マンションらいふあっぷ基礎講座

8月7日
マンション会計における適正な会計管理とペイオフ対策などをテーマに開催しました。
講座5 マンションの会計について 適正な会計管理とペイオフ対策

 マンションの管理組合は、年に1度の定期総会で、事業報告と決算報告ですね、それと次期事業計画と予算を承認してもらわなければなりません。そのためには、事業報告、事業計画とともに、決算書の作成が必要になってきます。決算書の作成は、多くの管理組合では、管理会社の方がしてくれると思うのですが、自主管理の組合ですと、自分たちで作っていかねばなりません。そこで会計担当理事になるのは、会社で経理をやっている方が多いため、一般的な企業の会計を使うことが多いようなんですね。また、管理組合の会計基準というのが定めがありません。ですので管理会社の方でもさまざまな様式で作成されていまして、問題点も出てきております。
 マンションの管理組合会計については、マンションの管理の適正化に関する指針が出ているのですが、公益法人であるとか、NPO法人であるとかは、法律で会計基準が決まっていますが、管理組合の会計にはそういう決まりがありません。単に管理費と特別修繕費を明確に区分経理して、適正に管理する必要がありますよ、ということが言われています。
 また、管理組合会計の特長としまして、企業会計は利益を出すことを目的として会計を行っているのですけど、組合会計は、共用部分の維持管理を適切に実施するために、予算と実績を適正に管理していくというのが目的です。ですから修繕費をけちって、きちんと維持できなかった、管理できなかったというのは、ちょっと問題です。そのために、予算を決めて、予算準拠主義で会計をやっていきます。あと、大規模修繕工事に備えて修繕積立金会計を区分して管理していく。これが一番大事ですよね。すごいお金がかかりますので、それに備えてちゃんと毎月、積立金会計を区分して管理していかなければなりません。
 ペイオフ対策なんですけど、一金融機関、一預金者あたりということになっていますので、まず分散ですよね。国内の都銀すべてに1行ずつ1000万ずつ預けるとか。あとは都銀と地銀と信金と郵貯と、それぞれに1000万ずつ預けるとかですね。
 あと、つぶれない金融機関の選択なんですけど、大きいから安全とは言い切れません。予想できませんので、ニュースや経済新聞、あるいはディスクロージャー誌をチェックされたり、格付け評価機関の評価だとか、株価などを参考にされたらどうでしょうか。

ミニ講座3 より安全で快適な環境をめざして バリアフリー化や防犯対策等に積極的に取り組む 講師 藤田 三郎(ふじた さぶろう)
日商岩井阿波座マンション管理組合 理事長
 安全、安心、快適性を求めて管理組合として取り組んできた事例を平成12年から時系列的に主なものをご紹介します。
 平成12年にゴミステーションを使わなくなりましたので、管理組合の倉庫、備品だとか書類などを入れる倉庫にし、残った分を自転車、バイク置き場としました。
 平成13年に、次に防犯対策ということで、ピッキングに強いディンプルキーに替えるように推奨致し、監視カメラも各要所に取り付けました。また、給水システムにおいて、受水槽、高架水槽を撤去し、増圧直結給水方式のポンプに切り替えました。多少お金がかかりましたが、新鮮な水道が供給できました。なおかつ、受水槽室を改造して、集会室に有効利用しました。
 平成14年には、玄関アプローチで、通路と玄関テラスが2段の階段と、一部が狭く傾斜のきついスロープだったのを、防滑を兼ねたインターロッキングで段差をなくして、緩斜面のバリアフリー通路に改造致しました。
 また、ここのマンションは、もともとペットが禁止されていたんですけど、飼っていた方がおられます。そうかといってあまり表立って言いますと角が立ちますので、平成15年に、ペット禁止のステッカーを掲示しました。そして平成16年には設計図面のCD化を行いました。
管理組合運営のポイントは、管理会社任せにしないことや、専門家を活用することだと思います。 ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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平成16年度「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」 報告

マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会

●大規模修繕から標準管理規約、マンション会計まで理解を深める●

(写真) 快適で安心なマンション生活を送るには、適正にマンションの維持管理を行う必要があります。その維持管理の主人公は、居住者であり、管理組合です。
 今回の基礎講座では、新しく管理組合の役員になられた方などを対象として、適正な維持管理を進めていく上で必要な基礎知識をテーマごとに説明。計3日間にわたり合計9講座を開催し、3日目には、管理組合の最高の意志決定の場である総会の進め方のポイントを「模擬総会形式」で再現し、解説しました。また別途、個別相談会も実施しました。

出演者

■大塚 哲雄 大阪土地家屋調査士会
■八杉 茂樹 (社)大阪府不動産鑑定士協会
■川畑 雅一 (社)大阪府建築士会
■杉原 滋 大阪市住宅供給公社
■大西 崇浩 大阪市住宅局

解説者

伊藤 ■伊藤 寛 
 大阪弁護士会
花田 ■花田 園子 
 近畿税理士会
北田 ■北田 五十一 
 大阪司法書士会

マンションの概要

  • マンション名/「ライフあっぷコーポ」
  • 建築概要/鉄筋コンクリート10階建・総戸数120戸・築14年・エレベーター1基・駐車場40区画・駐輪場(自転車120台・バイク12台)
  • 管理形態/全面委託で、管理会社から管理員1名が常駐
  • 管理規約/平成9年に同年改正の標準管理規約に準拠して改正
  • 議決権/1住戸につき1議決権
  • 管理組合役員/理事10名、監事1名で任期は各1年
  • 管理費等/管理費1住戸月額7,000円、積立金1住戸月額5,000円、駐車料1区画月額10,000円
  • 長期修繕計画/あり
  • 管理組合成立経緯/分譲当初は管理組合がなく、2年後の92年5月に区分所有者有志が管理会社のサポートで設立総会を開催。管理組合が発足した。

【第1場面】受付対応での問題
 (賃借人の扱い、組合員以外の者の出席) (写真)


ポイント1


総会議案の大規模修繕について意見を述べたいという、委任状を持たない賃貸居住者の総会への出席について


解説1 伊藤


 賃貸居住者の総会への出席については、区分所有法と管理規約に書かれています。法律には「区分所有者から承諾を得て、専有部分を借りている人は、その会議について利害関係があれば、集会に出席する権利もあるし、意見を述べる権利がある」となっています。要件としては、「利害関係を有する場合」という点がポイントになります。その議題に関係がなければ、出席できません。
 では大規模修繕の議案について利害関係があるかという問題ですが、基本的には貸し主の家主さんの方に利害関係があります。借り主としては別に大規模修繕の費用負担をすることもありません。実際上は、工事に入るとうるさいという問題も出てきますが、法律的にどこまで利害関係があるかといえば疑問です。
ただ、最終的に「駄目ですよ」と断ってしまうかどうかはまた別の話です。実際にお住まいになっている賃借人の意見を聞くというのも望ましいことです。結論的にいうと、厳密には法律上の利害はなくても、委任状を持たない賃貸居住者も入って頂いて、議論に参加して頂ければいいんじゃないかと思います。


