7月9日(日)第1日目−1
講座1
マンション管理の基本ルールを考える
適正化指針と標準管理規約
適正化指針と標準管理規約
マンション管理の主体は管理組合。
区分所有者としての役割を認識しましょう。〈講師〉
(公財)マンション管理センター
大阪支部長 長田 康夫(おさだ やすお)
1 マンション管理の基本ルール
当センターでは、毎年8000件以上の一般的な相談を受けています。特に昨年は標準管理規約の改正により、規約に関する相談が増えました。
今回のセミナーでは、村と、マンションを比べながら、マンション管理の基本ルールを考えてみたいと思います。村には掟、マンションには区分所有法、管理規約という決まりごとがあります。また、村の祭りでは豊作を祈るため、全員が参加。マンションでは、防災・防犯活動は全員が参加しますが、夏まつりは希望者のみ参加となっています。また村では、共同生活に必要な道徳心があり、マンションでは、心得ておくべきマンション管理適正化指針があります。
マンションにとってコミュニティは大切ですが、規約上では色々な問題が出たため、平成28年3月の標準管理規約の改正で、コミュニティ条項は規約から外され、指針に移っています。
2 マンションの管理の適正化に関する指針の重要性
この指針はマンション管理ルールについてのいわば道徳本です。平成13年に出され、平成28年3月に改正されました。
■マンションの管理の適正化の基本的方向
マンション管理の主体は管理組合であり、区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を認識する必要がある。
■管理組合が留意すべき基本的事項
・管理組合の運営は、開かれたものとする。集会(総会)は、管理組合の最高意思決定機関である。管理規約はマンション管理の最高の自治規範で、総会で決定。必要に応じて改正することが重要である。
・共用部分の範囲と管理費用を明確化しておくことが望ましい。
・管理組合の経理で、必要な費用は徴収し、費目も明確に区分して決算報告も行うこと。
・長期修繕計画の策定と見直し。工事の実施時期は、専門家に診断してもらって決め、適切な修繕を進める。
・外部の専門家(弁護士やマンション管理士)を入れる場合はルールを作ることが必要である。
・良好な居住環境の維持・向上は大切。但し自治会は任意加入なので、管理組合のお金と分けて運用することが必要である。
■区分所有者が留意すべき点
マンション購入時、相隣関係に配慮する住まい方が要ることを理解する必要がある。
■管理委託
マンション管理業者の説明会を利用し、疑問点は聞き、適正な選定に努める。業務に問題が生じた場合は、マンション管理業者に解決を求め、必要に応じてマンション管理業協会にその解決を求めること。
3 マンション管理の基本的事項
■管理組合の成立と構成
区分所有者は全員で管理組合を構成する。脱会はできない。
■管理の範囲
共用部分だけ。専有部分は各自で管理する。
■共用部分の管理
集会の決議で決する。規約で別段の定めをすることは妨げない。負担割合は持ち分に応じて負担する。修繕積立金は、規約で毎月納めることを規定しなければ徴収できず、修繕積立金の取り崩しには総会の決議が必要。
■管理規約
管理規約の改正には、区分所有者総数および議決権総数両方の4分の3をクリアしなければなりません。たとえば業者が10室持っていると、組合員数(区分所有者)は1、議決権は10と数えます。
管理費の徴収金額は普通決議(過半数)で変えられるが、規約変更は特別決議(4分の3以上)が必要になります。管理規約に修繕積立金や管理費の規定がある場合は、金額だけを管理規約の本文や別表から外しておくのもひとつです。
■管理組合の総会
区分所有法では、「あらかじめ通知した事項のみ決議する」となっており、いきなり議案をあげることはできません。ところが「規約で別段の定めをすることを妨げない」ともある。
「普通決議は、あらかじめ通知していなくても決議できる」とすれば緊急動議が認められるが、たとえば、修繕積立金の大幅値上げは反対者が多くなるからとの理由で緊急動議として出すと、委任状が多く出席者が少ない場合は、知らない間に通ってしまうなどの問題が想定される。標準管理規約では、緊急動議は認めていません。
