「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」報告

11月26日
管理組合会計の役割と特徴や、快適住環境推進運動の展開事例、そして全員参加型のクイズ形式によるマンション管理Q&Aなどをテーマに開催しました。 わかりやすい管理組合会計

 管理組合会計がどうも分からないという方もいらっしゃると思いますので、管理組合会計の根本的な考え方をご紹介します。そもそも管理組合の収入源は、原則的に入居者の方から徴収された管理費であり、それを1年間どうやって運営するのかを考えるのが理事会です。その運営に基づいて支出した分が、予算に比べてどうかを考え、それが適正かどうかを明示していくのが会計担当の方の役目です。さらにそれが最終的に正しいかどうかチェックするのが監事の役割です。管理組合会計の原則は、共用部分の維持管理をしながら、管理費の収入をロスなく使い、次の方にバトンタッチしていく。たくさんお金があるからバンバン使っていいというわけではなく、将来のことも考える責務もあります。
 会計の世界では全体損益計算と期間損益計算という考え方があります。全体損益計算は、会社であれば、設立から会社が倒産・廃業、解散するまでということになりますが、これでは、現在はどうなのかがわかりませんので、一定の期間で区切るのが、期間損益計算です。管理組合の場合でも月次の収支計算書で確認をし、1年間が終わったときに収支計算書の金額と予算とを対比する流れになります。例えば1年間が終わり、はっと気が付くと水道光熱費が予算オーバーということがあります。もし月次で管理していたら、途中の段階で気がついて、どこかに漏れがあるのか、読みが甘かったのか、ということがわかります。
 新聞などを見ていたら、某銀行で十数億の横領とかが起きる。それはチェック体制が甘いからです。一定のルールがない。継続性がない。明瞭性がない。誰が見てわかるように、要求されたときに今の実態がある一定の法則に基づいて同じ結果になるという状況を確保していないからです。
 会計は、数字を羅列して、ただ単に事後のことを帳簿につけることが目的ではなく、事後の帳簿、もしくはその事実に基づいて、将来どうしていくのかを見ていくことが重要です。だから継続性を無視したり、いい加減にするような方が役職についた時に困るし、もしやり方等がわからなければ分かる方に聞くなどして、正確性を高めていく努力をされないと、結局はご自身も含めて皆さんが困るようなことになります。
 管理組合会計は、できるだけ皆さんが拠出されたお金を無駄に使わないようにお互いが、いい意味の干渉をし合って、将来の自分達の財産を守るように使うための重要な得をするツールだと思っていた だき、管理組合会計にもう少し目を向けていただけたらと思います。

ミニ講座3 快適住環境推進運動の展開(項目)について
挨拶運動、講習会、防犯パトロールなど多彩に実施
講師 高田 修志(たかだしゅうじ)
エバーグリーン淀川地上館 管理組合 理事長

当管理組合(自治会協力)では、より快適な住環境を求めて住民全員参画により「快適住環境推進運動」に取り組みました。その内容は次の通りです。

  1. 「管理規約」に「コミュニティの形成と育成」の条文を追加し、意識付けをしました。
  2. 全住民対象に「快適住環境推進」の標語募集し、作品をエレベーターホールに掲出しました。
  3. 行動形態としては「挨拶運動」から入り、期間中理事・代議員、管理事務所職員よるデモンストレーションを行いました。日がたつに従って通学する小学生・中学生から自発的に「おはようございます」と声が出るようになりました。
  4. 住民のためのコミュニティサルーン(談話室・寛ぎの間)をあまり使われていない集会室を改装してオープンしました。
  5. この期間に定例となっている「防犯講習会」「救急救命研修会」の他に「健康管理講習会」を医誠会病院の先生にお願いしました。(好評)
  6. 「快適住環境」に対する論文(提言)を募集し、発表しました。
  7. 「防犯パトロール」も防犯協議会のメンバーで続けています。
  8. 迷惑行為排除のための「べからず集(28項目10項)」を手作り作成し、全戸に配り徹底を図り、毎月実行課題を設け促進することにしました。
  9. 各クラブ活動(老人会・踊りの会・卓球・テニス・少年野球・ペット飼育者連絡協議会)等の活性化
  10. 構内の整理・整頓、タバコのポイ捨て、犬の糞の片付等の清潔感の醸成。やはり結果を出すためには“継続は力なり”で根気よく続けたいと肝に銘じています。
 ※(注)講座1〜6&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」報告

11月13日
マンション共用部分の維持管理に対する住宅金融公庫のサポート体制や、大規模修繕の具体的な進め方などをテーマに開催しました。 マンション共用部分の維持管理にかかる住宅金融公庫の支援について

(1)新築 ………売主(事業者)が管理規約や長期修繕計画のお膳立てをして、マンション居住者の方に引き継ぐのが一般的です。新築分譲マンションを売る場合に、「フラット35」や「公庫融資」というローンをご提供するわけですが、そのローンのご提供の条件として、事業者に管理規約の整備と、長期修繕計画の策定を義務化しております。
(2)資金運用 …管理組合の運営で問題になってくるのは、修繕積立金の運用です。当公庫で修繕積立金の運用をサポートするツール「マンションすまい・る債」を用意しています。これは、住宅金融公庫が発行する債券(利付10年)で、定期的に継続購入(最高10回)し運用していただく制度です。
(3)修繕 ………例えば、修繕積立金のストックが足りない。あるいは、全部取り崩してしまうと、急な支出を考えると不安だ。あるいは、数年後の予定工事もまとめてやってしまいたいが、そうするとお金が少し足りない。こうしたケースで、私どもの「共用部分リフォームローン」の検討をしていただければと思います。
(4)流通 ………中古住宅を購入する際に「フラット35」や「公庫融資」をご提供していますが、どんな中古住宅でもご融資しているわけではありません。管理規約の整備、長期修繕計画の定、それから良好な維持管理状況(著しいひび割れがないこと等)の要件にあてはまるものに限定的にご融資をさせていただいています。
(5)建替 ………最後は、どこかで建て替えなければなりません。その場合に、私どものサポートの一つが「建替資金の確保」です。マンション建替資金融資は、最長35年、固定金利、融資額8割までというものをご用意しております。その中で必ず問題になってくるのは、高齢者世帯の資金問題です。それに対して「高齢者向け返済特例制度」をご用意させてもらっています。

大規模修繕の進め方 〜事例からみるチェックポイント

(1)現状の把握のために、居住者へアンケート。※アンケートには修繕箇所の指摘と、要望の2種類が出てくるはず。修繕箇所は即調査対象となり、要望は、今後を考える上での重要な手がかりとなります。
(2)現状調査を依頼する。
(3)修繕設計をする(設計者を選んだ後)。※足場の費用は高くつくのが一般的。足場を組んでしなければならない作業はなるべく一つにまとめて発注するが合理的な方法です。
(4)見積もりに参加する業者を選ぶ。
(5)業者を決めて、現場説明をする。
(6)見積もりを徴収する(設計者とともに)。※見積もり項目の明細書をつけるという条件を出すこと。一覧表にして項目ごとに比較対照することができます。
(7)業者を決定する。※大事なのは、業者の信用度。工事途中で投げ出されたら大変です。知り合いの金融機関を通じて業者の信用調査をかけること。
(8)理事会や総会に諮り、決議します。
(9)契約をします。
(10)工事に着工する。
(11)工事の設計監理と施工管理。※必ず設計図と違うことがでてきます。その時にどうするかというのが非常に大事で、業者任せにしないで設計監理者がおれば、施工管理者と打ち合わせをして解決することが大切です。
(12)竣工引き渡し。
(13)マンションの履歴を残す、保存する。※次回長期修繕計画は10年前後先になります。人も考え方も状況も変わりますが、今回修繕の記録と要望を履歴で残せば次回の参考になります。

 大規模修繕は、以上のような手順で進められます。1番目から13番目まで、その労力と時間は大変なものです。2〜3年くらいかかる場合もあります。理事会で大規模修繕に取り組むと、任期の都合で、途中で人が変わり、なかなか進まないこともあります。だから2年、3年続けられる修繕委員会を設けることをおすすめします。


ミニ講座2 電灯幹線の安全性向上と電気容量アップの改修事例
停電や火災を防ぐには電気配線の改修が必要です
講師 柳瀬 洋(やなのせよう)
(株)関西電力 法人営業部 公共営業グループ
 現在お住まいのマンションが、建築後25年以上経過し、電気配線の改修を行っていない。また、住戸内の電気配線がタコ足配線状態で、たびたび停電する。さらに個々の住戸の停電がマンション全体に波及する。これらの原因は、マンション建設当時と比べて、現在使用の電気機器の種類と容量が格段に増加したことによる電気配線の回線数及び容量の不足、及び短絡事故時の安全装置が無いことが原因です。このような悩みでお困りの皆様に、改修費用の一部(幹線部分の改修費用)を関西電力の「貸付配線制度」を利用して、初期投資額を抑えて改修した事例の紹介です。 ● 対象建築物 : 築30年、住戸数約170戸 ● 改修内容 : 住戸内の電気容量を約2倍12回線の分電盤(漏電ブレーカー付き) ● 貸付配線制度 : 関西電力がお客さまに代わって電気配線(幹線部分)を施工し、その配線をお貸し、さらに貸付配線のメンテナンスをおこないます。そして、これらに要する経費を原則として10年間の分割でお支払いいただく制度 但し、制度適用には条件があります。最寄の営業所にご相談ください。  ※(注)講座1〜6&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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平成17年度「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」 報告


新しく管理組合の理事等役員になられた方などを対象に、適正な維持管理を進めていくために必要となる基礎的な知識を専門家がわかりやすく説明。計3日間にわたり合計9講座を開催し、最終日には、会場の皆様にも参加していただくクイズ形式の講座を開催しました。また別途、個人相談会も実施しました。

