7月12日(日)第1日目−1
講座1
管理費滞納と法的措置
管理費滞納等の問題を防ぐにはまず予防、併せて管理規約の変更など早めの対策を。〈講師〉大阪弁護士会 弁護士 細川 良造 (ほそかわ りょうぞう)
平成25年度のマンション総合調査では、全体の約28%で費用負担等のトラブルが発生。このことを中心にお話ししたいと思います。
《1》管理費等について
(1)管理費・修繕積立金とは
・管理費…管理組合が行うマンション全体に要する費用。管理員人件費、共用設備の保守維持費、清掃費などに充当する。
・修繕積立金…計画的修繕工事や災害等の不測の事故に備えて積み立てられる費用。用途がある程度限定され、簡単に取り崩せない。
(2)管理費の負担割合
原則的に、区分所有者の持ち分に応じて負担する(区分所有法第19条)。
(3)管理規約
建物・敷地・附属施設の管理・使用等に関する区分所有者相互の事項を定めたもの。
(4)管理規約の内容
区分所有法第30条3項に、管理規約の内容は1)形状、2)面積、3)使用目的及び
4)利用状況、5)区分所有者が支払った対価、6)その他の事情を総合考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように、と規定されている。
《設例1》法人組合員に個人組合員の1.7倍の管理費を徴収するとした集会決議は有効かが争われた事案で無効とした裁判例がある(東京地判 H2.7.4)。
■区分所有法の趣旨及び民法90条の規定に違反している。
《設例2》インターネット利用の有無にかかわらず、利用費を請求できる規定は有効かが争われた事案で有効とした裁判例がある(広島地判 H24.11.14)。
■管理会社と接続回線の提供等について業務委託契約をしていて、マンション資産価値の維持・増大に資することなどを理由とする。
(5)管理規約の変更等
規約を設定、変更又は廃止する場合には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要になる。
《設例》非居住組合員は、住民活動協力金を負担との規約変更は有効かが争われた事案で有効とされた判例がある(最高裁H22.1.26)。
■協力金は2,500円、管理費と修繕積立金で17,500円。非居住組合員は、組合員の貢献による住環境等の利益を享受していることなどを理由とする。
《2》管理費等に滞納が生じた場合の対応
(1)管理費等の請求方法
1.手紙や訪問による督促‥‥訪問は複数人で、手紙はコピーを取る
2.内容証明郵便による請求‥‥時効期間6ヶ月延長できる。
3.裁判所を使う
支払督促‥‥債務者が異議を申立てしなければ、仮執行宣言が付され、強制執行できる。但し、異議があると通常の手続に移行する。
少額訴訟‥‥60万円以下で、審理は原則1回。
《設例1》管理費滞納しているXがYに物件を売却。滞納管理費は?
■XにもYにも請求できる。購入者等の特定承継人に滞納管理費を請求できる(区分所有法8法)。
《設例2》賃借人に管理費を請求できるか?
■原則できない。管理費は区分所有者の義務で、賃借人はその義務を負わない。
(2)管理費の請求範囲
・弁護士費用は、相手方に請求できるか?原則できない。対策→管理規約で「未払い管理費の請求訴訟にかかる弁護士費用を負担させる」旨を、定めておく。
・時効期間
管理費等の債権は5年(支払日の翌日から)で時効になる。
(3)管理費等の強制的な回収方法
1.認容判決に基づく競売
支払督促・少額訴訟・通常訴訟の手続きを経て判決等を得たうえで、専有部分を売却。時効期間は判決確定の翌日から10年になる。但し優先する銀行の抵当権がある場合には手続き費用すら回収できない可能性もある(無剰余取消)。
2.先取特権に基づく競売
区分所有者は、区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する(区分所有法7条1項)。但し下記に注意が必要となる。
・認容判決を得なくても強制競売を行える
・無剰余取消の可能性がある
・共益費用の先取特権とみなされる
3.区分所有法59条に基づく競売管理費を滞納する人を追い出したい場合の方法。マンション管理に重大な影響を与える行為があることを訴えて判決を得たうえで競売ができる。無剰余取り消しは適用されない。但し、当該区分所有者への影響が大きいため、その要件は厳格に定められている。
(4)管理費滞納者に対する事実上の措置
・ライフラインの供給停止措置
《設例》管理費滞納の区分所有者に、5ヶ月の給湯停止は許されるかが争われた事案で違法とされた裁判例がある(東京地判H2.1.30)。その前に冷暖房の供給停止を条件に交渉してしかるべきであった。
・滞納者の氏名の公表
《設例》別荘他で設備管理費等の長期間滞納者の氏名等を書いた立て札設置がされたケースで判決では「正当な管理行為の範囲を逸脱しない」と出た(東京地判H11.12.24)が、名誉毀損やプライバシー侵害に当たる可能性もある。管理費滞納者に対して事実上の措置をとる場合には、専門家などと相談して慎重に行う必要がある。