4 管理委託の契約
■重要事項説明と総会承認
管理業者との契約について総会で諮る時、前もって重要事項説明を業者にお願いする。契約はお互いのことなので、皆さんできちんと理解しておく必要がありますので、その場で質問があれば聞きましょう。マンション管理適正化法の施行規則では、説明すべき重要事項は11項目ありますが、通達ではこれ以外にも説明することが望ましい場合がありうるとしているので、要求は可能です。たとえば管理員が休む時、代理を出してもらうのかどうか。代理を出してもらうとお金がかかるかもしれないが、そこは民と民の交渉ごとです。契約内容について聞くことができるのはこのタイミングなので、ぜひ確認しましょう。
■書面の交付
契約時には委託契約書を交付しなければならないとありますので覚えておいてください。
当センターでは、毎年8000件以上の一般的な相談を受けています。特に昨年は標準管理規約の改正により、規約に関する相談が増えました。
今回のセミナーでは、村と、マンションを比べながら、マンション管理の基本ルールを考えてみたいと思います。村には掟、マンションには区分所有法、管理規約という決まりごとがあります。また、村の祭りでは豊作を祈るため、全員が参加。マンションでは、防災・防犯活動は全員が参加しますが、夏まつりは希望者のみ参加となっています。また村では、共同生活に必要な道徳心があり、マンションでは、心得ておくべきマンション管理適正化指針があります。
マンションにとってコミュニティは大切ですが、規約上では色々な問題が出たため、平成28年3月の標準管理規約の改正で、コミュニティ条項は規約から外され、指針に移っています。
2 マンションの管理の適正化に関する指針の重要性
この指針はマンション管理ルールについてのいわば道徳本です。平成13年に出され、平成28年3月に改正されました。
■マンションの管理の適正化の基本的方向
マンション管理の主体は管理組合であり、区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を認識する必要がある。
■管理組合が留意すべき基本的事項
・管理組合の運営は、開かれたものとする。集会(総会)は、管理組合の最高意思決定機関である。管理規約はマンション管理の最高の自治規範で、総会で決定。必要に応じて改正することが重要である。
・共用部分の範囲と管理費用を明確化しておくことが望ましい。
・管理組合の経理で、必要な費用は徴収し、費目も明確に区分して決算報告も行うこと。
・長期修繕計画の策定と見直し。工事の実施時期は、専門家に診断してもらって決め、適切な修繕を進める。
・外部の専門家(弁護士やマンション管理士)を入れる場合はルールを作ることが必要である。
・良好な居住環境の維持・向上は大切。但し自治会は任意加入なので、管理組合のお金と分けて運用することが必要である。
■区分所有者が留意すべき点
マンション購入時、相隣関係に配慮する住まい方が要ることを理解する必要がある。
■管理委託
マンション管理業者の説明会を利用し、疑問点は聞き、適正な選定に努める。業務に問題が生じた場合は、マンション管理業者に解決を求め、必要に応じてマンション管理業協会にその解決を求めること。
3 マンション管理の基本的事項
■管理組合の成立と構成
区分所有者は全員で管理組合を構成する。脱会はできない。
■管理の範囲
共用部分だけ。専有部分は各自で管理する。
■共用部分の管理
集会の決議で決する。規約で別段の定めをすることは妨げない。負担割合は持ち分に応じて負担する。修繕積立金は、規約で毎月納めることを規定しなければ徴収できず、修繕積立金の取り崩しには総会の決議が必要。
■管理規約
管理規約の改正には、区分所有者総数および議決権総数両方の4分の3をクリアしなければなりません。たとえば業者が10室持っていると、組合員数(区分所有者)は1、議決権は10と数えます。
管理費の徴収金額は普通決議(過半数)で変えられるが、規約変更は特別決議(4分の3以上)が必要になります。管理規約に修繕積立金や管理費の規定がある場合は、金額だけを管理規約の本文や別表から外しておくのもひとつです。
■管理組合の総会
