マンションらいふあっぷ基礎講座


建物の維持管理に関連して、大規模修繕のポイントや共用部分の修繕への支援制度などをテーマとした講座を開催しました。
 阪神・淡路大震災から8年が過ぎてあのすさまじい惨状の記憶が薄れていますが、もし大地震がきた場合、昭和56年頃より以前に建てられたマンションには、耐震安全性に多少の問題があるとされています。長期修繕は、こうした問題に対しても、修繕や改修、改良の組み合わせで単独で補強する時よりも効率的に性能を上げることができます。また、建物のグレードアップで資産価値を高めることも可能となります。
 修繕を実施するためには事前調査が必要となりますが、手順として、まずヒアリングによる予備調査を行います。居住者全員に修繕工事の必要性を理解してもらうようにPRすることが必要で、居住者の了解を得た上で予備調査を行います。調査を実施する際、しっかりとしたパートナーを選び、必ず立会いましょう。目視をはじめ、様々な診断を行って、疑わしいものは再度二次診断という詳しい調査を実施することが必要です。
 そうした調査者の選定に際しては、調査箇所を的確に把握することができ、調査のための工法・コスト等について熟知している業者であり、かつ総会等で皆さんにきちんと説明ができるような技術者を公平・公正に客観的に選ぶことが重要です。
 さて長期修繕計画には、「修繕項目を明確化」「実施時期の明確化」「費用の明確化」の3つの重要なポイントがあります。このことによって集合住宅としての機能の強化と、快適で安全な生活の確保ができるわけです。そして場合によっては資産価値の向上にもつながることになります。また、長期修繕計画の3大効果としては、1つ目は建物の性能を居住者が認知することができ、2つ目は、修繕積立金の変更の際に、なぜ変更が必要かを明確に示すことができます。3つ目は、住民の理解、コンセンサスが得やすくなります。 
 長期修繕には、ペンキの塗り替えなら7年とか、防水工事なら10年から15年、外壁なら15年から20年といった目安があります。しかし、これは個々に差があります。例えば大阪湾に近いところと海から遠いところでは、同じ塗装でも耐久年数に違いがあります。
 いろいろな条件を考慮した長期修繕計画はすぐにできるものではありません。修繕を実施する時には、すぐに皆の合意が得られるように、常にあらゆる機会を捉えて、マンションの性能の改善、補修の必要性をPRし、きっちりとした長期修繕計画を作定しておくことが重要です。
 公庫が準備しているマンションの維持・管理、長期修繕への支援制度について説明します。
■維持管理基準の適用
 マンションを新築するときに、公庫では公庫融資利用のマンションについての維持管理基準(管理規約で定めるべき内容、長期修繕計画の基準が決められている)を定めて適用し、マンション事業者に守っていただいています。
■公庫マンション維持管理ガイドブック
 入居者への引渡し、管理組合による管理開始時に、「公庫マンション維持管理ガイドブック」を管理組合へ配布するよう事業者に依頼しています。
■公庫マンション情報登録制度
 マンションの維持管理内容が、公庫が定めている維持管理要件に適合していることを公庫の指定した機関にあらかじめ登録しておく制度です。
■マンションすまい・る債
 公庫が発行する、1口50万円の債券を管理組合が年1回、10年間にわたって購入していただき、利息を付けて公庫が買い戻す制度です。
・初回のみの積立てでも利用できること、中途解約でも元本割れ がないこと、定期預金以上の利回りがあることなど修繕積立金 のペイオフ対策として注目が集まりつつあります。
・公庫廃止の政府決定がされていますが、公庫が皆さんに対して 責任を果たさなければならないマンションすまい・る債などについ ては、公庫のあとにできる独立行政法人が、その責任遂行を引 継ぐことも政府決定されています。その意味でもマンションすまい・ る債は安心できるものとなっています。
■マンションリフォームローン
 分譲マンションの共用部分をリフォームする工事について利用でき、無担保コースでは、(財)マンション管理センターを連帯保証人にすることで、対象工事費の80%または、1戸当たり150万円を限度にお貸しします。
ミニ講座2 ガス配管の維持保全について
埋設管は20年、露出配管は30年を目処に計画修繕を
講師 佐々木 善文(ささき よしふみ)
大阪ガス設備技術部導管企画チーム次長

 ガス配管も古くなると腐食漏れを起こすため、給水管や配水管と同様に、計画修繕が必要です。
 ガス配管の資産区分は、敷地境界線から道路側の配管はガス事業者、敷地の内側については、住戸内は各区分所有者、共用部分は管理組合全体の資産です。敷地内のガス管は、ガス事業法に基づいて3年に1回定期点検を行っています。埋設管の材料としては、昭和50年までアスファルトジュート巻鋼管が標準でしたが、現在は、先の阪神・淡路大震災で被害を受けなかったポリエチレン管が一般的に使われています。埋設管は20年、露出配管は30年を目処に計画修繕に組み込んで下さい。
 ガス配管改善工事の手順としては、まず現場を調査し、改善工事の提案と見積書を提出し、工事契約完了後、工事を行います。
 改修の際、埋設部はポリエチレン管に取替え、旧型のガス栓は新しいヒューズ型のガス栓に取替えることをポイントとしていただければと思います。
 ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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マンションらいふあっぷ基礎講座


マンションの財務会計に関連して、管理組合会計の実務などをテーマとした講座を開催しました。
 管理組合には、収益事業をされているところはほとんどないと思いますが、そういう意識はなくても一部で収益事業に該当するものがあります。この場合は必ず申告しなければいけません。例えば、会議室や集会所、駐車場等の貸付け、飲料水等の自動販売機の収入、バザーやレクリエーション開催の収入・・・これらが収益事業に該当すれば申告する義務があります。
 収益事業に該当するかどうかの判断基準は、
1.組合員、マンションの住人のみを対象としているか
2.無料もしくは、実費弁償、つまり利益・剰余金が発生しないか
3.バザー、コンサートなどの催し物は年1〜2回程度か
 上記1〜3に該当する場合は申告する必要はないと考えられます。ただし、例えばコンサートでかなりの収益が出るような場合は、事前に収益事業に該当しないという届出を出して、申告するかどうかの判断を仰ぐことになります。下記に、具体的な事例をいくつか上げておきましょう。
1)分譲マンションの屋上に携帯電話などのアンテナを立てるスペースを提供して、年間収入がある場合。これは収益事業の不動産 貸付業に当たり、申告する必要があります。
2)廃品回収に対して地方自治体から入る補助金は収益事業に該当しないので、非課税です。
3)駐車場をマンションの住民以外の人に貸付けた場合、住民より高い駐車場料金を取っていれば、外の人に貸付けている分だけでなく駐車場の収入全体が収益事業ということになります。
4)マンションの外部の方に会議室などの部屋を貸付けた場合は、席貸業になり納税義務が発生します。
5)管理組合会計で剰余金が出た場合に、国債を買ったり、一時払い養老保険に加入するケース。これはもともと原資が会費収入ですので、非課税です。元々のお金が非課税であれば、その利子収入についても非課税です。
 収益事業というのは、法律で三十三事業が定められています。先ほど話した収益事業に該当するかどうかを検討し、また、各税務署の担当課にご相談されてもよいと思います。
 次に、「決算書作成のポイント」ですが、ここで一番大切なのは、未収も含めて収入がきちんと計上されているかどうか、そしてその残高が本当にあるかどうかということが一番のポイントです。それから大規模修繕などは何千万円というお金が動きますので、どんな業者を、どんなふうに選定したかということをきちんと説明できる形で選ぶということが大切です。それがトラブルの元になることがよくありますから、注意してください。
ミニ講座3 マンション建替事業における高齢者向け融資について 高齢者向けの毎月の返済額が安い融資です
講師 林 宏幸(はやし ひろゆき)
住宅金融公庫大阪支店まちづくり融資課長副調査役