《3》管理費等に関連した問題
(1)管理費等の横領行為
下記の対応策を取ることが考えられる。
・銀行口座の印鑑と通帳を別々に管理
・管理組合資金を長年同じ人が管理しない
・出納状況が管理会社から毎月書面で交付させる
・収支の報告と通帳の記載を毎月照合する
(2)自治会費・町内会費
コミュニティは重要ですが自治会費・町内会費を管理費から出すのは、注意が必要である。
《1》管理費等について
(1)管理費・修繕積立金とは
・管理費…管理組合が行うマンション全体に要する費用。管理員人件費、共用設備の保守維持費、清掃費などに充当する。
・修繕積立金…計画的修繕工事や災害等の不測の事故に備えて積み立てられる費用。用途がある程度限定され、簡単に取り崩せない。
(2)管理費の負担割合
原則的に、区分所有者の持ち分に応じて負担する(区分所有法第19条)。
(3)管理規約
建物・敷地・附属施設の管理・使用等に関する区分所有者相互の事項を定めたもの。
(4)管理規約の内容
区分所有法第30条3項に、管理規約の内容は1)形状、2)面積、3)使用目的及び
4)利用状況、5)区分所有者が支払った対価、6)その他の事情を総合考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように、と規定されている。
《設例1》法人組合員に個人組合員の1.7倍の管理費を徴収するとした集会決議は有効かが争われた事案で無効とした裁判例がある(東京地判 H2.7.4)。
■区分所有法の趣旨及び民法90条の規定に違反している。
《設例2》インターネット利用の有無にかかわらず、利用費を請求できる規定は有効かが争われた事案で有効とした裁判例がある(広島地判 H24.11.14)。
■管理会社と接続回線の提供等について業務委託契約をしていて、マンション資産価値の維持・増大に資することなどを理由とする。
(5)管理規約の変更等
規約を設定、変更又は廃止する場合には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要になる。
《設例》非居住組合員は、住民活動協力金を負担との規約変更は有効かが争われた事案で有効とされた判例がある(最高裁H22.1.26)。
■協力金は2,500円、管理費と修繕積立金で17,500円。非居住組合員は、組合員の貢献による住環境等の利益を享受していることなどを理由とする。
《2》管理費等に滞納が生じた場合の対応
(1)管理費等の請求方法
1.手紙や訪問による督促‥‥訪問は複数人で、手紙はコピーを取る
2.内容証明郵便による請求‥‥時効期間6ヶ月延長できる。
3.裁判所を使う
支払督促‥‥債務者が異議を申立てしなければ、仮執行宣言が付され、強制執行できる。但し、異議があると通常の手続に移行する。
少額訴訟‥‥60万円以下で、審理は原則1回。
《設例1》管理費滞納しているXがYに物件を売却。滞納管理費は?
■XにもYにも請求できる。購入者等の特定承継人に滞納管理費を請求できる(区分所有法8法)。
《設例2》賃借人に管理費を請求できるか?
■原則できない。管理費は区分所有者の義務で、賃借人はその義務を負わない。
(2)管理費の請求範囲
・弁護士費用は、相手方に請求できるか?原則できない。対策→管理規約で「未払い管理費の請求訴訟にかかる弁護士費用を負担させる」旨を、定めておく。
・時効期間
管理費等の債権は5年(支払日の翌日から)で時効になる。
(3)管理費等の強制的な回収方法
1.認容判決に基づく競売
支払督促・少額訴訟・通常訴訟の手続きを経て判決等を得たうえで、専有部分を売却。時効期間は判決確定の翌日から10年になる。但し優先する銀行の抵当権がある場合には手続き費用すら回収できない可能性もある(無剰余取消)。
2.先取特権に基づく競売
区分所有者は、区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する(区分所有法7条1項)。但し下記に注意が必要となる。
・認容判決を得なくても強制競売を行える
・無剰余取消の可能性がある
・共益費用の先取特権とみなされる
3.区分所有法59条に基づく競売管理費を滞納する人を追い出したい場合の方法。マンション管理に重大な影響を与える行為があることを訴えて判決を得たうえで競売ができる。無剰余取り消しは適用されない。但し、当該区分所有者への影響が大きいため、その要件は厳格に定められている。
(4)管理費滞納者に対する事実上の措置
・ライフラインの供給停止措置
《設例》管理費滞納の区分所有者に、5ヶ月の給湯停止は許されるかが争われた事案で違法とされた裁判例がある(東京地判H2.1.30)。その前に冷暖房の供給停止を条件に交渉してしかるべきであった。
・滞納者の氏名の公表
《設例》別荘他で設備管理費等の長期間滞納者の氏名等を書いた立て札設置がされたケースで判決では「正当な管理行為の範囲を逸脱しない」と出た(東京地判H11.12.24)が、名誉毀損やプライバシー侵害に当たる可能性もある。管理費滞納者に対して事実上の措置をとる場合には、専門家などと相談して慎重に行う必要がある。