ポイント2


組合員が、大規模修繕について詳しい知り合いの建築士さんを出席させたいという。組合員以外の者の出席について


解説2  伊藤


 法律上にとくに規定はありません。では管理規約でどういうふうに書いてあるかといえば、コーポの規約43条には「組合員のほか、理事会が必要と認めた者は、総会に出席することができる」となっています。そうすると、理事会の判断で決めればいい、ということになります。
 しかし、区分所有者の知り合いの建築士さんには、総会に出席する権利も、意見陳述権も、議決権もありません。総会は、本来第3者の方に入って聞いていただくという性質のものではありませんので、原則はお断りしても問題はないかと思います。理事会側がお願いして、建築士さんに来ていただくというケースはよくあると思いますが、まったく予測しない方に来ていただくというのは難しいのではないかと思います。 【第2場面】開会と議長、書記、議事録署名人選出
 (議長選出、議事録署名人の選出、議決権数) (写真)


ポイント3


総会における議長選任及び議事録署名人の選任について


解説3 伊藤


 議長の選出は、区分所有法41条で「規約に別段の定めのある場合、および別段の決議がある場合を除いて、管理者または集会を招集した区分所有者の一人がなる」と決まっています。そしてコーポの規約の40条の5項には「総会の議長は、理事長が務める」と書いてあります。この場面では円滑に進めるために「よろしいですか」と聞いて、承認という形で進めましたが、「40条第5項に基づき、総会の議長は理事長が務めさせていただきます」と言い切っても構いません。仮に、いまのところで「異議あり」という話しになったとしても、規約上は理事長がやるということになっていますので、異議は却下されることになります。
 議事録については議長が作成義務を負います。法律の42条、規約でも48条で書いてあります。議長さんが議事録を作るということですけれども、便宜上、書記という形でやっていただく方を決めておきます。議事の経過とか結果については正確に残さないと、後を継がれる方にも決議の内容については拘束がありますので、きちんと残しておかないといけません。そういう主旨から議長さんが署名押印するのに加え出席した区分所有者2名が署名押印します。


ポイント4


総会成立に必要な組合員数や議決権数の考え方


解説4 伊藤


 区分所有法上の決議の要件は、「区分所有者および議決権の各過半数で決する」と決まっています。ただし、これについては規約で別に決めることができます。実際上、標準管理規約では47条に「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する」と書いています。実はその前にもひとつ要件を作っています。これは、議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければなりません。ですから、標準管理規約ではまずは総議決権の半数以上が出席した上で、その中で議決権の過半数で可決ということになります。これは管理規約上の問題なので各々の管理規約を確認していただきたいと思います。
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第8回マンション管理セミナー&管理組合交流会報告

管理組合交流会は、セミナーに参加された方のうち40管理組合の方が参加され、 管理組合活動での悩みや取り組み事例などについて意見交換がなされました。 今回の管理組合交流会は、マンションの規模(総戸数)別に6グループに分かれ、事務局スタッフが進行役となり、参加者の自己紹介やマンションプロフィールの紹介につづき、各管理組合の日常活動での悩みを中心に意見交換が行われました。
また話の内容によって法律や建築技術問題で、アドバイスが必要な場合は、別途待機している専門家スタッフによるアドバイスがなされました。
次に、意見交換された内容の一部をご紹介いたします。
意見交換の概要

管理組合運営

  • 管理組合の業務を、議事録の作成手順やまとめ方までマニュアル化しています。会議では資料を配布しても読んでくれる人が少ないため、パワーポイント等を活用しています。
  • 管理組合役員は半数ごとの改選が望ましいと思います。理事長経験者は顧問としてバックアップするのがよいのでは。
  • 管理組合活動に対する区分所有者の関心が低く、役員のなり手がないなど役員の選考方法が課題です。
  • 役員を長期間固定しているとなかなか引継ぎがうまくいかないので、役員の引継ぎの仕方について定めておく必要があります。
  • エレベーターのメンテナンスや設備保全等の業務を管理会社との委託業務内容からはずし、部分委託とすることで合理化を図りました。
  • 管理組合運営に居住者名簿が重要ですが、正確なものが無いのが課題です。
  • 管理会社には、管理人に対するさらなる研修を要望します。管理人によって、管理の状況が変わる場合もあるからです。
  • 管理組合運営には、管理人との連携が重要であり、上手に付き合っていく必要があります。
  • 管理組合の役員に女性の占める割合が非常に高くなっています。意見集約など、女性のネットワークで進めた方がうまくいく場合も多いです。
  • 役員の選出は、向き不向きがあるため、入居者で理事を推薦して前役員がお願いしています。
  • 総会の議事録内容の確認を役員全員で行い、共通の認識をもつ必要があると思います。
  • 住民間のコミュニケーションは重要ですが管理組合と親睦会は別であるため、予算面でも混同しないように注意が必要です。

修繕関係

  • 大規模修繕工事の成功の秘訣は、管理組合の役員が積極的に情報収集することです。
  • 外壁塗装工事をゴンドラを使用して行いました。足場・養生シート等の必要がなく、パーティションを外してベランダを工事作業場所として使用することにより、各フロアを1週間で工事を終えることができました。

住まい方

  • 自転車駐輪装置は上下2段式であるが、下段は子供用、上段は大人用として利用しうまくいっています。
  • 4年前にペット検討委員会を設置し、2年前にペットクラブを立ち上げました。会費制で自己完結しており、ペットの登録・苦情窓口を設置しています。
  • セキュリティについては、住民それぞれの意識の持ち方が基本であり、みんなで監視するという姿勢が大切です。
  • 夏祭り、地蔵盆、バザーなどを開催し、コミュニケーションをとっています。また、町会に入って行事にも参加しています。
  • 居住ルールの確立については、文書等で分かりやすく説明し、モラル向上のための広報活動を根気良く行う必要があります。
交流会の様子 交流会の最後に、全体の前で、グループ毎でどのような話がされて、どのように感じたか、参考になったこと等、発表してもらいました。
参加者アンケートでは、「他のマンションの実情がよくわかり、自分のマンションと比較できた。」「直面する問題の対応策について、よいアドバイスが受けられた。」と参加者のほとんどの方が参加してよかったと回答されています。
参加者の方のご協力によりまして、無事終了することができました。どうもありがとうございました。
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平成15年度「第8回マンション管理セミナー&管理組合   交流会」報告

第8回マンション管理セミナー&管理組合交流会報告
マンション管理組合の円滑な運営には、情報交換がとても大切です。今回は、セミナーに続いて、支援機構として2回目の管理組合交流会が開催されました。
セミナーの様子 セミナーでは、大阪弁護士会の金本弁護士に、住まい情報センターにも相談が多く寄せられている管理費等の滞納問題の対応策について、そして住宅金融公庫大阪支店まちづくり融資課の矢野課長に、皆さんの大切な資産であるマンションの維持管理に向けた公庫の支援について講演していただきました。