区分所有法では、「あらかじめ通知した事項のみ決議する」となっており、いきなり議案をあげることはできません。ところが「規約で別段の定めをすることを妨げない」ともある。
「普通決議は、あらかじめ通知していなくても決議できる」とすれば緊急動議が認められるが、たとえば、修繕積立金の大幅値上げは反対者が多くなるからとの理由で緊急動議として出すと、委任状が多く出席者が少ない場合は、知らない間に通ってしまうなどの問題が想定される。標準管理規約では、緊急動議は認めていません。
4 管理委託の契約
■重要事項説明と総会承認
管理業者との契約について総会で諮る時、前もって重要事項説明を業者にお願いする。契約はお互いのことなので、皆さんできちんと理解しておく必要がありますので、その場で質問があれば聞きましょう。マンション管理適正化法の施行規則では、説明すべき重要事項は11項目ありますが、通達ではこれ以外にも説明することが望ましい場合がありうるとしているので、要求は可能です。たとえば管理員が休む時、代理を出してもらうのかどうか。代理を出してもらうとお金がかかるかもしれないが、そこは民と民の交渉ごとです。契約内容について聞くことができるのはこのタイミングなので、ぜひ確認しましょう。
■書面の交付
契約時には委託契約書を交付しなければならないとありますので覚えておいてください。
7月9日(日)第1日目−2
講座2
マンション管理組合会計の基礎
管理会社任せにせずしっかりチェックし、
問題があれば規約変更を検討しましょう。〈講師〉近畿税理士会 田野 卓也(たの たくや)
1 管理組合の会計
日本の国家から大阪府・市、法人、一般家庭まで、それぞれのお金の動きは、会計で管理しています。マンション管理組合の会計も同様です。理事会・総会でも時間が割けず、管理会社任せにしていることが多いと思いますが、きちんとできていないと問題も起こります。
《会計でのよくある問題点》
このような問題点があれば、ぜひ管理組合で問題提起してください。
①会計書類が整備できていない。
②管理費と修繕積立金の区分ができていない。
③現金主義で処理され、未収入金、未払金の処理ができていない。
④書類の保存期間を定めておらず、過去の書類を紛失している。
⑤監事による業務監査、会計監査が行われていない。
⑥管理組合業務の目的から外れる支払いがある。
⑦貸借対照表に資産、負債の計上漏れがある。
2 マンション管理組合の会計の特徴
共用部分の維持管理を適切に行うため、収支予算内で業務を行う予算準拠の原則があります。支出が予算を超える場合は、予備費支出を考え、臨時総会を開くか協議します。
日常管理費会計と修繕積立金は明確に分けて管理し、預金も別々に管理します。
①正規の簿記の原則、②真実性の原則、③明瞭性の原則、④継続性の原則という企業会計の原則を適用します。
役員は持ち回り制のため、わかりやすい報告書を作成します。
3 会計書類の内容
管理会社が作った会計書類を見るのに専門知識は不要です。下記に注意してチェックしましょう。
①残高確認(通帳の月末5日〜10日分のコピーをつけてもらう)
②予算の執行割合
③前年の同月との比較
④重要な支出は請求書と契約書を見比べる
主な会計書類は以下のとおりです。
■収支予算書
経常的に発生するものと臨時的に発生するものを区別します。
■収支計算書
企業にとっての損益計算書。収支計算書は収支予算書と同じ書式で作成します。
滞納の管理費等は未収入金。工事は済んでいるが未払いの場合は未払金として、発生主義で記載します。
■貸借対照表
資産の合計から負債を引いた残りが正味財産です。つまり、管理組合が持っている財産です。収支計算書と同様に管理費会計と修繕積立金会計を区分して作成します。
■財産目録(貸借対照表の明細のようなもの)
什器備品台帳(管理組合で購入した財産を一覧にしたもの。購入年月日と品物を記載しておく)、未収入金明細書(プライバシーに配慮して管理する)、未払金明細書も作成しておく必要があります。
4 会計書類の保存と情報公開
会計書類の保存期間は、管理規約または管理規約細則で決めておきます。
組合員(区分所有者)・利害関係人から適正な方法で閲覧請求があれば、会計帳簿、議事録を公開する必要があります。
なお、専有部分の賃借人、管理組合の債権者(工事代金の未払い先工事会社や管理会社など)、抵当権を設定している銀行、マンションの購入予定者も、判例によると全て利害関係人にあたります。