《3》管理費等に関連した問題
(1)管理費等の横領行為
下記の対応策を取ることが考えられる。
・銀行口座の印鑑と通帳を別々に管理
・管理組合資金を長年同じ人が管理しない
・出納状況が管理会社から毎月書面で交付させる
・収支の報告と通帳の記載を毎月照合する
(2)自治会費・町内会費
コミュニティは重要ですが自治会費・町内会費を管理費から出すのは、注意が必要である。
7月12日(日)第1日目−2
講座2
マンション管理組合の損害保険
リスクを想定してお住まいの建物に見合ったマンション総合保険&地震保険に。〈講師〉一般社団法人 日本損害保険協会 近畿支部 二階堂 公雄 (にかいどう きみお)
1 マンション管理組合向け
損害保険
マンションを取り巻く様々なリスクに対応するのが、マンション総合保険です(保険会社によって商品名が異なる場合があります)。
・対象施設の火災危険(含 落雷・破裂・爆発)に対する補償
・対象施設のその他の危険に対する補償
ex. 風水害・盗難・水ぬれ・破損等
・施設管理に起因する賠償責任の補償
ex. エレベーターの事故でケガをした
・居住者の第三者に対する賠償責任の補償
ex. 居住者の不注意で階下に漏水
などを組み合わせ、ニーズに合った補償内容が選べるようになっています。共用部分を一括して付保するのが一般的です。
2 専有部分と共用部分
【専有部分】構造上、独立して住居・店舗、事務所なとに使用されている部分及びこれに附属している電気設備、ガス供給設備、冷暖房設備等の附属物
【共用部分】法定共用部分と、マンション管理規約等で定められた規約共用部分がある。
専有部と共用部の境目は【上塗基準】と【壁芯基準】の二通りあり、標準管理規約では上塗り部分を採用しています。壁芯基準で保険をかけない居住者がいると、保険で全部をカバーできません。上塗基準なら、躯体部分はまとめて管理組合で保険加入できます。管理規約が壁芯基準の場合、上塗基準への変更をお勧めします。
3 想定されるリスク
・火災・落雷・破裂・爆発
・風災・ひょう災・雪災
・外部からの物体の衝突
・給排水設備の事故等による水漏れ
・騒じょう(暴動の小規模なもの)などによる破壊行為
・盗難による盗取・損傷・汚損
・水災
他に右上記も考えられます。
・偶然な事故による破損・汚損
・電気設備・機械設備の故障
・その他費用リスク、賠償責任リスク
・地震による火災・倒壊、津波による流出
4 マンション総合保険商品例
保険会社によって多少異なりますが、個々のマンションが抱えるリスクに対応した補償内容が選べるよう、何通りかの主契約プランと特約が用意されています。
主契約プランは「火災・落雷・破裂・爆発」
「風災・ひょう災・雪災」のベースプランに、「水ぬれ」「盗難」「水災」「破損・汚損」等を組み合わせる形になっています。
さらに事故発生時に必要となる費用として
・事故時諸費用持約(支払保険金に一定割合を上乗せ支払)
・水漏れ原因調査費用特約(水漏れが発生した場合の原因調査費用)等がセットされる契約もあります。
以下のようなオプション特約もあります。
・修理付帯費用特約
事故が起きた際の仮修理費用や仮設物の設置費用を補償
・マンション共用部分賠償特約
建物の共用部分の所有、使用、管理等に起因する賠償責任を補償
・マンション居住者包括賠償特約
マンションのすべての居住者を対象に日常生活での賠償事故を補償
・失火見舞費用特約
火災・破裂・爆発の事故で、専有する部分や隣接する建物が損害を受けた場合に支払う見舞金の費用を補償
・建物電気的・機械的事故特約
エレベーター・給排水設備などの建物付属機械設備の電気的・機械的事故(故障)による損害を補償以下は事故例。火災自体より多いのが実情です。
・水災事故…台風に伴う豪雨で地下の機械室が水没し、鉄製扉も水圧で変形した。→約5,780万円の損害。
・破損・汚損等の事故…マンション外周道路に面したフェンス・街灯が車両の飛び込みで損傷。→約110万円の損害。
・賠償責任リスクの事故例…共用部分のガス管腐食によりガス漏れが発生し、爆発。爆風や次いで発生した火災により室内や駐車場の財物に損害を与えた。→約2,800万円の損害賠償責任が発生。
5 地震保険とは
地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊埋没などによる建物の損害は、火災保険で補償されないので地震保険をつける必要があります。1964年の新潟地震がきっかけで「地震保険に関する法律」が制定され、以降、地震保険は政府と保険会社が共同で運営しています。被災者の生活の安定に寄与することが目的です。
[保険金支払]全損、半損、一部損の3通り。
できるだけ早い保険金支払ができるように簡素化しています。なお、半損を2つに分けて4通りにするという案も検討されています。
[保険金額]火災保険の30~50%の範囲内で設定。マンションは専有部分と共用部分の保険合計金額が5,000万円×戸室数が上限です。共用部分の地震保険を契約する際は、居住者が個々に契約している地震保険(建物部分)の金額を確認する必要があります。
