平成20年度「管理組合交流会&相談会」報告

「管理組合交流会&相談会」報告
管理組合運営には様々な問題や悩みが発生します。
そこで管理組合の皆さんが、日頃どのような活動をされているのか情報を交換し、今後の組合運営の参考としてもらえるように交流会を開催しました。 5つのテーマについて活発に意見交換。
    他のマンションの実情から解決のヒントを
今回の参加者は43名。申し込み時に希望テーマをお伺いし、A.管理組合運営(滞納問題等)、B.管理組合運営(役員選任等)、C.管理組合運営(高齢者問題等)、D.修繕等、E. 住まい方(管理会社との関係等)の5つのテーマごとにテーブルを分け、各テーブル8人前後で話し合いを行いました。
 各テーブルでは、活発な意見交換が行われ、休憩中や交流会終了後も、話がなかなか途切れないほどでした。話しあった内容を各テーブルの代表者が発表し、質疑応答が行われ、最後にコメンテーターに総括していただきました。
 参加者のアンケートでは、「他のマンションの実情がよくわかり、自分のマンションと比較することができた」、「直面する問題の対応策について、よいアドバイスが受けられた」といった感想が寄せられました。

テーマA「管理組合運営(滞納問題等)」

  1. 管理会社との関係について
  2. 滞納問題について(滞納者への対応・総会での報告・未収金の回収方法など)
  3. 住民同士のコミュニケーションのとり方
  4. 総会への参加者を増やすには

まとめ

滞納問題については、滞納者といかに話し合いの接点をもつかに苦慮していることや、総会での報告の必要性、訴訟を行う場合の問題点や回収の可能性などについて、弁護士も交えて意見交換が行われた。
コミュニケーションについては、管理組合とは別に町会組織があり、2つの組織が連絡を取りながら活動している事例や、敷地内の草取りや広報紙の発行、修繕工事で対応しきれなかった部分の清掃活動等を通して、新しい入居者と管理組合、高齢者同士のコミュニケーションが図られている事例が報告された。

テーマB「管理組合運営(役員選任等)」

  1. 理事会の活性化について
  2. 名簿の作成について
  3. 管理会社との信頼関係について
  4. 大規模修繕と管理会社
  5. 役員選任の方法
  6. 管理組合法人について
  7. 長期修繕計画について

まとめ

理事(役員)のなり手不足の解決方法について。役員の選任については引継ぎのことを考えて3年交代にしている例が紹介された。
管理組合として情報をつかんでおくことの必要性があるが、住民名簿が個人情報の観点から作りづらくなっている状況が報告された。
長期修繕計画については国土交通省の長期修繕計画標準様式にあわせての見直しや、複数の修繕工事の周期をあわせることによりコストの削減、住民の中から建築士等の職業の人をブレーンに入れて組織をつくっていくことなどが話し合われた。

テーマC「管理組合運営(高齢者問題等)」

  1. 組合員の意識について
  2. 組合員の高齢化・無関心による理事のなり手の不足について
  3. 理事の役割、理事会活動の継続性について
  4. 管理会社との関係について
  5. 管理組合法人について
  6. その他(大規模修繕・耐震改修の実施、コミュニティ活動等)

まとめ

管理組合が抱える様々な問題について、1人で全てを解決していくことは困難であり、コミュニティ活動などを通して居住者間の横の繋がりを強く(仲間を増やす)して、管理組合全体で取り組んでいくことが重要。
管理会社に委託している場合であれば、管理会社の仕事を把握・確認すること。管理会社の業務の把握・確認ができているところは、管理会社の働きに満足している傾向がある。

テーマD「修繕等」

  1. コンサルの選定方法について
  2. 耐震診断結果に対するその後の方向性の検討
  3. エレベーターの保守管理について

まとめ

耐震診断をする際、耐震改修が必要との結果が出ても補修しづらいという問題や、既存不適格への対応などが話し合われた。
また、エレベーターの保守点検についてフルメンテナンス契約がよいのか、仕様の範囲内でメンテナンスを行い範囲外は別途費用が発生するPOG契約がよいのかについても意見交換がなされた。

テーマE「住まい方(管理会社との関係等)」

  1. 管理組合の理事の任期について
  2. 管理会社との付き合い方について

まとめ

同じ管理会社なのに一方ではとてもよく働いてくれる、一方では全然ダメということがある。これは管理会社の問題だけでなく管理組合の問題でもある。管理会社と対等につきあうには、理事がもっと勉強する必要がある。
管理会社の変更は慎重に進める必要があり、そのためには多くの情報を集めることが大切である。

コメンテーターまとめ

【弁護士】 役員や理事の頑張りをまわりがどうサポートするかも重要

 管理組合の運営にあたっては、一人で悩まず色々な方と情報交換しながら進めていただきたいと思います。理屈の問題で法律論、制度論とは違う次元の話しとしてコミュニティをどうやって作るか、また、役員や理事の頑張りをまわりがどうサポートするかも重要だと思います。
 退職後、地域社会に戻ってこられた団塊の世代の方など、様々な社会経験(建築知識等)を持っていらっしゃる方が管理組合に入って、積極的に参加していただくのも良いやり方なのかなと思いました。
 普段から管理費や修繕のことなどで議論されてまとまっている管理組合と、そうでない管理組合とでは、問題が起こったときの対応の仕方が全然違います。
 マンションには、近所付き合いがわずらわしいからという理由で入居されている方が、戸建てに比べて多いのかもしれませんが、出来るだけ普段からコミュニケーションをとるように心掛けていただくことが重要だと思い ます。

【【建築士】 ベストな情報を判断して取り入れるのが、管理組合の役目

有効な情報がたくさんあって、その有効な情報を取り入れて、最終的には管理組合として何がベストかを暗中模索しながら判断していかなくてはなりません。常に前を見ながらも、時折これまでの歩みを振りかえり、確認しながら進めていくことが、マンション問題・マンション管理では必要ではないかと思います。
 マンション同士の交流という点では、マンション管理フェスタという催しもあるので、そういう中で個別の交流が深まり、それが広がっていったらいいなと思います。

<個別相談会> 2月22日(日)開催

専門家から貴重なアドバイス
当日は専門家による個別相談会を実施。弁護士・建築士等の専門家から、9組(法律相談6組、管理一般相談1組、技術相談2組)の管理組合が問題解決のアドバイスを受けました。
相談内容は、管理費の未納、規則違反者への措置、ペット問題、管理人の時間外手当、修繕積立金見直しなどでした。

平成20年度「大規模修繕工事見学会」報告

大規模修繕工事見学会
入念な長期修繕計画に基づき
透明性と公平性を確保しながら取り組む。

11月29日、大阪市マンション管理支援機構として第5回目の大規模修繕工事見学会を朝日プラザペルソナージュ天下茶
屋管理組合のご協力により開催しました。朝日プラザペルソナージュ天下茶屋は、地下鉄・南海天下茶屋駅から徒歩7分の
場所に建ち、SRC造11階建・1棟・総戸数108戸のマンションです。築16年を経過し、今回が初めての大規模修繕工事です。

<見学マンションと工事の概要>

朝日プラザペルソナージュ天下茶屋(大阪市西成区天下茶屋)
SRC造11階建・1棟・総戸数108戸/築16年
工事内容(1)仮設 (2)下地補修 (3)シーリング打ち替え (4)外壁塗装 (5)鉄部塗装 (6)防水改修 (7)その他改修 (8)共用部分改善 (9)電気・給排水空調ガス設備改修 (10)その他(インターホン・防犯カメラ・直圧給水ポンプ・植栽・造園)
工 期平成20年8月18日〜平成21年3月20日予定
施工ビケンテック(株)

● 理事長自ら作成された資料をもとに説明

(写真) 総戸数108戸の朝日プラザペルソナージュ天下茶屋管理組合。まず理事長の金田さんから、自ら作成された資料「大規模修繕工事の計画と実行」をもとに説明がありました。
 参加者の皆さんが驚かれたのが、資料の充実ぶり。大規模修繕工事の概要はもちろん、管理組合の取り組み方、建設委員会の活動など細かく紹介されており、ほかにも実際に施工会社の公募や住民へのアンケートをした際の資料が添付された資料となっていました。
(写真) 今回の工事は、修繕にとどまらず、エントランスホール、管理事務所などの共用部分を中心に、より明るく安全性を高めるための改良工事にも力を入れている点も大きな特徴です。つねに透明性と公平性を確保しつつ計画を進めてきた金田理事長の説明を聞きながら、充分な修繕積立金や、綿密かつ入念な計画と実行ぶりに会場からは感心のため息が何度も漏れていました。その後の質疑応答では、修繕積立金の見直しをしたきっかけ、管理会社と大規模修繕との関係、長期修繕計画などについての質問がありました。

● 施工会社から映像で工事内容を紹介

(写真) 続いて施工会社から、現在行われている躯体修繕工事、シーリングの打ち替え工事などの模様を映像を使って、一つずつ丁寧に説明していただきました。動画なのでわかりやすく、参加者の方々も興味深そうにご覧になっておられました。

● 現場見学後の質疑応答で、活発な意見交換

(写真) そして、いよいよ現場見学。3班に分かれて、金田理事長、施工会社、監理事務所の案内で現場を周りました。塗装の過程や、補修の実演、タイルの補修の様子など説明を聞きながら熱心に見学。現場見学の後は、再び質疑応答です。施工会社の公募方法や、施工会社を選んだ決め手など、参加者からは熱のこもった質問がいくつもなされ、大規模修繕工事への関心の高さを改めて実感。そして予定の時間をオーバーする形で、無事終了しました。ご協力いただいた朝日プラザペルソナージュ天下茶屋管理組合の方々、および関係者の方々に心よりお礼を申し上げます。

平成20年度「基礎講座&相談会」報告

らいふあっぷ基礎講座&相談会
円滑な管理組合運営と適切な維持管理による快適なマンションライフをめざし 会場の様子
マンションライフにおいて発生する様々なトラブルを未然に防ぐためのノウハウを身につけることはとても大切です。建築や法律の専門家がそれぞれの立場から分かりやすく説明しました。