5 税金について
管理組合が収益事業を行うと、法人として扱われ、法人税が課せられます。また、会計は、税務収益と非収益に分ける必要もあり、手間が増えます。
《収益事業とは》
①不動産貸付業
アンテナ基地局の設置は不動産貸付業とみなされ、法人税の実行税率(30%程度)を申告していないと遡って5年間追徴されます。
②物品貸付業
③席貸業
④旅館業
ゲストルーム使用料は区分所有者が払えば問題ないが「泊まった人がお金を払う」なら収益事業となります。
⑤駐車場業
区分所有者または賃借人以外の外部の人に貸すと、その収入は申告する必要があります。空き駐車場を内部の人を優先にして外部の人に貸す場合、外部の人に貸す部分だけが収益事業になります。
収益事業をするかどうかは、管理組合で判断して規約で取り決めましょう。併せて課税申告をする必要があります。
役員に報酬を払う場合は、源泉徴収義務者として、所得税を徴収し税務署に納税しなければなりません。所得税控除をする必要があり、控除漏れは、管理組合の責任になるので注意しましょう。
6 まとめ
マンション管理組合会計の目的は、組合員、その他の利害関係人に対して、管理組合の活動が適切に行われているかどうか、お金の面から報告することです。
マンションの共用部分の維持管理のために組合員が拠出している管理費が正しく管理され、正しく使われているか。将来の大規模修繕のために、資金が計画通りに積み立てられているか。大規模修繕が行われた場合には、その金額は適正に支払われたのかしっかりチェックしていきましょう。
日本の国家から大阪府・市、法人、一般家庭まで、それぞれのお金の動きは、会計で管理しています。マンション管理組合の会計も同様です。理事会・総会でも時間が割けず、管理会社任せにしていることが多いと思いますが、きちんとできていないと問題も起こります。
《会計でのよくある問題点》
このような問題点があれば、ぜひ管理組合で問題提起してください。
①会計書類が整備できていない。
②管理費と修繕積立金の区分ができていない。
③現金主義で処理され、未収入金、未払金の処理ができていない。
④書類の保存期間を定めておらず、過去の書類を紛失している。
⑤監事による業務監査、会計監査が行われていない。
⑥管理組合業務の目的から外れる支払いがある。
⑦貸借対照表に資産、負債の計上漏れがある。
2 マンション管理組合の会計の特徴
共用部分の維持管理を適切に行うため、収支予算内で業務を行う予算準拠の原則があります。支出が予算を超える場合は、予備費支出を考え、臨時総会を開くか協議します。
日常管理費会計と修繕積立金は明確に分けて管理し、預金も別々に管理します。
①正規の簿記の原則、②真実性の原則、③明瞭性の原則、④継続性の原則という企業会計の原則を適用します。
役員は持ち回り制のため、わかりやすい報告書を作成します。
3 会計書類の内容
管理会社が作った会計書類を見るのに専門知識は不要です。下記に注意してチェックしましょう。
①残高確認(通帳の月末5日〜10日分のコピーをつけてもらう)
②予算の執行割合
③前年の同月との比較
④重要な支出は請求書と契約書を見比べる
主な会計書類は以下のとおりです。
■収支予算書
経常的に発生するものと臨時的に発生するものを区別します。
■収支計算書
企業にとっての損益計算書。収支計算書は収支予算書と同じ書式で作成します。
滞納の管理費等は未収入金。工事は済んでいるが未払いの場合は未払金として、発生主義で記載します。
■貸借対照表
資産の合計から負債を引いた残りが正味財産です。つまり、管理組合が持っている財産です。収支計算書と同様に管理費会計と修繕積立金会計を区分して作成します。
■財産目録(貸借対照表の明細のようなもの)
什器備品台帳(管理組合で購入した財産を一覧にしたもの。購入年月日と品物を記載しておく)、未収入金明細書(プライバシーに配慮して管理する)、未払金明細書も作成しておく必要があります。
4 会計書類の保存と情報公開
会計書類の保存期間は、管理規約または管理規約細則で決めておきます。
組合員(区分所有者)・利害関係人から適正な方法で閲覧請求があれば、会計帳簿、議事録を公開する必要があります。