 昨年12月に「マンション建替え円滑化法」が施行され、マンション建替えにも、再開発で使われている「権利変換」という手法が取れるようになりました。
 マンション建替えに関して、「合意形成」と「資金調達」が2つの大きな問題です。マンションの建替え事業のあらゆる局面で必要な費用を融資対象とする公庫の「都市居住再生融資」があり、その中に「高齢者向け返済特例制度」があります。
 この制度は、建て替えるマンションに従来から住んでおられた60歳以上の方に、最大1,000万円まで融資でき、毎月の返済は元金の利息だけの支払いで、とても安くなります。
 元金はお亡くなりになられた時に、相続人が一括返済するか、担保提供された建物・土地の処分により返済いただきます。必要に応じて活用していただければと思います。
※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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マンションらいふあっぷ基礎講座

【第3場面】議案(第1号〜第3号)、事業報告、決算報告、監査報告(未払い金の扱い、未収金の扱い)

 副理事長から、2002年度の事業報告及び収支決算報告について提案がある。続いて監事から決算監査報告。この3つの議案に対して議長が出席者からの質問や意見を受け、理事から回答がある。(質問と回答は次のとおり)
質問1:「駐車場の補修工事が3月に終わったのに工事代金が未払いになっているのはなぜですか。」
回答1:「工事費の支払いが4月にずれ込んだためです。」
質問2:「未収金の内容と貸付信託とはどういうものですか。」
回答2:「未収金は管理費の長期滞納によるものです。貸付信託については、後日調べてお知らせします。」
質問3:「滞納金は回収が難しくても資産の部にあげておくべきなのですか。」
回答3:「本来回収すべきものであるのであげています。」
議長が他に質問がないことを確認して、採決に入る。出席者からの「異議なし」の声により提案が承認される。
解 説
 未払い金、未収金の問題ですが、工事費の「未払い」は、工事は終了したがお金はまだ払っていないということです。「未収」は、例えば管理費などで、当月は過ぎているけれどもお金が入っていない場合で、「前受け」は、仮に管理費や積立金を数か月分まとめて支払われた場合などを示します。また大規模工事などで着手金や中間金として支払う仮払い的なものは「前払い」金として処理します。この4つは収支報告書に計上する方がいいと思います。
その理由は議案書では、予算と決算の対比が大切だからです。予算というのは、来年度の行動計画を数字で表わしたもので、決算は予算に対してどれだけの活動を行ったのかを表わしています。先程の工事の未払いと管理費の未収についても、業務が行われているなら決算に入れておかなければなりません。
管理費の長期滞納による未収金の問題については、「回収の見込みがないのに…」という話が出ていましたが、区分所有法の「特定承継人の責任」という項目に、管理費が未収の場合は、特定継承人、つまりその住戸を次に買った人から取り立てることが出来るという規定があります。不動産業者は不動産の売買時に、重要事項説明書で未払い金があるということを次の購入者に説明しなければならないことになっています。したがって、管理組合は、決算報告書に未収金として総額を上げるだけでなく、回収可能かについて欄外に長期滞納金などの内訳を書いておく方が親切だと思います。 最後に貸付信託ですが、これは元本が保証された金融商品です。

【第4場面】議案第4〜6号と追加議案、ペット飼育細則、広報委員会設置(普通決議・特別決議・未通知議案の処理・可否同数の場合の扱い)


 第4号議案のペット飼育細則の設置の提案(現行規約では一般使用細則でペット飼育を禁止)を、議決権の過半数の賛成による普通決議事項として扱おうとしたことに対し、組合員が「ペット飼育問題は、大きな問題であり、4分の3以上の賛成で決める特別決議にすべきではないか」と提案がある。
 続いて、執行部から広報委員会設置の追加議案があったが、組合員から「欠席者は議決に参加できないので後日、臨時総会を開くなどして、改めて議決する場が必要ではないか」との意見が出た。

解 説
 区分所有法で規約の変更は、総議決権数及び総区分所有者の頭数の各4分の3以上の特別な多数決で決めなければならないと定められています。今回のペットの飼育細則を「規約」と考えるかどうかが問題となります。
 この点、旧建設省の標準管理規約の解説本にもペット飼育は大きな問題であるため、規約で定めるべき事項だとし、たとえ細則で定めるとしても、4分の3以上の特別決議とするべきだと書かれています。これが現在の一般的な考え方だと思います。このマンションは120戸ですので、この日出席した35名、委任状出席の55名で、総議決数の4分の3、頭数の4分の3をクリアするためには全員が賛成すれば、この提案が可決することになります。ただし1人でも反対すると、この提案は否決されたということになります。
 さて、2つ目の広報委員会の設置については、当日になって議案を追加提案したわけで、この場では議決できません。最後に可否同数の場合ですが、これは管理規約に「可否同数の場合には議長の決するところによる」と書かれています。

【第5場面】議案第7号の新役員選任と閉会(議事録の作成)


 新役員の選出は、理事を選出したのち一旦休憩をとり、その間に理事の互選により理事長や副理事長、各担当を決め、総会を再開。その内容を報告して総会を終了する。総会終了後に理事長から「議事録署名人は後日、議事録内容確認と署名押印をお願いします」と関係者への伝言があった。

解 説
  理事長が作成しなければならない議事録には、開催日時や議題、議論内容や結果など後々に議事録を見て、その経過を知りうる程度の要約を記載すればいいのですが、決議については有効性を明確にするため、総会時の組合員や議決権の総数、出席者数、そのうち代理人の出席数、また各議案ごとの賛成、反対数を必ず記載しておくべきでしょう。特に建替えや大規模補修など大きな問題では、議事録に賛成や反対、棄権した人の名前を記載しておくことが必要です。その議事録に記載された反対者に住戸の売り渡しを請求する根拠にもなってくるからです。
 議事録は総会終了後、速やかに作成し、決められた場所に保管しなければなりません。区分所有法の改正(平成15年6月1日施行)により、これまでは議事録は書面での保管だったのが、例えばワープロのフロッピーで保管するという方法も認められました。なお、議事録は組合員以外でも、利害関係者、例えば賃借人には理由があれば閲覧する権利があります。
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平成14年度「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」 報告


 今回の「らいふあっぷ基礎講座」では、新しく管理組合の役員になられる方などを対象として、マンションの維持管理に関する基礎的な内容を学ぶ講座を、計3日間連続して開催いたしました。いずれの日も定員を上回る参加者があり、非常に熱心に参加いただき、盛況のうちにすべての講座(合計9講座)が終了いたしました。
特に3日目の「講座6 模擬総会」では、一つのマンションを設定して、その管理組合における総会の模様をステージで実演することにより、総会運営、進行の仕方などを専門家の解説を交えてわかりやすく説明。参加者からも大変好評をいただきました。
 また、1日目の2月23日には個別相談会も開催し、法律・管理などの各相談において専門家から具体的なアドバイスが行われました。

主な出演者
■沖 健補 大阪司法書士会
■中岡 博之 大阪土地家屋調査士会
■笠井 靖彦 (社)大阪府不動産鑑定士協会
■川畑 雅一 (社)大阪府建築士会
解説者
■久保井 聡明 大阪弁護士会
■植田 卓 近畿税理士会
マンションの概要
・マンション名/「らいふあっぷコーポ」
・建物概要/鉄筋コンクリート10階建・総戸数120戸・築18年。駐車場、駐輪場
・管理形態/全面委託で管理会社から管理員1名が出向
・管理規約/平成9年に標準管理規約に準拠して改正
・管理組合役員/理事10名、監事1名で任期は各1年
・議決権/1住戸につき1議決権
・管理組合の設立経緯/分譲当初は管理組合がなく、2年後の 87年5月に区分所有者有志が管理会社のサポートで設立総会を開催、管理組合が発足した。