[対象]住まいに関わる部分のみ、店舗や事務所は対象外。
[保険料]都道府県により異なり、大阪府・耐火構造で保険金額1,000万円あたり年間13,600円(2015年7月現在)。建築年割引・耐震等級などで10%~最大50%の割引があります。
保険に関するお問い合わせ・ご相談は最寄りの損保会社もしくは代理店へ。
損害保険に関する困りごとは
【そんぽADRセンター】
電 話/0570-022808
受付日/月~金曜日(祝日・休日および12/30~1/4を除く)
受付時間/9:15~17:00
損害保険
マンションを取り巻く様々なリスクに対応するのが、マンション総合保険です(保険会社によって商品名が異なる場合があります)。
・対象施設の火災危険(含 落雷・破裂・爆発)に対する補償
・対象施設のその他の危険に対する補償
ex. 風水害・盗難・水ぬれ・破損等
・施設管理に起因する賠償責任の補償
ex. エレベーターの事故でケガをした
・居住者の第三者に対する賠償責任の補償
ex. 居住者の不注意で階下に漏水
などを組み合わせ、ニーズに合った補償内容が選べるようになっています。共用部分を一括して付保するのが一般的です。
2 専有部分と共用部分
【専有部分】構造上、独立して住居・店舗、事務所なとに使用されている部分及びこれに附属している電気設備、ガス供給設備、冷暖房設備等の附属物
【共用部分】法定共用部分と、マンション管理規約等で定められた規約共用部分がある。
専有部と共用部の境目は【上塗基準】と【壁芯基準】の二通りあり、標準管理規約では上塗り部分を採用しています。壁芯基準で保険をかけない居住者がいると、保険で全部をカバーできません。上塗基準なら、躯体部分はまとめて管理組合で保険加入できます。管理規約が壁芯基準の場合、上塗基準への変更をお勧めします。
3 想定されるリスク
・火災・落雷・破裂・爆発
・風災・ひょう災・雪災
・外部からの物体の衝突
・給排水設備の事故等による水漏れ
・騒じょう(暴動の小規模なもの)などによる破壊行為
・盗難による盗取・損傷・汚損
・水災
他に右上記も考えられます。
・偶然な事故による破損・汚損
・電気設備・機械設備の故障
・その他費用リスク、賠償責任リスク
・地震による火災・倒壊、津波による流出
4 マンション総合保険商品例
保険会社によって多少異なりますが、個々のマンションが抱えるリスクに対応した補償内容が選べるよう、何通りかの主契約プランと特約が用意されています。
主契約プランは「火災・落雷・破裂・爆発」
「風災・ひょう災・雪災」のベースプランに、「水ぬれ」「盗難」「水災」「破損・汚損」等を組み合わせる形になっています。
さらに事故発生時に必要となる費用として
・事故時諸費用持約(支払保険金に一定割合を上乗せ支払)
・水漏れ原因調査費用特約(水漏れが発生した場合の原因調査費用)等がセットされる契約もあります。
以下のようなオプション特約もあります。
・修理付帯費用特約
事故が起きた際の仮修理費用や仮設物の設置費用を補償
・マンション共用部分賠償特約
建物の共用部分の所有、使用、管理等に起因する賠償責任を補償
・マンション居住者包括賠償特約
マンションのすべての居住者を対象に日常生活での賠償事故を補償
・失火見舞費用特約
火災・破裂・爆発の事故で、専有する部分や隣接する建物が損害を受けた場合に支払う見舞金の費用を補償
・建物電気的・機械的事故特約
エレベーター・給排水設備などの建物付属機械設備の電気的・機械的事故(故障)による損害を補償以下は事故例。火災自体より多いのが実情です。
・水災事故…台風に伴う豪雨で地下の機械室が水没し、鉄製扉も水圧で変形した。→約5,780万円の損害。
・破損・汚損等の事故…マンション外周道路に面したフェンス・街灯が車両の飛び込みで損傷。→約110万円の損害。
・賠償責任リスクの事故例…共用部分のガス管腐食によりガス漏れが発生し、爆発。爆風や次いで発生した火災により室内や駐車場の財物に損害を与えた。→約2,800万円の損害賠償責任が発生。
5 地震保険とは
地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊埋没などによる建物の損害は、火災保険で補償されないので地震保険をつける必要があります。1964年の新潟地震がきっかけで「地震保険に関する法律」が制定され、以降、地震保険は政府と保険会社が共同で運営しています。被災者の生活の安定に寄与することが目的です。
[保険金支払]全損、半損、一部損の3通り。
できるだけ早い保険金支払ができるように簡素化しています。なお、半損を2つに分けて4通りにするという案も検討されています。
[保険金額]火災保険の30~50%の範囲内で設定。マンションは専有部分と共用部分の保険合計金額が5,000万円×戸室数が上限です。共用部分の地震保険を契約する際は、居住者が個々に契約している地震保険(建物部分)の金額を確認する必要があります。