なお、専有部分の賃借人、管理組合の債権者(工事代金の未払い先工事会社や管理会社など)、抵当権を設定している銀行、マンションの購入予定者も、判例によると全て利害関係人にあたります。
5 税金について
管理組合が収益事業を行うと、法人として扱われ、法人税が課せられます。また、会計は、税務収益と非収益に分ける必要もあり、手間が増えます。
《収益事業とは》
①不動産貸付業
アンテナ基地局の設置は不動産貸付業とみなされ、法人税の実行税率(30%程度)を申告していないと遡って5年間追徴されます。
②物品貸付業
③席貸業
④旅館業
ゲストルーム使用料は区分所有者が払えば問題ないが「泊まった人がお金を払う」なら収益事業となります。
⑤駐車場業
区分所有者または賃借人以外の外部の人に貸すと、その収入は申告する必要があります。空き駐車場を内部の人を優先にして外部の人に貸す場合、外部の人に貸す部分だけが収益事業になります。
収益事業をするかどうかは、管理組合で判断して規約で取り決めましょう。併せて課税申告をする必要があります。
役員に報酬を払う場合は、源泉徴収義務者として、所得税を徴収し税務署に納税しなければなりません。所得税控除をする必要があり、控除漏れは、管理組合の責任になるので注意しましょう。
6 まとめ
マンション管理組合会計の目的は、組合員、その他の利害関係人に対して、管理組合の活動が適切に行われているかどうか、お金の面から報告することです。
マンションの共用部分の維持管理のために組合員が拠出している管理費が正しく管理され、正しく使われているか。将来の大規模修繕のために、資金が計画通りに積み立てられているか。大規模修繕が行われた場合には、その金額は適正に支払われたのかしっかりチェックしていきましょう。
7月17日(月・祝)第2日目−1
パネルディスカッション
管理会社と良い関係をつくるために
管理会社にわからないことは聞き、
どんな管理をめざすのか皆さんが考えましょう。公益社団法人大阪府建築士会
橋本 頼幸(はしもと よりたか)
公益社団法人大阪府建築士会
津村 泰夫(つむら やすお)
住まい情報センターマンション管理相談員
宇都宮 忠(うつのみや ただし)
皆さんが日頃関わることの多い管理会社に対する悩みは多いようです。今回は、実際に寄せられた相談内容を紹介し、それに対して専門家にお答えいただきました。
1 管理会社の対応
Q.工事は管理会社で手配しなければならないと過去の議事録にある。直接発注と管理会社を通すのでは工事代金に差がでるのに、管理会社を経由すべきか?
橋本 管理会社との委託契約に含まれている場合は、別に依頼するというのはほぼできない。タイルが割れた、塗装がはげたなど、突発的に発生するマンションの修繕工事は管理会社を元請けにする必要はない。発注者は管理組合なので自由に選択すればいい。
宇都宮 管理会社に工事を発注する必要はない。管理会社が窓口となる場合は元請け料が発生する分、高くはなる。ただ、かかりつけ業者はあった方が良い。直接発注だと後で不具合が出た時に、依頼した業者を管理組合が遡って探さないといけない。多少高くても管理会社に一本化すれば、対応はしてもらいやすいメリットはある。
津村 小さい工事は近所の工務店と管理会社と、3社くらい相見積する方法がある。管理規約にはどう書いてあるか、見直しが必要かどうか。ある程度は管理会社に任せてみるのも一案かと思う。
Q.総会や理事会の議事録作成で、管理会社に都合の悪いことが記載されていなかったり、議論の内容が削除されていたりして、疑念を感じる。
宇都宮 議事録案の作成は、管理会社の仕事の1つ。管理会社に都合の悪いことを書かないことはありうるが、法律上、総会の議事録作成者は議長であり、理事会の議事録は規約に従う。管理会社案に不足があれば、書き直しをさせることや、自分たちで追記し、正式な議事録として保管しましょう。
橋本 総会の議事録署名人だけでなく、理事も見るのが大事。うっかり抜け落ちることもあるので、理事会でチェックしてください。
2 管理委託契約
Q.重要事項について、管理会社から説明はあるが、委託契約書の内容は理事長しか把握しておらず、区分所有者は詳細を知らされていない。理事長も理解せず契約しているがどのように改善するべきか?