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10月25日・11月9日・16日開催「らいふあっぷ基礎講座&相談会」のビデオ視聴をしていただけます。
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11月16日

大規模修繕工事と長期修繕計画標準様式の解説をはじめ、修繕工事見積書の見方、建替えが成立する要件と手順など、大規模修繕と建替えをテーマに開催しました。 大規模修繕と長期修繕計画の見直し

●大規模修繕工事の必要性
 すべてのものには耐用年数があります。耐用年数に合わせて適切な時期に適切な手入れをしなければ、耐用年数に至らないうちに使い物にならなくなります。マンションの耐用年数は、部位ごとに異なり、それぞれの修繕周期があります。そして比較的規模の大きな修繕工事や改良工事をまとめて行うのが大規模修繕工事です。
●失敗しないための留意点
 業者の選定方法として、特命随意契約、見積もり合わせ、指名競争入札があります。一般的に考えて、いいと思われるのは指名競争入札です。そして最低価格を提示した業者に決めることになりがちです。しかし工事期間中の安全対策費用を見積もりの中に適切に計上しているといった業者の考え方も考慮して選定する必要があります。
 業者選定のポイントとしては、会社概要などから情報を得ることのほか、大規模修繕工事の元請としての実績があるかといったことがあげられます。それも自分のマンションの規模と立地条件等がよく似通った実績があれば、現地に足を運んで、その業者の評判を聞くことは非常に参考になると思います。それから事前に、管理組合としての評価基準や評価項目を作成しておき、ポイント制にして公開すれば全体の合意が得やすいと思います。
●大規模修繕工事がマンション管理への関心を高めるチャンス
 住みながらの工事を工夫することも大切です。大規模修繕工事をマンション管理への関心を高めるチャンスととらえ、工事の必要性の徹底、情報公開、協力体制づくりなどを通じて、組合員のマンション管理への関心を高めていただきたいと思います。それからマンションの質をあげること、社会のニーズに合った生活様式のレベルアップも必要です。高齢者対策としてのバリアフリーやセキュリティシステムの構築なども必要になってきます。
●長期修繕計画標準様式を利用しよう
 平成20年6月に国土交通省から、「長期修繕計画標準様式」と「長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント」が出ています。背景としては、マンションの快適な居住環境の確保、資産価値の維持・向上が問題となっていること、そしてそれには、建物の経年劣化に対応したタイムリーで適切な修繕工事の実施、適切な長期修繕計画の作成、修繕積立金の額の設定が必要であることなどが挙げられます。
 ポイントは次の3つです。1つ目は、管理組合等による長期修繕計画の内容の理解やチェックを容易にするために、作成者ごとに異なっていた様式について「標準的な様式」を策定したこと。2つ目は、長期修繕計画に設定する推定修繕工事項目の漏れによる修繕積立金の不足を防ぐため、標準的な「推定修繕工事項目」を示したこと。3つ目は、将来の長期修繕計画の見直しによる修繕積立金の額の増加が少ない「均等積立方式」により修繕積立金の額を算出するようにしたことです。
 管理組合の皆さんは、例えば、長期修繕計画の見直し等に関する業務を専門家に委託する際には、長期修繕計画作成ガイドラインを参考として依頼したり、出てきた長期修繕計画の内容をガイドラインを参考としてチェックすることもできます。ぜひ一度、ご覧いただき、参考にしていただきたいと思います。

わかりやすい修繕工事見積の見方

●工事の中身を知るのは、契約図書
 積算に関して、請負業者の見積額が高いのか安いのかというご質問をよく受けます。しかし一概に安いとか高いという判断はできません。それぞれ内訳書の内容を精査の上、高い、安いの判断ができると思います。通常、品物を購入する場合には、その品物を見ることができます。例えば、時計の場合には、高級ブランド品・国産品・まがい物の時計もあります。それを見て価値を判断されると思いますが、建設工事の場合には、できあがったものは見えません。そこでどういうものができるかというのを示したものが、契約図書になってきます。
●仕様書は仕事のレベルを示すもの
 見積書、あるいは工事費内訳書を作成するための根拠は、契約図書のみです。契約図書には、契約書と設計図面があります。契約書には、質疑応答書、現場説明書、契約書があり、設計図面は、図面、特記仕様書、標準仕様書があります。契約書には、請負金額、支払い方法、紛争処理等の方法が書かれています。契約書は、だいたいの場合、請負業者が用意してきますが、自分に都合の悪い項目というのは、削除されている場合が多いので、よく精査してください。仕様書は、図面に記載しきれない工事内容を規定したもので、仕事のレベルが記載されています。その内容によって工事の質が全く異なってくると思ってください。工事費内訳書は数量と単価の積の積上げで作成されますが、数量は数量積算基準により、単価は標準価格として刊行物に掲載・公表されています。
●まとめ
 一番問題になるのは、やはり契約図書の確認です。まず契約図書の内容を熟知してください。これは相当に根気がいりますが、よく見ていたただきたい。もしわからなければ、それぞれの担当者から説明を受けて理解してください。発注書の立場で、工事費内訳書の数量・金額、すべて根拠を明示するよう指示してください。それから、メーカーの指定など競争性を阻害する事項が書かれている場合は図面から削除するようにしてください。

建替えの検討に向けて

●修繕・改修か建替えかの判断
 一般的にマンションは、新築時から性能がじわじわと劣化して、大規模修繕を繰り返すことになります。修繕というのは、新築時のレベルに近づけるという程度の改善になります。一方、社会的な居住水準というのは、設備的な性能、耐久性、省エネ性などもろもろの水準が上がっていきます。単に従来の修繕というだけではなくて、改修という概念を入れて大規模に改修をして水準をあげていく、そういういうことが求められています。しかし、やはり最新の水準とはギャップがでてきます。築30年を超えると大規模改修で追いつかない部分がでてきますので、建替えも視野にいれて検討していただく必要性があります。つまり修繕改修か建替えかをどう判断するかですね。
 最初に、建築事務所などに建物の診断をきちんとしていただく。一方で、居住者の方々に現状のマンションでどういう不満を感じておられるかをアンケート等で調べていただき、要求改善水準の設定をします。そして修繕改修をすると、どれほどの改善ができ、どれだけのコストがかかるのかを調べます。それに対して建替えは、満足度が高いかわりにコストもかかります。両方を比較してどちらが有利か検討していただき、最終的に判断がつけば、管理組合総会で意思決定をしていただくことになります。修繕改修で形状又は効用の著しい変更を伴わない場合は1/2の普通決議、変更を伴う場合は3/4、建替えということになりますと4/5の総会決議が必要になってきます。
●建替えの方法
 建替えを行うには、「建物の区分所有等に関する法律」上の建替え決議を行うかどうか。これが大きな決め手になります。建替え決議を行わない場合はどうするかというとこれは民法の規定で、全員が一致して建て直す意思決定をしていただくことになります。しかし、この方法では非常に時間がかかるということで、建替え決議を行う方法があります。また、建替え決議をした後に、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」の規定に基づき、「建替組合」をつくって、権利変換計画により権利の移動をスムーズに行う方法もあります。
●等価交換方式
 建替えの方式としては、従来からよくある等価交換方式というものがあります。これはデベロッパーがいったん土地建物を買い取ります。その評価は更地の土地の評価だけになります。買い取り価格はそこから建物の解体費用を控除した価格になります。そこに事業者がマンションを建てて最終的にその区分所有者が売った価格と同額の土地敷地利用権と建物区分所有権を与えるという契約です。この方式は最初にいったん事業者に買い取ってもらうことになり、事業者はこの時点で残っているローン、抵当権を外してくださいということになりますので、区分所有者はいったんローンを返済しなくてはなりません。
●建替組合方式
 建替組合方式は、従前の土地建物を評価して権利変換計画という書類で変換してしまうやりかたです。権利変換というのは、従前のマンションの区分所有権と敷地利用権を権利変換計画書と配置設計図という書類上で建替え後のマンションの区分所有権と敷地利用権に移行させる仕組みです。この場合、抵当権もセットでペーパー上のやり取りで処理できるというメリットがあります。等価交換方式より途中の資金的な負担を軽微にすることができます。

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平成20年度「基礎講座&相談会」報告

らいふあっぷ基礎講座&相談会
円滑な管理組合運営と適切な維持管理による快適なマンションライフをめざし 会場の様子
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10月25日
国のマンション施策と今後についての解説はじめ、日常的にできる防犯対策とチェックポイント、関心の高い管理費等の滞納対策をテーマに開催しました。 国のマンション施策と最近の動向