[対象]住まいに関わる部分のみ、店舗や事務所は対象外。
[保険料]都道府県により異なり、大阪府・耐火構造で保険金額1,000万円あたり年間13,600円(2015年7月現在)。建築年割引・耐震等級などで10%~最大50%の割引があります。
保険に関するお問い合わせ・ご相談は最寄りの損保会社もしくは代理店へ。
損害保険に関する困りごとは
【そんぽADRセンター】
電 話/0570-022808
受付日/月~金曜日(祝日・休日および12/30~1/4を除く)
受付時間/9:15~17:00
7月26日(日)第2日目−1
講座3
長期修繕計画と大規模修繕工事
工事の専門的なことはわからないからこそ、「プロと一緒に考える」姿勢が必要です。〈講師〉公益社団法人 大阪府建築士会 一級建築士 橋本 頼幸 (はしもと よりたか)
《1》大規模修繕工事
建物は、年を経るごとに劣化します。補修である程度は戻せますが、新品同様にはなりません。また、スロープが欲しい、玄関はオートロックがいいなど、社会的な要求水準も変わっています。従って、大規模修繕工事では、補修と改良工事を合わせて取り組むことになります。
《2》大規模修繕工事の進め方
1.工事の進め方を決める
大規模修繕は、誰が主導的にするのか、誰に何を頼むのか、よく考えて決めておかなければなりません。「誰に」は、コンサルタント(設計事務所)の他に、管理会社、施工者・メーカーなどが、あります。どのように大規模修繕工事に取り組むのか、誰に頼むのかを決めるのは発注者たる管理組合です。
大規模修繕の取り組み工程は大きく3つに分かれます。
1.大規模修繕工事の進め方の決定
(A)診断
2.建物劣化診断
3.建物劣化診断を広報する
(B)設計
4.修繕範囲と予算の設定
5.修繕範囲設計
6.工事業者選定
(C)工事
7.工事契約
8.修繕工事
9.完成
目先の大規模修繕工事のことだけではなく、マンションのライフサイクルで計画を立てることが大切です。大規模修繕工事は、1回だけではなく、必ず次があります。工事範囲、予算なども先のことをも考えて取り組むことが大切です。
2.建物劣化診断
(1)誰がする?・・・コンサルタント(設計事務所)/管理会社/施工業者や塗装/防水などのメーカー どこに何を頼むのか、先々のことを考えて依頼します。
(2)劣化診断調査は必要か?・・・どのような工事がいつ必要か、それがいくらかかるのかを劣化診断で判断する必要があります。
(3)劣化診断で判断を誤ると・・・進められるままに過剰な工事をする、反対に必要な工事をしない、などといった間違った修繕につながります。
3.建物劣化診断を広報する
インフォームド・コンセントが大切。正しい情報を得た上で合意しなければなりません。組合員に正しく伝えるためには、専門家(コンサルタント)を有効に使うことも大切です。
4.修繕範囲と予算の設定
修繕範囲を決めるのは(1)今必要な工事、(2)今しておくと有利な工事(足場をかけるのであれば一緒に工事をしておくと安くなる工事など)、(3)しておきたい工事(改良工事など)の三つを組み合わせて考えて行きます。貯まった修繕積立金全てを使うのではなく、次回以降の工事も見据えて予算を決めます。
5.修繕設計
どの範囲をどのような工事で行うかが決まってくると、あとは設計を進めていきます。これを、適切に判断するために、コンサルタント(設計事務所)を上手く使うことをお薦めします。 6.工事業者選定、
7.工事契約を行って、
8.修繕工事を行うことになります。
このプロセスでも様々な方法はありますが、時間の関係で割愛いたします。修繕工事中大切なこととして、設計書や工事契約に基づいた工事が行われているかどうか、それを誰がチェック(監理)するか、があります。ここでも、管理組合の立場に立った第三者としてのコンサルタント(設計事務所)の活用が望ましいと思います。
9.完成
完成したときには、必ず「完成引渡書類」を確認してください。工事報告書、打合せ記録、防水・塗装などの保証書、亀裂補修やタイル浮き補修の一覧・図面、アフター体制、等が整理されて、引き渡されているかを確認します。特に亀裂一覧の図面は、今回の工事でどこをどのように直したかが全て記載されています。保証期間内に不具合が再発したら無償で対応をお願いすることになりますし、工事後に発生した亀裂などは工事業者の責任を問えません。保証書やアフター対応は必ず引き継がれるようにしてください。
《3》大規模修繕工事は後が大切
大規模修繕工事は終わったといっても、すぐに次が来ます。次のための準備をしておく必要があります。次の工事にどの程度の予算が必要か、長期修繕計画を見直して適切に積み立てられているか、日常修繕においても適切な修繕や対応ができているか、それらを再検証します。一度経験したからわかる費用や補修すべき項目もあります。日常気をつけておくべきこともわかります。早期発見・早期対応できれば結果的に建物が長持ちし、費用も少なくてすみます。予算が足りなくなることがわかっていれば、そのときに一時金を集金するよりも、今から月額を少し上げていくことを選択するのではないでしょうか?
