マンションライフにおいて発生する様々なトラブルに適切に対応できる 能力を身につけることはとても大切です。
建築や法律などの専門家がそれぞれの立場から分かりやすく説明しました。
大きく転換した国のマンション施策の現状と動向、規約を補完する役目を果たす細則の 作成時のポイント、そして耐震強度を含めた大規模修繕の進め方をテーマに開催しました
●マンション人口は約1割
分譲マンション戸数は平成18年末で505万戸。人口で約1300万人。国民の1割程度がお住まいになっています。そのうち、築30年を超えたマンションが50万戸を超え、5年後に100万戸以上になります。平成18年、住生活基本法が制定され、これまでの数を供給するという政策から、いいものを長く使おうという政策に大きく舵を切りました。マンション行政についても当然、同じことが当てはまります。
●マンションに関する法令等を整備
マンション管理適正化法ができ、それに基づいて、「マンション管理適正化指針」も定められています。建替えについては、平成14年にマンション建替え円滑化法が制定されました。区分所有法は平成14年に一部改正され、それらを踏まえて、マンション標準管理規約を国土交通省で改正を行いました。ここ数年で、非常にマンションに関する法令等が整備されてきました。
●マンションみらいネットと各種マニュアル
今やっている施策の一つが、マンションみらいネットです。マンションの管理水準の向上を図り、情報が一部公開されることによって、きちんと管理されているマンションは、市場できちんとした評価を受けるということを目指して作られています。
続いて耐震ですが、マンションの耐震改修を促進するために、今年度から一部補助率を上げました。そして、建替えのための実務マニュアル、建替えに向けた合意形成のためのマニュアル、改修でマンションの寿命を延ばすためのマニュアル、マンション耐震化マニュアルなど、各種マニュアルを国で整備をしております。国土交通省のホームぺージに載せていますので、ぜひご覧ください。
(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/index.html)
マンション管理規約の細則は、規約を補完するために定めるルールです。細則の法的根拠は、区分所有法39条1項に「集会の議事はこの法律または規約に別段の定めがない限り、区分所有者および議決権の過半数で決する」とあります。この条文に基づいて細則を作ります。
細則を作成・改正等する上では、2つのポイントがあります。1つは語句を統一して頂きたい。語句の統一とは何かと言うと、私どもの事務所に来られて、「これがうちの規約集です」とご相談を受けるのですが、ちょっと斜め読みをさせて頂きますと、規則、規定、要項、要領など名称をバラバラな形で取り決めておられる。標準管理規約では、様々な細則を定めることで、規約の内容を補充することを想定していますので、ルール作りを行う場合は、何々の細則ということで、語句を統一された方がいいと思います。2点目は、細則参考例(11月11日配布資料)を利用して、自分のマンションに合った形に加工してお使いくださいということです。
●修繕・改修のチェックポイント
修繕工事は、塗装や防水など、いわゆる外壁の仕上げ材の改修で、10年ごとに行うのが一般化してきています。エントランスホールなどは改修効果が高く、全体的に老朽化してきたマンションでも、例えば、吹き付けタイルで、床は長尺シートを貼っているだけのエントランスホールでも、床壁を石貼りにし、照明をグレードアップすれば豪華に見えますし、安心感と満足感が生まれます。
共用廊下、バルコニーなどの共用部分の改修には、たくさんの工事項目があり、大規模修繕工事の時にまとめて共用部分を工事することが合理的です。大規模修繕工事でなくても、単独で工事をすれば改修効果が高くなるものがありますから、常に何らかの形で、工事の適正時期を考えておいていただいたらいいと思います。
●耐震強度のチェックポイント
阪神大震災の時、新耐震基準建物の4分の3以上は大丈夫でした。そして旧耐震基準は3分の1が大丈夫で、3分の2は何らかの問題があったというデータがあります。耐震の考え方は、まさしくこれなんですね。新耐震だから100%大丈夫で、旧耐震だから100%駄目ではなくて、旧耐震でもポイントを押さえた補強をすれば比較的強くなります。
建物のバランスが悪いと、弱い部分の壁、柱が壊れて、そこからつぶれます。耐震診断をするのが大前提ですが、1階にピロティがあったり、柱のバランスが悪いマンションは、耐震診断の結果、相当悪いという結果が出たとしても、1階ピロティの補強や、住戸の壁に影響が出ない範囲で壁を増やせばいいと思います。このように、部分的に改修をして、バランス良くするような改修方法が今後増えてくるのではないかと思います。「大阪市住宅・建築物耐震改修等補助事業制度」などの公的補助を受けることも検討して下さい。 ※(注)講座1〜6の講師の役職、部署等は講演時のものです。
次へ→