10月30日
多くの管理組合さんが悩んでおられる管理費等滞納への対策や、マンション管理の特徴とコミュニティ形成の重要性などをテーマに開催しました。 管理費等滞納への対策 〜トラブルの回避と解決〜

●滞納に対する予防策
 まず第一に、徴収方法です。滞納でよくあるのが、失念していることです。管理規約などを読めば修繕積立金とかが発生することは分かるのに、例えば「決議されて来年の4月から発生します」という時に、気づかないために、その分だけ払われない。そういう単純ミスによる、支払い忘れを防ぐためには、自動振替という方法を規約に明記しておかれるのが良いと思います。
 次に、遅れた分の遅延損害金です。通常裁判の中で「お金を払いなさい」という判決がでたときには、規約上の定めがなかった場合は、法律で年5%と定まっています。この利率を高めに決めておく。延滞利息は高い、早く払ってしまった方が得だという気持ちを滞納者に持たせることによって回収をよくする効果があります。
 それから、滞納があった場合をシミュレーションして、マニュアルを先につくっておくこと。そしてそれを各戸の入居者、区分所有者に知らせておきましょう。滞納するとどういった不利益処分を受けるかということを周知させることにより、抑止的な効果を期待できます。
●トラブルが発生した場合の解決策
  まず大事なのは、滞納理由を把握することです。理由を確認に行った時に、支払い忘れているなという場合は、その場で「一日も早く、できれば今週中に払ってください」という口頭での請求をしておきましょう。それでも払わないという場合は、文書による督促になります。通常は、[1]普通郵便、[2]配達証明(又は配達記録)付郵便、[3]配達証明付きの内容証明郵便、といった段階を踏みます。
 こうした措置をとった結果、分割弁済などの合意を取り付けた場合、「合意書」「念書」という形で文書化しておく必要があります。
 逆に、それでも駄目な場合は、弁護士に依頼したり訴訟手続といった段階に進みます。払うべきものを払わずにいる人に対しては、毅然とした態度をとることが重要です。訴訟手続等をとることは、他の滞納者に対しても「ここの組合は厳しい。うちも滞納しているけど、来月まとめて払ってしまおう」といった心理的効果をもたらす意味があります。

マンション管理とコミュニティ
 マンションは、100人いれば100様。いろいろな考え方の人がいます。住戸の間取りも1LDKから4LDKなどあり、収入階層も違います。もちろん、考え方、価値観、教育歴、ライフスタイルも違う人たちが入居します。一戸建てとマンションの違いは、マンションは、共同生活、共同利用、共同所有、共同管理するということです。このことが理解されないままに分譲マンションを購入されて入居するということから、マンションのトラブルが始まるわけです。
 マンションの問題は、メンテナンス、マネージメント、コミュニティなど様々ありますが、いま新たにエンバイアラメントの問題も出てきております。我国の生活上の3大トラブルは、音の問題、ペットの問題、それから駐車場の問題です。これは世界中どこでも起きている問題で、日本だけの問題ではありません。一戸建て以上に、居住者同士が仲良くしないと、マンションを上手く管理することができません。このことをよく理解していただきたいと思います。
 そしてマンションのコミュニティの形成がよいところほどトラブルの数は少ないのです。マンションのコミュニティライフは、まず顔を知ることから始まります。例えば、ガードマンが巡回し、監視テレビなどの防犯設備をつけます。それだけではセキュリティの確保はできません。つまり居住者の顔を知ることです。自分のマンションの居住者か、それ以外の人かを識別できることが重要なのです。
 わがマンションも小さいネットワークがあります。ニューイヤーコンサートや、高齢者のお食事会、子育てサークルなども開催しています。例えば高齢者の方で天井の電灯の電球の取り替えができない。そこでお助けバンクがマンションの中にあれば多世代の交流ができるのです。マンションを共同で管理することによって、よいコミュニティを作れます。よいコミュニティがあれば、快適なマンションライフが送れます。よい管理ができるということにつながるのです。
ミニ講座1 管理会社との委託契約更新の方法
契約の更新時に、重要事項説明が必要となりました
講師 田坂 昭博(たさかあきひろ)
(社)高層住宅管理業協会関西支部事務局長


 国土交通省が発表した、マンション標準管理委託契約書の第21条関係には「契約の更新時に重要事項説明が必要となったことを踏まえ、更新の申し入れ時期を3ヵ月前までと明記すると共に、自動更新条項を削除」となっています。この申し入れは、書面でも口頭でもかまいません。そしてなぜ3ヵ月前なのかというと、主に管理組合さんが契約更新を検討する日数を考慮して約3ヶ月にしています。これを例えば2ヵ月にしてもかまいません。第21条の二項には「暫定契約」があります。これは申し入れをしたのにもかかわらず、管理組合と管理会社の話し合いがうまくまとまらない。でも契約の期限が近づいてくる場合に、同じ条件でとりあえず数ヶ月間契約を延長しましょうというものです。もう一つ、よく問題になるのは自動更新です。自動更新の条文があるから法律違反だとはいえません。自動更新は、双方意義がない、何も申し出がなければ勝手に更新しますよ、という事です。ところが適正化法であらかじめ重要事項を説明しなければ契約の更新ができません。だからこの件で相談を受けた場合は、管理会社とじっくり話し合ってください、と申し上げております。  ※(注)講座1〜6&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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平成17年度「第11回分譲マンション管理セミナー」報告

分譲マンション管理セミナー報告   管理会社に不満を抱き、両者の関係がぎくしゃくしている管理組合が少なくありません。そこでもっと管理会社と上手とつきあっていくための考え方を、社団法人高層住宅管理業協会の入村理事に講演していただきました。 『優しく』そして『易しく』管理会社と上手につきあっていくために

● 日本は世界に20年強遅れている
 国際的に見た時に、今年の4月1日に全面施行された個人情報保護をはじめ、ISO、国際標準規格、会計基準の固定資産の減損会計など、さまざまなものは、実はもう20年以上前から多くの国々では法律化されて、それを常識としての動きにされていました。このような形で国際的に見て、日本は立ち遅れ、そして一挙にやらざるを得ない状況になってきているわけです。その中で管理業界というのを見ると、さらに遅れています。管理会社を統率するというか制約する法律は、平成13年、マンション管理の適正化法という法律が出来上がってからです。新しくマンションをお買い求め頂いた時の管理会社は、マンションにお住まいの皆様方が選んだ管理会社ではありません。管理の仕様も皆様方が選んだという状態ではありません。従いまして、設立総会の時に管理組合皆様方が、自分たちが選んだという状態をまず作って頂く。このことがものすごく大切なのではないのかと思っています。
● 管理とは、目的ではなく手段
 管理とはいったい何でしょうか。皆さんはマンションを買われたことが目的ではないはずです。毎日活き活きとした生活、そして安心した一日一日を過ごすこと、言ってみれば楽しい人生を過ごしていくこと。そのために手段としてマンションを買われていると思います。同じように考えてきますと、なぜマンションの管理をするのか。管理をすることが目的ではありません。安心な一日一日、そしてかつ活き活きとした一日を重ねていくために、かつ不動産としての資産価値を維持していくためであり、あくまで手段です。そしてその目的を実現していくために手段としてどの管理会社を選ぶかということが浮かび上がってくるわけです。
● 5年後、10年後こうありたいという“想い”が大切
 そう考えていきますと、年齢も性別も家族構成も違う多くの人たちが集まって成り立っている管理組合様、そのような人たちが共有できる想い。言ってみれば5後、自分たちのマンションはこういう状態でありたいよね、あるいは10年後こうしたいよね、この想いを共有して頂くことが必要になってきます。想いの共有があってはじめて先ほど申し上げました手段としての管理という部分が浮かび上がってくるわけです。
 そして管理組合様がお創り頂きました想いを、今度は管理会社と共有する。このことで初めてきちんとした、管理組合様も納得するマンション管理という業務ができるのだろうと思っています。そのためには管理組合様と管理会社が、この資料では「AU」と書いてありますが、「あう」という状態、わかりあう、あるいは想いを共有しあう。この状態が大変必要であるし、それが入り口だと思うわけです。
● よい管理会社の選び方とは?
  では具体的によい管理会社をどうやって選ぶのか。管理という仕事は、ものを売っているわけではありません。従いまして、単純に「にんげん」に行き着くわけです。管理組合の皆様方も人間です。人間対人間ということで考えた時に、相手にしていい相手、お付き合いしていい相手なのかどうなのか。ごく普通の感覚で管理会社を見て頂ければいいのではないだろうかと思います。
 皆様方、現に管理を委託されている管理会社の何人と会われていますか。100人、200人と会われている方はおられますか。おそらくおられないと思います。日常的に会うのは、5人とか、せいぜい10人くらい。その5人、10人がいいか悪いかで、実はいい会社かどうか判断されているのではないでしょうか。そう考えていけば、根本は簡単でして、その会社がいい人の集まりであるかどうか、ここを見て頂くのが一番間違いのないことだろうと思います。ですからできるだけ多くの管理会社の人間に、皆様もお会い頂きたい。
 また、逆に管理会社としては、できるだけ上位にいる良い役職者が管理組合様を訪問し、理事の皆様とお話をさせて頂く。当然、管理組合様の先ほどの想いということと、管理組合も当然のことながら経営方針、想いというものがあります。それを逆に確認して頂く、このような相互の動きの中で、想いをわかりあう状態が作られるわけです。
● 当たり前のことを当たり前にしている会社
  人間対人間のように、ごく当たり前の感覚で判断すれば、よい管理会社とは、「嘘はつかない」「約束を守る」「助け合っている」会社ということになります。つまりは、当たり前のことを当たり前にしている会社。これが一番皆様にとっても安心できる管理会社だと思います。技術者の数であるとか、管理戸数であるとか、それはあくまでも土台です。そこから何が生まれて、それをどう活かしているのか。これがポイントです。
 一方で、管理組合様が管理会社に対して、一挙に状況を良くしていきたいということであれば、要望の声を大きくして頂くことです。ただし、その時に、ぜひ心に留めて頂きたいのは、何のために、ということをぜひ明確にして頂きたい。その実現のために、管理会社に対して、あるいは場合によって、コンサルタント会社に対して、知恵を借りる。このような動き方をしていけば、新しい形での管理組合様と管理会社の