管理費等滞納への対策について
管理費には「先取特権」が与えられている
 「管理費」には、大別して毎月集金される「共益費」「組合費」「大規模修繕積立金」と一時金として集金される「大規模修繕負担金」の2つあり、マンションの管理に要する費用を総称して、「管理費等」と呼ばれています。
 では、建物の区分所有に関する法律(以下、区分所有法)の7条において「管理費等」はどういう扱いを受けているか。[1] 共用部分、建物の敷地もしくは共用部分以外の建物の附属施設につき、他の区分所有者に対して有する債権、[2] 規約もしくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権、[3] 管理者または管理組合法人がその職務または業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権、これらの債権については「先取特権」という特別の権利が発生します。これは質権や抵当権等の担保物権と同じで、一定の債権を実現するために債務者の財産を強制的に売買してお金に換えたりして満足することができます。そういう意味では、債権者である管理組合側を保護しています。
 従って、管理費等を滞納したまま部屋を売って出ていった区分所有者がおられる場合、滞納した債務が、上記の[1][2][3]に該当すれば、新しい区分所有者から徴収できます。
滞納を防ぐ予防策、初期段階の対応策
「滞納を防ぐ予防策」がとても大事です。滞納が発生してから、対応するよりも、まず滞納自体を発生させないことです。最初に「徴収方法」を工夫します。滞納にはいろいろ理由があります。区分所有者が支払いを忘れていたり、一部だけ選り分けて支払うことができないように、規約上、自動振替による支払いを明記しておいて回収していきます。
 次に「遅延損害金の定め」をしておきます。規約上、何の定めがなくても年5%の遅延損害金は、当然に回収できますが、このパーセンテージを高めに設定しておけば、遅れないように頑張らせる効果があります。
滞納発生時の初期段階での対応策
 滞納が発生した場合の初期段階での対応には、まず「氏名公表」が考えられます。事実として滞納があるならプライバシィ侵害にあたらないとみられていますが、「私はこの部分に債務は発生しないと考える。だから支払わないんだ」という方には、逆にプライバシィの侵害で、組合側が訴えられるというリスクもあります。氏名公表は、感情的対立を招く恐れがあるので、各種督促が功を奏さない場合や、所在不明者や連絡不能者の関係者に対する告知を目的とする場合に限定すべきです。
 「水道・電気等の供給を停止」はどうでしょうか。各戸より子メーターで集金している場合、滞納者に対し水道・電気等の供給を停止するケースもあるとよく聞きますが、実際にこれを行うと権利濫用として損害賠償を請求されかねません。水道や電気は生きていく上で不可欠なライフラインであり、これを止めるのは、報復的措置としてやりすぎじゃないかという意味になります。
 おすすめしたいのは、「滞納への対応マニュアルの作成・告知」です。管理費等を自治会費程度に安易に捉えて、滞納してしまう方も時々おられますが、住民の方の意識を高揚させ、また、滞納が焦げ付くことがないようにする効果があります。 トラブルが発生した場合の解決策
 いろいろな予防策や初期段階での対応をやってきても、不幸にして「トラブルが発生した場合の解決策」としては、まず「滞納理由を把握」します。できるだけ早期に滞納者に連絡を取り、滞納理由を確認します。金員不足(お金がない)、失念(忘れている)というケースが多いと思われますが、理由があって払わない人は、焦げ付くことが予測される場合が多く、早期に弁護士等に相談されるのが良いでしょう。
 それから、滞納理由を聞いた時に、「口頭による請求」を普通やります。それでも応じないとき、「文書による督促」を行います。通常は、[1] ポストへの投函で、[2] 配達証明付郵便、[3] 配達証明付内容証明郵便、といった段階を踏むことになると思われます。もし滞納理由が、自分に支払い義務がないという場合は、いきなり[3]にいった方がいいでしょう。
 上記の[1]〜[3]の措置をとった結果、相手方が折れてきて、話をしようという段階になった時には、「合意書」「念書」という形で文書化しておく必要があります。金銭の支払いに関する合意ですので、公正証書にして「執行受諾文言」を設けておけば、約束を反故にされた場合でも確定判決がなくても強制執行を行うことができます。
 「訴訟手続等」は最終手段です。実は、確定判決を得なくとも、先取特権に基づいて、当該区分所有権自体及び建物に備え付けた動産に対して、強制執行を行うことができるし、すでに競売が開始している場合も、競落人に対し、特定承継人として責任を追及できます。それなのに、なぜ訴訟をやらないといけないのかといえば、訴訟を提起し勝訴判決が確定すれば、先取特権の保護が及ばない水道光熱費等についても強制執行できますし、また、給与債権の差し押さえもできます。その他、訴訟の場を利用した和解を期待できますし、判決をもらうことによって法律関係を明確にできます。また、滞納者に対する毅然とした態度を示すことなどの効果があります。
マンション維持・管理適正化に向けた公庫の支援について
 マンションの年数が経つに従って当然必要になる修繕をどうしていくか、修繕積立金をどのように運用していくかが、大きな問題になろうかと思います。
 マンション管理適正化に向けた取り組みとして、「マンション情報登録制度」を用意しています。これは皆様方のマンションの管理規約や長期修繕計画が公庫が定める基準に適合していることを事前に第三者機関に登録します。それから「マンションすまい・る債」で、皆さまの修繕積立金の確保と安全確実な運用を図っていただければと考えております。
また、修繕積立金が積み上がらない時は、積立金の範囲内で工事をしたり、修繕を先送りするではなくて、必要な時期に必要な工事を行うことにより、マンションの資産価値を劣化させないために、「マンション共用部分リフォームローン」を用意しています。
昨年6月に私どもの根拠法が一部改正されて、公庫は平成18年度末(19年3月31日)までに独立行政法人という公的な機関に生まれ変わります。今の住宅金融公庫が皆様方に約束していることは、その独立行政法人に引き継がれることになっております。ご安心して公庫のご活用をお考えください。
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マンションらいふあっぷ基礎講座


マンション管理組合会計に関する管理組合と税金や管理組合の法人化をテーマとした講座を開催しました。

 マンション管理組合は、人格のない社団等(法人として登記していない)と、公益法人等(管理組合法人として登記したもの)2つが考えられますが、ほとんどの管理組合は登記されていないので前者に該当します。ただ税務上では、法人格がなくとも収益事業に該当すれば課税対象になるという解釈です。以下、具体的事例で説明します。