【第1場面】受付対応での問題(賃借人の扱い、委任状)

 理事が総会の受付をしている。
 委任状を持たない賃借人が「今日の議案にあるペット飼育細則の設置については、私にも関係があるので参加したい」と登場する。受付担当理事は「委任状がないと出席はできない」と断るが賃借人は納得できない様子。続いて、区分所有者の娘が代理で受付に来たが、委任状を持っていない。委任状の提出を求めると「家族でも委任状がいるんですか?」と聞かれ、理事たちは取り扱いに困る。
解 説
 法律では区分所有者が総会に出席することができるのは当然ですが、それ以外に賃借人等、区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、総会の議案に利害関係がある場合には意見を述べることができます。また利害関係がなくても、賃借人に積極的に参加してもらうのは望ましいので、出席してもらう方向で運営することが良いでしょう。ただし、これらの場合は規約であらかじめ理事長にその旨を通知しなければならないとされていることが多いです。
 次に委任状の扱いですが、提出の義務付けは後々のトラブルを避けるためです。例えば、ある問題について「娘に一任した覚えはない」と父親からといわれた場合、それが有効票か無効票かが分からなくなるという事態を防ぐ意味で委任状を出してもらうわけです。
 総会は、区分所有者の権利や義務、また管理費の使途を決める非常に重要なものです。したがってその議決権を行使するために代理人等に委任状の持参を義務付けるのは重要なことで本来は、家族であっても区分所有者以外の人が出席する場合は、委任状が必要です。しかし、今回のように委任状がないから一律に「帰ってください」という対応をしてよいかは難しい問題があります。例えば「今日は出席してください。ただし後で委任状を持ってきてください」と対応するのが妥当だと思います。また委任状を出したが、本人が出席する場合は、本人の出席を優先しますので委任状が無効になります。

【第2場面】開会と議長、書記、議事録署名人選出(議長等の選出、総会の成立)

 司会者の開会宣言により、総会が始まる。理事長のあいさつに続いて議長の選出を行う。議長に承認された理事長に議事進行を交代。
 議長がまず、書記と議事録署名人の選出を行い、候補者を指名して出席者の承認を得る。次に議長が、「当マンションでは1戸につき議決権を1とし、議決総数は120です。本日の出席者議決権数は、委任状によるものが55と本日出席者の35を合わせて90であり、規約第45条に基づき、議決権総数の半数以上出席と認めますので、本総会が有効に成立していることを宣言します」と出席状況の報告と総会設立の宣言を行う。
解 説
 議事録署名者の2名に関しては、規約の48条2項に「議長及び議長の指名する2名の総会に出席した理事がこれに署名押印しなければならない」ということになっています。
次に総会の成立については、「議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない」とあり、これが定足数と言われるものです。議長が「総会が有効に成立している」と宣言したのは、このことを指しています。
 普通決議の要件については、区分所有法では、規約などで別に定めがない限り、「区分所有者及び議決権の各過半数で決する」となっています。つまり、出席した区分所有者の過半数ではなく、全区分所有者の過半数及び全ての議決権の過半数の両方を満たしている場合に議決は成立することになります。
 しかし、実際上この条件で議決を成立するのは厳しいため、標準管理規約では、1.議決権総数の半数以上を有する組合員が出席し(定足数)、2.出席した区分所有者の議決権の過半数で議決できるように定められており、そうしている管理組合が多いようです。
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第7回セミナー&相談会と交流会 2

交流会は、セミナーに参加された方のうち38管理組合の方が参加され、熱のこもった意見交換や経験交流が行われました。 交流会は、6〜7名で課題毎に6グループに分かれ、事務局スタッフが進行役となり、参加者の自己紹介やマンションプロフィールの紹介から始まり、各課題(1.管理組合運営 2修繕関係 3住まい方)を中心に交流が進められました。
また交流会場には、管理組合活動の紹介と広報活動の参考として、登録管理組合の発行した広報紙(誌)やお知らせ、「暮らしと住まいのしおり」等を展示し、自由に閲覧していただきました。
次に、意見交換された内容の一部をご紹介いたします。

意見交換の概要

管理組合運営
●理事の選任については、最初の1年を見習い理事とし、2年目を正理事とすることにより、理事業務の引継ぎや理事会運営をスムースにすることが出来ました。
●総会参加者が減少してきた場合の対策としては、住環境改善や徴収金額の変更など居住者の関心の高い議案があると、総会の出席率が高まります。総会後に懇親会を企画するのもよいのでは。
●理事会運営を女性と高齢者だけで頑張っていますが、今日のみなさんのお話しは、大変参考になります。
●管理会社まかせではいけない。理事会が主体性を持って判断することが大切です。
●高齢者で一人暮しの方が病気になり、役員が付き添い救急車で運びましたが、役員が出来る限度もあり、その対応の難しさがありますね。
●賃貸化や事務所化が進むと管理が難しい。規約と実態とがあっていないし、いろいろ問題を抱えて困っています。
●長年、自主管理で総会を開催せずに書面決議により、大きな問題もなく運営してきましたが、建物も居住者も高齢化が進んでおり、自主管理を続けられるか不安を感じています。
●管理実態を調べ、管理基準をつくり、管理会社5社から相見積りをとり、修繕積立金や管理費を見直しました。
●理事会とは別に事務局を設置して、見積り内容の検討など管理組合業務の一部を行っています。

修繕関係
●信頼できる業者探しとして、インターネットを利用し情報収集しています。
●バリアフリー工事(階段をスロープ化)のきっかけは、車椅子居住者の方の発案です。現在はお年寄りやみなさんによろこばれています。
●修繕業者選定の方法として、小規模な工事を頼んでみて、その出来を見て判断する方法をとっています。
●建物診断を行う場合、建物の外観だけではなく、できるだけ材質の変化も調査した方がよいと思います。
●建物の維持管理は痛みがひどくなってからでは遅い。これでいいのか常に心掛けることが大切です。無関心が一番困りますね。

住まい方
●子供が居る居ないで随分住まい方が違ってきます。普段からのお付き合いでお互いを理解することが大切ですね。そのための日常的なコミュニィティ活動が大切です。
●ペット委員会の構成を飼育者と非飼育者の半々とし、両者の意見を聞けるように運営しています。
●ペット飼育は一代限りとし、写真による登録制度を実施してみたが、うまくいかず、今度は登録料を徴収する案を検討中です
●ペット問題に対応するため、現在ペット規約を作成中です。
 1時間半という限られた時間でしたが、各グループ共、熱のこもった意見交換がなされました。

参加者アンケートでは、ほとんどの方が「大変良かった」「良かった」と答えており、その良かった点として、複数回答で9割の方が「他のマンションの実情がよくわかり、自分のマンションと比較することができた」と答え、3割の方が「直面する問題の対応等について良いアドバイスが受けられた」と答えています。また、次回交流会については、「必ず参加」「内容により参加」と答えた方が9割以上を占め、継続開催を希望されています。参加者の意見としては、「実際の経験によるアドバイスが有益だった」「交流時間が短かった」「同じ規模のグループ分けを希望」「テーマを決めずにフリーに話し合うのも良い」など。