 ※(注)講師の役職、部署等は講演時のものです。

安心・安全なマンションライフをめざして

大切な周辺の住民とのつながり

大西  ありがとうございます。いずれ具体化される国の施策の内容を待ちたいと思います。ところで岡田さん、周辺の自治会とのつながりという点で、何か工夫されている点があるんじゃないかと思うんですが。

岡田  正直いいまして、それほどできていないというのが現状です。ただ、先ほどスライドの中で、夏祭りの写真がございました。うちの敷地の中でやりますけれども、カラオケをやるわけですから、近所に非常に迷惑をかけています。ですから、毎年、ビラを配って、ご了解をいただくということをやっております。以前から近所の子どもとか、皆さん来られて、実費をいただき参加頂いているという現状でございます。

マンション履歴システムがめざすもの

大西  廣田さんへ、私から質問をさせて頂きたい。履歴システムのご紹介がこれからのポイントになってくると思うんですが、一方で、履歴を蓄積していくことは、情報がどんどん増え続けるということになり、こんどは、誰も判断できなくなる。この辺りは専門家の支援も必要じゃないかなという気がするんですけども。

廣田  この履歴システムの登録項目は、3種類の視点で書かれています。一つは、積み重ねていく情報。例えば、今年はここを修繕しました。1年間の情報だったら書けますよね。毎年登録していくことで、20年たったら20年分の歴史が残っていく。いつ管理費を改定したとか、規約を改正したとか、管理会社を変更したとか。1年間だったら誰も忘れていないから書けますよね。ところが10年前とかになると、記憶が曖昧になってしまいます。そういうのは積み重ねていく。そういう視点で選ばれています。
  二つ目は管理組合の管理状況をチェックするのに使う項目。例えば管理組合の運営などの情報は毎年上書きしていく。総会の出席率はどうですか、理事会はどれくらい開いていますか。保険はどんな保険に入っていますか。そういう情報は、まず最初の登録のときにチェックをして、そこで、うちはこの保険が足りないなとか、図面がどこにあるか分からないから探しておこうとか、次の行動目標にしてもらおうというものです。総会の出席率が低かったら、次はちょっと頑張って呼びかけると数字が良くなる。2年目の診断の時には、新しい情報でまた診断させてもらい、次の目標につなげてもらおうという視点で選ばれた項目です。
  もう一つは、例えば、新しくマンションを探している人が見たときに、このマンションはペットが禁止なのかとか、バルコニーに衛星放送のアンテナをつけてもいいのかとか、もともと何をして良くて、何をしていけないのかを、知っていて入ってもらわないと、管理組合が苦労しますよね。外から見た人にぜひ知っておいてもらいたい情報という視点。この3つがあります。

良い専門家の選び方、そして耐震改修と基礎との関係

大西  それではここで、参加者の方からたくさん質問をいただいております。一つは、診断とか耐震の改修をする際、良い専門家を見つける方法はないかということ。もう一つは、新しい免震とかを含めた耐震補強技術は上物をどうするかという話ですが、むしろ地盤が弱いとか、基礎との関係で耐震補強工事を考えないといけない点があるのでないか、というご質問を複数の方から頂いております。

樫原  良い専門家を選ぶと言っても、要は医者と同じで、相性だと思うんですね。依頼される人との信頼関係の方が大きいと思います。資格はみんな同じですから。我々は1級建築士をとったうえで、建築構造士の認証をしています。これが全国に3500名ぐらいおり、エイペックエンジニアというか、要はアジアでも通用する、外国で通用する資格です。それでもいろんな人がいますから、選ぶのは非常に難しい。ですから、日本建築構造技術者協会の方に問い合わせをして頂いて、いくつか当たってみることだと思います。
  それから基礎の話ですね。地盤の条件はやはり考慮しなければならないと思います。先ほど説明不足だったんですけども、オイルダンパーとか、粘弾性ダンパーなど柔らかいもので補強すると、壁とか筋交いなどの硬いものよりも、基礎に対する影響が最小限に抑えられます。ほとんどゼロに近いため今より基礎に負担が多くかかることはありません。基礎は基礎で、一部分ノッチとか切りかけを入れて変形しやすいようにするとか、いろんな新しい工法も出ています。ただし、まだ一般的な工法になっていないし、費用もかかりますので、マンションでというのは難しいかなと思います。

きちんと維持管理すれば、60年、70年はもつ

大西  残る質問は、私と廣田さんの方に出ています。一つは、建物の寿命についての質問です。耐用年数を延ばして長く住めるような再生型の修繕について廣田さんから少しコメントいただければと思います。

廣田  もう消費財のように取り壊して、住宅を新しく建てるという時代ではありません。マンションは、きちんと維持管理すれば持つと思います。ご質問では、60年、70年を望んでいるということですが、ヨーロッパでも、アメリカでも築100年という鉄筋コンクリートの集合住宅もあります。ただし、生活をしていくうえで、設備なんかは現状維持していくだけでは古くなってしまいます。それはやはり計画を立てて、少しずつ新しいものにしていく再生工事に取り組んで、それぞれの時代に耐えるように少しずつグレードアップさせていくことで、60年、70年はもたせられると思いますので、頑張って管理をしていって頂きたいと思います。

マンション耐震改修におけるアメとムチ

大西  時間がほぼ予定通り来てしまいましたので、いくつかまだ質問が残っていますが、これで最後にさせて頂きたいと思います。ご質問の中で、正常化の偏見(自分には不幸なことは起こらないだろうという楽観的な考え方)を克服するアイデアはないのか、というのを頂いております。このへんについて少しお答えをしながら、まとめに替えさせて頂きたいと思います。
  一つは、危機に対して、よく見えないリスクを、できるだけ見える形にすることが重要かと思います。住宅の性能表示制度も始まっていますし、中古住宅についても、構造的な性能をランク分けして表示する。そういうことも危機管理の上では情報提供として重要だと思います。
  それから、地震保険という話しが、樫原さんからありましたけれども、地震保険は、リスクマネジメントの中でも非常に重要な手法であり、危機の移転により財政的な価値に変えるわけですね。リスクを地震保険という形で金銭化する。リスクを目の前に示すという意味でも大事だなと思います。
  3点目としては、コミュニティということがありましたけれども、いろんな取り組みをできるだけ楽しみながらやるような工夫をしていくことだと思います。
  最後に、耐震改修が、今日の大きなポイントになっていたと思います。これからどういうことをめざしていったらいいのか。2つの方向があると思います。
  まず改修の公的な支援策を拡充させていく根拠となり得る規定として重要なのが憲法第25条であり、生存権とか社会権が規定されております。つまり、安全な建物に住むというのは、国民の権利として要求できるのではないかという考え方です。
  一方、規制強化という観点でみると、耐震改修促進法では、個人住宅とマンションは勝手にやりなさいとばかりに、対象から実質的に除外されている。しかし公的な関わりが強まっているマンションで、本当にこれでいいのか。車には車検制度があります。車検をうけなければ車を維持することができません。住宅にはそういうものがないわけです。住む以上は、一定の性能をもっていなければ住めないような形が、本来あるべきだと思います。売買時には、そういった検査制度もいるのではないか。ですからアメとムチの対策が、うまく揃っていけば、マンションの耐震改修をしていくうえで、非常に有効でないかと私は考えております。
  今日は、長時間、最後までおつきあい頂きまして、本当にありがとうございました。


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安心・安全なマンションライフをめざして

地震に強く、価値の高いマンションにするために
出席者
久保井 [コーディネーター]
大西 一嘉
神戸大学工学部 助教授

久保井 [パネリスト]
廣田 信子
(財)マンション管理センター
総合研究所 主席研究員
久保井 [パネリスト]
樫原 健一
(社)日本建築構造技術者協会
関西支部 技術委員長
久保井 [パネリスト]
岡田 勇
高取台サンハイツ管理組合法人
事務局長
高取台サンハイツにおける防災対策