  1. 管理組合の会費と駐車場収入
    非課税。居住者以外に貸した駐車場収入でも経費(減価償却費) を引いてゼロになれば、税金を払う必要はない。
  2. 管理費等の余剰金の運用利益 非課税。
  3. 会議室、集会室の貸付
    一時貸付は非課税。組合員以外の人に時間貸ししたり、時間を限って組合員外の人や会社等に継続して貸した場合は、席貸業、不動産貸付業として収益事業に該当。その利益には課税される。
  4. カルチャー教室の運営
    法律で指定している技芸教授業(22事業)以外なら非課税。パソコン教室は法律にないので非課税。また俳句や短歌、川柳教室なども非課税。
  5. バザー等の物品販売
    年に1〜2回程度開催するものは非課税だが、洋裁や和裁など技芸教授に伴った作品の販売は収益事業とし、課税対象に。
  6. コンサート等の開催
    チャリティコンサート以外は、入場料を取って利益を出した場合は課税される。事前に税務署長の承認を受ければ、わずかな入場料であれば収益事業としないものとして取り扱われる。

 この他に、レクリエーション開催や出店による収入も組合員を対象にし、継続性がなければ非課税ですが、自動販売機の設置による収入や携帯電話の中継基地用のアンテナ設置料による収入は収益事業と見なされ、課税されます。 要は、収益事業に該当しないポイントは、@組合員のみを対象にしているA会費やお金を徴収しても利益が発生しないことB催しものは継続的でないこと  などです。ただ、収益事業か否かの判断がしにくい場合は、あらかじめ税務署の法人課税第一部門に聞いておくことです。 最後に、マンション管理会計のポイントは、@通帳の残高証明を取り、実際の残高と帳簿の残高を必ず複数の役員で確認しておくA大規模修繕等は数社から合見積もりを取るB資金の運用は、リスクの少ないもの、元本の保証のあるものにする。例えば国債や定期預金などに分散化してペイオフに備える−の3点で、これさえクリアーしておけば安心です。


ミニ講座3 管理組合の法人化について
法人登記をすることで社会的信用が増し
建替え事業も円滑に運ぶメリットが

講師 永野 倫子(ながの みちこ)
大阪司法書士会 常任理事
 管理組合は、法的には“権利能力なき社団法人”です。つまり、団体組織であること、多数決で決定、構成員の変更に関わらず団体が存続、代表者や組合運営、財産管理等、団体としての主要な点が確定−の4つの要件を備えています。ただ債務に関しては、一般的に社団は有限責任(組織の資産を限度とし、構成員にかからない)ですが、管理組合では敷地権の割合に基づく組合員各自の無限責任になります。
 法人化した管理組合と、していない管理組合との大きな相違点は、前者は法的な登記がなされ、社会的な信用が得られることです。その最大のメリットは、大規模修繕工事等の資金の調達が必要な場合、一般的には、法人であれば金融機関からの融資が受けやすくなります。もう一つのメリットとして、法人として不動産の登記ができるということがあります。
 次に、法人化のデメリットがあるかというと、特にないと思います。法人化の手続きについては、主務官庁の認可、許可がいらず集会の決議で行います。登記も簡単にできます。理事の変更があった時に登記の変更が必要ですがデメリットというほどのものではないと思います。
 平成14年の区分所有法の改正により法人化の人数要件が撤廃されました。
 最後に、今後、増えてくると思われるマンションの建替えでも、法人格を持つ建替え組合が事業主体になることができるというマンション建替え円滑化法が平成14年6月にできています。事業の円滑化には重要なことです。 ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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マンションらいふあっぷ基礎講座


マンションリフォーム、IT化、大規模修繕の進め方など建物の維持管理に関してのポイントをテーマとした講座を開催しました。
 私は業界団体の事務局長をやっていますが、自分が住んでいるマンションでは建設問題委員会の委員長を務め、大規模改修工事について検討してきましたので実際の体験から具体的な話をしたいと思います。
 まず、調査、診断が一番大切だと思いますので、各委員の調査診断に対する認識を同じにすることに努力しました。当初、建設問題委員会には技術系の方がほとんどでした。その後、自治会長や専門分野ではない方にも入ってもらって、一般の社会通念で判断してもらうようにしました。具体的には2年目からで、スケジュールを立て、調査診断会社を選ぶところからスタートしました。調査診断会社を選定するに当たって、居住者に逐一広報するために「大規模改修便り」を発行。そして平成14年の12月25日に、マスタープランを作り、大規模改修便りの4号に掲載しました。マスタープランは、工事完了までのスケジュールを全て落とし込んだものです。平成15年1〜3月まで調査診断会社を募集、4月に定時総会を開き、調査診断会社を決定しました。5〜8月で調査を行い、9月の臨時総会で改修工事の項目と金額を承認してもらいました。10〜12月にかけて施工会社を選定し、平成16年1月に工事説明会を開いて着工し、6月には工事がほぼ完了する予定です。われわれが用意した過去の工事資料を活用してくれた調査診断会社に対して調査診断業務の他、コンサルも含め発注し、非常に安く収まったと感じています。施工会社からは20社ほど応募が来ていますが、このうち6社くらいから見積もりをお願いしようと思っています。
 次に専有部分のリフォームについて注意する点をお話しします。まず依頼したいリフォームの内容と業者の能力が合うかどうか、規模が小さな業者なら「どんな工事が得意か」を聞く必要があります。2番目は、その会社がどんな資格を持っているか、どんな団体に所属しているかです。また建設業者登録をしているか、会社案内が依頼者からみて分かりやすく作られているかどうかも見ればいいと思います。そして施工実績、経験年数、どんな資格者がいるかも確かめる必要があります。そして信頼できる営業担当かどうかも大きな要素です。こういう要素を考えて、少なくとも2、3社を決めて、1社1社呼び、「あなたのところだけではないよ」とはっきり言ってください。リフォームの規模、目的をはっきり伝えます。重要なことは「安いから良い」ということではありません。高い値段を出してきた業者の中には、提案が入っているものがあるかもしれません。また契約を強要したり、その場でローン契約まで持っていくような契約は絶対にしないでください。工事には、変更が出たり、予測しない下地まで直さなければならない部分が出てきます。そのときには、途中で確認し、できればお金の精査までしておくことが必要です。またリフォームの前には管理規約を必ず確認してください。基本的にリフォームは管理組合理事長の承認を取ることになっています。禁止事項、注意事項がありますので注意してリフォームに取り掛かってください。
 長期修繕計画は、管理組合の理事会や総会などで問題提起されて始まるのが一般的です。総会で長期修繕計画の実施の合意を得るのが一番目の問題点です。まず修繕委員会を設けます。理事会の役員が1年で交代するのに対し、修繕委員会の委員は2、3年のスパンで役をやるのが一番やりやすい方法だといわれています。
 その次は、マンションがどのように劣化しているかを専門家に調査してもらう必要があります。調査は施工会社より設計事務所の分野です。見積もりを立てて入札し、専門の事務所に調査、修繕プラン作りをお願いすることになります。調査が終われば、調査結果をフィードバックして工事の仕様書を作ります。どういう工事をするか、材料、工法を決めていきます。仕様書には「特記仕様書」と「標準仕様書」の2種類があります。特記仕様書には、材料や工法が書いてあります。標準仕様書は、官公庁や民間で使われている共通仕様書です。仕様書が作成されると、施工業者から見積もりを徴収しますが、4、5社は集めて、調査会社にチェックしてもらい、妥当な施工会社を提示してもらうことになります。重要な事は見積もり項目を共通にしておくことで、こうすれば比較対照がしやすくなります。業者選定が終わると、工事工程を決めなければなりません。マンションは居住者が生活しながら工事を進めるので、住戸内で工事することもあり、入居者との工事工程上の取り決めが重要です。これは業者任せではなく、管理組合、とくに修繕委員会には工事をスムーズに進めるための潤滑剤の役割が大きくなります。着工すれば、入居者の見学会を開きます。工事についての理解が得られ、工事がスムーズに進んで行きます。竣工したら、竣工検査を行い、設計事務所の監理者、修繕委員会、管理組合が立会い、一つ一つ説明を受けながら引渡しを受けます。
 具体的な修繕計画を立てる時には、共用部分、専有部分に分けて入居者にアンケートに答えてもらい、それを長期修繕計画のベースにすることが重要です。工事は仕上げに関するものと構造体に関するものと大きく分けます。マンションの長期修繕計画でポイントになるのが躯体部分、構造体の劣化です。昭和56年、建築基準法に耐震構造の考え方を盛り込んだ新耐震基準が取り入れられました。それ以前に作られたマンションは、耐震診断をされたほうがいいと思います。
ミニ講座2 マンションにおけるインターネット活用術〜管理組合活動に役立つ使い方〜
VDSL方式で手軽にブロードバンド化、マンション専用ホームページも活用できます
講師 芳野 昌(よしの まさる)
関西電力(株)大阪北支店 グループ総合提案チーム
第一営業部長代理
 ブロードバンドを前提としたインターネットのマンションにおける活用例は、マンション専用ホームページです。ごみの収集日や、管理組合の集会、総会議事録、管理会社からのお知らせ、「宅配便が届いていますよ」といったお知らせ、集会室や来客用駐車場の予約状況、マンション内コミュニケーションなどの活用が考えられます。(ホームページの開設・運営費用が必要となる場合があります)
 マンションにおけるブロードバンドのインターネット設備には、ADSL、同軸ケーブル、光ファイバーによる方法がありますが、光ファイバーが技術的に最も優れており、今後、需要が高くなると思います。光ファイバーをマンションに導入するにはマンション内に通信装置を置くことになります。通信設備から各戸に配線する方法として最近電話線を活用した方法が開発され、棟内の配線工事が不必要になりました。その方式がVDSL方式で、配線工事費が不要ということから既設マンションで最も一般的に採用されています。  ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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マンションらいふあっぷ基礎講座


