海野:現在、築20年を超えるマンションは約60万戸といわれていますが、これが10年後には160万戸になり、国にとっても大変大きな問題です。そこで、マンションの維持管理を適正に行い、円滑に再生をするため、最近になってマンション管理適正化法・マンション建替え法が新しく制定され、区分所有法も大改正されました。今日は大規模修繕やマンション建替えの経験者をパネリストに迎え、マンションの維持管理・再生について、お話しいただきたいと思います。
八杉:まずはマンション価格の現状をご認識いただきたいと思います。平成11年を100にすると、新築はマイナス7.6%落ち、中古は同22.1%落ちています。平均単価もそれにつれて下がっています。これはあくまでも平均値なので当然上下はあり、それがやはり管理の善し悪しになるかと思います。マンションの資産価値は、住み心地であって快適性の価値です。収益性のための維持管理であるビルと違い、分譲マンションは大規模修繕が近づいてくるまでは、まず外圧がありません。 そうすると維持管理の意識が希薄になりがちです。築15年以上経過しているマンションで、大規模修繕が行われず、長期修繕計画もないマンションは、いくら専有部分がリフォームされていても、近隣の類似マンションの半値以下になる場合もあります。これからのマンションは、維持管理の大競争時代に入っていくことになります。
資産価値を高める管理組合のあり方は4つあります。
●管理組合と管理会社の信頼関係
管理組合は自己責任をはたし、管理会社は説明責任をはたすという対等な関係で、いい二人三脚ができることが大切です。
●長期修繕計画と修繕積立金とのリンク
長期修繕計画に対して修繕積立金の積立状況を理事会は検討して、集会で全員に説明する必要があります。
●住民のマナーと管理規約の改正
ペット・騒音・駐車場などマナーの問題に関して、住民相互の交流を図るとともに規約を改正できるものはしていく。
●セキュリティの確保
中古マンションは新築と比較して一般的にセキュリティが劣るため、住み心地・快適性・安全性の面からきちんとした対応が重要です。
コミュニティの形成は建替えの際の合意形成にもつながっていくため非常に大切です。
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