大西  まず高取台サンハイツ管理組合法人事務局長の岡田勇様から話題提供をいただきまして、それをふまえてパネルディスカッションに移っていきたいと思います。

岡田  私どものマンションは神戸市の長田区にございます。震災で相当火事があった長田区です。1974年に竣工、8階建ての90戸です。1995年の阪神淡路大震災を経験し、その後の防災に関する取り組みをご紹介させていただきます。
  まず震災でライフラインが停止しました。電気は早く回復しましたが、水はひと月ぐらい。ガスに至ってはふた月ということで、大分苦労しました。建物は一部損壊です。廊下のひび割れ、花壇・コンクリートのひび割れなどはボランティアで補修をしております。一番問題であったのが、下水管の破損ですね。横引管が折れていることに気がつきませんでした。折れたために汚物や汚水が溜まってくる。ある日突然一番下の住戸のトイレで逆流する。悲惨ですよ。
  こういったことを通じまして、安全・安心に対する住民の意識が非常に高まりました。それを受けて、安全・安心に対する対策をいろいろ推進しております。
  いくつかありますが、まず隣接建物との防災協定です。隣接する建物はボーリング場や幼稚園がございます。ボーリング場には屋内消火栓があり、それを私どものマンションで火事があった時は使わせてもらう話をしました。幼稚園の方は、池田小学校の事件もあり、入口が一つしかないため、我々のマンションとの敷地の境界に避難経路となる避難の扉を造りました。
  次に住民の緊急連絡先の把握です。住民の情報を集めるのはなかなか難しいんですけれど、我々は緊急時以外には開封をしない、誰も見ないということで、99%の協力を得られております。今までに使ったのは1回のみです。
  それから耐震補強の実施です。マンションが傾斜地に建つため、ピロティの部分がございまして、震災で若干の被害を受けました。住民の不安もあり、神戸市の簡易耐震審査を受け、400万の費用をかけて、ピロティのところに耐震壁を造りました。それから防犯対策の推進です。廊下側の窓の面格子、これを外した泥棒がおりまして、防犯が必要だということで、チェーンゲートや防犯カメラの設置を進めております。
  震災から学んだことは、人と人とのつながりの大切さです。そこで使わなくなっていた管理人の部屋を改修をして、多目的に使える部屋にし、敬老会や文化祭をやっています。90戸ありますと、いろんな方がいらっしゃる。思いの違う方がいらっしゃるのも事実です。そういう方々を一緒になって、安全の取り組み、人の繋がりの取り組みをやっていこうという努力をしております。

マンション履歴システムがスタート

大西  ありがとうございます。実は、あれほどの被害を受けた神戸でも、なかなか耐震補強の工事が進んでいないのが実情です。岡田さんのところのように耐震補強する例はあまりありません。日頃からどのようなことを考えておくことが、防災安全の取り組みで有効なのかを含めて、マンション管理センターの廣田さんの方からコメントをいただきたいと思います。

廣田  マンションの現状を確認すると、マンションは今、全国で466万戸、1200万人。つまり日本国民の10人に1人がマンションで暮らしています。さらにここ数年は、毎年20万戸が新しく作られています。このペースだと、25年経つと、マンションのストックは今の倍になってしまいます。一方、買う人の方は、もうすぐ人口頭打ちでどんどん減っていきます。さらに築30年以上のマンションは今でも44万戸、10年後には140万戸、そういう状況です。新しく購入する人は減るのに、マンションストックはどんどん増えていくことになります。
  調査報告を見ますと、住んでいる人も変わってきています。世帯主の高齢化が進んで、約60%で世帯主が50歳代以上。しかも世帯人数も減り、1〜2人の世帯が42.8%。これは若い単身者や夫婦の方が増えたというよりは、お子さんが育って出られて、ご夫婦二人が残られた。あるいはお一人が亡くなられて高齢者の一人暮らしになった。そういう世帯が増えていることを表しています。そして住んでいる人も永住意識が非常に高まっています。特に高齢の方はこのままずっとこのマンションに住もうという方が大変多くなっています。
  ということは、これからのマンションは、ストックとしての価値をどのように維持していくのか。それから、居住者の高齢化にどうやって対応していくか。永住化に耐えるマンションコミュニティをどう育成していくか。こんなところが大きなテーマになるんじゃないかと思います。
  マンションがきちんと管理されているか、そのコミュニティがしっかりしているか、これが外からみてもわかるような仕組みはないか、ということで、実は私どものマンション管理センターで、今年、「マンション履歴システム」がスタートします。
  マンションの管理状況、例えばコミュニティはどれくらい充実しているかとか、管理組合運営が上手くいっているか、それから修繕積立金をきちんと積んでいるか、どんな修繕履歴を持っているかということを、インターネット上に登録してもらって、管理組合の運営に生かしてもらい、そして外から見たとき、ここは頑張っているマンションだということが分かり、新たにマンションを探そうという人にも役立ててもらおうというしくみです。さらにはそういうことがマンションの価値にちゃんと繋がっていってくれればと思っています。

地震保険の活用推進に大きな期待

大西  国交省の委員もされている樫原さんから、耐震改修について国がこれからどういう方向を目指そうとしているのかについて、コメントをいただければと思います。

樫原  国土交通省が「住宅・建築物の地震防災推進会議」を2月から6月にかけてやりまして、その概要がホームページにも載っています。まず「住宅・建築物の耐震化の促進のため実施すべき対策」として、「支援策の充実」があります。全国の市町村に相談窓口を設け、行政と建築士、我々のような団体も協力して、耐震診断・改修に係る情報提供をしようというものです。
  また、耐震改修促進法が変わります。現状では、戸建住宅やマンションは、何も規定がございません。見直し案は、病院、百貨店、学校なんかは、耐震診断改修計画を出してもらって実行してもらう。しなかったら何らかのペナルティが科せられる。戸建て住宅、マンションに関しては、密集市街地等の住宅について、指示(勧告)が出てくる可能性があります。
  私自身は、「地震保険の活用推進」がひとつのポイントになるかと思います。といいますのは、住宅ローン融資の減税はあまり実効性がない。そこで地震保険(の掛け金)をもう少し安くしようというのが今回の提言です。地震保険にマンションの皆さんが入っていただきますと、例えば耐震改修をすると割引される。そうなると、保険金を割り引くために改修しよう、という話がしやすくなるんじゃないかなと思います。


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平成17年度シンポジウム                「安心・安全なマンションライフをめざして」

安心・安全なマンションライフをめざして
 阪神・淡路大震災から、はや10年が経過し、最近では、新潟県中越大震災、スマトラ沖地震、福岡県西方沖地震などが発生しました。 今後、東南海地震、南海地震等の発生が予想されています。こうした地震に対して、あなたのマンションの防災対策は十分でしょうか。
 今回のシンポジウムでは、神戸大学の大西助教授による「マンションの地震防災と危機管理」と題した基調講演、耐震診断、耐震改修の具体的内容の事例報告、安心・安全なマンションライフをおくるために、管理組合として取り組むべき課題などについてパネルディ スカッションを行い、大変好評でした。その要約をご紹介します。 基調講演:基調講演マンションの地震防災と危機管理
安全とは何か?  マンションに関わるいろんなリスクの中の一つとして地震災害を取り上げますが、その前提として、マンションの安全とは何か、を考えないといけない。ヴィトルヴィウスはギリシャ・ローマ時代の紀元前の建築家で「建築十書」を書いた人です。この人が建物を作っていく時に大事なことが、「強」「用」「美」の3つあると書いております。安全を考える場合、私は「コスト」というか「費用」の問題を入れて、4つで考えればいいと思っています。 巨大地震と海溝型地震のメカニズム  最近起こった地震で一番大きいのはスマトラ沖の地震です。これがなぜ巨大地震と呼ばれるかというと、神戸でもかなり大きな被害を受けましたが、スマトラ沖の大地震のエネルギーは神戸の地震に対して4000倍とか5600倍ぐらいと言われています。
  地震がどうして起こるかというと、地球は十数枚のプレートと呼ばれる薄い岩盤で覆われています。プレートは年間数センチの速度で移動しており、太平洋プレートは1年で8センチずつ北北西に移動しています。十数枚のプレートが激しくぶつかっている所では、いろんな問題が起こっています。海側の方が陸側にぶちあたっているところでは、重い海側が沈み込みます。このとき起こる摩擦力が、耐えきれなくなって、ポンと跳ね上がる。これが海の底で起こる海溝型の地震です。 震度とマグニチュード  地震とは何か、と言われた時に、実は一般の方の認識と、専門家の認識がちょっと違います。一般の方に聞くと、「グラグラ揺れることだ」と答えられる。ところが、専門家に聞くと、「地下で断層がずれる」という答えが返ってきます。それぞれ別に間違っているわけではありません。「地下で断層がずれる」という現象に着目して地震の大きさを表したのが、マグニチュードであり、「地面が揺れる」という程度を表したものが震度です。
 注意していただきたいのは、マグニチュードの値は、一つ違うとエネルギーは32倍違います。だからマグニチュード8と7とでは、エネルギー量で32倍違います。値が2つ違うと、2乗になりますから約1000倍となります。 地震の発生確率  地震発生確率が最近発表されるようになりました。この予測値をどう理解するかも大事です。地震には、大きく分けて直下型の地震と、海溝型の地震の2通りがあります。直下型地震が1000年くらいの単位で起こり、海溝型地震が百数十年ぐらいの単位で起こります。次の地震までの期間が長い直下型地震は誤差の幅が非常に大きくて、50〜300年くらいずれる事がざらにあるため、発生確率では非常に小さな値しか出ない。だから、直下型地震の場合、3%くらいでも十分高い確率として受け止めるべきです。 阪神大震災後に変わったこと  阪神大震災の後で、いろいろなことが変わりました。
  一つは、フロー中心の考え方から、ストック重視の考え方に政策も含めて大きく転換してきている。耐震性の問題にしても、以前から言われていましたけど、この震災後、耐震改修の促進法ができ、今ある建物の耐震性を十分なレベルに上げていくことが努力義務として課されるようになっています。
  二番目に、役所にマンションの担当ができました。これは意外に思われるかも知れませんが、震災前までは、法律の中にマンションなんて言葉がどこにもなかった。最近は法律もでき、役所がマンションを相手にしてくれるようになったということです。
  三番目としては、地震防災対策が強化されました。地震の発生確率という形で、地震についての情報提供が行われるようになりました。ここで重要なのは、情報を提供されても、受け止める側がその情報を理解して、適切な対応をとらないと、提供している意味がないということです。 書いておぼえる教訓集  書いておぼえる教訓集を用意しました。この3つを覚えて帰ってくださったら、僕の話の半分は理解してもらえたと思います。
  まず一つ。「地震は防げないけど、○○は防げる」。この○○には「震災」が入ります。地震による被害全般を震災といいます。地震と震災とは違います。つまり、地震は地球上で起こる自然現象の一つだから誰も止めることができません。だけども、その地震を前提にして、例えば、建物を丈夫にしていく、あるいは備蓄を含めていろんな対策をたてることによって、いろいろ起こりうる被害を軽減することは可能なんです。
  二番目に、「壊れてからどうするか悩むより、○○○○ように、どうするかが大事」。これは「壊れない」です。壊れるかどうか分からない時にどうしようかと悩んでも仕方がないから、専門家に頼んで、一定の強さが備わっているかどうかを確認してもらう。その上で、壊れる可能性が高ければ、きちんと対応して壊れないようにしておく。そうすれば悩みは消えます。
  三番目に、安全を技術論にしないで、日頃からの○○力を鍛える」。ここは「想像」ですね。他のいろんな所で起こっている地震災害とかを注意深く見ていれば、「自分のところだと、こんなことが起こりそうだ」ということがだいたいわかります。ちょっと頭を働かして、いろんな場面や状況を想像することが防災の基本です。 事例報告:マンションの耐震診断と耐震改修について〜概要と事例紹介〜
耐震診断とは何か?   建築基準法に基づいて、最低限の耐震性能を持つかどうかを、「現地調査」と「構造計算」によって検討することが耐震診断です。ただ単に計算するだけでは駄目です。建物は個々に状況が違いますから、現地調査をし、住戸の中を見せていただいて、それから計算するという非常に手間がかかるものなんですね。
  手法としては、建物の構造耐力、変形能力、経年劣化を含めたIs値(保有値)という指標がありまして、それを計算します。これは建築防災協会の基準で決まっています。強度×変形能力、いろんな係数をかけ算していってIs値が求められ、Iso値(必要値)が 0.6以上あるかどうかで判定します。今までずいぶんと耐震診断をやりましたが、昭和56年以前の建物はだいたい0.6以上ありません。ですから耐震改修の設計施工へと進むことになります。 耐震改修について  耐震改修の基本的な考え方は、縦軸を強度、横軸を靭性(変形能力)とします。壁を増やせば耐力があがります。変形能力を増やすには、柱にフープを入れたり、周りに鉄板やカーボン繊維を巻く。結果、ボーダーラインを超えると安全になるという計算です。ですから壁や筋交いを増やすだけが補強ではありません。
  一般的な耐震改修工法ですが、建築防災協会が改修指針をだしています。耐力を増やす方法として、壁、鋼板壁、ブレースなどを増設する。靭性向上として、鋼板やカーボン繊維シートを巻く。それから荷重を低減する方法とか、いろいろあります。
  最近は、新しい手法として、免震や制振が出てきました。例えば屋上にTMDという水槽みたいなものを置き、地震がきたら逆方向に自分で動いて揺れを止める。あるいは複数棟あると、ここを制振装置、オイルダンパーなどで繋いでお互いにエネルギー吸収する。同じことを足下でやると免震工法になる。こういう大掛かりな方法もあれば、小さな制震ダンパーを入れてエネルギー吸収力を増やす。阪神大震災以降、非常に技術が進歩しました。
  一般的に耐震には、言葉として、耐震・免震・制震があります。耐震は力で抵抗する。力には力で抵抗する。免震は、下が揺れてもコロなどで滑るようにして、力を逃がす。制震は、一応は揺れてもエネルギーを吸収する。こういう3つの工法があり、これらをうまく使えば、マンションは大丈夫だと考えられています。
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平成16年度「大規模修繕工事見学会」報告