《4》大規模修繕工事を成功させるには
大規模修繕工事でトラブルになったり、明らかにおかしな工事を行っている事例はたくさんあります。その工事内容を、誰が決めたのか?管理組合は内容を決めた専門家や施工者に正しくものを言えているのか?
管理会社やコンサルタントのいうままにしていませんか?プロが言うのだから、といって考えることを放棄していませんか?「わからないから任せる」のではなく、「わからないことはプと一緒に考える」姿勢が必要です。
《最後に》
大規模修繕工事や建物の維持管理について、長くつきあえる主治医的な建築専門家の関与が不可欠だと考えます。管理組合と一緒に考えてくれる人を探してください。それはコンサルタント(設計事務所)かもしれません、あるいは管理会社かもしれません、施工者やメーカーかもしれません。それぞれの管理組合によって異なるとは思いますが、そういった専門家に出会って、適切に維持管理できる体制を作ることが大切です。
建物は、年を経るごとに劣化します。補修である程度は戻せますが、新品同様にはなりません。また、スロープが欲しい、玄関はオートロックがいいなど、社会的な要求水準も変わっています。従って、大規模修繕工事では、補修と改良工事を合わせて取り組むことになります。
《2》大規模修繕工事の進め方
1.工事の進め方を決める
大規模修繕は、誰が主導的にするのか、誰に何を頼むのか、よく考えて決めておかなければなりません。「誰に」は、コンサルタント(設計事務所)の他に、管理会社、施工者・メーカーなどが、あります。どのように大規模修繕工事に取り組むのか、誰に頼むのかを決めるのは発注者たる管理組合です。
大規模修繕の取り組み工程は大きく3つに分かれます。
1.大規模修繕工事の進め方の決定
(A)診断
2.建物劣化診断
3.建物劣化診断を広報する
(B)設計
4.修繕範囲と予算の設定
5.修繕範囲設計
6.工事業者選定
(C)工事
7.工事契約
8.修繕工事
9.完成
目先の大規模修繕工事のことだけではなく、マンションのライフサイクルで計画を立てることが大切です。大規模修繕工事は、1回だけではなく、必ず次があります。工事範囲、予算なども先のことをも考えて取り組むことが大切です。
2.建物劣化診断
(1)誰がする?・・・コンサルタント(設計事務所)/管理会社/施工業者や塗装/防水などのメーカー どこに何を頼むのか、先々のことを考えて依頼します。
(2)劣化診断調査は必要か?・・・どのような工事がいつ必要か、それがいくらかかるのかを劣化診断で判断する必要があります。
(3)劣化診断で判断を誤ると・・・進められるままに過剰な工事をする、反対に必要な工事をしない、などといった間違った修繕につながります。
3.建物劣化診断を広報する
インフォームド・コンセントが大切。正しい情報を得た上で合意しなければなりません。組合員に正しく伝えるためには、専門家(コンサルタント)を有効に使うことも大切です。
4.修繕範囲と予算の設定
修繕範囲を決めるのは(1)今必要な工事、(2)今しておくと有利な工事(足場をかけるのであれば一緒に工事をしておくと安くなる工事など)、(3)しておきたい工事(改良工事など)の三つを組み合わせて考えて行きます。貯まった修繕積立金全てを使うのではなく、次回以降の工事も見据えて予算を決めます。
5.修繕設計
どの範囲をどのような工事で行うかが決まってくると、あとは設計を進めていきます。これを、適切に判断するために、コンサルタント(設計事務所)を上手く使うことをお薦めします。 6.工事業者選定、
7.工事契約を行って、
8.修繕工事を行うことになります。
このプロセスでも様々な方法はありますが、時間の関係で割愛いたします。修繕工事中大切なこととして、設計書や工事契約に基づいた工事が行われているかどうか、それを誰がチェック(監理)するか、があります。ここでも、管理組合の立場に立った第三者としてのコンサルタント(設計事務所)の活用が望ましいと思います。
9.完成
完成したときには、必ず「完成引渡書類」を確認してください。工事報告書、打合せ記録、防水・塗装などの保証書、亀裂補修やタイル浮き補修の一覧・図面、アフター体制、等が整理されて、引き渡されているかを確認します。特に亀裂一覧の図面は、今回の工事でどこをどのように直したかが全て記載されています。保証期間内に不具合が再発したら無償で対応をお願いすることになりますし、工事後に発生した亀裂などは工事業者の責任を問えません。保証書やアフター対応は必ず引き継がれるようにしてください。
《3》大規模修繕工事は後が大切
大規模修繕工事は終わったといっても、すぐに次が来ます。次のための準備をしておく必要があります。次の工事にどの程度の予算が必要か、長期修繕計画を見直して適切に積み立てられているか、日常修繕においても適切な修繕や対応ができているか、それらを再検証します。一度経験したからわかる費用や補修すべき項目もあります。日常気をつけておくべきこともわかります。早期発見・早期対応できれば結果的に建物が長持ちし、費用も少なくてすみます。予算が足りなくなることがわかっていれば、そのときに一時金を集金するよりも、今から月額を少し上げていくことを選択するのではないでしょうか?