 分譲マンションの現状ですが、平成19年末時点で、マンションは全国で528万戸、住んでいる方は1300万人にのぼります。これは日本全国の人口の約1割に相当します。このうち築30年以上経っているマンションは63万戸、これが5年たちますと100万戸を超えるのではないかと予想しています。また昭和56年に耐震基準を大幅に見直していますが、見直し前の基準で建てられたマンションが100万戸を超えています。
 マンション居住の動向としては、住民の高齢化、賃貸化、永住化が3つの大きな傾向です。
 そこで分譲マンションをめぐる課題として、国は何を重要だと認識しているか。そしてその課題に対して、どのような方向性で議論をしているのか。現在進行形の話でありますが、ご紹介したいと思います。
●長期修繕計画を普及させるために
 マンションを計画的に維持管理するには、長期修繕計画を作っていただくことが重要です。それも十分な計画期間を確保し、それに基づいて修繕積立金を積み立てていただきたいのですが、その長期修繕計画自体が不十分なところが多い。これが課題の一つ目です。これに対して国土交通省では、長期修繕計画の標準様式やガイドラインなどを作成し、平成20年6月に公表しています。また、長期修繕計画をつくるとこんなにいいことがあると実感していただけるような制度などをいま検討しています。
●上手に管理ができるための仕組みを
 管理組合の方々は管理の専門家ではないために、管理がうまくいっていないところがあります。そこで管理に精通した人が管理組合に入っていただく、ないしは理事長になっていただいて、代理で管理組合の仕事をしていただく仕組みが必要ではないかという議論があります。第三者管理方式とか管理者管理方式と呼ばれるものです。高齢化、賃貸化、空室化に伴う役員のなり手不足を解決する一つのオプションとして、こうした方式のルール化を検討したいと思っています。
●大規模マンションでの意志決定を円滑に
 最近、大規模な超高層タワー型のマンションが非常に多くなっています。一つのマンションの中に1000戸、2000戸といった多くの区分所有者が居住されており、合意形成が大変ではないか、何らかのルールが必要ではないかと考えています。そこで専門的に従事していただける専門部会や、理事会の中に諮問機関を設け、それを管理規約の中で明確化したうえで、ここで決めたことを、皆さんで行った決定とみなすといった方法が考えられます。多数の住民の方がいらっしゃる中で、円滑に意思決定をしていくための仕組みは、今後非常に重要になるのではないかと考えています。
●管理トラブルを現実的に処理するために
 騒音、ペット、管理費滞納など非常に多岐にわたる管理に関するトラブルが起こっています。そこで、駆け込み寺というか、何でもいいから話を聞いてもらえる、あるいはアドバイスをもらえる組織が整備できないだろうかと、現在検討しています。
●適切な維持管理や修繕・改修をするために
 高経年マンションは、適切な維持管理やバージョンアップをしていただきたいのですが、そこがうまくいっていません。例えば建物の高経年化とともに住民の方々も高齢化されていて、バリアフリーのニーズが高くなる一方で、現状ではわずかなマンションしかエレベーターが設置されていません。そこには、法律的な規制があったり、費用負担面で合意形成がとれないなど、さまざまな問題があります。それに対して何らかの仕組みがないだろうかと、これも検討しているところです。
●建替事業や団地再生を円滑に進展させるために
 改修や修繕で対応できないものは、建替えが必要になってきますが、建替えを含めた再生がなかなか進展していません。この建替事業にしましても、手続き面、規制面でネックになっているところをいま一つ一つ洗い直しながら考えている段階です。

マンションの防犯対策

 大阪府下において昨年1年間の空き巣等侵入窃盗被害は1万3600件、被害総額は約40億円程度です。また、侵入盗空き巣の62%がマンション等共同住宅で発生しています。そのマンション等共同住宅の場合、侵入口は出入口の扉が53%、窓が44%です。さらに4階建て以上のマンションでは、6割が玄関の扉から入られています。
 犯罪者が犯行を実行するのは、犯行をうまくできるチャンス、環境がある場合です。ですから防犯というのは犯行のチャンスの芽を摘むことが大切です。
 具体的な防犯対策としては、ソフト面とハード面の両方に目を向けていただく必要があります。ソフト面は、まず個人がしっかり防犯意識をもち、戸締まりを励行すること、そして挨拶など声かけを実践することです。犯人に犯行をあきらめた理由を聞くと、「ご近所の人に声をかけられたから」という答えが一番多いことからも声かけの大切さが分かります。次にマンションの管理区域を明確にする。例えばうちのマンションはここからですよと標識を立てる。また、掲示板などを活用して防犯に関する情報提供を行う。こうしたことが防犯対策につながります。
 ハード面では、お金のかかる部分ですが、補助錠(ワンドアツーロック)、窓の補助金具の取付や防犯フィルムの貼付、センサーライトの活用、防犯カメラの設置、防犯システムの導入などによって、抵抗性、監視性を高めていただきたい。マンションから犯罪が1件でも減ることを願っています。

滞納問題の解決に向けて

●滞納の予防策
 病気でもそうですが、滞納の対策としても予防が一番です。管理費等の自動引き落としはやっておくほうがいいと思います。たまたま通帳にはいってなかった、払いに行くのを忘れたといったことを防止できます。遅延損害金は、管理規約に定めておかなくても、民法の規定で、年5%がつきますが、管理規約にそこをきちんと書いておく方がよいでしょう。あるいは警告的な意味で、10%と高めにしておくことも考えてもいいかと思います。
●滞納状況の把握と対応のマニュアル化
 滞納状況を把握できるように会計処理をしておられると思います。1か月遅れたらどうするのか、2か月遅れたらどうするのか、それを理事会の皆さんで話し合うことになるのですが、そういう場合にマニュアルがあると便利です。また、管理会社との役割分担もきちんと決めておいたほうがいいですね。一般的には1か月遅れとかだと管理人さんが声をかけると思いますが、管理会社が全部やってくれるわけではない。裁判は管理会社ではできません。法的手続きを取るとなると理事長さんが代表者になります。
●滞納が発生した場合の対応策
 常識的に考えて、緩やかな方法から徐々に厳しい方法にいくのが一般的と思います。(1)電話による請求、(2)文書による請求、(3)個別訪問、(4)念書の作成の順に対応することが考えられますが、必ずしもこの順番でなくても、皆さんで話し合われたらいいと思います。ちょっと1回遅れているなという時に、まずは電話をすることになると思います。文書による請求は、一般的には通知文にして投函したり、普通郵便で送りますが、場合によっては配達証明付の内容証明郵便を利用されるのが効果的な場合もあります。また、管理費の場合は5年で時効が完成して請求できなくなりますが、念書を書いてもらうと時効が中断されます。
●法的措置
 以上の対応策をとっても駄目であれば、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、民事調停等の法的措置をとらざるを得ません。どの手続きをとるかは一長一短で、弁護士や司法書士などの法律家に相談されるといいと思います。法的措置をとると、例えば裁判だと、最終的には判決が出て、強制執行ができます。ただし経済的事情で払えない方にそういう手続きをとっても回収できるとは限りません。費用もかかりますし、手間も結構なものです。その場合はコストと利益も考えなければいけません。

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「マンションらいふあっぷ連続セミナー」報告

マンション設備の維持管理について
快適なマンション生活を送るために、設備の維持管理は重要なテーマになっています。管理組合の役員になられた方などを対象に、専門家が様々な角度からマンション設備について取り上げ、わかりやすく説明しました。
7月13日(日)
自分のマンションの給排水設備配管や給排水方式を知ることの大切さ、そして維持管理に向けた資金計画、吹き付けアスベスト除去等補助制度をテーマに開催しました。 講座1 維持管理に向けた資金計画とすまい・る債

●維持管理から建替えまで、資金面で支援
マンション管理組合の皆様は、修繕積み立て用として、マンションすまい・る債を購入し将来に備えていただくことができます。また実際に修繕する段階では共有部分リフォーム融資があります。建替えでは住宅金融支援機構の融資を活用いただくことができます。
●マンションすまい・る債の6つのポイント
マンションすまい・る債は、毎年1回、私ども住宅金融支援機構が発行する債券です。ポイントは次の6つです。①お預かりした積立金は、機構の資産から優先的に弁済されることが法律で定められており、保全が図られています。②積み立てた債権は、機構が無料で保護預かりします。③管理組合のニーズにあわせた積立ができます。④毎年1回定期的に利息をお受け取りいただけます。⑤修繕のための中途換金は購入から1年経過で可能です。⑥各種特典が受けられます。詳しくは、ホームページ(http://www.jhf.go.jp)をご覧下さい。

講座1 吹付けアスベスト除去等補助制度
アスベストは、過去に壁や天井等の建材として幅広く用いられてきましたが、吸い込むといちじるしい健康被害を起こす恐れがあります。もしかしたら皆さんが管理しておられるマンションにアスベストがあるかも知れません。アスベストの有無の調査方法は、図面等を確認のうえ、専門機関での分析調査が必要です。分析の結果、アスベストがあると分かった場合、予防対策が必要です。対策工事としては「除去」「囲い込み」「封じ込め」の3種類あります。
大阪市では、アスベストによる健康被害に対する市民の不安を解消するために、露出した吹付けアスベストの含有調査と対策工事を行うときの一部費用を負担させていただいています。この事業は平成18年度から3年間の事業で、今年度が補助最終年度です。申込受付は11月末までです。申し込み前に事前協議が必要ですので、早めにご相談ください。詳しいことは監察担当にお気軽にお電話ください。
<お問い合わせ先・事前協議先>
大阪市計画調整局建築指導部監察担当
TEL:06-6208-9318