大規模修繕工事見学会
3月26日、大阪市マンション管理支援機構としては第1回目の大規模修繕工事見学会を、シティハイツ住ノ江管理組合のご協力により開催しました。シティハイツ住ノ江は、駅から徒歩約5分の便利な場所に建ち、SRC造14階建て2棟、RC造4階建て1棟の3棟からなる総戸数351戸の大規模マンションです。築22年を経過し、今回が2回目の大規模修繕工事です。

〜管理組合、大規模改修委員会の活動記録の紹介〜

(写真) 1回目の大規模修繕は、管理会社の設計施工方式で実施しましたが、数年前から入居者の間で、歩こう会やクラシックなど趣味を同じくする者が集まったコミュニケーション組織ができ、大規模修繕についても、自分達の住まいをもっと良くしたい、納得のいく大規模修繕を行いたいという声が自然にわきおこり大規模改修委員会が組織されました。大規模改修委員会は、管理組合での歴代の施設担当委員や、建設関係の仕事に携わる人などを含めて構成されました。大規模改修委員会は、パートナー(専門家)である建物調査会社を選定し、調査・設計業務を委託しました。施工業者については、マンションの掲示板・ホームページ・マンション専門紙により公募し、見積りの比較検討、業者へのヒアリングを行い決定しました。

〜管理組合、大規模改修委員会からの体験談〜

(写真) 続いて、改修委員会のメンバーから体験談として、大規模修繕工事を成功させるポイントをお聞きしました。改修委員会のメンバーの選定について、リーダーは自分の考えを押し付けるような人ではなく、メンバー間の意見の食い違いをうまくまとめる能力が必要であること、メンバーに建設関係の区分所有者が入ると利害関係が発生する場合があることなど紹介されました。また、管理組合の立場にたったパートナー(専門家)を選定することが重要で、予算上の問題もあるが業務委託費用の安さだけを選定基準にすべきではないというお話などもあり、これから大規模修繕工事に取り組む管理組合にとって、たいへん参考になるポイントがいくつも紹介されました。(写真)

〜施工業者による工事概要の説明と現場見学〜

(写真) 工事概要については、施工会社から、仮設計画から各工事工程での作業内容や検査体制まで分かりやすく説明していただきました。
現場見学は、2班に分かれ施工会社の引率により、施工状況を見ながら具体的な説明を受けました。

 参加者からの質疑応答では、施工業者選定のポイントや入居者への広報活動などについてたくさんの質疑がありました。当日は43名の参加者がありましたが、「管理組合の生の声が聞けて、とても参考になった。」と大変好評でした。
 今回、会場をご提供いただき、とても貴重な体験談をお話いただいたシティハイツ住ノ江管理組合の皆様に、心よりお礼申し上げます。

第10回分譲マンション管理セミナー&相談会報告

マンションの流通と管理
●最近のマンション動向
 近畿圏のマンションの価格動向(平成11年〜平成16年)をみますと、新築マンションは、平均価格・平均単価が下落していますが、平均専有面積は広くなってきており、近時のマンションブームで、契約率は持ち直してきています。一方、中古マンションは、平均価格・平均単価は下落していますが、成約率はあがってきています。
 また、最近目立つのが、大阪市内にタワーマンションが出てきたことです。これはなぜかと言いますと、大阪市内に人口を呼び戻そうという事で、大阪市が容積率を緩和した。それに対してマンションディベロッパーの目論見と需要が合致したためです。タワーマンションには、利便性、眺望・景観、様々な共用施設の充実の3つがあり、この3つが、爆発的に需要を呼んでいます。
 さらにマンションは30年以上前から供給されてますが、どんどん進化しています。専有部分については、専有面積が確実に拡大し、室内の設備が非常に進化しています。それから共用部分についても変貌してきており、カラオケルームやゴルフレッスンルームなど、こんなものがあるのかと思うぐらいに揃ってきています。
●中古マンションの防衛策
 そこで、中古マンションの防衛策として、まず「管理の前に危機管理(意識)」をもつことです。ここまで新築マンションがどんどん変貌して進化して供給されている事がわかれば、ぼやぼやしておれません。
 新築マンションと中古マンションの違いは、新築はモデルルームしか眼中にありませんが、中古は共有スペースがさらけだされています。購入の決め手になるのは、共用部分の状態なんですね。
 それから、管理はこれで決まる3大ファクターとして、関心度、コミュニケーション、お金の3つがあります。3つのファクターですが順番があります。恋愛と一緒で、まず関心から始まり、コミュニケーションにいく。それからお金となります。だから管理も同じで、皆がマンションに関心を示せば、コミュニケーションができ、理事会や総会でも、お金のかけかたを真剣に考えていくようになると思います。
 そして「マンション履歴システムの構築」ですが、昨年1月にマンションの標準管理規約が改正され、管理組合の業務に修繕等の履歴情報の整理及び管理が追加されました。具体的なマンション管理に国も乗り出したわけです。運営担当を委託された財団法人マンション管理センターは、データベースに登録された管理情報から、良好な管理をしているところに「優良管理マンション」としてインターネットで広く周知していきます。自分たちが、いい管理をしていることを認めてもらいたいと思えば、私は積極的にこの仕組みに乗って、勝ち組マンションのパスポートをもらうのが得策なような気がします。そして優良管理マンションになることが、究極の資産価値の維持になると思います。
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平成16年度「第10回分譲マンション管理セミナー&相談会」報告

第10回分譲マンション管理セミナー&相談会
快適なマンションライフのためには円滑な管理組合運営を行う必要があります。今回は、セミナーと個別相談会が開催されました。
セミナーの様子 セミナーでは、(社)日本建築家協会・メンテナンス部会の星川晃二郎元部会長に、マンションを良好に維持管理するための大規模修繕の進め方のポイントと、改修によるグレードアップの事例紹介を、(社)大阪府不動産鑑定士協会の八杉茂樹副会長に、マンションの資産価値を高める管理の重要性について、分かりやすく解説していただきました。

