にすればいいものなので、その中に各マンションの特殊な事情を考慮した規約を織り込まれたらいいと思います。まずは、現状の規約が標準管理規約と見比べどこが違うのか、内容を現行規約と標準管理規約とを比較できるように対照表を作ることで、規約改正する際に分かりやすくなると思います。
■管理費滞納の対策について
沖 続いて滞納金についての質問です。
Q 滞納遅延金の設定は可能ですか?
山 可能です。多くのマンションで延滞料を設定しています。年間14.6%あるいは18%というのをよく見ます。あまり高くしすぎると無効になることもあります。延滞料を設定するのは、ペナルティーを設けることで延滞を予防しようというものです。一般的には有効な手段として延滞料の設定がされています。
Q 管理費等の滞納の対策
山 自発的に払っていく人達が集まるようなマンションになっていれば、それが一番の管理費の滞納対策です。払わない方への対策としては、どうして滞納しているのかによって対策の取り方は変わってきます。管理会社に対する不満があって支払わない場合は、管理会社との関係を改善する。高齢者の方が亡くなって相続人の調査などが大変なのであれば別の対策が必要です。ですので、一般的にこうすれば大丈夫という対策は難しいです。対策の例として、延滞料の設定について、3ヶ月経ってから延滞料が発生するように工夫すると、3ヶ月までには払おうというインセンティブになります。どういう対象の人が多いのかなどによって、設定方法をそれぞれのマンション内で話し合って決めていただければと思います。
橋 管理費等請求にかかった弁護士費用の請求は出来ますか?
山 規約に、滞納者は違約金としての弁護士費用を負担すると定めておけば、最近の裁判例では認められる傾向にあります。
■マンション内の店舗について
Q 店舗がある場合の修繕積立金と管理費は、同額でいいですか?
Q マンション1階店舗で営業する業種を制限できますか?
山 二点いずれも、話し合ってルール化することは可能です。規約を改正する場合に、たとえば一人の人だけがものすごくダメージを受けるような内容になると、そのダメージを受ける人の承諾が必要です。承諾が得られるのであれば大概のルール設定はできます。
沖 次に、いま皆さんの関心事である民泊についてです。
■非居住区分所有者の問題回避の方法は
山 民泊について…本当に民泊がいやだということであれば、ルール化するために規約改正の手続きを取っておくことがベストです。規約にない場合、何かあった時の対応は大変です。わざわざ民泊をするためにマンションに入ってきた業者に対し、規約に書いてないけどやめてくださいと事後に言ったとしても改善は難しい。問題が起きてから規約を改正しようとなった時には、その業者だけが不利益を被る規約改正になってしまうので、その業者の承諾が得られません。承諾を得ずに規約改正をしたとしても、裁判で無効になる可能性もあります。あらかじめ規約改正をしておくことが一番有効な対策になります。
非居住区分所有者について…たとえば、外国の方や実際に住んでいない方については、理事会活動に協力できない状態を考慮し、一定の協力金を規約で規定することは可能という裁判例はあります。慎重に議論を重ねる必要があります。規約改正の手続きについて…集会で議決権と区分所有者の数の各3/4以上の特別決議が必要。理事会で準備を進めて、新旧比較表を使うなどして決議をとる。注意点として、一部の人に対して特別な影響がある場合は、その人達の承諾が必要です。
■機械式立体駐車場について
橋 最近都心のマンションでは、駐車場が埋まらないことが多いのですが、新築時には附置義務がありますので、敷地が狭い場合はたいてい立体駐車場になっています。ただし、立体駐車場は、維持費用がかかりすぎることもあります。ハード面では、台数削減等の対策の可能性もあるので、建築士に相談していただきたい。
宇 駐車場に空きが出てくると当然収入が減ります。機械式駐車場はエレベータと同じで、維持管理に費用がかかります。一つ考えていただきたいのは、いま設定されている駐車場料金で、維持管理費用が賄えているのかどうか。これが黒字なのか赤字なのかをチェックしていただきたい。赤字ならどういう対策が取れるのか。みんなで考えていくための検討材料として一度、試算表を作られたらよいと思います。
■コミュニティについて
Q コミュニティづくりに、マンションとして取り組むことは必要ですか?
山 たとえば、一部の人が主催する誰でも参加できるタコ焼きパーティの費用を管理費から出してもいいか、ということについては、金額にもよりますが私はいいと思います。そうして親睦を図ることで皆さんが総会に出てくるようになればいいし、マンションの価値の向上に繋がれば違法とまでは判断されないと思います。
橋 大規模修繕工事が終わった時に、ピザなどのデリバリ-を利用して、修繕委員、理事の方々と一般の住民も含めて「お疲れさま会」をしてもらうことがあります。意見交換の中で、さまざまな情報が得られ、マンション住民が目指す方向が見えることがあります。
Q 居住者名簿の扱いについて
山 緊急時などには、マンション内に誰が住んでいるのか、連絡先はどこなのか、といった情報が必要になります。どのような場合に名簿を使えるのかについては、マンション内で話し合って決めていくといいと思います。住民台帳の使用細則の例などがインターネットでも検索できますので、参考になると思います。
■最後に
山 コミュニティを作るというのは、皆が仲良くするということが基本です。マンション内での対立や紛糾することも多く、色々な状況の人や考え方が違う人がいますが、なるべくお互いを理解するという気持ちで、冷静な判断をして、楽しくやってもらいたいと思います。
沖 先ほど宇都宮先生が何度も話されていたのは管理会社と管理組合の関係は「人と人との関係なのですよ」ということ。そしていま、山本先生も人のことをおっしゃっていました。マンションは共同体でありますし、当然、人それぞれ価値観も環境も違います。そういったなかで、皆さんがいかに協力して共有財産を管理していくのかというところです。今日の話をぜひ持ち帰って、マンションの皆さんと情報共有していただけたらと思います。