講座1 マンション設備の維持管理
●配管の種類は様々あります
主に給排水管の維持管理のご説明をさせて頂きます。一口に給水管といっても、道路から引き込んでいる本管、埋設されている管と、ポンプ室から屋上へと上っている管、各戸のメーターボックスの中に入っている配管、メーターから住戸の中の配管と、大きく分けてもそれくらいの種類がありまして、その配管がどういう材料かによって、傷み方と改修の仕方が変わってきます。従って、まず一番重要なのが、お住まいのマンションにどういう配管が使われていて、それがどれくらい年数が経って、どの程度痛んでいるか、ということを正確に知ることが必要です。
●給水管の種類と特徴
一般的に多く使われているのが、硬質塩化ビニルライニング鋼管(VLP)です。鉄管の中に塩化ビニル管(塩ビ管)が挿入されて入っています。耐衝撃性塩化ビニル管(HIVP)は、錆びることはありませんが、ウォーターハンマーなどの衝撃で割れることがたまにあります。高性能ポリエチレン管は一番衝撃にも強く、耐久性もあります。
架橋ポリエチレン管とポリブデン管は主に屋内の専有部分の配管で、最近のマンションはほとんどこの2つの種類のうちのどちらかが使われています。比較的自由に曲がりやすい管です。鋳鉄管は共用部分で、本管からの引き込み等で使われている、口径の太い管です。鉛管は、5年ほど前から国の水質基準が強化され、今は使用できません。
●排水管の種類と特長
排水管として主に使われているのは塩化ビニル管です。一般にVPと呼ばれ、材質は同じで厚みの薄いVUというものもあります。耐火二層管は硬質塩化ビニル管の周りに耐火被覆がされており、防火区画貫通に使用されています。配管用炭素鋼管は、いわゆるガス管、SGPと呼ばれている配管です。一番寿命の短い配管で、要注意な配管です。排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP)は、VLPと同様、鋼管内に塩ビ管が挿入された管で耐久性が高い管です。
鋳鉄管はトイレの排水などに使われている配管です。銅管は非常に耐久性の高い配管で、30年経っても心配いらないし、問題も起きていません。特殊コーティング管は一時流行りましたが、5年くらい前にメーカーが倒産して、代替部品がないため、今後の維持管理に気をつけていく必要があります。
●給水設備の給水方式
一般的なシステムは、高置水槽方式です。15年以上前のマンションはこの高置水槽方式が多いと思います。デメリットは、上階では水圧がかなり低くなることです。ポンプ圧送方式は、高置水槽がありません。受水槽で貯めた後、圧送ポンプを使って各戸に直接給水しています。大規模なマンションや超高層のマンションはほとんどすべてこのタイプです。
ブースターポンプ方式は、増圧給水方式とも呼び、最新の方式です。高置水槽も受水槽もなく、本管から各戸の蛇口まで水槽を経ずにフレッシュな水が送られてきます。直結給水方式は、大阪市では3階までポンプを使わずに上げられる形式です。タウンハウスや低層マンションに限られます。
●増圧給水方式に改修
増圧給水方式に変更する場合、最寄りの水道局に行き、事前協議をします。30年くらい経った古いマンションで、配管を替えるだけではなく、ブースターポンプを入れるなどの改修工事を同時にやれば、画期的な改修ができると思います。増圧給水方式の長所は、水の安全性が高いことと省エネの2つ。そして維持管理費の軽減で、水槽の清掃や水質検査がいらなくなります。また、上階の水圧の低さが解消され、受水槽ポンプ室の跡地が有効利用できます。耐震上も高置水槽を取ることで、若干のメリットがあります。
●排水方式
排水管は、住戸の中で流した水が高いところから低いところへ問題なく建物の外に流れていくことが基本です。ただ、排水管の方が給水管より問題点が非常に多いです。なぜ難しいかというと、自然の力でスムーズに水を流してやらないといけないということで、ちょっとでも勾配が緩いと水が流れません。また、緩いところに一気に水を流すと、ボコボコという音が鳴りますし、洗面所とか洗濯機のところに吹き上がってくるというようなことが起こりえます。そういうことを未然に防ぐことが必要になります。
●給排水管の更新と更生
「更新」は、配管を新しく取り替えることで、「更生」は配管を取り替えずに、配管の内部を樹脂でコーティングすることです。給水管ですが、基本的にはメーターまでの配管が共用部分で、メーターから内側の配管が専有部分です。給水管は原則、「更新」で対応します。中には管理組合が専有部分の配管まで直さなくてもいいとおっしゃる方もいると思いますが、住戸内の洗面所の床下などを各個人がまちまちにやるよりは、管理組合が専有部分を含めて給水管と排水管、できれば給湯管の3つの配管をまとめて交換するのがベストだと思います。また、「更生」についてですが、給水管の「更生」は、技術的にも改善され、改修工事の実績もできてきています。
一方、排水管の「更生」は、比較的最近の技術で、急速にライニング工法が普及してきています。排水管は取り替えようと思うと、台所からトイレ、洗面所、お風呂などすべて床下を通っていますから、リフォームするくらいあちこちの床をめくらなくてはなりません。その上、排水管の取り替えに、3日も4日も家にいないといけません。だから排水管は「更生」がベストだと思います。
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「マンションらいふあっぷ連続セミナー」報告

マンション設備の維持管理について
快適なマンション生活を送るために、設備の維持管理は重要なテーマになっています。管理組合の役員になられた方などを対象に、専門家が様々な角度からマンション設備について取り上げ、わかりやすく説明しました。
7月26日(日)
いま話題の地上デジタル放送と電波障害対策をはじめ、マンション管理組合の損害保険の種類とつけ方、そして電気設備のリニューアルをテーマに開催しました。 講座1 マンション管理組合の損害保険
●マンション共用部分の損害
マンションの共用部分で保険の対象になる事故にはどういうものがあるのか。代表的な事故は火災事故です。風災事故は、台風が来たときに、物が飛んできて壊されるといった事故です。水災事故は、地下駐車場に水が入ってきて、電気式の昇降装置が壊れてしまう事故などです。給排水設備に生じた漏水事故で、共用部分の天井が濡れてシミができることあります。それから破壊行為等による事故として、落書きや、盗難に入ろうとしてエントランスを壊すといった事故があります。これらの事故は、すべて広い意味での火災保険の範疇になります。
●マンション内の賠償事故
もう一つは賠償事故があります。賠償事故には3つの類型があります。まず居住者間の賠償事故があります。それからマンション管理組合の管理に起因する賠償事故。例えば、壁の一部がメンテナンス不足のために崩落して、下の誰かにぶつけて怪我をさせてしまう場合。それから居住者によるマンション共用部分に対する賠償事故。エントランスホールで子どもが遊んでいて、何かを壊してしまう事故などが考えられます。これらはすべて保険の対象になります。
●マンション管理組合用の保険とは?
マンション管理組合用の保険ですが火災、落雷、破裂・爆発、風、ひょう、雪災、この6つの損害については住宅火災保険に伝統的な補償内容です。ちょっと補償を広げたものとして住宅総合保険がありまして、外部からの物体の飛来や水ぬれ、水害に対する損害も補償します。
ここまでが住宅総合保険の補償内容ですが、さらに各社、保険の自由化以降、いろんな保険を出しています。一般的に追加補償されているのが、電気的事故、機械的事故です。それから賠償責任について、特約の形でセットで保険に入ることができます。一般的にこれを全部一つのパッケージしたのが、マンション管理組合用の保険として販売されています。
●個別付保契約方式と共用部分一括付保契約方式
次にマンションの保険のつけ方ですが、まず区分所有権は、専有部分に対する所有権と共用部分についての共用持ち分、この2つからなっています。そこで保険のつけ方も2つあります。一つは、個別付保契約方式、それからもう一つが、共用部分一括付保契約方式と呼んでいます。個別付保契約方式は、マンションの居住者の方が、それぞれに自分の専有部分と共用持ち分にかける方法です。それに対して、専有部分については各区分所有者の方でかけていただいて、共用部分は管理組合がまとめてかけるのが共用部分一括付保契約方式です。保険上は、一括方式をお勧めしております。
●上塗り基準と壁芯基準
では一括方式で保険をかけようと決まった場合、共用部分はどこまで保険をつけるのか。エントランスや階段が共用部分だということはわかりますが、学説も分かれているのが、住戸の境界の壁の部分です。上塗り説と壁芯説の2つがあります。上塗り説は、境界壁はすべて共用部分で、上塗り部分だけが専有部分だという説です。学者の方は上塗り説を採られている方が多いです。壁芯説は、境界の壁の中心線を境界とする説です。学説は分かれていますが、保険上は上塗り基準でつけることをお勧めしています。
●ご契約金額の決め方
次にご契約金額の決め方ですが、まず新価と時価という考え方があります。同じ建物を再度建てるときにかかる金額、これを新価といっています。これに対して時価は、再調達価額から使用による消耗分を差し引いた金額をもとにつける方法です。新価でつけるメリットは、建て直す、あるいは修理するときに自己負担がない。一方、時価のメリットは、保険のご契約金額が低くなるので、安くかけられる。保険料が安いということです。我々は新価をお勧めしています。事故が起こったときに、保険金で全部まかなって頂ける。それが保険の使命と考えておりますので、ぜひ新価でつけられることをお勧めします。その他にも、全部保険と一部保険という考え方もあります。どういう契約方式になっているのかをよくご確認のうえご契約いただきたいと思います。
講座1 マンションにおける電気設備のリニューアルと増設について
古いマンションの電気設備には大きく3つの問題点があります。1つ目は経年劣化です。ケーブル劣化によって漏電する可能性、あるいはブレーカーの劣化によって遮断性能が劣化する可能性がありますが、通常は30年以上十分寿命がありますので、それほど問題はありません。2つ目は安全性です。昭和40年代に建ったマンションなどに、漏電ブレーカーや主幹ブレーカーが付いていない事例があります。漏電ブレーカーがない場合は、感電事故や漏電による火災の可能性がありますし、主幹ブレーカーがない場合は、一気に複数戸数で停電する可能性があります。3つ目は容量不足です。20、30年前は、電化設備が現在ほど使われることは想像されていなかったので、対応できないことが考えられます。
そこで安全性を高めるため、あるいは電気容量不足に対応するため、幹線改修、オール電化、厨房電化など、さまざまな電化リニューアル工事を行うことが考えられます。まず、自分のマンションがどんな設備かを調査しないといけません。管理会社や電力会社にご相談ください。長期修繕計画の中に、電気設備のリニューアルの計画を入れることを、ぜひご検討いただければと思います。
講座1 地上デジタル放送と電波障害
●放送のデジタル化の意義
現在、世界20カ国以上でデジタルテレビ放送が開始されています。さらに今後、順次デジタルテレビ放送が開始される予定になっており、放送のデジタル化は、世界的な潮流になっています。放送をデジタル化することで、どうなるかといえば、高画質・高音質の放送が可能になることはもちろんですが、その他に、データ放送でさまざまな情報がリアルタイムで入手可能になってきます。また字幕放送が標準装備されることで、高齢者、障害者に優しいサービスの充実が期待できます。それから携帯端末向けサービス、いわゆるワンセグといわれていますけど、屋外でも移動中でもテレビの視聴が可能になります。
●国民の理解とこれからの課題
アナログ放送終了時期の認知度は約64.7%、それからアナログ放送が終了すること自体の認知度は約92.2%です。デジタル受信機の普及が約3500万台、世帯普及率は43.7%になっています。送信エリアは、世帯カバー率が約93%。近畿管内でいえば、約750万世帯、95%がカバーされています。
受信側の課題の対策として、まず来年度までに5000円以下の簡易なチューナーを開発し、流通の環境整備を進めます。また、2009年度から生活保護世帯にチューナーやアンテナを無償現物給付することになっていますが、具体的な方法は、今後検討することになっています。
●受信者支援センターを設置
今後、地域特有の問い合わせですとか、個別具体的な受信方法に関する問い合わせなどが増加するものと見込まれます。こうした状況に適切に対応するためには、地域の実情に応じたよりきめ細かい対応が必要になってくるということで、今年の秋に全国に10箇所程度、受信者支援センターが設置される予定です。さらに来年度、各都道府県に少なくとも1箇所は設置されることになっています。
●集合住宅の共聴施設の現状
地上デジタル放送対応の現状ですが、対応済みの共聴施設は、改修不要と改修済みを合わせて約54%。半数近 くが改修が必要になっており、そのうちの約89%が改修計画が未定になっています。
また、比較的建築年数が新しい高層マンションは、改修不要又は、機器の調整程度で済むケースが多くなっています。逆に、VHFしか電送できない施設は、大規模改修になるケースが多いのですが、改修方法によっては少ない費用で行なうことが可能な場合もあります。
●都市受信障害共聴施設の地デジ対応に係わる考え方
基本的な考え方ですが、デジタル放送で受信障害が解消された世帯では、受信障害対策は不要です。それからデジタル放送でも受信障害が継続する場合は、受信障害を発生させる建物の所有者と受信者を当事者とする協議により対応します。つまり、あくまでも当事者相互による自治的処理が原則です。従って、協議が整った場合は、その協議の内容が優先されます。
費用負担の考え方ですが、個別受信との公平性といったものを考慮すると、当事者がそれぞれ応分に負担することが妥当です。具体的には、受信者はデジタル放送の受信に通常必要とされる経費、それから所有者は受信者負担分を超える経費をそれぞれ負担するのがいいのではないか、ということです。
また、2011年にいきなりテレビが見られなくなると大きな混乱が生じることになりますので、改修や個別受信への移行といったことに限らず、住民に対する説明をぜひやっていただくようお願いします。
●地上デジタル放送に便乗した悪質商法が頻発
地上デジタル放送の認知度もあがるにつれ、切替工事と称して、工事もしないで金銭を前もって支払わせるケースなど、悪質な商法による被害が発生しています。地上デジタル放送の対応で、総務省や放送事業者が、お金を請求することは一切ありません。被害に遭わないためには、よく分からないまま、請求に応じたり、お金を振り込まないようにすることが大切です。十分注意していただきたいと思います。