大規模修繕のポイントとグレードアップ
●大規模修繕のポイント (1)大規模修繕委員会の発足
 理事会は1、2年でメンバーが替わります。大規模修繕は継続性が必要です。そのために修繕委員会を発足させます。管理規約になければ、管理規約の中に委員会の項目を作って発足させます。いつ発足させるかということですが、遅くとも工事の3年ぐらい前で、早ければ早いほど良いです。委員会のメンバー構成は、理事の経験者、内部の専門家や技術者などです。

(2)パートナーの選定
 設計監理方式の場合、費用の多寡よりも信頼できるところが良いです。設計監理費は、工事費と比べれば絶対額としては少なく、決める際には信頼できる、ここぞと思うところに決めて頂きたいと思います。それから責任施工方式の場合、チェック機能は必要です。監修方式は、施工会社や管理会社が責任施工で工事を行うが、設計事務所が、管理組合の立場に立って重点的にチェックしていく方式です。小規模マンションでは有力な方法です。

(3)調査診断時点でのポイント
 調査診断で大事なのは、経年劣化か工事の不備かということです。工事の不備は、瑕疵の問題に該当します。原因究明と瑕疵対策ということで、10年目までにめどをつけます。また、調査診断した時点で、大規模修繕の内容と時期を決めなければなりません。足場をかけて一斉に良い性能と状態に戻すのが大規模修繕です。だから、まとめていつ行うのかを決めます。さらに改良・改善提案すべきところを診断の中に織り込みます。光ケーブルやセキュリティをどうするか。そのあたりがポイントになるかと思います。

(4)修繕設計時点でのポイント
 調査診断が終わりますと、修繕の設計をしなければなりません。材料・工法・性能の保証をどうするか、というのが非常に大事です。何年を目標とするのか。例えば屋上防水や外壁塗装の保証を何年にするか、この対応年数が決まれば、それにあった材料や工法を選ぶことになります。また、メリハリのきいた修繕やカラースキームで、グレードアップやイメージアップを図ります。カラースキームとは、外壁の色を変えてイメージを変えることです。それから工事予算との関係ですね。優先順位をつけてやらなくてはいけません。足場がなければできない工事が第一優先です。外まわり、建物周りは、足場が無くてもいつでもできるので後回しになります。

(5)施工会社選定時点のポイント
 施工会社選定時のポイントとして、最近は、透明性、公正さが言われます。ですからマンションの中に掲示したり、業界紙に出して公募します。募集要項をみながら見積もり業者を決めていきます。施工会社の決定は、施工会社の改修実績、技術力、ソフト力、保証能力、現場の所長の人間性などで選びます。

(6)合意形成のポイント
 合意形成のポイントで一番大事なのは、情報をたくさん流すことです。区分所有者へのPRすなわち広報やアンケートですね。あとは、団地型になりますと、棟委員会や階段委員会があります。いろいろ連絡をとりながらできるだけ理解を深めてもらいます。あと、居住者説明会をやります。大規模修繕の時には、調査診断が終わった時点や、修繕設計が終わった時点などでやります。資金計画のポイントでは、不足時の対応として、一時金にするのか、借り入れにするのか、返済をどうするのか、きっちり対応を考えておかないといけません。また、予備費がないと、基本的には満足のいく工事はできません。例えば外壁等の改修工事だと、実際に足場をかけてやってみないとわからないことや、確定できないことが多々あります。それに対応するために10%ぐらいはみておくと良いでしょう。

(7)工事施工時点でのポイント
 工事施工時点でのポイントは、管理組合と居住者と施工者と監理者、この4社が力を合わせてやること。密な連絡、打ち合わせ、工事報告会をしながらやることが一番大事です。それから施工確認・検査も、当然、施工者、工事監理者、居住者、管理組合の4段階で行います。追加・変更・工事費の増減に対しては、実費清算方式で行います。例えば、外壁タイルの改修は外から見ただけでは、剥がれそうかどうか分かりませんし、補修枚数も決められません。最初予想もつかなかったことも出てきます。臨機応変の処置も必要になってきます。また、早めの変更協議が大事です。全部終わった後から、これを承認してくださいといっても、管理組合も大変です。工事報告会や協議会で、早めに出して対応していきます。

(8)竣工、アフターケア
 検査も済んで、竣工ということになりますと、竣工図書を引き渡します。竣工図書は、工事の記録、工事の保証書、アフターケア体制等です。アフターケアは、請負者が、どういうことを今後してくれるのか、定期点検内容や問題が起きた時の対応もこの中に書いて入れていく。非常に大事なものですから、きっちり保管をしておきます。

●グレードアップの対象部位と項目例  グレードアップの対象部位としては、屋根の防水、外壁塗装、床防水、鉄部の塗装、建具、金物。あと、玄関ホールだとか、共用室の内装だとか、床の貼り替えなどもこの中に入ります。項目例として、耐震性能、バリアフリー、エコロジー、省エネルギー、防犯性、機能性・利便性、耐久性・維持管理性、快適性・美装性などがあげられます。
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第9回マンション管理セミナー&管理組合交流会報告

管理組合交流会は、セミナーに参加された方のうち36管理組合の方が参加され、管理組合活動での悩みや取り組み事例などについて、意見交換がなされました。  今回の管理組合交流会は、自主管理をしている管理組合の方を集めたグループのほか、課題毎([1]管理組合運営、[2]修繕関係、[3]住まい方)のグループ等、6名ずつ6グループに分かれ、事務局スタッフが進行役となりました。参加者の自己紹介につづき、各管理組合の日常活動での悩みを中心に意見交換が行われました。
意見交換された内容の一部をご紹介いたします。

意見交換の概要

  • 再開発のマンションであるが、元地権者と後からの入居者で意見がかみ合わないことがある。
  • 新潟地震もあったので、災害時の対策として、保存食料を管理組合で準備したい。
  • 現在、規約改正を進めており、役員で標準管理規約との読み合わせを行っている。
  • 今年、管理会社を変えたが、管理の質が悪くなったような気がする。
  • 町会と管理組合の役員の交流は大切である。
  • 役員には若い人たちを参加させないと、管理組合が活性化しない。
  • 管理員は居住者をよく知っているので、役員に適した人の情報を管理員に聞くのもいいかも。
  • 駐車場料金は周辺の駐車場料金を調査して、適正価格を設定すべきである。
  • 修繕に一番大切なことは、広報活動と契約書をよく見ることである。
  • いくら正しいことをやっても、一人でやれば周りから反発を招くこともある。
  • 補修を行う際に、管理会社の技術部から担当者を呼んで補修方法などについて説明してもらっている。
  • 自主管理をしているが、役員の高齢化で、今後の組合運営が不安である。

交流会の最後に、グループ毎でどのような話がされて、どのように感じたか発表してもらいました。発表された意見の一部をご紹介いたします。

参加者による発表

  • 管理員がしっかりしていれば、マンションは良くなる。
  • マンションの資産価値は管理が重要であるため、住民のコミュニケーションがマンションを良くする。
  • 他のマンションの管理組合でも色々な悩みがあることがわかり安心した。
  • 他の参加者と話ができたことが、一番勉強になった。
  • 色々な問題がおこっても、乗り越えられるという勇気をもらえた。
  • 一番参加して良かったのは、自分だけではなく皆さん悩んでいるということが分かった。解決するためには、皆で頑張らないといけないんだなと感じた。

また、交流会には法律や建築技術問題でアドバイスが必要な場合は、別途待機しているアドバイザー(弁護士、建築士)によるアドバイスがなされました。交流会の最後にアドバイザーによるコメントが行われました。
アドバイザー(弁護士)によるコメント
 マンションの問題の場合、法律的な割り切った結論はあると思いますが、今後も同じマンションで生活していくことを考えて、もっと温かみのある解決策を考えることが必要であると思います。
アドバイザー(建築士)によるコメント
 計画修繕において、建物調査では発見できない箇所があるため、管理組合によるアンケートが重要です。計画修繕では色々な補修項目がありますが、防水・外壁・廊下・バルコニーの四つの要素が重要で、予算に余裕がなければ優先順位をつけてやればよいと思います。

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平成16年度「第9回マンション管理セミナー&管理組合   交流会」報告

第9回マンション管理セミナー&管理組合交流会報告
マンション管理組合の円滑な運営には、他の管理組合との情報交換がとても大切です。今回は、セミナーに続いて、支援機構として3回目の管理組合交流会が開催されました。
セミナーの様子 セミナーでは、財団法人マンション管理センターに寄せられた相談事例の中から、とくに多い相談内容の上位5項目を中心に、財団法人マンション管理センター大阪支部・宇都宮忠支部長に講演していただきました。