初めての交流会の開催で、設営や進行で手間取ったり途惑うこともありましたが、皆さんのご協力で無事終了することができました。ありがとうございました。
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平成14年度「第7回セミナー&相談会と交流会」報告

恒例となったセミナー&相談会は、今回はセミナーに続いてそれぞれの管理組合の経験と知恵を交換し合う、初の管理組合交流会が開催されました。
セミナーでは、光華女子大学の平田陽子助教授に、マンション管理のソフト面ともいうべきコミュニティ形成について「マンション管理とコミュニティ形成」と題して講演していただきました。

マンション管理の三つの側面

 マンション管理を行うには三つの側面があります。その一つは維持管理(メンテナンス)、これは物の管理です。次に運営管理(マネージメント)があります。いろいろな問題について総会を開いて、マンションの管理方針を考え、決めていく仕事です。そして三つ目が生活管理、コミュニティライフ、コミュニティ形成の問題です。
 マンションにはいろいろな考え方、さまざまな年齢、最近では国籍の違う人など実にさまざまな方が住んでおられます。そういう人たちと人間関係を円滑にしていくためにはいろいろな問題があります。一つ間違うとトラブルになりますので、そうならないためにコミュニティをうまく形成していくことが大事な仕事になります。

管理組合と自治会

 マンションには所有者が作る管理組合という組織と、賃貸者を含めた居住者が作る自治会という2つの組織があります。そこに住んでいる人たちが近隣関係・コミュニティをより良くしたり、生活が円滑に進んでいくようにいろいろなことに取り組んでいく組織、それが自治会です。
 管理組合と自治会との関係はおおむね三つのタイプに分かれると思います。一つ目は、管理組合と自治会がまったく別の組織になっていてそれぞれ別々の活動をされているタイプ。二つ目は、管理組合の中に自治会的な部門があるというタイプ。そして三つ目は、マンションには管理組合しかなくて、地域の自治会に個人単位で参加しているというタイプです。
 マンションは一つの財産という側面もありますが、人間が生活する場でもあります。そこに住んでいて楽しい、ずっと住まい続けようと思うような住まいであることが大事なことだと思います。そのためには愛着を持つことです。
 一戸建てと違ってたくさんの人が住んでいるからこそ可能となる活動があると思います。

自主管理が日本のスタイル

 日本のマンションはヨーロッパに比べると、住民による自主管理という形態が多いように思います。ヨーロッパでは管理者がいて、その人が管理上の判断を下すのです。日本の集合住宅の歴史をみると、昭和30年頃に住宅公団が鉄筋コンクリート造の賃貸アパートを作り始めました。その管理を自治会に任せることになり、それが自主管理というスタイルを定着させるきっかけになったのではないかと思います。
 昭和30年代から40年代の始めにかけて分譲マンションが出てきたのですが、このときにも住民組織、管理組合に管理を任せるスタイルが住宅公団や住宅供給公社のマンションには多かったようです。

コミュニティの活性化が重要

 わが国では高齢化が進んでおり、今後は共同住宅の活性化が問題になります。建物が古くなると同時に居住者の高齢化が進むのは自明のことですが、コミュニティを円滑にして、高齢者にとっても住みやすい空間を作っていくことが非常に大事なことになってくると考えています。
 「集住」という言葉がありますが、マンションの生活は昔の長屋と似た面があるのではないかと思います。長屋には壁一枚隔てて迷惑をかけないように注意しながら暮らすという生活習慣があった集合住宅です。そういう住み方は現代版の長屋というべきマンションでも同じで、お互いの生活を理解しながら、気を遣いながら住むことが必要です。
 お互いの生活スタイルが分かっていれば、深夜の騒音でも許せるという側面があると思うのです。タクシーの運転手さんや看護婦さんだったら、深夜にしかお風呂に入ることができないかもしれません。お互いが分かり合えれば、受け止め方もずいぶんと違ったものになるのです。

コミュニティ形成の事例

 たくさんの世帯があるマンションで快適に住むためには最低限のルール作りが必要です。大阪の南千里のマンションでは、ペットを飼いたいという人がペット委員会を作って自分たちでペットの飼い方のルールを作り、ペットを飼うことを認めてもらったという事例があります。 
 自転車もマンションではよく問題になるところです。駐輪場の不足を共用自転車を持つことによって解決した事例があります。また、各家庭で不要になった本を集め、子供文庫として集会所に常備して貸し出しを行っているマンションもあります。
 玄関の階段をスロープ化してバリアフリーを実現し、お年寄りにも、ベビーカーを押すお母さんにも喜ばれているマンションがあります。また、マンションで週一回、高齢者に対するデイサービスを行っているところもあります。めにコミュニティをうまく形成していくことが大事な仕事になります。

情報の共有化と知恵の交換

 マンションでの生活を快適にするためには「情報の共有化」が欠かせません。管理組合新聞やニュースなどで、今何が問題になっているか、どんなことが話し合われているのかをこまめに知らせ、それが共通認識になっていれば、修繕などを行う際にもスムーズに進めることができます。また、さまざまな経験を管理組合間で交流する、「知恵の交換」も重要です。
 住民それぞれが自分のできるところでちょっとがんばる、面白いからもう少しやってみるということが大事だと思います。
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平成14年度「第6回セミナー&相談会」報告