融資、法律、管理会社との関係などマンションの管理組合運営に関してのポイントをテーマとした講座を開催しました。 講座1 マンションの適正な維持管理について
 住宅金融公庫は「公庫融資マンションの維持管理基準」を定め、「公庫マンション維持管理ガイドブック」を作っています。管理規約が基準に適合しているかを判断するものです。チェック項目には、「敷地、建物、付属施設及び共用部分の範囲が定められているか」などがあります。例えば問題になるのは、管理人室が共用部分なのか、規約に定められていないケースなどです。
 「管理費や修繕積立金を管理組合に納入するように定められているか」という項目もあります。中には「理事長に収める」という管理組合もあります。
 これらのチェック項目は、最低限の基準です。このチェックで「待てよ」ということがあるようなら管理規約を見直す必要があります。
 「修繕積立金の1戸当たりの平均月額が、築年数に応じて、築5年未満6,000円以上、築5〜10年7,000円以上、築10〜17年9,000円以上、築17年以上10,000円以上あるか、という項目もあります。これくらいないと長期的な修繕は難しいという最低基準です。
 ガイドブックの後半は、「共用部分維持管理履歴簿編」になっています。日常点検は管理組合が自主的に実施する必要があります。点検箇所は「自主点検調査票」を参照してください。
 「法定点検に関する記録シート」は、ずっと付けていくと車の修繕記録表のようになって、大切に管理されてきたことを示す記録となり、マンションの資産価値の維持に役立ちます。
 マンションの長期修繕積立金を、公庫の債券という形で積み立てていただく「マンションすまい・る債」は、10年間積み立てができます。1年以上経てば、自由に換金することができ、元金が保証されるのが大きな特徴です。銀行のペイオフ対策として活用されている管理組合が多いようです。
 また、大規模修繕の進め方や、ポイントを詳しく説明した、「大規模修繕マニュアル」も、じっくりお読みください。 講座2 マンション生活における法律の基礎知識
 マンションに関わる法律というのは主に「建物の区分所有等に関する法律」、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」、その他に「民法」などがあります。また、法律以外で重要なのが個々のマンション毎に定める「管理規約」です。
 「区分所有法」の基礎になる考え方は、マンションは自分一人のものではない、共有物であるというところからスタートしています。区分所有法というのは民法の特別法です。マンションは共有物ではありますから、全体の変更は4分の3以上の多数決で決めるということになります。複数の住人が一つのものを利用するために、一人でできることとできないことが出てくるわけです。一人でできる範囲というのが専有部分であり、できない範囲が共用部分ということになります。共用部分には「法定共用部分」と「規約共用部分」があります。「廊下」などは当然に法定共用部分です。「規約共用部分」とうのは、本来なら独立性があって専有部分としての要件を備えているが、みんなで話し合って共用部分にしたものです。集会室や管理人室などがこの部分に当たります。
 また、バルコニーやベランダは、共用部分ですが、個人が専ら使用する「専用使用権」が認められています。
 次に区分所有法で「管理組合」は、「建物ならびにその敷地及び付属施設の管理を行う団体」ということになっています。「管理者」は通常理事長と考えればいいと思います。管理組合の役員については法人化されない場合、法律上の定めはありません。役員の業務については管理規約に書かれています。理事と区分所有者との間は委任契約があり、契約責任が生じます。総会についての手続きは、管理組合は年に1回定時総会を開かなければなりません。そして組合員に1週間前に審議事項とともに通知しなければなりません。定時総会以外に区分所有者の5分の1で、議決権の5分の1の賛成があれば、臨時総会を開くことが可能です。決議には普通決議と特別決議があります。特別決議は4分の3以上、または5分の4以上の賛成が必要という決議です。貸借人には決議権はありませんが、総会に出て意見を言うことは認められています。
 管理組合の法人化という問題がありますが、以前は30戸以上の管理組合だけが認められていましたが、現在は全ての管理組合に法人化が認められています。
 管理規約で何を決めるかというと、主なものとして区分所有者の基礎的な法律関係に関する事項、区分所有者間の意思決定の方法や管理組合の組織に関する事項、専有部分を含む部分の使用方法や区分所有者間の利害関係の調整、そして義務違反者に対する措置に関する事項の4つくらいが挙げられます。
 建替えの問題については大きく変わりました。従来は費用の過分性といって、修繕するために費用がたくさんかかる場合には建替えを認めましょうということだったのが、今回の改正で5分の4の賛成を得られれば建て替えられるということになりました。建替え円滑化法ができたことによって、建替えがかなりやりやすくなったといえます。
ミニ講座1 管理会社との良好な関係をめざして
粘り強く交渉して管理会社との契約内容、管理委託費を大幅に改善
講師 今西 正晃(いまにし まさあき)
中津パークマンション管理組合 前理事長
 管理組合理事長になって最初に手がけたのは管理委託契約書の見直しでした。管理委託契約書を見直してみると、「管理委託料金の前払い」や「会計報告は常勤の管理員がいるところでないと出せない」といった不合理な箇所がたくさん見つかったのです。最優先課題として委託契約書の条文と委託料の是正を行うことにしました。主な改正点を紹介すると、法に基づいて基幹業務の外注禁止を定め、委託料の前払いを改めました。月次報告書についても提出してもらうことになりました。「管理組合と管理会社は運命共同体という強い結びつきがある」という信念で交渉しました。
 今後の管理のあり方ですが、管理は区分所有者が自主的にやらねばならないと法律に書かれていますが、マンション管理士を雇ったりすることも考えてはどうかと思います。    ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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マンションらいふあっぷ基礎講座