マンションの相談事例から
 管理組合の日常運営について
 マンション管理センターでは、皆様方からいろんな質問や相談を受けていますが、今日は、その中から具体的なお話をさせていただき、マンション管理に役立てていただきたいと思っています。
 一番多い相談は、管理組合の日常運営のことで、役員の資格あるいは選任、解任、任期の相談です。役員の資格については、管理規約に「誰が役員になれるのか」ということが書かれています。一般的には、現にそのマンションに居住する区分所有者、となっています。ところが、いつの間にか賃借人が役員になっているケースがあります。賃借人は、基本的に区分所有権がありませんから役員になる資格がない。けれど、何年かたってきますと、「公平にということで、賃借人に役員になってもらってもいいじゃないか」という考え方も出てきます。賃借人が役員になるには規約の改正が必要です。
 ただ私どもがよく申し上げるのは、賃借人を仮に役員にしようということであれば、役割分担の中で、ある程度の制限をしていただいた方がいいだろう。一般的には3役ぐらい、理事長、副理事長、会計担当の理事は、やはり賃借人からははずしていただきたい、と申し上げています。
 区分所有法・管理規約について
 区分所有法・管理規約について相談が多いのは、所有区分です。どこまでが共用部分でどこからが専有部分なんですか、という相談が結構たくさんあります。確かにこれは悩ましいところがありまして、法律上でも、ここからここまでということはうたってない。法律でうたっているのは、専有部分以外は全部共用部分、あるいは共有地という言い方をしているんですね。そうすると専有部分以外というのはどこまでか、というのが法律上はどこにも書いていない。これは結局規約で決めるしかない、ということになります。難しいのは配管とか配線です。この配管や配線については、ある管理組合は絵にしています。絵にすることによって、一般の組合員はよくわかる、ということがあると思います。
 総会について
 総会について相談があるのは、委任状とか議決権行使書ですね。おそらく規約には、議決権行使については、規約で代理人による議決権行使と、書面による議決権行使とがある、と書いてるのではないかと思います。そうすると代理人による議決権行使が、いわゆる委任状であり、書面による議決権行使というのは少し違う。書面による議決権行使の、この書面を委任状と勘違いされている方が結構いらっしゃるので、違うということをご理解いただけたらと思います。
 それから、総会運営ですが、総会の議事録作成は、法律上きちっと決められてます。この総会の議事録作成を、管理会社に委託されている場合は、管理会社が総会の議事録(案)を作ってこられる。その場合、管理会社に都合の悪いことは書いてこないことがあるため、原案を作るのは管理会社でもいいですが、少なくとも役員はそれをチェックして修正をしていただく必要があると思います。
 管理組合と管理会社について
 それから最近多いのは、管理会社についての相談が多いです。管理会社を「けしからんから変えたい」とか、「変えるにはどうするか」という相談も結構あります。でも管理会社を変える、ということは大変なことなんです。そう簡単にできるものではないんですね。「やってくれない」といわれるが、それが、ちゃんと契約書や仕様書に書いてあるのかどうかです。書いてあるのに、やっていなければ、「やれ」と言えますが、「管理会社にお任せしているので、何でも全部やってくれるはず」というわけではありません。少なくとも管理会社も営利会社ですから、契約書、それから仕様書に書いていないことは基本的にはしない、と考えてもらわないといけません。ですから、一番大事なのは、仕様書の中に書いてあることはやりますが、それ以外はしませんよ、というのが基本ですから、管理会社ときちんと確認しておくことが大切です。
 管理費の滞納について
 管理費の滞納はご承知のとおり、最近多いです。滞納されている方もどんどん出てくる。場合によっては破産をしてしまうこともある。それともう一つは、時効の問題があります。管理費の滞納も2004年4月の最高裁の判例で、5年になってしまいました。今までは10年という説もあったんですが、5年になりましたので、できるだけ早め早めに滞納督促をしていかないと時効になってしまいます。ですから、時効にならないうちに何とか処置をしていく。そこで、できるだけ時効の中断を図って時効を伸ばすことを考える。一番簡単なのは、相手に滞納しているということを認めさせる、ということですね。「あなたこれだけ溜まってますね。すみませんが、認めたんだったら一筆ください」ということで一筆取っておく。一筆取れば、取った日から5年となりますから、時効が延びるんですね。ですから一番簡単なのはそういう方法です。
 課題解決のために
 管理組合の運営には、情報の収集が非常に大事になってきます。セミナーに参加したり、情報誌や書籍から情報を取ってください。それから困った時に相談できる専門家の窓口を調べておくことも大事かと思います。
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マンションらいふあっぷ基礎講座

【第3場面】議案(第1号〜第3号)事業報告、決算報告、監査報告
 (未収金の扱い、財産目録の作成、ペイオフ対策)
ポイント5
収支決算報告における、管理費等の未収金の扱いについて
解説5 花田
  収支計算書の収入の部にあげる金額については、入金がされた段階であげるのではなくて、収入すべき金額を計上します。これは発生主義といいます。何故そう経理するかというと、発生主義で経理をしないと、予算との対比ができにくいということと、この管理組合でもありましたように、3カ月の滞納者ですね、これが決算書に現れてこないわけです。未収金を管理しておかないと、滞納者が出て、それを払わないとなると、他の区分所有者が損をすることになります。管理においても、修繕積立においても、そういうことがないためにも、発生主義によって未収金計上をすることが求められています。 (写真)
ポイント6
財産目録の作成とペイオフ対策について
解説6 花田
 財産目録は、管理組合法人では作成が義務づけられていますが、一般の管理組合では義務づけられてはおりません。ただ今後、管理組合の会計基準を作ることも視野にはいっております。そうなると、一般の管理組合でも作成が義務づけられることになりますので、今の段階でも作っていかれた方がベターかと思われます。
 ペイオフ対策につきましては、2005年4月より、利息の付かない決済性の預金以外は、すべて解禁となります。金融機関が管理組合法人を権利能力なき社団とみなしていれば、一金融機関について1000万まで保護されるので、多くの銀行に分散するとか、確実なところに預金するとか、他は金融機関への預金だけでなくて、満期になれば解約金が戻ってくる積立マンション保険等にするのもひとつの手ではないかと思われます。 【第4場面】議案(第4号〜第6号)大規模修繕工事の実施について
 (普通決議・特別決議、管理組合の法人化)
ポイント7
大規模修繕工事の採決は、普通決議か特別決議かについて
解説7 伊藤
 改正後の区分所有法では、形状または効用の著しい変更を伴う場合に限り特別決議が必要で、多額の費用を要する場合でも、問題なく、過半数決議で議決可能、普通決議で議決可能、というふうに改正されました。しかし、大多数の管理規約はそれに伴って変更されたということは、多分ないと思います。ですから以前のように特別決議で4分の3が必要という規約になっています。ただ、この部分については、過渡期的な部分もありますし、一時的な規約と法律との間の齟齬であると考えて、解釈上、過半数決議、普通決議でいいと考えるのが一般的だと思います。ですから現状であれば、法改正に伴って普通決議でOKというふうに考えていただいたらいいと思います。ただし、そのままの状態でおいていると齟齬がずっと続きますので、規約を改正していただくのが筋だと思います。 (写真)
ポイント8
管理組合の不動産の取得と法人化について
解説8 花田
 不動産の購入を決議した場合、以前は、区分所有者全員の方か、理事長さんの名前で登記をしていましたが、それでは、異動があるたびに不動産の名義を変更しなければならないし、経費が諸々かかってきます。そこで区分所有法が昭和58年に改正されまして、管理組合の法人化という制度が設けられました。
 法人を作るには、集会において、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で、法人になること、そして「○○管理組合法人」、この例でいいますと、「ライフあっぷコーポ管理組合法人」というような形で法人の名前を決めていただいて、理事さん、監事さんを決めて法務局において登記をすることになります。法務局において、登記をしますと、当然、その法人名義で不動産を取得した場合は、登記ができることになります。 【第5場面】議案(第7号)新役員選任と閉会
 (終了後の議事録作成) (写真)
ポイント9
総会終了後の議事録の作成について
解説9 伊藤
 最後の作業としまして、議事録の作成があり、きちんと作らないといけません。これは区分所有法42条に、「議長が作成しなければならない」という規定があります。実はこれ、作らなければ罰則があります。何を書くかということですが、逐一、全部会話を記録する必要はありません。議事の経過の要領ですね。開会、議題、議案、討議の内容、それから評決の方法、閉会。だいたいの中身がわかるような形で要約したものと、その結果を記載します。もちろん、組合員数、議決権数、議案ごとの賛成組合員数、議決権数をきちんと記録に残しておきます。
 作成義務者は議長さんになっていますが、書記の方が作って、議長さんが最終的に目を通して、署名押印するという形になります。さらに冒頭で決められた議事録の署名者がいますので、その方も確認した上で署名押印していただくことになります。
 議事録については、実際に出席されなかった方についても閲覧をしていただく必要がありますので、できるだけ速やかに、1カ月以内には作っていただく必要があろうかと思います。
 あと、もう一つ。ここの管理規約では決まっていませんが、今回法律改正があり、今のIT化ということで、フロッピーディスクやCO-ROMで議事録を作ることもできます。ただ、これは管理規約に決めておかないと駄目なので、このライフあっぷコーポの場合は規約の変更が必要になっています。
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マンションらいふあっぷ基礎講座