 恒例となったセミナー&相談会。今回は各管理組合の役員が頭を悩ます「ペイオフ」問題に焦点を絞ってセミナーが開催されました。はじめに、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士でもある足立亜僖子さんに「ぺイオフとは何か」をテーマとして、資金保存の様々な手段についての長所短所などの解説をしていただきました。続いて住宅金融公庫大阪支店まちづくり融資課の横井聡輝さんが住宅金融公庫のマンション修繕債券積立制度を紹介。そしてマンション問題に詳しい弁護士の丸橋茂さんが「管理組合役員の権限と責任」について講演しました。  今日はペイオフ対策として、どんな選択肢があるか、それにはどんなメリット、デメリットがあるかということを中心にお話ししたいと思います。まず、ペイオフについておさらいします。
 金融機関が破綻すると、「1,000万円を超える元本とその利息等については、破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われますので一部カットされることがあります」ということになっています。金融機関は預金者が預けている預金に対して、一定の率をかけた保険料を預金保険機構に納めています。これは1,000万円までの預金を払い戻してくれるという保険です。
 金融機関が破綻しますと、預金保険機構は債務超過額を計算して、預金のカット率を決めます。つまり1,500万円を預金していた場合、1,000万円と、それを超える500万円に分けて考えます。そしてカット率が30%と決まると、1,000万円と、500万円が30%カットされた350万円の計1,350万円が払い戻されるということになります。
 海外銀行や日本銀行の海外支店の預金は保険の対象になりません。また、口座を細かく分けていても「名寄せ」ということが行われ、1預金者につき1,000万円と、その残りはカットされた額が払い戻されることになります。一方、その銀行に借金があった場合は預金と「相殺」することができます。マンション管理組合の預金も一般と同じあつかいです。ただ、預金の名義が理事長さんだった場合、「権利能力なき社団」として認められれば、理事長さん個人の預金とは別にされ、1,000万円までの元本と利息は保障されます。
 さてペイオフ対策として、どのような方策があるか検討しましょう。「資金を1,000万円ずつ複数の金融機関に分散する」。これならすべての資金を守ることができます。しかし、少額ならともかく管理は難しくなります。次は「2003年3月まで、定期預金を普通預金へ一時避難させる」です。2003年3月までは普通預金は全額保護されます。しかし、それ以降は同じです。3番目は「郵便局の郵便振替口座を活用する」です。これは全額を国が保障してくれます。しかし、利子は付きません。
 4番目は「格づけの高い金融機関に預け替える」です。「つぶれないだろうな」という金融機関にお金を集めることです。預金残高が多いと優遇を受けられることもあります。しかし、絶対大丈夫という保障はありませんから、格付け、自己資本比率、預金量の推移、株価などを監視して、経営が悪化してきたなと思えば、すぐに預金を引き揚げられるようにしておかなければなりません。
 5番目は「貸し金庫に入れる」です。安全ですが、利子は付きません。6番目は「積立火災保険」です。積立火災保険は定期預金より金利は高いのですが、保険会社がつぶれれば減額されるのは銀行預金と同じです。損害保険会社のチェックが欠かせません。また、いくつかの保険会社から見積もりを取って比較することも大切です。
 次は「国債・地方債を買う」です。償還まで持ち続ければ国や地方自治体が支払いを保証してくれます。しかし途中で売るとなると、市況によって元本割れということもあり得ます。8番目は「保護預かり専用の金融債を買う」です。債券を銀行が保管するもので、1,000万円とその利息は保障されますが、途中で解約すると手数料を取られます。金融機関によって商品名が違うので注意が必要です。
 ペイオフ対策には、これが一番良いという方法はありません。ペイオフを気にする前に、もっと重要な問題があります。管理組合の預金の名義が、理事長さんの名前になっているのかどうか。管理組合の中には、管理会社の名義になっているというケースがかなりあるようです。管理会社がつぶれてしまったら、このお金はまず返ってきません。
 ただペイオフについては、これからもいろんな動きが出てくると思います。機敏に動けるように常にアンテナを張っておいてほしいと思います。  最近、株主代表訴訟が増えています。株主が経営者の責任を問うために訴えるという事件ですが、管理組合でも役員が違法行為をすれば訴えられるのか、そんな認識が出てきたのではないかと思います。そこで、株式会社との比較で管理組合役員の責任について考えたいと思います。
 株式会社の役員、機関は4つあります。代表取締役、取締役、取締役会と株主総会です。管理組合は区分所有法で、管理者と集会の2つだけです。法律上で言えば、集会の決定事項以外は、管理者(理事長)が勝手に決めていいことになっています。しかしそれでは理事長さんも組合員も不安でしょうから、理事さんを何人か選んで理事会を作り、大事なことは理事会で決定するということになっているんです。ただし、理事さんの権限については法律上は何の規定もありません。
 株式会社の代表取締役には代表執行権、業務執行権というものがあります。代表権というのは「俺が会社なんだ」と言える権利のことです。つまり社長は事実上、対外的には何をやってもいいということになっています。それはマンンションの管理者も法律上は同じです。しかし、内容は全然違います。
 株式会社なら会社運営のために遠隔地の土地を買うこともありますが、管理者はマンションの共用部分の管理のためにある機関です。マンション以外の遠隔地の土地を買うということはあり得ません。管理組合はその目的が制限されているので、その制限を越えていれば無効になります。 会社と役員の関係は「委任」ということになっています。この場合、民法644条に「善良なる管理者の注意義務を負う」ということになっています。これを「善管委任」と呼びます。管理組合の理事さんには、特別な決まりはありませんが、民法の規定を準用するということになっていますので、この「善管委任」による義務が生じるということになります。つまり、委任された以上は、いいかげんなことはせず、仕事を一生懸命にやらなければならないという義務があるということです。ただし「あの理事長や理事が気にいらない」「能力がない」という理由で、更迭されるということはありません。管理組合の役員が不正なことをした場合、それを是正する手段は限られています。管理組合が役員を訴えることはできます。区分所有法では集会で原告となる者を指定できると規定しています。理事長さんを訴える場合でも、集会での決議が必要です。
 ところで、お金が使われてしまった後に、役員に対して直接賠償請求というのは管理組合の場合は難しいといえます。管理組合の場合、露骨な背任行為、横領がなければ、責任を追求されることはないと考えていいと思います。  マンション修繕債券は毎年1回公庫が募集する、利付の10年債で「マンションすまい・る債」と呼んでいます。10年間継続的に購入いただく積立債です。今年は、7月2日から10月11日まで郵便で受け付けています。1口100万円で45,000口、450億円を募集していますが、口数の制限はありません。
 特徴は「元本確実保証」です。2番目の特徴は「国債並みの運用利率」、年平均1.396%の利率です。3番目は途中換金されても、元本割れのリスクがないことです。国債なら市場動向によって元本割れのリスクもありますが、この積立債権は、第1回の債券購入から1年以上経過していれば、公庫が全て買い戻します。また、途中でやめたことに対するペナルティはまったくありません。
 住宅金融公庫は独立行政法人に移行することが決まっていますが、その債権、債務は適切に継承されることになっていますので、まったく心配はありません。

平成13年度「第5回セミナー&相談会」報告

 恒例となったセミナー&相談会。今回は、管理規約に着目。今福グランドハイツ管理組合・理事長の浅野典成さん、南港ガーデンハイツ管理組合・元理事長の吉永広之さんから、管理規約を中心とした管理組合活動に関する貴重なご報告をいただきました。分譲マンションにおいて共同生活を快適に営むには、管理規約というルールが絶対に必要であること。そして、それを実効力のあるものにするには、居住者一人ひとりの自覚と協力が必要不可欠であることが実感できるご報告の後、湯原弁護士より「標準管理規約作成の経緯とポイント」の講演がありました。
(今回は、講演のみを掲載しましたが、各々のお話の要約は住まい情報センターで閲覧できますので、ご利用ください)

新旧の標準管理規約の違いは?

 管理規約は、「管理のための憲法」であり、区分所有者が自主的に定めたマンション生活上守らなければいけない規範です。マンション生活上の権利関係や管理運営の基本については区分所有法で定められていますが、個々のマンションで管理運営を行って良好な共同生活を営むには、その実情に応じたルールを定めておく必要があります。このルールが管理規約です。したがって、管理規約は本来、自分たちで決めなければなりません。しかし現実には非常に専門的な知識を要するため、結局は分譲会社など第三者が作成することになります。そうすると、いろいろと問題が生じてきます。
 そこで、国が昭和58年に作成したのが旧標準管理規約です。しかしマンション管理も年月が経つと、例えば老朽化や騒音、駐車場、ペットなど新たな問題が生じてきます。こうした問題に対応するために平成9年に改正されたのが、現在の標準管理規約です。