【第3場面】議案(第1号〜第3号)事業報告、決算報告、監査報告
 (未収金の扱い、滞納問題、駐車場収入を管理費に充当する問題) (写真)
ポイント
収支決算報告における未収金の扱いについて
解説
 賃借対照表の「未収金」は、管理費や水道・光熱費、修繕積立金、駐車場使用料など本来3月末日の決算時期までに収入すべきものが入金できなかった場合に貸借対照表に計上されます。一方、管理費や修繕積立金会計の「収入の部」には、実際に入金があった金額を記載するのではなく、入金すべき金額を記載します。
 その理由は、管理組合の決算報告の目的は、1年間の活動の結果としての収支報告と、来年度以降へ繰り越す財産を区分所有者の皆さんに報告することにあります。つまり、皆さんから支払われた管理費や修繕積立金がどのように使用されたのか、また残っている金額はいくらなのか、その金額はどのように管理運用されているのかを報告することにあります。
 なお、大規模修繕工事がある場合は、一度にお金を支払うことはありませんので、工事が全部終わるまでは、着手金や中間金は前払金として賃借対照表に表示することになります。
 長期滞納の問題ですが、管理費や修繕積立金は、区分所有法で「特定承継人の責任」という項目があり、そのマンション購入者が滞納分を引き継ぐことになりますが、水道代は管理組合の立替金で、特定承継人へ請求できませんので、回収は立替金から優先する必要があります。
ポイント
駐車場使用料の管理費会計への繰り入れについて
解説
 管理規約に「駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等にかかる使用料は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる」と規定されています。
 駐車場の管理費が多額で、具体的な金額が分かるなら、そのかかる費用分は、管理費会計の支出の部に入れ、それに相当する部分を収入の部に入れて、総会での承認をもらっておけばいいでしょう。 【第4場面】議案(第4号〜第6号)大規模修繕計画について
 (修繕委員会の組織、同委員会運営細則の設置、専門家<パートナー>の協力)
ポイント
大規模修繕工事の進め方について
解説
 従前の区分所有法では、著しく多額の費用を要する共用部分の変更は、特別決議(4分の3以上の賛成)が必要とされていましたが、改正された区分所有法では、形状または効用の著しい変更を伴わないなら普通決議で可能となりました。ただし階段室をエレベータに変更したり(形状の著しい変更)、集会室を賃貸店舗にする(効用の著しい変更)などは、4分の3以上の特別決議が必要です。
(写真) いずれにしても大規模修繕は、皆さんの合意をもらってからも数年はかかるタイムスパンの長い事業です。ですからその間に、委員会を開いたら委員会の内容、理事会の内容などをこまめに皆さん方に公開していくことが大事です。後でクレーム等を出さないためにも、ぜひこれは実行してください。それと、建築士、弁護士、税理士その他さまざまな専門家をパートナーとして活用しながら、色々なシミュレーション、事例見学、資料の取り寄せを行ってください。
 また、修繕だけで終わらせずに、バリアフリーや宅配ロッカー、セキュリティ、IT化なども一緒に行えば付加価値が高まり、利便性や快適性が高まります。 【第5場面】議案第7号の新役員選任と閉会
 (終了後の議事録作成、広報紙等による総会報告)
ポイント
議事録の作成内容について
解説
 開会、議題、議案、それと討議の内容、評決の方法、最終的に閉会に至ったことを要領よくまとめます。つまり、それが後々にその経過が分かる程度に記載すればよいのです。もう一つ、各々の議案について成立したのか否かを記載する必要があります。まず総会当時の組合員の数と議決権の数を明記し、出席人数とその議決権の数、代理人等によって議決権を行使した組合員の数とその議決権数など、いわゆる総会の成立要件を満たしているかどうかが分かるような事項、それから各議案ごとに賛成組合数がこれだけあって成立したということを記載します。少なくとも普通決議の場合でもどういうような形で成立したかと後で分かるようなことは書いておく必要があります。そしてこの記事録の内容を、広報紙や掲示板で広報することも重要です。
ポイント
議事録の作成手段について (写真)
解説
 平成15年6月1日から施行された区分所有法の改正によって、議事録を例えばフロッピーディスクやCD-ROMで保管できるようになりました。その場合、議事録署名はデジタル署名を用います。
 また規約を改正したり、集会で決議をすれば、電子メールで議決権を行使したり、管理組合の方が参加できるホームページの中で議決権の行使をすることが可能になりました。
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平成15年度「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」 報告

マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会
 今回の基礎講座では、新しく管理組合の役員になられた方などを対象として、マンション生活における法律の基礎知識、大規模修繕の進め方、管理組合会計など、適正な維持管理を進めていく上で必要となる基礎的な知識について、専門家がわかりやすく説明しました。計3日間にわたり合計9講座を開催し、3日目には総会の模様を実演し、問題点について専門家が解説する「模擬総会」を開催し参加者からも大変好評をいただきました。
 また1日目の10月26日には個別相談会も開催し、法律・管理・技術の各分野において専門家から具体的なアドバイスが行われました。

出演者

■永野 倫子 大阪司法書士会  
■中岡 博之 大阪土地家屋調査士会
■笠井 靖彦 (社)大阪府不動産鑑定士協会
■川畑 雅一 (社)大阪府建築士会
■海野 敦 住宅金融公庫大阪支店