7月11日
マンション維持管理における資金サポートや、失敗しないための大規模修繕などをテーマに開催しました。 講座1 マンションの適正な維持管理に向けて
 今日お集まりいただいている皆様方が一番ご苦労されていることだと思いますが、マンションは、住んだ後の維持管理が一番の問題になってきます。そこで公庫では、マンションの適正な維持管理に向けて、次のような取り組みを行っています。
●公庫マンション登録情報制度
 マンションの管理規約や長期修繕計画など共用部分の維持管理内容が、公庫の定めている維持管理要件に適合していることを、公庫が認定した機関に登録しておく制度です。登録することによって、登録機関のホームページで、維持管理が良好なマンションであることをアピールしていただくことができます。その他にもいくつかメリットがあります。
●公庫マンション維持管理ガイドブック
 マンションの維持・管理体制をチェック項目に従って確認することができます。また、保守・点検の履歴の記録、修繕の記録にご活用いただけます。こうした維持管理のためのチェックシートが世の中にあまりないものですから、私どもから提案させていただいております。日頃の管理組合活動のお役にたてれば幸いです。
●マンションすまい・る債
 皆様方が集める修繕積立金を、どういう形で確保・運用していこうかということも、非常に心配な点だと思いますが、これに対して公庫の方では「マンションすまい・る債」をご用意しています。これは公庫が発行する1口50万円の債権(利付10年債)を管理組合さんが修繕積立金により、毎年1回ずつ継続的(最高10回)購入していただき、利息を付けて公庫が買い戻す制度です。
一番大きな特徴としては、元本を確実に保証させていただく点です。その他にも国債並の利回り(年平均利率1.537%)や、修繕計画に応じて手数料なしで中途換金も可能など、さまざまなメリットがあります。将来、必ず生じる大規模修繕に備えてご利用されることをおすすめ致します。
●マンション共用部分リフォーム融資
 工事に当たって、万が一、資金が不足するような場合、公庫では「マンション共用部分リフォーム融資」をご用意し、資金的な面でサポートさせていただいております。最長10年間の固定金利ローンで、工事費の8割まで融資可能です。 講座2 こうすれば防げる「長期修繕計画・大規模修繕」の失敗
  住宅金融公庫が作った「大規模修繕マニュアル」にそって、失敗をしないためのポイントをご紹介したいと思います。
  1. 大規模修繕の体制づくりとパートナー選び…成功しておられるところは、ほとんど修繕委員会を作られています。パートナー選びの条件としては、大規模修繕に関する実績があるかどうか、分かりやすく説明できるか、などがポイントです。
  2. 建物を見る、知る…建物の傷み具合などを把握するため、専門家等に診断してもらいます。また総会で理事長さんが変わったとき、一緒にマンションを見て回ることも大切です。
  3. みんなに知らせる…建物の状況を皆さんに知っていただき、共通の理解をすることが大切です。また、広報で周知した内容は整理・保管しておくこと。
  4. どのような修繕をするか…パートナーに原案を作成してもらい、十分説明を受けて、修繕委員会で検討します。また、追加工事は付き物。当初から予備費を計上しておいた方がいいでしょう。
  5. 修繕を決定・合意する…総会の決議を必要とすることもあります。管理規約の改正の必要がないかどうかもチェック。
  6. 詳細な設計図をつくる…経験のある設計事務所に実施設計を発注します。図面や仕様書をチェックし、十分に話し合うこと。
  7. 施工会社を選ぶ…よい会社を選ぶことも大切ですが、皆が納得する方法、公正で透明なやりかたで選ぶことが重要です。
  8. 工事を発注する…もしトラブルが起きて裁判になったときに備えて、親会社の住所もチェックしておきましょう。
  9. 工事のお知らせと準備…工事期間中は生活に不便が生じます。期間の告知、安全対策、避難通路など、きめ細かな対策が必要です。
  10. 工事をはじめる…設計図通りに工事が進められているかどうを確認し、手直しの指示や報告を求めます。任せっぱなしは駄目です。
  11. 工事が完了したら…竣工検査を行います。管理組合も自ら検査をします。パーティを開いてコミュニティ形成を図ることもOK。
  12. 新たな維持管理へ…終わった後、建物はすぐに劣化が始まります。次の修繕を視野に入れておく必要があります。
芝田 ミニ講座1 共用部変更をともなう給湯設備改善による快適性の向上
給湯設備は、毎日使うもの。グレードを上げて快適な生活を
講師 芝田 三義(しばた みよし)
大阪ガス(株)大阪リビング営業部 販売第2チーム
 マンションでの快適な生活を送るために、給湯は欠かすことのできない設備です。給湯設備もマンションが建築された時期や、建築構造等により、様々な種類のものが設置されていますが、ライフスタイルの変化等により、建築当時の設備では給湯能力が不足してくるケースもあります。その場合、給湯設備の改善を検討しますが、給湯器自体はマンション居住者様の専有物でも、燃焼排気の関係で共用部を変更しないと改善できないケースが多くあります。そんな時は、管理組合でご検討していただく必要が出てきます。
今回、管理組合で共用部変更を検討された結果、給湯設備を改善された事例をいくつかご紹介させていただきました。また、最新設備の導入によるさらなる快適性の向上の提案もさせていただきました。さらに共用部分に関しては、集会室の冷暖房の設備の改修のお手伝いもやっております。集会室に床暖房を導入して、温かいフローリングにしたことで、集会に集まる方が多くなったという話しも聞いております。私ども大阪ガスでは、皆さまのマンションライフがより快適になりますように、管理組合さんに対しても、さまざまなご提案をさせていただいております。給湯関係でお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。  ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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マンションらいふあっぷ基礎講座

7月25日
資産価値を下げない管理方法や、改正された標準管理規約のポイントなどをテーマに開催しました。
講座3 管理次第で大きく変わるマンションの資産価値
 皆さん方のマンションと競合関係にある新築マンションが大量供給される昨今、いかにして資産価値の目減りを防ぐかが今日のテーマです。マンションの価格形成要因は、接近性、緑被率、建物のグレード、設備機能、地域の知名度、希少性、これに中古マンション特有の価格形成要因として、築年数、管理の2点が加えられます。資産価値の目減りを防ぐためには、競合関係にある他のマンションに打ち勝たねばなりません。少なくとも負けない程度にもっていかねばなりません。それはひとえに管理組合の皆さんの双肩にかかっています。
 どういう管理がいいのかということで、ハード面からみてみましょう。総戸数に対して、駐車スペースは十分でしょうか。皆さん方のマンションに不法駐車はありませんか。玄関アプローチは、バリアフリーの配慮がされていますか。それとセキュリティ対策をしておられますか。こうした点を十分考えて対策を講じていただきたいと思います。
 次にソフト面ですが、住民の方に「ローンと管理費さえ払えば、あとは理事の皆さんがきちんとやってくれるから、それでいい」という依存心はありませんか。この意識改革をしないといけません。また、車検代は「かかる」と考えているのに、修繕費に対して「取られる」という言い方をする。皆さんの財産ですから、経費として「かかる」という意識をもたねばなりません。
 また、管理費を安くするために、管理会社を変える、あるいは自主管理をする。これらも一つの方法ですが、管理水準とかボランティアの問題を含めてよく考える必要があります。
 また、皆さんのマンションには、いろいろな方が住んでおられます。そこで理事経験者の方の懇談会や、建築士など在住専門家の委員会を組織することも考えられます。さらに、修繕計画の開示やペット飼育のルールの明確化なども大切な要素です。
 中古マンションの購入者の選択は、今後より一層厳しいものになります。単に購入住戸のみならず、マンション全体がきちんと維持管理され、その管理情報が確実に手にはいるかどうかが重要になることは間違いありません。中古購入者だけでなく、継続居住者も含めて安心して住めるマンションであることが、資産価値の目減りを防ぐ基本だと思います。

講座4 マンション標準管理規約改正とその対応方法について
 管理規約は、管理組合の最も根本的なルールを定めたものとして大変重要です。国で言えば「憲法」のようなものです。平成16年1月、国土交通省が、従来の「中高層共同住宅標準管理規約」を改正し、「マンション標準管理規約」を公表しました。これは、マンション管理に関する新しい法律や法改正が行われたこと、さらにマンションを取り巻く情勢が様々な面で変化したことをうけて改正されたものです。
●専門知識を有する者の活用
 適正化法の規定を踏まえ、「管理組合は、マンション管理士その他、マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者に対して、管理組合の運営その他マンション管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりすることができる」とし、従来より専門家の活用をしやすくしました。
●建替えに関する規定の整備
 より建替え決議を行いやすいように、区分所有法の改正(「過分の費用」要件の削除)が行われたことを受け、建替えに係る合意形成に必要な調査を管理組合の業務に加え、その費用を修繕積立金から取り崩すことができることとしました。
●決議要件や電子化に関する規定の整備
 共用部分の変更について、その形状または効用の著しい変更を伴わないものは、普通決議(出席組合員の議決権の過半数)で足りるとされました。また、電磁的記録による議事録作成や電磁的方法による決議も可能になりました。
●新しい管理組合業務の追加
 修繕等の履歴情報の整理及び管理や、地域コミュニティに配慮した居住者間コミュニティ形成も、管理組合の業務として規定されました。
●未納管理費の請求に関する規定の充実
 滞納問題に適時適切に対応できるように、未納の管理費等の請求に関しては、理事会決議により、理事長が、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる旨などを規定しました。
この他も、環境問題、防犯問題への対応の充実を図るための改正など、多くの改正がなされています。ぜひ一度目を通してください。
今回の改正に対する対応方法としては、まず自分たちの管理規約と標準管理規約を読み比べ、どこがどう違うかを認識してもらうこと。その上で、自分たちの管理規約の中で改正すべき点があれば、皆さんで相談していただく、ということになろうかと思います。

ミニ講座2 マンションの防犯対策について 安全なまちづくり条例を制定。コミュニティによる防犯を! 講師 大阪府警察本部
   生活安全総務課
 全国の過去58年間の犯罪発生の推移をみれば、平成14年が過去最悪です。大阪は平成13年が過去最悪で、刑法犯認知件数が全国ワースト1。また、マンションへの侵入盗の発生が平成8年ぐらいから急増しています。こうした犯罪情勢を受けまして、安全なまちづくりに向けた動きが始まり、平成14年4月に大阪府に「安全なまちづくり条例」ができました。大きな柱が5つありますが、その中のひとつが、犯罪の防止に配慮した共同住宅等の普及です。侵入盗の発生が、一戸建てに比べてマンションで多くなっています。ですからマンションを作る段階から、泥棒に強い、犯罪に配慮した建物にすることが大切です。
 同時に、管理対策もしっかりやっていただきたい。侵入盗の防犯対策としては、見通しを確保することが基本です。そして見えないところも防犯カメラや人感センサーライトなどを設置します。その他にさまざまな防犯性能の高い建物部品が開発されていますが、実は一番簡単にできる防犯は、コミュニティによる防犯です。挨拶に勝るものはありません。住まわれる方の心がけで犯罪は減っていきます。ニューヨークがいい例で、犯罪が減少しました。大阪でも犯罪を減らしていきたいものです。  ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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