津村 理事長が契約内容を理解せず契約するとは、通常考えにくい。総会前の理事会で、重要事項は説明されるし、それをしないようなら、するように言うべき。
宇都宮 現在と同一内容・金額の場合は、理事長に重要事項説明をすればいい。ただし、一般的には、理事会の席上で説明され、終了後、すぐにその説明書は全戸配布が法律上義務づけられている。理事長はもちろん組合員も契約内容を把握する必要があるし、内容に変更がある場合は、管理会社は説明会を開いて区分所有者に重要事項説明をすると義務づけられている。
橋本 契約するのは管理組合の皆さん自身。組合員は内容を知っておかなければならない。とっつきにくい専門用語も出てくるが、わからなければ管理会社に聞けばいいのであって、区分所有者全員が重要事項説明書を理解して契約するのが大前提。
Q.委託契約書に、管理費の滞納督促は電話・自宅訪問、その後手紙による督促とある。住民に細かな説明はないが問題では?
宇都宮 管理会社がどこまで対応するかは委託契約書・仕様書に書いてある。一般的には、管理会社は督促を3〜6カ月間行い、それ以降は管理組合が対応することになっている。管理会社から「Aさんにはこういう督促をしたが、結果はこうだった」という経緯を聞いておかないといけない。次にどういう手を打つかを管理組合が考えるためにも知っておく必要がある。
3 管理会社の業務について
Q.管理会社が、業務の一部を別業者に発注している。委託管理費の減額交渉のため、下請け業者への発注明細を照会したが、回答を拒否されてしまった。
橋本 重要事項説明書に基幹事務の内容、管理員、清掃回数などが書かれている。要望すれば明細は出すが、業者への発注額は教えてくれないかもしれない。掃除を週4回→3回、管理員の土曜出勤→休みなど、仕様・内容を変えての減額交渉ならしやすい。
津村 下請け業者への発注に対して管理会社はマージンを取る。それが嫌なら、管理組合で清掃業務をシルバー人材センターに頼むなど他に発注するか、管理組合を法人化して自分たちで清掃員を雇う方法もある。
宇都宮 明細は要求してもいいが、それ以上はどの管理会社も出してこない。相談者は何に比べて高いと思われているのか?
なんとなく高いでは仕方ない。よそのマンションと比較して高いなど、皆さんでも情報を持つ必要がある。
4 管理員等について
Q.管理員が管理組合宛の郵便物を勝手に開封して管理会社に持ち帰る。消耗品を購入し、代金を組合の管理費に付け替える。居住者の個人情報を他人に話す。点検業務の報告もないが問題では?
宇都宮 管理組合宛のものを勝手に開封する管理員は、注意する必要がある。事務用消耗品の勝手な購入も同様。ただ管理員が業務で使う事務用消耗品は管理費から支出してもおかしくはない。どちらが負担するか、委託契約書の中で決める。
個人情報保護法で、2017年春から管理組合が持つ個人情報は、しっかりと管理しなければならなくなった。管理員が情報を漏らしているのがわかれば、本人・管理会社に注意を促す。点検報告は読んで、修繕する必要の有無を確認。管理会社任せにしないこと。
橋本 管理員に不満があるなら変えてもらう。ただしっかりと理由を提示する必要はある。
津村 住み込みの管理員の場合、住民側も委託契約で決められている業務以外もいろいろ頼んだりしている、住民側に問題がある場合もある。
5 最後に…
Q.管理会社とうまくつきあうためのアドバイスをお願いします。
宇都宮 役員さんは委託契約書、仕様書を一通り読んで、管理会社に何を委託しているかを理解する。管理員に頼りない点があるなら管理会社に連絡して、人事異動などで改善してもらうよう申し入れをする。それでもダメなら管理会社を変える必要があるかもしれない。
津村 ある管理会社では、総会で役員が入れ替わるとき、管理委託業務の内容などのオリエンテーション資料を作っているという。こういうサービスはいいと思う。
橋本 管理会社とうまくつきあうには、管理組合や理事の皆さんが、管理会社の仕事内容を知らなければダメ。わからないことは、当機構も含め、プロに聞く。仕事の内容がわかれば、管理会社ときちんと議論ができるようになる。まず自分たちがどんな管理をめざすのかを考えましょう。
1 管理会社の対応
Q.工事は管理会社で手配しなければならないと過去の議事録にある。直接発注と管理会社を通すのでは工事代金に差がでるのに、管理会社を経由すべきか?