平成20年度「連続セミナー」報告

マンション設備の維持管理について
快適なマンション生活を送るために、設備の維持管理は重要なテーマになっています。管理組合の役員になられた方などを対象に、専門家が様々な角度からマンション設備について取り上げ、わかりやすく説明しました。
7月8日(日)
マンション設備のトラブルに対する対処法をはじめ、消防点検のポイントや防災訓練の大切さ、そして古くなったガス設備のリニューアルなどをテーマに開催しました。 講座1 マンション設備のトラブルの事例と対処法

●ペット、駐車場、騒音が3大トラブル
(社)高層住宅管理業協会が平成17年に苦情相談状況をまとめた資料をみますと、苦情が多いのは、まずペットの問題。そして駐車場の問題。これは違法駐車の問題です。そして音の問題。最近はこの音の問題が管理組合にとって悩ましい問題になっています。ペット、駐車場、騒音が3大トラブルといわれています。その他、水漏れなどの設備関係の問題や防犯対策の問題などがトラブルとして非常に多くなっています。
●トラブルの対応基本原則
トラブルの対応基本原則をご紹介します。まず対応ルート、すなわちトラブル時にどこに相談すればよいかなどを把握しておくことです。そして逃げ腰にならず積極的に迅速に対応することです。さらに管理組合の理事会などで経過の報告をしておく。このように初期段階から話し合いや分析を進めていけば解決の糸口が見つかります。こうしたことを積み重ねますと大切なデータになります。 お互いの言い分を聞き、2つ、3つと代替え案をだして話しあうことが大切です。さらに理事会、管理会社と密に連絡をとる。当事者同士で解決するのは難しいと思います。そして、理事会の役員になられた方は、管理規約と使用細則、それと管理委託契約書に目を通していくこと。法律的なことを知っておけば、逆に解決のためのアドバイスができるようになります。
●音の問題解決について
音の問題は、昨今、非常に大きな問題になっています。上下階でいろんな音がうるさいという話が聞かれます。洗濯機、ピアノなどの日常生活音の大きさを理解しておけば、音を出す側の意識も違ってくると思います。ただ、音の感じ方には非常に個人差があります。自分は不快に思わなくても、他の人は不愉快な音に聞こえることがあったりします。そういう時はどうすればいいのか。やはり日頃のコミュニケーションです。上下階でお互いが顔見知りになっておく。顔見知りになっておけば、トラブルにならずにすみます。
●設備関係の漏水トラブルについて
設備関係のトラブルですが、主に漏水についてお話しします。専有部分の漏水は、お住まいになっている方が気をつければ解決することはできます。もし機器類から水が止まらないときはどうするか。その時は止水栓を止めます。それともう一点は配管を壊したとか、何らかの事故で配管から水が漏れる時は、まず玄関を出た共用部分にパイプスペースがあります。そこに量水器があります。この量水器横のバルブを止めていただくと、共用部分からの水が供給されませんから水は止まります。緊急の場合は、こちらを止めていただくことが大事です。
●一番簡単な漏水の見分け方
機器類ではなくて配管のトラブルによって漏水をおこすこともあります。我家が漏水しているのか、配管が漏水しているかの一番簡単な見つけ方は、各部屋の機器を全部閉栓していただいて、量水器の蓋を開けてみていただく。そこでパイロット針がくるくる回っている場合は漏水している。全部閉めているのにここが回っているということは、どこかから漏水していることになります。
●維持管理は誰が行うか
私は維持管理なんて知りません、とは言えません。なぜなら、マンションの所有者である限り、必ず維持管理をする必要があると建築基準法第8条1項にあるからです。そして管理組合をサポートするのが、マンション管理士や管理会社、建築士などです。

講座 ガス設備のリニューアル 径年埋設内管対策について

平成に入ってから全国で古いガス管の腐食が原因でガ ス事故が起こっています。当時の通商産業省、今の経済産業省から全国のガス事業者に対して、古いガス管の改修を推奨しなさい、という指導がありました。そこで大阪ガスでは平成10年から、昭和56年以前に建築された建物の敷地内に埋設されている古いガス管を取り替える工事を進めています。
資産区分は、道路側のガス管が大阪ガスの資産になり、敷地境界から内側のガス管がお客様資産です。従って敷地内のガス工事費に関しましては、お客様に費用が発生します。4年前から改修費用の一部を、国が補助する「経年埋設内管対策補助金」があります。最大で工事金額の半額(上限1000万円)の補助が国から出ます。ただし、ガス管の埋設年が昭和50年以前であること、建物が鉄筋・鉄骨系建物であること、ガス管が建物の下に埋設されていること等の条件があります。皆様のマンションでも、対象になっているかも知れません。マンションの建築年数などを確認して頂いたうえで、私どもにご連絡いただければと思います。
<お問い合わせ先>
大阪ガス(株) 大阪導管部 設備改善チーム
経年内管改善グループ
TEL:06-6586-1107

講座 消防点検と日常の防火対策

●建物火災のうち約45%が共同住宅、併用共同住宅
大阪市内の火災の発生状況ですが、平成19年は1392件発生しました。そのうち建物火災が944件。この建物火災のうち約45%が共同住宅と併用共同住宅の火災です。これは分譲マンションだけではなくて、木造の共同住宅なども入った数字です。また、火災原因としては、放火が一番多くて、次にたばこ、天ぷら油、ガスこんろレンジの4つが多くを占めています。
●消防法に定める防火管理制度と点検報告義務
消防法では、防火管理の推進役としての防火管理者を定めて、消防計画の作成や、計画に基づいて防火管理上必要な業務を行うように義務づけられています。同じく消防法では、消防用設備等の種類ごとに、点検の内容と期間が定められています。外観点検、機能点検、作動点検は半年ごと、総合点検は1年ごとに点検することが、定められています。
●防火施設等のチェックポイント
防火施設は、火災の延焼拡大や煙の拡散を構造的におさえるもので、耐火構造の壁、床、防火戸、防火シャッターなどで構成されています。点検ポイントは、防火戸・防火シャッターに閉鎖障害がないかどうか、完全にぴたっと閉まるかどうかなどです。そして自動閉鎖装置、一般的にドアクローザーといいますが、これがきちんと機能するかどうかも点検のポイントです。
●避難施設のチェックポイント
避難施設としては、避難通路、避難口、階段などがありますが、バルコニーも一時的な避難場所として重要な部分です。多くの場合、隔壁があって、この隔壁を破って隣の住戸に移れるような構造になっています。このバルコニーの管理をしっかりしておかないと、火災が延焼拡大する可能性もあります。ですから日常、各ご家庭で可燃物を置かない等気をつけていただくことが大切です。
●自衛消防訓練
万が一の時に的確に組織だって動いていただくためには、日頃から自衛消防訓練を行うことが必要です。訓練には、通報訓練、消火訓練、避難訓練、そしてこの3つを総合的に行う総合訓練があります。時間をとっていただくのは大変だと思いますが、自衛消防訓練は人命の保護と災害の拡大防止のためにも必要なことです。組織だった活動ができるようにぜひ取り組んでいただきたいと思います。

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平成19年度「管理組合交流会&相談会」報告

「管理組合交流会&相談会」報告
何かと悩みの多い管理組合の運営。そこで管理組合の皆さんが、日頃どのような活動をされているのか 情報を交換し、今後の活動の参考にしてもらえるよう交流会を開催しました。 すぐに打ち解けて、活発に意見交換。解決への貴重なヒントを見つけていただきました。
 今回の交流会では、事前にテーマを何種類か用意して いましたが、管理組合運営と大規模修繕に関する悩み を持つ方が多かったため、管理組合運営はマンション規 模の大小によって、大規模修繕は築年数によって分けま した。途中、コメンテーター(弁護士・建築士)のアドバイス も受けて前半は、支援機構の常任委員による進行のもと、 後半はグループ毎に自由に話し合っていただきました。  管理組合同士、共通の悩み事が多いこともあり、お 互いにすぐに打ち解けて活発に意見交換をされてい ました。その熱心さは驚くほどで、多くの方が休憩も 取らずに話をされていました。また、ベテランの管理組 合の話を参考にされて、「自分の管理組合に持ち帰っ て、実際にやってみます」と喜ばれた方など様々でした。 以下、話し合われた内容の一例を紹介します。