特に押さえておきたい条項

 平成9年に改正された標準管理規約では、管理規約をマンションのタイプごとに分類して単棟型、複合用途型、団地型の3類型にし、タイプにより管理費などの徴収の方法をはっきり分類しています。その中で、特に押さえておきたい条項を説明させていただきます。
(1)3類型(単棟型、複合用途型、団地型)に共通すること
1.「駐車場の使用に係わる規定の整理」(単棟型15条)
 「専用使用権」から「駐車場使用契約により使用させることができる」という文言に変わりました。これにより専用使用権を持っていた居住者が転居し、そのあとに新たに居住者が入った時には、公平に駐車場の割当を決めることになるわけです。   2.「専用部分のリフォーム工事に係る手続きの規定の整備」(単棟型17条)
 リフォーム工事をするときに、理事長さんに承認を得なければ行ってはいけないという規定(17条)を設けていますが、仮にこの手続きがないマンションでは、やったもの勝ちになってしまうので17条の規定はなるべく早めに創設する必要があります。   3.「犬、猫等のペットの飼育に関する事項のコメントの明示」 (単棟型コメント18条関係)
 ペットを飼うのであれば、使用細則に委ねるのでなく、ペットを飼っても良いという条項をちゃんと規約に設けようということですが、どのような条項を設ければいいかは書いてありません。ただ参考にするというのであれば、東京都衛生局が作成した「集合住宅における動物飼養モデル規定」があります。   4.「専有部分である設備の共同管理の規定の整備」(単棟型21条)
 専有部分にある設備のうち、共用部分と一体となった部分(たとえば配管の枝管)の管理を、共用部分の管理と一体として行う必要がある場合は、規定を設けて管理組合、つまりみんなで一斉にやりましょうということにしたものです。   5.「長期修繕計画の作成等に関する業務を管理組合の業務 とする規定の位置づけ」(単棟型31条)
 今年の4月からペイオフが解禁されます。もし預金をしている銀行が破綻した時は1,000万円しか保証されないとなると、長期修繕計画の作成時に十分に検討しなければいけない課題として残るかと思います。事例報告にもあったように、修繕委員会を設けるなどの対応方法がよいかと思います。    6.「総会の議決権の取り扱い」(単棟型44条)
 旧標準管理規約では「1戸につき、各1票の議決権を持つ」となっていたのを、平成9年の改正では専有部分面積によって、つまり住んでいる面積の割合によって議決権も変えなさいと書いてあります。それの方が公平だからというわけです。しかし実際問題として1人ひとりの面積が変わらないのであれば、1軒、1票としていても特に問題はないと思います。
(2)団地型
 団地型というのは1つの敷地に複数のマンションが建っている形態で、各区分所有者の費用負担は、管理費と団地特別修繕費と各棟特別修繕費に分けられます。
 団地総会の議決権、議決事項等の取扱いについては、団地総会と棟総会とがあり、別々に実施されます。たとえばA棟の問題はあくまでA棟の議決で決めるようにと書いてあります。
(3)複合用途型
 1階に店舗等が入っているいわゆる“下駄履きマンション”などのことを言いますが、各区分所有者の費用負担等の取扱いについては、管理費が全体管理費・住宅一部管理費・店舗一部管理費に分かれています。修繕積立金も同様です。

条項で不明ならコメントを見る

 今後、平成9年の標準管理規約に対応させる場合の注意点としては、必ず2条の定義にしたがって用語の使用を間違えないで書くようにしてください。用語が違っていると、結局有効に機能しなくなるという恐れもあります。標準管理規約は、国がお墨付きを与えてくれているので、これに準拠することで法律違反にもなりません。標準管理規約には必ずコメントが付いており、条項だけでは意味が分からないという場合は、コメントを見ればたいていのことは分かるようになっています。
 標準管理規約というのはあくまで手続きを定めたものですので、実際にそれを運用していかなければ、何の効果も持ちません。ただ標準管理規約に従うことによって手続きがスムーズになりますので、権利の実効性とか、運用がしやすいというメリットはかなり大きなものがあります。そこで皆さんがお住まいのマンションの規約はどうなっているかをもう一度見ていただいて、今後どのように改正手続きを踏んでいけばいいのかという検討をぜひ行っていただきたいと思います。

平成13年度「第4回セミナー&相談会」報告

 住まい情報センターで開催した第4回セミナー&相談会は、市内マンションの管理組合役員の皆さんをはじめ、多くの方々の参加をいただきました。連続してセミナーに参加する管理組合役員も見られ、マンション管理に関する知識を求める切実さを改めて感じさせました。今回のテーマは「老朽化を迎えるマンションの法律問題」。中でもマンションの建替えに関する問題はむずかしいといわれ、講演に聞き入る皆さんは真剣そのものでした。また、個別相談会では、法律、管理一般、技術面に関する相談があり、弁護士や一級建築士などから具体的なアドバイスが行われました。  マンションを建替えるに当たっては、いろんな問題が出てきます。「復旧および建替え」について区分所有法では条文が4つしかありません。したがって、その文言は抽象的に書かれており、その解釈が分かれ、裁判になっているケースがあります。
 まず、区分所有法では、老朽、損傷などをしたマンションを復旧するために、「過分の費用を要する」時は、4/5以上の賛成で建替え決議ができることになっているわけですが、この過分の費用がどのくらいなのかが、法律では書かれていません。現実に過分の費用になっているかどうかをめぐって建替え決議が有効か無効かが争われている裁判がいくつかあります。
 次に大部分の区分所有者が建替えに賛成し、一部の反対者がある場合、最終的に売り渡し請求を行って、すべてを賛成者の所有にすることになります。しかし、売り渡し額は時価ということになっているわけですが、折り合いがつかなければ、その金額を裁判所に決めてもらわなければならないということになります。裁判になれば、非常に長い時間と費用がかかります。また裁判例は多くなく、一定の基準や算定方式というものはできていません。
 このほか、建築基準法上の問題や賃貸借契約をしていて、賃借人が立ち退きに反対するケース、オーバーローンによって二重三重の抵当権がついている場合の抵当権の処理など、法的に解決しなければならない多くの問題があります。
 現在、区分所有法の改正が議論されていますが、まだどのように改正されるかについては定かではありません。一番重要なことは、区分所有者全員で老朽化や建替えといった問題について議論し、先を見据えて調査するなど認識を深めて進めていくということだと思います。  マンションの再生は、日常の簡単な修理から長期修繕計画によって行われるような大規模な修繕、あるいはリフォームとかリニューアルというものがあります。マンションには専有部分のほかに共用部分があって、修繕から建替えまであらゆることに合意形成が必要です。そして所有に関する権利義務と利用に関する権利義務の二つがぶつかり合う存在です。
 区分所有法はその権利を調整し、その指針として用意されているのが管理規約です。マンションは阪神淡路大震災でそのハードの強さを実証しましたが、その半面、管理規約や、合意形成などのソフト面は弱かったと思います。
 マンションを再生するに当たって、管理組合が円滑に運営されていることが大切です。また、組合員に区分所有法を親しんでもらい、区分所有の仕組みをよく理解してもらうことも大事です。ヨーロッパのマンションでは、週に1回は集会を開いて、マンション管理にまつわるさまざまな問題を話し合っています。年1回だけの総会だけでは、あまりにも少な過ぎます。組合員が管理組合の活動に積極的にかかわることが基本です。
 韓国では、増築を伴う修繕であるリ・モデリングが注目されています。マンションの増築について区分所有法は、ほとんど予測していません。マンションの効用を増すために増築するという場合は、所有権の根幹にかかわる問題なので、限りなく全員合意に近い形が必要だと思います。規約を整備しておかなければ、増築に賛成しなかった人は費用負担しなくていいのか、あるいは増築しないでもいいのか、こんな問題が起きてしまいます。
 建替えがむずかしいから増築を考える   といっても、増築も決してやさしいことではありません。とにかく人と人との関わりも、建物に対しても、いたわり合いながらリニューアルをして長持ちさせることが大切です。