解説者

久保井 ■久保井 聡明
 大阪弁護士会
石原 ■石原 健次
 近畿税理士会
岡本 ■岡本 森廣
  (社)大阪府建築士会

マンションの概要

  • マンション名/「らいふあっぷコーポ」
  • 建物概要/鉄筋コンクリート10階建・総戸数120戸・築14年
    駐車場40区画、駐輪場(自転車180台・バイク25台)
  • 管理形態/全面委託で管理会社から管理員1名が常駐
  • 管理規約/平成9年に標準管理規約に準拠して改正
  • 管理組合役員/理事10名、監事1名で任期は各1年
  • 議決権/1住戸につき1議決権
  • 長期修繕計画/あり
  • 管理組合の設立経緯/分譲当初は管理組合がなく、2年後の91年5月に区分所有者有志が管理会社のサポートで設立総会を開催、 管理組合が発足した。

【第1場面】受付対応での問題
 (賃借人の扱い、共有者がある場合の扱い) (写真)


ポイント


総会議案の大規模修繕について意見を述べたいという、委任状を持たない賃貸居住者の総会への出席について


解説


 賃貸居住者の総会への出席については、区分所有法と管理規約に書かれています。法律には、「区分所有者から承諾を得て、専有部分を借りている人は、その会議について利害関係があれば、集会に出席して意見を述べることができる」とあり、管理規約でも同趣旨の規定があります。この“利害関係を有するかどうか”によっては総会に出席する権利もあるし、意見を述べる権利もあるということになります。
 大規模修繕が法律上の利害関係があるかというと、いろいろ法律的な見解がありますが、法律上では、典型的には建物の使い方とかペットの規約を新たに定めることは利害関係があるといわれています。しかし大規模修繕について、修繕委員会を作るというだけで賃借人に法律上の利害関係があるとはいえないでしょう。権利としての出席は困難です。しかし、管理規約でも理事会が必要と認めたものは総会に出席することができると書かれてあり、大規模修繕をするにあたり居住者の意見を聞くのはとても大事なことです。ただ、あらかじめ理事長にその旨を通知しておかなければなりません。


ポイント


総議決権行使者として、あらかじめ届け出された母親のかわりに来た、共有者である娘の総会への出席について


解説


 管理規約の44条の2に「住戸1戸につき二以上の組合員が存在する場合の議決権の行使については、あわせて一つの組合員とみなす」とあります。また次の3項で「一つの組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければいけない」と書かれています。今回のケースのように“議決権行使の選定者以外の人が来ている”場合は、法律上では娘さんは代理できないという解釈になります。ただ、母親が急用で娘さんが出席した場合でも一切認めないのは現実的ではありません。
 そこで、とりあえず出席してもらい、後日お母さんと娘さんの連名で、この総会については「娘を議決権の行使者にする」という書類を提出してもらうことにします。一般的には、共有の場合、どちらを議決権の行使者にするかは毎年の総会ごとに指定してもらうのが一番望ましいのですが、実際にはそれは大変なので、最初の段階で議決権行使者の届出を出してもらい、その後、交代するという連絡がない以上、当初の指定が有効だと考えて扱えばよいと思います。議決権行使者を指定せずに、一方の人が出席したら、事実上その人に議決権行使を認めたとしてもかまわないし、認めるべきだろうといわれています。 【第2場面】開会と議長、書記、議事録署名人選出
 (議長選出、議事録署名人の選出、議決権数)


ポイント


総会における議長の選任について


解説


 議長については、区分所有法では「規約に別の定めがないかぎり、管理者または集会を招集した区分所有者の一人がなる」と書かれています。これに対し、標準管理規約では「議長は理事長が務める」と規約されています。したがって「規約の定めにより私が議長を務めます」と理事長が言って進めれば足ることです。ただ、現実的には総会を円滑に進める知恵として、そのことを出席者にはかるものだと理解すればいいと思います。そうすれば例え「異議あり」の声があっても、「規約上私がやらせてもらう」ということで、適法な総会として進めていくことができます。 (写真)


ポイント


議事録署名人の選出について


解説


 議事録は規約上は議長が作成し、議長及び総会出席の理事から議長が指名する2名がこれに署名押印しなければならないとなっています。 議事録は、議事進行役の議長に代わり、実際は書記が作成して議長名で出しますが、その経過が正しいかどうかをチェックするために2人の議事録署名人が署名押印します。


ポイント


総会成立に必要な組合員数や議決権数の考え方について


解説


 普通決議の要件について「区分所有者の頭数と議決権の両方の過半数を満たして初めて決議ができる」とする区分所有法は現実的ではないので、標準管理規約では「総会に出席した組合員の議決権の過半数でよい」となっています。しかし、そうすると極端に出席人数が少ない場合でも決議できることになります。さすがにこれは問題だということで、標準管理規約では「議決権総数の半数以上」が出席して、初めて管理組合の総会が成立し(定足数)、その過半数で決議できるとなっています。
 ただ、分譲業者がその分譲マンションで多くの住戸と議決権を持っているなど特殊な事例があった場合、この標準管理規約のような定めをしてしまうと、分譲業者のいいなりになっていくという危険があります。そのあたりはマンションごとに考えていく必要があると思います。
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マンションの円滑な維持管理・再生をめざして


元木:マンションの維持管理や修繕、建替えについては、人材や技術、組織面でまだ十分なシフトができていないというのが実態です。管理組合と事業者の中間にあるコーディネーター、NPOのような方、こういった方々が組み合わさって自律的にマンションの修繕や建替えというものが進んで行くという体制がここ10年くらいで整備できれば、良好なマンション生活が続いていき、日本の住宅の資産としてしっかりと機能していくことができると思います。

生駒:やはり管理組合の皆さんに基本的な知識をまず知ってもらい、それから運営に関心を持っていただく、そのために広報でしっかり伝えていくことが重要でないかと思います。また管理会社や専門家をうまく活用していくことも重要です。住まい情報センターは、そのための必要な情報を入手でき、あるいは悩んだ時に相談できる場所として、また支援メニューの紹介・提供、いろんな専門家団体・事業者団体との繋ぎ役としての役割を果たせるよう頑張っています。 今後ともぜひ活用いただければと思っています。

岡本:専門家は、皆さん方に理解してもらえる易しい言葉で説明でき、能力が十二分に発揮できるように自己研鑽に努め、皆さん方のパートナーとして応えられる体制作りがいると思います。それと、パートナーを選ぶ際に、選定理由を説明できる資料・情報を集め、皆さん方が判断できる能力を身につける必要があると思います。

八杉:管理も大変ですが、建替えも確かに大変なんです。ただいずれも先送りができないという問題だと思います。再投資は必要ですが、自分が住み続けたい地で再投資をこんな風にしようという明るい展望を持って建替えを進めていくことも考えられます。

池上:どちらにしても、非常に体力や辛抱が必要だし、争いごとを作って喧嘩をしてしまったら終わりです。初めから計算してできるものではないし、正直、長期間かかる問題だと実感しました。