テーマA「管理組合運営(小規模マンションの場合)」

  1. 管理会社の変更
  2. 管理組合の活性化に対する悩み
  3. システムを活用した管理費の支払い
  4. 管理会社への対応に対する苦慮
  5. 役員のなり手不足への対応

まとめ

1.では、あるマンションで管理会社に不満があり、他社で見積を取ったら管理費が激減になったという事例があった。5.では、役員のなり手がなく、役員を断った人から協力金として徴収し管理費に入れている、という事例があった。

テーマB「管理組合運営(大規模マンションの場合)」

  1. 理事の選任について
  2. 議事録の出し方
  3. 管理費の値下げについて(指定業者の見直し)
  4. 管理会社の委託契約の決め方

まとめ

住民の交流会を行っているが、役員のなり手がない。輪番制を検討し、ブロックに分けて部屋番号順を検討している。役員に関するルールの話し合いをしていきたい。

テーマC「大規模修繕工事(高経年マンションの場合)」

  1. 給排水管の取替え・方法について
  2. エレベータの取替えにかかる金額
  3. 耐震・劣化診断
  4. 総会・工事説明会など入居者の関心の薄さ
  5. 補修履歴について

まとめ

建物・設備の経歴を残すようにしていくことが大切と分かった。設備の更新の進め方として、基本設計を建築士に依頼し、見積、工事と進めていくという話もあった。

テーマD「大規模修繕工事(築浅マンションの場合)」

  1. 修繕積立金の見直し
  2. 修繕内容の疑問
  3. 施工業者の選び方
  4. 駐車場使用量の使途
  5. 機械式駐車場のメンテナンス

まとめ

コンサルタントをどうするか、あるいは耐震診断や業者選定のヒアリングの仕方などの疑問に対し、「実績を調べる」とか「現地を見に行く」などのアドバイスがあった。

テーマE「住まい方・その他」

  1. 騒音問題について
  2. ペット飼育マナー
  3. 近隣からの要求
  4. 自転車置き場が少ない。
    管理費の滞納。
    大規模修繕
  5. 会計を見直したい
  6. 建物の無料診断
  7. 役員・総会とも出席者が少ない。管理会社変更の方法。工事見積書が不透明
  8. 管理会社をうまく使えていない

まとめ

ペットの問題では、飼育禁止と可の二つに分かれているが、いずれも無断で買っていたり、夜中の泣き声などの問題があった。

コメンテーターまとめ

【弁護士】 マンションの価値を高めるために、 弁護士一人ひとりが自覚を持つこと

 マンションには、実に数多くの問題があります。中には 自治を守らない人もいますが、マンションの価値を高め るために、ひとつ屋根の下にいる人たち一人ひとりが自 覚を持って力を合わせてほしいと思います。

【建築士】 まず自分たちのマンションの 建築士状態を知ってください

 例えば、自分のマンションの屋上に上がったことがあり ますか?屋上のドレンにごみがあれば、管理組合は管理 会社に清掃を指示しなければいけません。しかし屋上 に上がらなければ、それはできません。まずマンション の状態を知ること。そこから対応を考えてください。

<個別相談会>

専門家から貴重なアドバイスを受けました
 当日は専門家による個別相談会も実施、弁護士・建築士・マンション管理専門相談に12組(法律相談6組、管理一般相談3組、技術相談3組)の管理組合が問題解決のアドバイスを受けました。
 相談内容は、管理費の未納、町会費の取扱い、有効議決権数、瑕疵、ペット問題、複合用途の管理組合運営、給水管修繕についてなど様々でした。

参加者アンケートより※主なものをご紹介させていただきます。

他のマンションの実情がよくわかり、自分のマンションと比較することができた…34名

直面する問題の対応策について、よいアドバイスが受けられた…6名

どこのマンションも役員のなり手がなくて困っている様子。集合住宅に住むということの意識を持ってもらうよう働きかける必要性を感じました。

各管理組合それぞれに問題をかかえていることが理解でき、それぞれ理事役員がご苦労しているのですね。

初めての参加であったが、他のマンションの方の話が聞けて良かった。皆さん共通の内容があり、話し合いができたことが大変参考になった。

同じ悩みを持った人が多いので、驚くとともに共通点が見られ、ホッとした部分もあった。

平成19年度「基礎講座&相談会」報告

11月25日
マンションで起こるトラブルの事例と対処法、役に立つ共用部分リフォーム融資とマンションすまい・る債、そして滞納管理費等への対策をテーマに開催しました。 トラブルの事例と対処法について

●日常生活の3大トラブルに対する対応法
 (社)高層住宅管理業協会では毎年アンケートをとっています。17年度のアンケートでは、ペットの問題、騒音の問題、不法駐車・不法駐輪の3つが日常生活で一番多いトラブルとなっています。
 トラブルの対応方法ですが、まず、管理組合の理事会などで対応ルートを把握して、体制づくりをしておくこと。それと逃げ腰にならずに、積極的に対応していく姿勢が必要です。そして迅速な対応と結果の報告も大事です。そしてトラブルの処理内容は柔軟性が必要です。当事者間でよく話し合って解決方法を探すこと。次に、理事会と管理会社に密に連絡をとっていると解決しやすいものです。さらに管理規約、使用細則、管理委託契約、区分所有法、マンション管理適正化法など、関連法規を理解しておくことが大切です。
●漏水トラブルの対処の仕方
 ハード面のトラブルで一番多いのが漏水の問題です。水栓関係の機器類には基本的に止水栓がありますから、給水の場合、給水口で不具合が起こっても、ここでしっかり止めておけば、水は流れません。部屋の中全体で配管がどこかで破れて水が出ている場合は、止水栓を止めても意味がありません。その場合は玄関にあるメーターボックスの中に水道メーターがあります。その横に必ずバルブがあります。そのバルブを止めてください。お部屋のほうに水は給水されません。そうすると、二次被害が非常に少なくて済みます。
 漏水の場合は保険があります。損害保険に入って二次被害に対しても保険で対処できるようにしておくことも必要です。漏水の見つけ方は、水栓を全部止めて、メーターを見てください。小さいパイロットランプがあります。これが動いている、あるいは1リットル指針が動いている場合は、微量に水が流れているということです。

共用部分リフォーム融資とマンションすまい・る債

 共有部分のリフォーム工事を行う時に、修繕積立金で不足する部分を補うのが、共用部分リフォーム融資です。管理組合様の名義でのお申し込みで、保証人は(財)マンション管理センターとなります。また、無担保で、融資額は、工事費の8割又は1戸あたり150万円まで、最長10年間の完全な固定金利です。さらに耐震改修工事を行う場合には、金利が0.2%優遇されます。
 一方、マンションすまい・る債は、修繕積立金の計画的な積立をサポートして、安全確実に管理・運用していただくため、私どもが国の認可を受けて発行する管理組合様向けの債券です。当機構の資産から優先的に弁済されることが法律で定められており、その中で保全が図られています。毎年年1回、定期的に利息を受け取ることができます。中途解約は、購入から1年経過すれば可能で、利息は確定額で解約手数料はありません。また、債券は機構が無料で保管いたしますので、盗難・紛失の心配もいりません。ぜひ皆さまにご活用いただければと思います。

滞納管理費等への対策

●滞納の予防策
 まず一番の予防策として、忙しくて振り込めないとか、支払い忘れたとかの理由による滞納を防ぐには、口座引き落としにしておくことです。もう一つ予防策が、遅延損害金について定めておくことです。支払いが遅れた場合には遅延利息というのが付き、民法では5%付けられますが、管理規約でもっと高い率を定めても問題ありません。
 また、滞納が発生したときにすぐに対応できるようにするためには、滞納状況がリアルタイムに把握できるようにしておくことと、対応方法をマニュアル化しておくことが、大事なことだろうと思います。
●滞納が発生した場合
 次に滞納が発生した場合ですが、対応は段階的に強い方法にしていくのが普通です。早めに滞納者に連絡をして、電話で請求をする。その際に、どういった理由で遅れているのかを聞くことです。口頭で請求をしても支払いを得られないような場合、文書での請求が考えられます。まずは、新聞受けや郵便受けにポンと入れておく、次に郵便で送る。郵便も配達記録、内容証明郵便と段階を踏んでいくことが普通です。一度訪問してみるのもいいでしょう。お宅に行く場合には、極力複数で行くことをお勧めします。話し合いをした結果は、文章にしておくこと。具体的に滞納分について月々いくらの形で支払いますということで、念書をもらうことが必要です。
 それでも誠意ある対応がない場合、法的措置を考えます。支払い督促、少額訴訟、通常訴訟、民事調停の手続きをとるのかはケースバイケースかと思います。法的措置をとった後、裁判所で結論が出ているにもかかわらず、支払いをしない方には強制執行手続きをすることになります。預金を差し押さえたり、区分所有権を差し押さえて競売にかけることを考えることになります。

 ※(注)講座1〜6の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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平成19年度「大規模修繕工事見学会」報告

大規模修繕工事見学会
基準を明確にして施工業者を選定し、 居住者が監督する責任施工方式を採用
11月17日、大阪市マンション管理支援機構として第4回目の大規模修繕工事見学会を京橋グリーンハイツ管理組合のご協力により開催しました。京橋グリーンハイツは、京阪・JR「京橋」駅から徒歩10分の場所に建ち、SRC造15階建・4棟・総戸数1016戸の大規模マンションです。築24年を経過し、今回が2回目の大規模修繕工事です。

<見学マンションと工事の概要>

京橋グリーンハイツ
(大阪市都島区都島南通2-1)
SRC造15階建・4棟・総戸数1016戸/築24年
工事内容(1)仮設工事 (2)下地補修 (3)壁・天井面塗装 (4)鉄部塗装 (5)廊下・バルコニー床等改修 (6)階段床シート貼り (7)シーリング (8)屋上シングル葺き部分補修・保護塗装(全面) (9)樋・パーティション等部分補修 (10)その他(室名札・ガラリ・照明器具取替・はと対策)
工 期平成19年2月〜平成20年3月予定
施工 