平成13年度シンポジウム               「大規模修繕と円滑な管理組合運営」


8月26日、大阪市立住まい情報センターで大阪市マンション管理支援機構シンポジウムが「大規模修繕と円滑な管理組合運営」をテーマに開催されました。会場は、管理組合役員を中心に200人を超え、盛況でした。支援機構を代表して大阪市住宅局から「シンポジウムを大規模修繕の参考にしていただけるものと期待しています」と挨拶した後、基調報告・パネルディスカッションを行いました。
 平成12年末で、わが国のマンションは386万戸、約1000万人が住んでいます。築後30年を超えるマンションは12万1000戸、5年後には50万戸、10年後には93万2000戸になり、築年数の古いマンションが急増すると予測されています。
 管理組合の運営状況は、国土交通省の標準管理規約に準拠した規約を持っている管理組合は21%に留まり、役員の任期が1年で、報酬を払っていない組合が7割を超え、管理のノウハウが引き継がれていない実態が明らかになっています。
 修繕積立金は、ほとんどの管理組合が「ある」と答え、その積立額も増加しつつありますが、その1戸当たり平均残金額は37万円程度で、まだ不足している状況です。修繕積立金の管理は、まだ預金口座が管理会社の名義になっているものがあり、通帳と印鑑を役員一人が保管している管理組合もあります。
 大規模修繕の内容は、屋上防水が築後10年くらい、鉄部塗装は3年後、給排水工事は15年後くらいに実施されています。工事費用は、100戸規模程度で6000万円くらいです。建物診断を実施したのは7割を超えています。
 工事資金の調達は、修繕積立金が8割で、修繕積立金だけで修繕費用をまかなえたのは44割。長期修繕計画を作成している管理組合は8割に達する一方、作成していない管理組合が14%ありました。
 修繕工事に当たっての障害は、「資金不足」が多く、修繕時期を遅らせる理由になっています。修繕工事の検討開始から工事開始までの期間は平均16.9か月かけており、5割以上の組合がコンサルタントに相談しています。次回の大規模修繕への教訓は「適切な長期修繕計画を立てて、区分所有者に大規模修繕の必要性を知らせておく」が8割を超えていました。
 また、今年8月にマンション管理適正化法が施行され、管理会社の登録制度と管理組合の相談に応じるマンション管理士の制度が設けられました。

 大規模修繕は、管理会社まかせにするのではなく、管理組合自身が勉強して主体的に取り組むことが何より重要です。私たちは修繕委員会を作り、工事方法などを専門業者の皆さんにアドバイスしてもらいながら、実際にテストをして、最終的な工事方法を決めていきました。修繕委員会は総会で2/3以上で選任され、提案権だけを持ち、決定権は理事会が持つという組織的な原則を守ることが必要です。また、居住者に対し徹底した情報公開を行い、運営していくことが重要です。

 これまで駐車場の増設や全戸フローリング化などさまざまな工事を実施してきました。広報紙を通じて修繕の内容を具体的に伝え、非常に細かいことに注意を払って進めてきました。フローリングの工事でも、騒音やホコリを出さないために、手作業でやってもらい、すべて同じ職人に工事をしてもらって公平を期しました。委託管理を自主管理に切り換えて、資金を捻出しましたが、修繕のノウハウを継承することがむずかしく、次の役員が育ちにくい状況のため、委託管理に戻ることも考えています。

 私が入居した当時は、管理組合としての実態がなく、有志の方と管理組合を作るところからスタートし、何とか大規模修繕を実施することができました。大規模修繕を成功させるためには、何よりも情報をすべて公開し、マンションの現状に対する認識を住民全員で共有することが大切だと思います。またマンション管理は自主管理が基本で、委託するのは日常業務とし、管理費のスリム化により修繕積立金へ少しでもまわし、将来に備えることが必要です。またマンション管理にとって最も重要なことは、いかにコミュニティを作るかということだと思います。

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大規模修繕と円滑な管理組合運営 パネルディスカッション1




元木:マンションの社会ストックが非常に多くなり、それを大切にしておくことが重要なことです。全国のマンションは約400万戸、国民の12人に1人がマンションに住んでおり、わが国の住宅の非常に大きな存在になっています。しかし、集合住宅に住む習慣が日本にはなかったため、集合住宅のルールになじんでおらず、また老朽化するマンションがどんどん増えるという問題があります。

当面の重要課題は、大規模修繕を適切にやっていくことに尽きると思います。マンションには区分所有に起因するいろんな問題があります。法律的な意味で「マンションとは何か」ということを紹介していただきたいと思います。

松村:マンション関係の法律と現実のギャップは大きいと感じます。マンションには快適、安全、プライバシーの保証といった専用部分の利点のほか、共用であり、共住であり、共同管理でもあります。昭和58年の区分所有法の改正では、マンションの共同管理に注目し、居住者の共同性を強く打ち出し、居住者は管理組合に入り、共同の利益に反して使用してはならないとしています。

 今日のテーマである大規模修繕は多くの場合、共有部分の変更を伴いますので、通常なら居住者の3/4の賛成が必要です。修繕積立金を取り崩す時も同様ですが、修繕を行う前にきちんとした合意を作っておかないと紛争になり、修繕が遅れ、使いにくく、価値が下がってしまうことになります。リニューアルし、より良い状況にして長く維持していくことが大切です。

元木:そもそもコンクリートでできているマンションがなぜ大規模修繕が必要なのでしょうか。

西野:建物はできた時から劣化が始まります。コンクリートはアルカリ性で、時間とともに中和の方向に進みます。中和が進んでアルカリ度がプラス・マイナスゼロになってやがて酸性の方向に進み、中の鉄が酸化しサビが生じ、体積が膨張してコンクリートを破壊してしまいます。マンションは建設されて10年くらいで修繕することになりますが、劣化も時間の経過とともに様相が違い、10年、20年、30年という節目ごとに修繕の内容も違ってきます。
外壁の場合、10年目だったら表面クラックを樹脂で補修しますが、20年経つと外壁貫通クラックが生じ、コンクリートの強度が問題になり、強度を保つような補修が必要になります。
 屋上防水も10年ごとに張り替える必要があり、20年から30年経つと給排水管関係も問題になります。長期修繕計画を立て、それを適切にやっていくことが重要です。マンションのストックが非常に多くなり、これからは建物評価が一般化してきます。きちんとした修繕計画によって管理されたマンションとそうでないところでは評価に大きな差が生じてきます。

元木:大規模修繕は大変な仕事だと思いますが、どの辺が大変なのか話してください。

西野:入居者の修繕に対する認識には“温度差”というものが、どこのマンションにもあります。どれだけ共通した認識が持てるかが全てではないかと思います。場当たり的に対処するのではなく、的確な修繕計画を立てることが大切で、そのために、まず現況調査をすることが必要です。管理組合の皆さんには、事前に入居者がどんな点に、問題を感じているかアンケートをとっていただきたいと思います。また、日常のメンテナンスにかかわる部分と、構造、躯体にかかわる問題に分けて修繕計画を立てていかねばなりません。とくにマンションは工事代金の中で足場代が大きなウエートを占めますので、いくつかの工事項目を束ねてやれば効率よく工事ができます。後は、管理組合の中で合意形成をいかに作り上げるかが重要です。

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大規模修繕と円滑な管理組合運営 パネルディスカッション2




元木:大規模修繕に入る前に、管理組合が機能しているのか、修繕積立金があるのか、といった問題があります。実際に大規模修繕をやられた皆さんにその苦労を話していただきたいと思います。

内藤:デベロッパーにも責任があると思いますが、きれいな台所や風呂などのことは言うけれども、管理組合や長期修繕計画のことはチラシにも載っていません。住民の管理意識が薄いというのが最大の問題であり、自覚を持ってもらう必要があります。分譲マンションに入る資格がない人が余りにも多いというのが現状です。アメリカのように入居する時に誓約書を書いてもらって、管理組合の活動をしなければいけないということにならないでしょうか。管理組合の活動を義務づける法的な整備も必要だと思います。また一番難しいのは人間関係の問題だと思います。

浦岡:私どもの場合は、管理組合が管理会社任せでした。建物診断業者も、その系列会社で、工事費用は概算で7000〜8000万円かかるということになったのですが、その内容の説明もないまま、定時総会も抜きで業者選定まで進めてしまおうとしました。そこで修繕委員会を作って、始めからやり直そうということになりましたが、委員会は女の人ばかりでしたから、業界用語が全然わかりませんでした。 欠陥の問題や工法などの勉強をして、実地にテストして工法や工事業者を選び、当初の予算の半額の3500万円で、大規模修繕を終えることができました


