元木:大規模修繕に入る前に、管理組合が機能しているのか、修繕積立金があるのか、といった問題があります。実際に大規模修繕をやられた皆さんにその苦労を話していただきたいと思います。
内藤:デベロッパーにも責任があると思いますが、きれいな台所や風呂などのことは言うけれども、管理組合や長期修繕計画のことはチラシにも載っていません。住民の管理意識が薄いというのが最大の問題であり、自覚を持ってもらう必要があります。分譲マンションに入る資格がない人が余りにも多いというのが現状です。アメリカのように入居する時に誓約書を書いてもらって、管理組合の活動をしなければいけないということにならないでしょうか。管理組合の活動を義務づける法的な整備も必要だと思います。また一番難しいのは人間関係の問題だと思います。
浦岡:私どもの場合は、管理組合が管理会社任せでした。建物診断業者も、その系列会社で、工事費用は概算で7000〜8000万円かかるということになったのですが、その内容の説明もないまま、定時総会も抜きで業者選定まで進めてしまおうとしました。そこで修繕委員会を作って、始めからやり直そうということになりましたが、委員会は女の人ばかりでしたから、業界用語が全然わかりませんでした。 欠陥の問題や工法などの勉強をして、実地にテストして工法や工事業者を選び、当初の予算の半額の3500万円で、大規模修繕を終えることができました
元木:大規模修繕する際にどんな設計図書が必要なのか、西野さんから説明していただきます。
西野:設計図書には建築確認申請書と施工図があります。建築確認申請書によって、その敷地にどのような規制がかけられているかがわかります。建ぺい率、容積率、マンションを建てる時近隣とどのような取り決めを行ったかもわかります。また、どのような構造で作られたかも分かります。実際に工事に入った時には施工図が必要です。施工図というのは、建設業者が施工中に収まりを考えて作る図面で、それを竣工時に集大成したのが竣工図です。設備系統などを現況通りに図面に載せています。修繕計画にとっては非常に貴重な資料です。
元木:今、設計図書の大切さが言われましたが、その保管状況はどうでしょうか。
Bコーポ理事長:設計図書は大切に保管し、修繕工事には活用しています。
元木:大規模修繕に入る前に気になるのが修繕積立金です。内藤さんのところは足りなかったようですが、どのように対処されましたか。また、滞納されている方にはどのように払っていただきましたか。
内藤:未収金があったので、まずそれを徴収するところから始めました。何回か話し合い、理解を得て払っていただきました。20数年も修繕していないので3〜4年しかもたないかもしれないということを、住民の皆さんに意識づけしていきました。つまり意識の共有化をして、数年かけて住宅公庫から借り入れを受けられる水準まで修繕積立金の値上げを行い、借り入れを受けて修繕を行いました。
元木:滞納している人が督促に応じない場合は、どうなるのか法律的な解説をお願いします。
強制執行は専有部分、または動産を差し押さえて競売にかけるということになります。これを簡易に行うには区分所有法に先取り特権というものがありますが、未払いの住宅ローン抵当権があると、先にそちらに取られて配当が受けられないということもあります。管理費などを未払いのまま転売した場合には、その物件を買った人に未払い分を請求することができます。
元木:修繕委員会の必要性について説明してください。
西野:最近は修繕委員会を作っている管理組合が多いですね。委員会が各種の資料を用意していただいて、どこを修繕するのか明確に話していただけ、調査や修繕をスムーズに進めることができます。理事会から離れた修繕委員会というのは公平性を保つ上で非常に効果があります。
元木:劣化診断ではどのようなことをやるのですか。
西野:劣化診断はまず目視で行い、クラックがある時はコア抜きをして、鉄筋やコンクリート、クラックの状態を把握し、強度テストも行います。このほか、超音波による鉄筋量の測定なども行います。コア抜きで1カ所5万円、超音波は1日30〜50万円といった金額です。
元木:工事業者の選び方はどのようにされましたか。
Bコーポ理事長:フローリング工事業者は、その専門業者団体の床材工業会に複数の業者を紹介してもらい、その中から選定し、全住戸を同じ職人で工事をし、公平を期しました。
元木:工事のチェックはどのようにするのですか。
西野:監理という仕事ですが、どういう仕事をどういう工法でやるかを確認する仕事です。特に業者が毎朝、職人にどんな指示を出し、夕方にどんな風に仕上がったかを確認するのが監理です。その状態を管理組合に報告します。それを毎日きちんと繰り返すことが大切です。
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