● 責任施工方式により、足かけ3年にわたる長期工事

(写真) 総戸数1016戸を誇る京橋グリーンハイツ管理組合。まず理事長の市川さんから、今回の工事見学会申し入れに対し理事会が歓迎の気持ちを込めて決議したこと、そして2回目の大規模修繕工事が、昨年秋の業者選定等の準備から始まって、来年3月に終了する足かけ3年の長期工事であること。工事方式は、設計監理会社を採用せずに、居住者が工事を自ら監督する施工業者の責任施工方式を採ったことなどに触れた上で、大規模修繕委員会設立までの経緯の説明がありました。

● 施工業者選定時のアドバイスに興味津々

 大規模修繕委員会実行委員長・恩地さんからは、用意していただいた説明資料に基づいて委員会設立以降の説明をして頂きました。

(写真) 通常の大規模修繕工事の他に、足場がある時にしかできない改善・改良工事を行ったこと、現状のままでは資金不足が生じるため、アンケート実施のうえで修繕積立金を値上げしたこと、外装の建物診断を行ったこと、他にも、施工業者選定には、統一見積書を作成したことや、金額が安いところではなくて、工事の実績やクレームのないところの他にISOをベースにした施工管理ができるところなどを重視したそうです。「工事仕様書に、検査・品質保証の項目を入れると、施工業者さんも気をつけられると思いますよ」とアドバイス。参加者の皆さんも興味津々の様子でした。

● 質疑応答で活発に意見交換。そして現場見学へ

 続いて施工会社の方が、スライドを用いて、品質管理検査方法、防犯対策、居住者とのコミュニケーションなどを含めて、工事施工上の工夫や特徴などを説明しました。

(写真) 質疑応答では、工事仕様書作成にかかった期間と人数、バルコニーの室外機以外の物の取扱、専門委員の報酬の有無、義務を果たさない居住者への対応方法、ゴンドラ使用の長所短所、建物診断の費用など、多くの質問がありました。
 続いて行われた現場見学は4班に分かれて、施工会社と実行委員の方々の引率により実施。参加者の皆さんは、施工状況を興味深そうな様子で見て回られていました。
 ご協力いただいた京橋グリーンハイツ管理組合の方々、および関係者の方々に心よりお礼を申し上げます。

平成19年度「基礎講座&相談会」報告

らいふあっぷ基礎講座&相談会
円滑な管理組合運営と適切な維持管理による快適なマンションライフをめざし 会場の様子
マンションライフにおいて発生する様々なトラブルに適切に対応できる 能力を身につけることはとても大切です。
建築や法律などの専門家がそれぞれの立場から分かりやすく説明しました。 11月11日
大きく転換した国のマンション施策の現状と動向、規約を補完する役目を果たす細則の 作成時のポイント、そして耐震強度を含めた大規模修繕の進め方をテーマに開催しました 国のマンション施策の現状と動向

●マンション人口は約1割
 分譲マンション戸数は平成18年末で505万戸。人口で約1300万人。国民の1割程度がお住まいになっています。そのうち、築30年を超えたマンションが50万戸を超え、5年後に100万戸以上になります。平成18年、住生活基本法が制定され、これまでの数を供給するという政策から、いいものを長く使おうという政策に大きく舵を切りました。マンション行政についても当然、同じことが当てはまります。
●マンションに関する法令等を整備
 マンション管理適正化法ができ、それに基づいて、「マンション管理適正化指針」も定められています。建替えについては、平成14年にマンション建替え円滑化法が制定されました。区分所有法は平成14年に一部改正され、それらを踏まえて、マンション標準管理規約を国土交通省で改正を行いました。ここ数年で、非常にマンションに関する法令等が整備されてきました。
●マンションみらいネットと各種マニュアル
 今やっている施策の一つが、マンションみらいネットです。マンションの管理水準の向上を図り、情報が一部公開されることによって、きちんと管理されているマンションは、市場できちんとした評価を受けるということを目指して作られています。
 続いて耐震ですが、マンションの耐震改修を促進するために、今年度から一部補助率を上げました。そして、建替えのための実務マニュアル、建替えに向けた合意形成のためのマニュアル、改修でマンションの寿命を延ばすためのマニュアル、マンション耐震化マニュアルなど、各種マニュアルを国で整備をしております。国土交通省のホームぺージに載せていますので、ぜひご覧ください。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/index.html

細則作成時のポイントについて
 マンション管理規約の細則は、規約を補完するために定めるルールです。細則の法的根拠は、区分所有法39条1項に「集会の議事はこの法律または規約に別段の定めがない限り、区分所有者および議決権の過半数で決する」とあります。この条文に基づいて細則を作ります。
 細則を作成・改正等する上では、2つのポイントがあります。1つは語句を統一して頂きたい。語句の統一とは何かと言うと、私どもの事務所に来られて、「これがうちの規約集です」とご相談を受けるのですが、ちょっと斜め読みをさせて頂きますと、規則、規定、要項、要領など名称をバラバラな形で取り決めておられる。標準管理規約では、様々な細則を定めることで、規約の内容を補充することを想定していますので、ルール作りを行う場合は、何々の細則ということで、語句を統一された方がいいと思います。2点目は、細則参考例(11月11日配布資料)を利用して、自分のマンションに合った形に加工してお使いくださいということです。 大規模修繕の進め方
●修繕・改修のチェックポイント
 修繕工事は、塗装や防水など、いわゆる外壁の仕上げ材の改修で、10年ごとに行うのが一般化してきています。エントランスホールなどは改修効果が高く、全体的に老朽化してきたマンションでも、例えば、吹き付けタイルで、床は長尺シートを貼っているだけのエントランスホールでも、床壁を石貼りにし、照明をグレードアップすれば豪華に見えますし、安心感と満足感が生まれます。
 共用廊下、バルコニーなどの共用部分の改修には、たくさんの工事項目があり、大規模修繕工事の時にまとめて共用部分を工事することが合理的です。大規模修繕工事でなくても、単独で工事をすれば改修効果が高くなるものがありますから、常に何らかの形で、工事の適正時期を考えておいていただいたらいいと思います。
●耐震強度のチェックポイント
 阪神大震災の時、新耐震基準建物の4分の3以上は大丈夫でした。そして旧耐震基準は3分の1が大丈夫で、3分の2は何らかの問題があったというデータがあります。耐震の考え方は、まさしくこれなんですね。新耐震だから100%大丈夫で、旧耐震だから100%駄目ではなくて、旧耐震でもポイントを押さえた補強をすれば比較的強くなります。
 建物のバランスが悪いと、弱い部分の壁、柱が壊れて、そこからつぶれます。耐震診断をするのが大前提ですが、1階にピロティがあったり、柱のバランスが悪いマンションは、耐震診断の結果、相当悪いという結果が出たとしても、1階ピロティの補強や、住戸の壁に影響が出ない範囲で壁を増やせばいいと思います。このように、部分的に改修をして、バランス良くするような改修方法が今後増えてくるのではないかと思います。「大阪市住宅・建築物耐震改修等補助事業制度」などの公的補助を受けることも検討して下さい。  ※(注)講座1〜6の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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「マンション管理フェスタ2007」開催速報

「マンション管理フェスタ2007」開催速報
多彩な内容でお役立ち情報を提供。おかげさまで大盛況でした。

ご案内
9月2日(日)開催「マンション管理フェスタ2007」のビデオ視聴をしていただけます。
<場所> 大阪市立住まい情報センター4階 住情報プラザ内
<お問い合わせ>TEL:06-4801-8232
*詳しくはこちらをご覧ください。
  [ セミナービデオ視聴のご案内] ※Acrobat Readerが必要です。


さる9月2日、「マンション管理フェスタ2007」が開催されました。分譲マンションの管理組合の活動の中で、大切なひとつが、住民同士の円滑なコミュニケーションです。そこで当日はマンション内のサークル活動の発表や、「マンション管理とコミュニティ活動」をテーマにした講演会、協力団体によるマンション管理に役立つ情報提供など、多彩な内容で実施され、200名以上の来場者で大いに賑わいました。
 支援団体、協力団体が一堂に会した、これだけ大規模なイベントは初の試み。「マンション管理に関する専門家の方に様々なことを聞くことができて、大変役立ちました」と大好評。参加された多くの方が、快適な住まい作りを行うためのヒントや智恵、工夫を見つけられたようです。

≪発表≫13:00〜13:30 フェスタで発表会!

踊りの披露など、サークル活動を発表 オープニングはマンション内のグループのサークル活動の発表です。民謡のお好きな方々が集まった「ますみ会」(エバーグリーン淀川)の皆様による踊りが披露されました。熱心な踊りに、会場内からは惜しみない拍手が贈られました。

≪講演≫13:30〜15:00
マンション管理とコミュニティ活動
3つの管理組合のコミュニティ活動を紹介

マンション学をテーマに研究されている藤本佳子教授(千里金蘭大学)がミニ講演としてコミュニティづくりの大切さを講演された後、大阪市内の3つのマンションの管理組合(エバーグリーン淀川、勝山東ガーデンハイツ、ベイシティ大阪)のコミュニティ活動を紹介。マンション管理組合活動の参考にしてもらいました。

※講演内容については「らいふあっぷvol.23」でご報告、このホームページでは、2008年2月に紹介します。


専門家とお話してみませんか?! 悩み解決のために専門家がアドバイス!

大阪市マンション管理支援機構の専門家6団体(大阪弁護士会、大阪司法書士会、大阪土地家屋調査士会、(社)大阪府不動産鑑定士協会、近畿税理士会、(社)大阪府建築士会)の専門家と自由におしゃべりできるコーナーを設置。当日は、多くの方が熱心に相談される姿が目立ちました。相談内容は、管理運営の問題、管理会社とのつきあい方、修繕によるトラブルなど実に様々でした。

わたしたちのマンション自慢! 役立つ実例を多数紹介しました

マンション管理組合のいろんな活動情報を見て、コミュニティ活動の参考になるように、広報誌をはじめ、役立つ実例を多数ご覧いただきました。
 

マンション管理組合ミニ交流コーナー 自由なミニ交流会を開催!