元木:大規模修繕する際にどんな設計図書が必要なのか、西野さんから説明していただきます。

西野:設計図書には建築確認申請書と施工図があります。建築確認申請書によって、その敷地にどのような規制がかけられているかがわかります。建ぺい率、容積率、マンションを建てる時近隣とどのような取り決めを行ったかもわかります。また、どのような構造で作られたかも分かります。実際に工事に入った時には施工図が必要です。施工図というのは、建設業者が施工中に収まりを考えて作る図面で、それを竣工時に集大成したのが竣工図です。設備系統などを現況通りに図面に載せています。修繕計画にとっては非常に貴重な資料です。

元木:今、設計図書の大切さが言われましたが、その保管状況はどうでしょうか。

Bコーポ理事長:設計図書は大切に保管し、修繕工事には活用しています。


元木:大規模修繕に入る前に気になるのが修繕積立金です。内藤さんのところは足りなかったようですが、どのように対処されましたか。また、滞納されている方にはどのように払っていただきましたか。

内藤:未収金があったので、まずそれを徴収するところから始めました。何回か話し合い、理解を得て払っていただきました。20数年も修繕していないので3〜4年しかもたないかもしれないということを、住民の皆さんに意識づけしていきました。つまり意識の共有化をして、数年かけて住宅公庫から借り入れを受けられる水準まで修繕積立金の値上げを行い、借り入れを受けて修繕を行いました。

元木:滞納している人が督促に応じない場合は、どうなるのか法律的な解説をお願いします。

松村:理解を求めて払ってもらうのが一番大切です。法的に決定的な方法はありません。基本的には裁判で判決をもらわねばなりませんが、滞納といっても少額ですから、裁判に訴えても費用に見合いません。簡単にしようと思えば支払い催告手続という方法があり、裁判所に書面で申請し、書面審理で「催告」を出してもらいます。
 強制執行は専有部分、または動産を差し押さえて競売にかけるということになります。これを簡易に行うには区分所有法に先取り特権というものがありますが、未払いの住宅ローン抵当権があると、先にそちらに取られて配当が受けられないということもあります。管理費などを未払いのまま転売した場合には、その物件を買った人に未払い分を請求することができます。

元木:修繕委員会の必要性について説明してください。

西野:最近は修繕委員会を作っている管理組合が多いですね。委員会が各種の資料を用意していただいて、どこを修繕するのか明確に話していただけ、調査や修繕をスムーズに進めることができます。理事会から離れた修繕委員会というのは公平性を保つ上で非常に効果があります。

元木:劣化診断ではどのようなことをやるのですか。

西野:劣化診断はまず目視で行い、クラックがある時はコア抜きをして、鉄筋やコンクリート、クラックの状態を把握し、強度テストも行います。このほか、超音波による鉄筋量の測定なども行います。コア抜きで1カ所5万円、超音波は1日30〜50万円といった金額です。

元木:工事業者の選び方はどのようにされましたか。

Bコーポ理事長:フローリング工事業者は、その専門業者団体の床材工業会に複数の業者を紹介してもらい、その中から選定し、全住戸を同じ職人で工事をし、公平を期しました。

元木:工事のチェックはどのようにするのですか。

西野:監理という仕事ですが、どういう仕事をどういう工法でやるかを確認する仕事です。特に業者が毎朝、職人にどんな指示を出し、夕方にどんな風に仕上がったかを確認するのが監理です。その状態を管理組合に報告します。それを毎日きちんと繰り返すことが大切です。

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平成13年度「第3回セミナー&相談会」報告

 住まい情報センターで開催した第3回セミナー&相談会は、市内マンションの管理組合役員の皆さんで、文字通り満員の盛況でした。マンション管理に関する実践的な知識が待ち望まれていることを改めて感じさせました。今回のテーマは「円滑な管理組合運営」。管理組合の皆さんにとっては、毎日格闘している問題とあって、講演後の質問も前回のセミナーにも増して活発でした。また、個別相談会では法律6件、管理一般6件、技術3件の計15件の相談があり、弁護士や一級建築士らから具体的なアドバイスが行われました。  昭和30年代に初めてマンションが造られて40年ですが、高度成長時代に造られたマンションには、いろんな問題が生じています。昭和56年に建築基準法が改正されて、耐震基準が大きく変わり、大地震によって危険が及ぶのか、安心して住めるのか、築年数によって大きく変わります。
 マンションは、道路や橋と同じようにストックされた社会資本として、将来にわたって低廉な価格で、修理、維持していくことが大切な課題になっています。わが国には570万戸の住宅ストックがあり、これまで毎年120万戸の住宅を造り続けてきました。最近、建物の欠陥問題が大きな問題になってきました。
 昨年、住宅品質確保法ができ、構造と漏水に関して、無条件に10年間品質を保証することになりました。そして住宅に関して最も多いトラブルが「漏水」です。マンションを管理する上でも、最も大きな事柄だと思います。漏水は築年数に関わりなく非常に多いトラブルです。
 漏水の原因になるのがコンクリートのクラックです。鉄筋コンクリートはクラックを避けることはできません。このほか、汚損、欠損、そして設備の老朽化によるトラブルがあります。そのトラブルは、管理組合の皆さんが解決しなければなりません。問題が生じた時は、専門家に調査、工事計画、設計、それに工事管理などを依頼された方がいいと思います。専門家にもいろいろありますので、トラブルの内容をよく調べ専門分野に詳しく、信頼性が高く、アフターケアがよく、何度も来て頑張ってくれる、いわば町医者のような施工業者を選ぶのがいいと思います。
 漏水などのトラブルが生じた場合には、住まい情報センター、大阪建築士会には無料の相談もありますし、弁護士会にも相談窓口があって、社会的な支援ネットが構成されていますので、よく相談されて問題の解決に勤めていただきたいと思います。  マンションに住まわれる方には、中古マンションを取り巻く環境がいかに厳しいかという現実の認識と、マンション管理は問題を先送りせず主体的に取り組むという意識を共有していただきたいと思います。
 現在マンションは全国に380万戸以上あり、1000万人以上がマンションの所有者です。問題は中古マンションが急増していることです。そして管理いかんによっては、スラム化が生じる可能性が出てきました。とくに阪神大震災によって、建て替えと管理の問題がクローズアップされました。
 マンションの価格の決まり方は、新築がコストの積算によって決まるのに対し、中古は需給関係によって決まります。現在は一方的な買手市場で、資産価値と市場価値の間には大きなギャップが生じています。中古マンションについては、資産価値から利用価値に意識を切り替えるべきだと思います。利用価値とは、住み心地です。
 マンション管理に関心のある人は、1割しかいないといわれています。それを1/3にしてほしいと思います。多くの住民が管理に関心を持つことが、マナー、ルールを守り、住み心地を向上させることにつながります。
 管理の目安としては、長期修繕積立金があります。住宅金融公庫の優良中古マンションの条件をクリアしていることが最低条件です。
 管理状態の評価は、日常生活上のルール、マナーに問題があるだけで評価が下がり、複合的なトラブルが多いとなれば、評価が大きく下がります。管理費や積立金の滞納が10%以上ある場合は、スラム化を容認していると捉えられます。「15年以上大規模修繕をしていない」や、「管理組合があっても機能していない」などは極端に評価が悪くなります。行き届いた管理が結果的に資産価値を守るのです。