橋本 管理会社との委託契約に含まれている場合は、別に依頼するというのはほぼできない。タイルが割れた、塗装がはげたなど、突発的に発生するマンションの修繕工事は管理会社を元請けにする必要はない。発注者は管理組合なので自由に選択すればいい。
宇都宮 管理会社に工事を発注する必要はない。管理会社が窓口となる場合は元請け料が発生する分、高くはなる。ただ、かかりつけ業者はあった方が良い。直接発注だと後で不具合が出た時に、依頼した業者を管理組合が遡って探さないといけない。多少高くても管理会社に一本化すれば、対応はしてもらいやすいメリットはある。
津村 小さい工事は近所の工務店と管理会社と、3社くらい相見積する方法がある。管理規約にはどう書いてあるか、見直しが必要かどうか。ある程度は管理会社に任せてみるのも一案かと思う。
Q.総会や理事会の議事録作成で、管理会社に都合の悪いことが記載されていなかったり、議論の内容が削除されていたりして、疑念を感じる。
宇都宮 議事録案の作成は、管理会社の仕事の1つ。管理会社に都合の悪いことを書かないことはありうるが、法律上、総会の議事録作成者は議長であり、理事会の議事録は規約に従う。管理会社案に不足があれば、書き直しをさせることや、自分たちで追記し、正式な議事録として保管しましょう。
橋本 総会の議事録署名人だけでなく、理事も見るのが大事。うっかり抜け落ちることもあるので、理事会でチェックしてください。
2 管理委託契約
Q.重要事項について、管理会社から説明はあるが、委託契約書の内容は理事長しか把握しておらず、区分所有者は詳細を知らされていない。理事長も理解せず契約しているがどのように改善するべきか?
津村 理事長が契約内容を理解せず契約するとは、通常考えにくい。総会前の理事会で、重要事項は説明されるし、それをしないようなら、するように言うべき。
宇都宮 現在と同一内容・金額の場合は、理事長に重要事項説明をすればいい。ただし、一般的には、理事会の席上で説明され、終了後、すぐにその説明書は全戸配布が法律上義務づけられている。理事長はもちろん組合員も契約内容を把握する必要があるし、内容に変更がある場合は、管理会社は説明会を開いて区分所有者に重要事項説明をすると義務づけられている。
橋本 契約するのは管理組合の皆さん自身。組合員は内容を知っておかなければならない。とっつきにくい専門用語も出てくるが、わからなければ管理会社に聞けばいいのであって、区分所有者全員が重要事項説明書を理解して契約するのが大前提。
Q.委託契約書に、管理費の滞納督促は電話・自宅訪問、その後手紙による督促とある。住民に細かな説明はないが問題では?
宇都宮 管理会社がどこまで対応するかは委託契約書・仕様書に書いてある。一般的には、管理会社は督促を3〜6カ月間行い、それ以降は管理組合が対応することになっている。管理会社から「Aさんにはこういう督促をしたが、結果はこうだった」という経緯を聞いておかないといけない。次にどういう手を打つかを管理組合が考えるためにも知っておく必要がある。
3 管理会社の業務について
Q.管理会社が、業務の一部を別業者に発注している。委託管理費の減額交渉のため、下請け業者への発注明細を照会したが、回答を拒否されてしまった。
橋本 重要事項説明書に基幹事務の内容、管理員、清掃回数などが書かれている。要望すれば明細は出すが、業者への発注額は教えてくれないかもしれない。掃除を週4回→3回、管理員の土曜出勤→休みなど、仕様・内容を変えての減額交渉ならしやすい。
津村 下請け業者への発注に対して管理会社はマージンを取る。それが嫌なら、管理組合で清掃業務をシルバー人材センターに頼むなど他に発注するか、管理組合を法人化して自分たちで清掃員を雇う方法もある。
宇都宮 明細は要求してもいいが、それ以上はどの管理会社も出してこない。相談者は何に比べて高いと思われているのか?