《4》大規模修繕工事を成功させるには
大規模修繕工事でトラブルになったり、明らかにおかしな工事を行っている事例はたくさんあります。その工事内容を、誰が決めたのか?管理組合は内容を決めた専門家や施工者に正しくものを言えているのか?
管理会社やコンサルタントのいうままにしていませんか?プロが言うのだから、といって考えることを放棄していませんか?「わからないから任せる」のではなく、「わからないことはプと一緒に考える」姿勢が必要です。
《最後に》
大規模修繕工事や建物の維持管理について、長くつきあえる主治医的な建築専門家の関与が不可欠だと考えます。管理組合と一緒に考えてくれる人を探してください。それはコンサルタント(設計事務所)かもしれません、あるいは管理会社かもしれません、施工者やメーカーかもしれません。それぞれの管理組合によって異なるとは思いますが、そういった専門家に出会って、適切に維持管理できる体制を作ることが大切です。
7月26日(日)第2日目−2
講座4
大規模修繕工事の「かし保険」
マンション管理の主体は管理組合の皆さん、工事のリスク対策としてかし保険は重要です。〈講師〉一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険法人 五十嵐 彰 (いがらし あきら)
1.管理組合とリスク
管理組合の運営主体は、組合員の皆さんです。そのため工事契約でも、何かあると自己責任となるので、自己防衛を考えることが必要です。まずは建物の劣化診断などをして現状に目を向け、自分の住むマンションには何が足らないのか、リスクを洗い出し、リスク管理をする意識を持っていただきたいと思います。
リスク対策は次の4つがあります。
・リスク回避…修繕積立金の枯渇、これは絶対避けましょう
・リスク低減…耐火・耐震補強、施工ミス
・リスク移転…移転先は保険会社、リース会社、つまり保険を掛けること
・リスク保有…騒音、少額の損害など
2.瑕疵保険について
・瑕疵保険ができるまで
平成12年 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)施行
平成17年 構造計算偽装問題発覚品確法は、消費者保護を目的としていたものの、会社が倒産してしまうと対応できませんでした。そこで平成21年に施行されたのが住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)です。そして平成22年には、大規模修繕工事の瑕疵保険が認可されました。
・瑕疵保険の概要
瑕疵保険は、工事会社が加入する保険の一つです。瑕疵があった場合、工事会社は保険を使って直しやすい、また工事会社が万一倒産した場合、管理組合から保険法人
に直接請求ができます。
またリフォーム後の保証の受け皿として「住宅リフォーム事業者団体登録制度」が作られました。登録団体で大規模修繕工事が1億円以上、または1戸あたり100万以上の工事なら瑕疵保険を付ける、というルールを作りました。マンション計画修繕協会、日本住宅リフォーム産業協会など6団体合計約4,800社が登録団体になっています(平成27年6月現在)。
・瑕疵保険があると
保険法人の設計施工基準があり、検査員(技術者)の現場検査があります。工事会社が瑕疵保険に加入していれば、もし瑕疵があっても、補修費を保険で確保できる、つまり管理組合にとっては建物の品質確保ができ、瑕疵の未然防止につながるのです。
3.マンション管理・改修の注意点
《ポイント1》工事会社の入る保険と、その保険で何がまかなえるのかチェックします。
《ポイント2》議論したことは必ず議事録を残しておきます。後で訴えられたりした時、合意の有無など記録があることがとても重要です。
[ケース]大規模修繕工事終了後、タイルが落ちた。
工事後の瑕疵で、債務不履行、不法行為などがあった場合、管理組合は工事会社に補修工事の請求ができます。しかしそれが【債務不履行(依頼したことができていない)】の場合、立証責任は工事会社にありますが、【不法行為(故意又は過失により工事ができていない)】の場合、立証責任は原告(管理組合)にあるため、非常に多くの時間とパワーが必要です。これを回避する一番いい方法は、よいアドバイザーをみつけて対応することです。
4.リスク回避するには
・工事契約の締結時に保証内容を理解する
・工事費の高い安い、会社の規模だけで工事会社を選ばない
・管理会社から得られる建物情報を活用する
・管理組合団体、一級建築士の信頼できるアドバイザーを利用する
・入札時に国交省認可の「大規模修繕工事瑕疵保険」等を条件化→入札条件に入れると、抑止力になり、事故も少なくなる
【参考】
平成25年度マンション総合調査結果によると、修繕積立金の月1戸当たりの平均は10,783円ですが、想定必要修繕積立金は13,700円。この辺りの数字なら安心。但し施工トラブルなどの対応費用は見込まれていません。
マンション運営における保険の重要性
[火災保険]
2015年10月から火災保険の保険料率が上がります(平均3.5%)。これは自然災害や水漏れ損害による保険金支払いが増加しているためです。