毎年の「管理組合交流会」では、ほかのマンション管理組合役員との情報交換が好評。フェスタではコミュニティ作りのコツを、ほかのマンション管理組合さんから聞いたり、成功事例や経験を伝え合うなど、自由なミニ交流会を4階の住情報プラザで開催しました。
大規模修繕工事の問題や管理会社との関係などについて、活発な意見交換が行われました。
マンション管理組合に役立つ情報コーナーを設置! 情報提供コーナー1

大阪市、大阪市住まい公社、(独)住宅金融支援機構 近畿支店から、住まいに関すること、関連資金のことなどの役立つ情報を提供。さらに、大阪ガス(株)、(社)不動産協会、(社)宅地建物取引業協会、関西電力(株)など大阪市マンション管理支援機構の賛助団体の活動を紹介。(社)高層住宅管理業協会は相談をお受けしました。

情報提供コーナー2

協力団体により、デジタル放送、光インターネット、防犯モデルマンション、マンションみらいネットなどマンション管理に役立つ情報を提供しました。
 

情報提供コーナー3

大阪市消防局から防災関連の情報、総務省から地上デジタル放送など情報を提供しました。

映像で見る、管理組合応援コーナー

大規模修繕工事・建替え事例・超高層住宅など、マンションに関する様々なビデオをご覧いただきました。
(これらのビデオは大阪市立住まい情報センター4階「住情報プラザ」で視聴できます。)

「マンション管理フェスタ2007」講演報告

「マンション管理フェスタ2007」講演報告

会場の様子さる9月2日に開催された「マンション管理フェスタ2007」の全体の模様は前号(22号)でご紹介しましたが、誌面の都合で掲載できなかった講演「マンション管理とコミュニティ活動」の内容を後編としてご紹介します。
当日は、マンション学をテーマに研究されている藤本佳子教授がミニ講演を行われた後、大阪市内の3つのマンションの管理組合(エバーグリーン淀川地上館、勝山東ガーデンハイツ、ベイシティ大阪)のコミュニティ活動の事例紹介を行いました。

講演「マンション管理とコミュニティ活動」 マンション管理とコミュニティ活動
トラブルの9割は、居住者の生活マナーの問題  マンションのトラブルは、居住者間の生活マナーを巡る問題が9割を占めており、居住者の相互関係の問題が多いのが特徴です。トラブルの多さはマンションライフの満足感と関係しています。東京の築25年以上のマンションの居住者に対してコミュニティ形成の必要性の調査をしています。「コミュニケーションがうまく取れているか」という質問に対して、4割しか「取れている」と回答していません。では「住民相互の交流は必要か」といえば、7割以上の人が「必要だ」と回答しています。つまり住民相互の交流は必要だけれども、うまく取れていないというのが現状です。 一戸建てとの違いは「共同」ということ  一戸建てとマンションとは一体何が違うかといえば、次の4つが違います。マンションでは、上下左右の家が重なり合って「共同生活」をしています。そして廊下、階段、エレベーター、駐車場などを「共同利用」しています。また、マンションを複数の人で区分けして区分所有法の下で住戸を所有し、複数で「共同所有」をしています。そして、管理組合における合意形成によって「共同管理」しています。だからマンションを購入するというのは、「共同生活」で、「共同利用」で、「共同所有」で、「共同管理」することなのです。
 コミュニティの形成に成功しているマンションでは、生活上のトラブルの発生の割合が減っています。また、大きな紛争が減少しています。これは日本だけでなく、海外での調査でも同じことがいえます。 建物の価値だけではなく、居住価値が重要に!  管理組合の目的に、区分所有者の共同の利益の増進があります。それは建物の価値だけではなく、居住価値が重要になってきています。建物の価値の維持、増進から、居住価値の維持、増進へ。ハードだけではなくハードとソフトと両面揃ってこそ住み心地が良い住環境ができます。そのためには住む人々の継続したコミュニティ活動が必要です。つまり、日々の生活を楽しみながら居住者間のコミュニティの形成を図る。住んで良かった、長く住み続けたい、というような快適な住環境を作る必要がある。住む人々の知恵と活動で居住の価値を高めていく。これこそ住み心地の良い住環境作りということになります。
「共に生きる、助けあう」という気持ちを大切に!
大規模マンションの運営に代議員制度を導入 藤本●これから特徴ある3つのマンションからコミュニティ形成の事例報告をして頂きます。エバーグリーン淀川は1500戸近い大阪でも有数の大規模マンションです。その管理組合をどのように運営されているのですか?
高田●まず何が大事かということを平成13年に1464世帯にアンケートを取ったところ、執行部のマンションマネージメントが大事だと気が付きました。そこで代議員を80名作りまして、毎年の決算や予算運営、工事計画など早くやらなければならないことを代議員総会で決めることに致しました。大規模マンションは、各棟各階から代表が出て、その中で維持をするのがベストだと思います。
藤本●代議員を80名選出し、その中から互選で理事を13人選ばれています。だから大規模だけれども動きが早い。そして特別決議が必要な時は必ず全員総会を開催している。どこまでを代議員総会で、どこからが全員総会でということをきちんと規約で決めています。まず管理体制作りから始められていることが特徴だと思います。 自主管理の体験を、委託管理に生かす 藤本●次に勝山東ガーデンハイツは、管理会社の方から値上げを言われて突如として自主管理へ移行せざるを得なかったようです。また最近は委託管理へ戻っています。その辺りをお聞かせ下さい。
葛籠●実は、昭和56年7月に入居以来、平成4年の定時総会まで修繕積立金は810円でした。それでは大規模修繕ができませんので、平成6年の年度替わりに一時金を平均50万円ずつ徴収させて頂くことにしました。ちょうどその頃、管理会社から値上げの打診があった。修繕積立金の値上げと一時金の徴収をしなければいけないのに、管理費まで値上げはできないと、理事長と管理会社の担当者の間で話しあいがもたれた結果、管理会社から「お宅の委託はけっこうです」と突如断りに来られたのです。だから計画もしていなければ、何がなんだかさっぱり分からなくて。その後、大変苦労しながらも、結果的には、9年間ほど自主管理をして、その間に第1回大規模修繕工事も行いました。そして平成14年12月に、委託管理に戻りました。今は丸投げ状態ではなくて、通帳も印かんも管理組合で管理をしています。様々な契約も管理会社経由ではなくて、個々に直接契約をしております。
藤本●自主管理からまた委託管理へ戻った時には自主管理の経験が生きている様子がわかります。続いて、ユニークな運営体制を持つ、ベイシティ大阪です。 独自に事務局を設置。常駐の女性が活躍! 櫻木●役員構成は理事が2年任期、16名を確保しています。毎年半数ずつ交替することで、ある程度の継続性は保てます。しかし長期計画に基づいて物事を進めたり、腰を据えて取り組む時に、理事長が毎年変わるので、思い切った策が打てなかったり、理事長に負担をかけてしまうのではと躊躇することがありました。そこで10年ほど前から管理組合に事務局という事務所を設置し、事務職員1名を管理組合で雇う形で常駐しています。区分所有者から募り、現在は2代目の主婦の方ががんばっておられまして、今年で6年目を迎えています。事務局の主な役割は、日中勤めでいない理事長や理事の留守番役というのが一つです。日常の事務や書類の整理、継続して行う書類の保管と管理、住民からの苦情や要望、意見の窓口として初期対応にあたります。さらに出入り業者との打ち合わせや調整などもやっております。 あいさつ運動など多彩な活動を実施 会場の様子 藤本●コミュニティ形成に成功した例をご紹介ください。
高田●住民による自主的な防犯パトロール、消防訓練、年末の警戒パトロール、ペット飼育者による清掃パトロールなどをやっております。毎年定期的にやっているのは、挨拶のデモンストレーション。これは小学校、中学校の子供さんに対して、管理組合の理事、代議員の有志が出て30分間挨拶をやっています。また、サークルがいろいろとあり活発に活動されています。それから講習会ですね。講師が来て「人が少ないな」と言わることは一度もなく、皆が積極的に参加しています。
藤本●共用自転車の貸し出し制度も作られていますね。
高田●無料の共用自転車を30台作りました。自転車が古くなったら破棄され、共用自転車を使ってもらっています。良い事をしたと思っています。
会場の様子 藤本●葛籠さんのところでは、大規模修繕の時に「マンション元気村」という修繕ニュースを出されましたが、それはどんな役割を果たしましたか。
葛籠●工事工程などは業者の方が掲示板に貼ってお知らせしてくれるので、その他の情報をお知らせしました。おかげで大規模修繕もスムーズにいったように思います。
藤本●大きな活字とイラストや写真が多用されて、読むのではなくて見るという感じですね。情報公開することで、住民の情報共有に有効に働いているように思えます。
会場の様子 櫻木●私どもではコミュニティ形成のために昨年ホームページを開設しました。理事会の議事、ペットクラブの活動や、子供会の活動などを写真を取り入れながらお知らせなどに使っています。また意見ももらえるシステムになっていますが、活用の状況を1年間見ますとまだ不十分です。
論理的な運営と、ルールを守る品格が必要 藤本●最後に、コミュニティ活動をスムーズにするには何が重要かを一言ずつお願いします。
高田●マンションの運営は、情緒的ではなく論理的に筋道を立てて運営すること。それと楽しく快適な生活をするためには住民はルールを必ず守る、やるべきことは必ず皆で一緒にやるといった品格が必要です。そして一生懸命コミュニティ活動をやられる方々に対して、管理組合は一緒に応援をします。それが大事ではないかと思っています。
葛籠●理事会から発行している広報誌に、「運営は清掃から。管理は挨拶から」という標語を毎回つけています。それが大本じゃないかなと思っております。
櫻木●私2年間理事をやった経験上、住民と理事会、執行部がかけ離れたものになりがちで、一生懸命やっている人と関心のない方がいらっしゃる。ですから執行部としましては、飽きずに繰り返して情報公開していく。これが大事じゃないかなと思ってやっております。
藤本●共に生きる、助け合う、という気持ちでマンションの管理を行うことが大切ではないかと思います。本日は貴重なお話し、ありがとうございました。
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