なんとなく高いでは仕方ない。よそのマンションと比較して高いなど、皆さんでも情報を持つ必要がある。
4 管理員等について
Q.管理員が管理組合宛の郵便物を勝手に開封して管理会社に持ち帰る。消耗品を購入し、代金を組合の管理費に付け替える。居住者の個人情報を他人に話す。点検業務の報告もないが問題では?
宇都宮 管理組合宛のものを勝手に開封する管理員は、注意する必要がある。事務用消耗品の勝手な購入も同様。ただ管理員が業務で使う事務用消耗品は管理費から支出してもおかしくはない。どちらが負担するか、委託契約書の中で決める。
個人情報保護法で、2017年春から管理組合が持つ個人情報は、しっかりと管理しなければならなくなった。管理員が情報を漏らしているのがわかれば、本人・管理会社に注意を促す。点検報告は読んで、修繕する必要の有無を確認。管理会社任せにしないこと。
橋本 管理員に不満があるなら変えてもらう。ただしっかりと理由を提示する必要はある。
津村 住み込みの管理員の場合、住民側も委託契約で決められている業務以外もいろいろ頼んだりしている、住民側に問題がある場合もある。
5 最後に…
Q.管理会社とうまくつきあうためのアドバイスをお願いします。
宇都宮 役員さんは委託契約書、仕様書を一通り読んで、管理会社に何を委託しているかを理解する。管理員に頼りない点があるなら管理会社に連絡して、人事異動などで改善してもらうよう申し入れをする。それでもダメなら管理会社を変える必要があるかもしれない。
津村 ある管理会社では、総会で役員が入れ替わるとき、管理委託業務の内容などのオリエンテーション資料を作っているという。こういうサービスはいいと思う。
橋本 管理会社とうまくつきあうには、管理組合や理事の皆さんが、管理会社の仕事内容を知らなければダメ。わからないことは、当機構も含め、プロに聞く。仕事の内容がわかれば、管理会社ときちんと議論ができるようになる。まず自分たちがどんな管理をめざすのかを考えましょう。
7月17日(月・祝)第2日目−2
管理組合交流サロン
大阪市立住まい情報センター3階ホール
マンション管理組合の方同士が、自由に意見交換する場として交流サロンを開催しました。今回は参加者33名の方がグループに分かれ、専門家の進行のもと、参加者は自己紹介後に、管理規約、管理会社とのつきあい方、大規模修繕など、それぞれが課題としている問題を話し合い、意見を交わしました。
参加者の皆さんは、日頃からマンション管理の関心が高く、役員・理事長等役職経験者の方も多いようです。
抱えている課題についてお互いに共感しながら、時には専門家の意見も聞きながら、法律・専門的な問題について、活発な意見交換がなされました。立場は違っていても、マンション管理をよくしたいという思いは同じで、約1時間の交流会は、大いに盛り上がりました。
最後に、各グループごとに発表し、それぞれに有意義な交流ができたことが報告されました。参加者の皆さんにとって、有意義な時間になったのではないでしょうか。
参加者の声
役員交替のタイミングで相談役を置いてはどうか?
無関心層を取り込むのに、年代別のサロンを開いては?
大規模修繕では自分たちで考えて費用を絞り、希望する改修ができた
自主管理の事例や駐輪場不足など、それぞれに課題があった
管理会社に任せすぎず、役員の責任を分担化しては?
参加者の皆さんは、日頃からマンション管理の関心が高く、役員・理事長等役職経験者の方も多いようです。
抱えている課題についてお互いに共感しながら、時には専門家の意見も聞きながら、法律・専門的な問題について、活発な意見交換がなされました。立場は違っていても、マンション管理をよくしたいという思いは同じで、約1時間の交流会は、大いに盛り上がりました。
最後に、各グループごとに発表し、それぞれに有意義な交流ができたことが報告されました。参加者の皆さんにとって、有意義な時間になったのではないでしょうか。
参加者の声
役員交替のタイミングで相談役を置いてはどうか?
無関心層を取り込むのに、年代別のサロンを開いては?
大規模修繕では自分たちで考えて費用を絞り、希望する改修ができた
自主管理の事例や駐輪場不足など、それぞれに課題があった
管理会社に任せすぎず、役員の責任を分担化しては?