・マンションドクターズ火災保険
今後は築30年以上のマンションの新規の保険引き受けはしない会社が出て来ます。そのため日本マンション管理士会連合会と日新火災海上保険が共同で、管理状況に応じた保険料を実現する「専門家診断レポート付火災保険(マンションドクター火災保険)」の開発を発表(2月)。もしよければご検討いただければと思います。
国による補助事業・施策
[補助金(省エネ・長期優良住宅)]
国の補助政策は去年もありましたが、今年はかなり、ハードルが下がっています。もし組合全体で窓をやり替えよう、お風呂をやり替えようという場合に、ポイント制度を検討いただければと思います。
管理組合の運営主体は、組合員の皆さんです。そのため工事契約でも、何かあると自己責任となるので、自己防衛を考えることが必要です。まずは建物の劣化診断などをして現状に目を向け、自分の住むマンションには何が足らないのか、リスクを洗い出し、リスク管理をする意識を持っていただきたいと思います。
リスク対策は次の4つがあります。
・リスク回避…修繕積立金の枯渇、これは絶対避けましょう
・リスク低減…耐火・耐震補強、施工ミス
・リスク移転…移転先は保険会社、リース会社、つまり保険を掛けること
・リスク保有…騒音、少額の損害など
2.瑕疵保険について
・瑕疵保険ができるまで
平成12年 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)施行
平成17年 構造計算偽装問題発覚品確法は、消費者保護を目的としていたものの、会社が倒産してしまうと対応できませんでした。そこで平成21年に施行されたのが住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)です。そして平成22年には、大規模修繕工事の瑕疵保険が認可されました。
・瑕疵保険の概要
瑕疵保険は、工事会社が加入する保険の一つです。瑕疵があった場合、工事会社は保険を使って直しやすい、また工事会社が万一倒産した場合、管理組合から保険法人
に直接請求ができます。
またリフォーム後の保証の受け皿として「住宅リフォーム事業者団体登録制度」が作られました。登録団体で大規模修繕工事が1億円以上、または1戸あたり100万以上の工事なら瑕疵保険を付ける、というルールを作りました。マンション計画修繕協会、日本住宅リフォーム産業協会など6団体合計約4,800社が登録団体になっています(平成27年6月現在)。
・瑕疵保険があると
保険法人の設計施工基準があり、検査員(技術者)の現場検査があります。工事会社が瑕疵保険に加入していれば、もし瑕疵があっても、補修費を保険で確保できる、つまり管理組合にとっては建物の品質確保ができ、瑕疵の未然防止につながるのです。
3.マンション管理・改修の注意点
《ポイント1》工事会社の入る保険と、その保険で何がまかなえるのかチェックします。
《ポイント2》議論したことは必ず議事録を残しておきます。後で訴えられたりした時、合意の有無など記録があることがとても重要です。
[ケース]大規模修繕工事終了後、タイルが落ちた。
工事後の瑕疵で、債務不履行、不法行為などがあった場合、管理組合は工事会社に補修工事の請求ができます。しかしそれが【債務不履行(依頼したことができていない)】の場合、立証責任は工事会社にありますが、【不法行為(故意又は過失により工事ができていない)】の場合、立証責任は原告(管理組合)にあるため、非常に多くの時間とパワーが必要です。これを回避する一番いい方法は、よいアドバイザーをみつけて対応することです。
4.リスク回避するには
・工事契約の締結時に保証内容を理解する
・工事費の高い安い、会社の規模だけで工事会社を選ばない
・管理会社から得られる建物情報を活用する
・管理組合団体、一級建築士の信頼できるアドバイザーを利用する
・入札時に国交省認可の「大規模修繕工事瑕疵保険」等を条件化→入札条件に入れると、抑止力になり、事故も少なくなる
【参考】
平成25年度マンション総合調査結果によると、修繕積立金の月1戸当たりの平均は10,783円ですが、想定必要修繕積立金は13,700円。この辺りの数字なら安心。但し施工トラブルなどの対応費用は見込まれていません。
マンション運営における保険の重要性
[火災保険]
2015年10月から火災保険の保険料率が上がります(平均3.5%)。これは自然災害や水漏れ損害による保険金支払いが増加しているためです。
・マンションドクターズ火災保険
今後は築30年以上のマンションの新規の保険引き受けはしない会社が出て来ます。そのため日本マンション管理士会連合会と日新火災海上保険が共同で、管理状況に応じた保険料を実現する「専門家診断レポート付火災保険(マンションドクター火災保険)」の開発を発表(2月)。もしよければご検討いただければと思います。
国による補助事業・施策
[補助金(省エネ・長期優良住宅)]
国の補助政策は去年もありましたが、今年はかなり、ハードルが下がっています。もし組合全体で窓をやり替えよう、お風呂をやり替えようという場合に、ポイント制度を検討いただければと思います。