葛籠:私の所も平成2年から取りかかり、大規模修繕工事が終わって竣工祝賀会をしたのが平成7年1月16日でした。翌朝が例の大地震でまたひび割れの補修工事を行い、大変な道のりでした。でも9年経っても大きなひび割れがなく、廊下も防水もよくきいているし、しっかりと修繕ができています。やはり2回か3回くらいは大規模修繕を行い、その後に建替えに向かっていくのが当然でないのかと思います。

海野:今日の資料にも実際の広報の事例がありますが、常々広報されていたということが、それぞれの修繕や建替えの成功の一因かということも感じました。それから専門家の協力なしではやはり進められなかったというお話、専門家以外では難しいというアドバイスの両方がありました。専門家の力は大事かと思います。それからパートナー選びのコツを大切にすると円滑な再生ができるのかなと思います。日頃から、お住まいのマンションをいかに適切に維持管理していくか、愛着を持って管理をしていくことが非常に大切なことかと思います。今後、修繕あるいは建替えということに関して前向きに皆さんの関心を高めていっていただければと思います。
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マンションの円滑な維持管理・再生をめざして


葛籠:私のマンションでは、これまでの修繕積立金では工事の資金が足りないという建物調査診断の結果で1住戸平均50万円の負担が必要になり、その回収方法がわからなくて、専門団体に相談に行きました。その結果、皆さんに情報公開していくのが一番ということで各階で懇談会をして、徴収する方向で意見がまとまり解決ができました。

海野:建替え事業で、実は大変苦労をされたとお聞きしている池上さん、実際はいかがだったんでしょうか。

池上:合意形成がポイントですね。まず賛成、反対の決議を急がず、みなさんにいつでも拒否権は使えますからと強調しながら、話を聞いて下さいとアプローチをしました。建替え事業とはこんな手順で進められ、こんな新しいマンションが入手できるという具体的な資料やイメージを十分理解してもらい、さらには皆さんの住まいへの希望を聞いてデベロッパーと話し合いながら、全員参加で設計プランを作り上げていきました。
 その設計プランが完成した後で皆さんの自覚と責任感で賛否の判断をしてもらいました。そのためデベロッパーのA社には、仮決定という形で全面的に協力してもらいました。またローンや税金や相続問題など打ち明けられないプライベートな理由で反対されている場合もあるため、第三者のデベロッパーに個人の相談会を行ってもらいました。そのうちに十分理解していない人も消極的な人も納得されてきて、第3回アンケートの時には反対者は1人だけになりました。それも、最終には拒否権を使わないということで、総論的にはみなさんが賛成ということになりました。その後さらにみなさんの意見を取り入れて、デベロッパーと賛成の方は合意書を交わすことになりました。新しいマンションを購入される方は一軒一軒その条件が違うため、総会決議ではなく個別の合意で全員が賛成していただきうまく成立しました。
 また、コンサルタントを初めにつけて、プロと素人の折衝で何とか後押ししてもらって対等にやってこれたのも成功の要因だと感じています。 
八杉:困ったことというのではありませんが、管理と建替えとの違いのポイントをお話ししておきましょう。管理も建替えも合意形成が非常に大切で、管理の場合は長期修繕計画を立てて建物の資産価値を維持する。その中で管理規約に基づき管理会社との二人三脚で、生活共同体をうまく形成していくということにつきると思います。ところが建て替え替えというのは、資産価値の更新、現地に再投資するということです。再投資の自己負担額は、1000万円を超えます。これは余剰容積がない場合を前提にしています。建物がその効用を維持し、回復するのに過分の費用を要するに至った時、建替えが視野に入ってきます。維持管理でいくのか建替えでいくのかということは、費用の過分性の意識を皆でどう持つかということにつきると思います。私はこれが一番大事だと思います。管理組合と信頼のできるコンサルとの二人三脚で、費用はこれだけかかるという具体的な概算をきっちり示さないといけません。何回もそういう会をもって詰めていくことが建替えに至るのには大切なプロセスだと思います。この現地をこよなく愛するという意識を持って取り組むという強い絆が、維持管理からもっと深い繋がりになり、建替えへ進んでいくと思います。

岡本:長期修繕して立派にしても耐震補強はどうにもなりません。私達の経験からしても30年代のマンションは、大きな地震には耐えられません。そうなると建替えを考えざるを得なくなりますが、人間はいろいろな考えを持っています。そういう時に一つの目的を共有しながら進める方法は、やはりPRだろうと思います。
長期修繕でも4、5年前から進めないと出来ないですね。
その時にホームページ、もしくはメール、掲示板とさまざまな方法で、「こういう状態であるとみなさん方の生活・建物にこんな不具合が生じるよ」ということを専門家や行政の力を得て、皆さんに理解してもらうという努力が欠かせないと思います。
 それと、建替えや改修をうまく進めるには、理事会組織とは別に委員会などを設立し、いろいろな業務と責任を分散することです。理事の役割は、むしろ住環境を良くしていきたいと皆さんの気持ちを高めていくことだと思います。

海野:ところで、現在大阪市で行っている支援策はどのようなものがあるかご紹介いただきたいと思います。

生駒:まず、この住まい情報センターで無料相談を行っており、随時行っている一般相談と、弁護士・建築士等による専門家相談があります。次に本年6月からスタートした分譲マンションのアドバイザー派遣制度ですが、これは建替えや計画的な修繕に対して支援をしようということで、勉強会などの講師として無料で派遣する制度です。
 同じく本年6月から建替検討費の助成制度、これは基礎調査などに対して助成する制度です。また情報収集や勉強していただく場が非常に重要ですので、このマンション管理支援機構と連携して、いろんな広報誌の発行やセミナーの開催を協力してやっていきたいと思っております。
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マンションの円滑な維持管理・再生をめざして


岡本:私達が建築士会で相談を受けていますと、長期修繕をやることになったが、何から手をつけていいのかわからないというのが現状です。長期修繕計画がない所もたくさんあります。管理会社による長期修繕の見積りが安いのか高いのか相談に来られます。長期修繕になると200戸以上の場合は、億を超える場合もあります。しかし、管理会社が建物調査をしっかりとやっていない場合もあります。
 それと、理事は2、3年、短い所では1年くらいで交替されます。そうすると長期修繕や維持・メンテナンスに関する記録が伝達されません。長期修繕をやられた結果も蓄積されていないため、再度長期修繕をやる時にもう一度建物調査をしなければならない。管理組合が、先ほど八杉さんが言われた自己責任を果たしていないというのが現状です。
生駒:この4月から6月のマンション管理の相談事例を全般的に見るといくつかの点にまとめられると思います。まず1つは、やはり役員の方々以外は自分達のマンションに関心が低いという実態です。2つ目に管理組合の内部で、理事者と区分所有者との信頼関係ができていないケースがいくつかあります。3つ目に理事会でのことが各区分所有者になかなか伝わっていないということがあります。4つ目に修繕計画などは専門家の知識を必要としていることです。 これらから、私なりのマンション管理のポイントとしては、1.区分所有者が自らのマンションを良くしていこうという意識を持つこと。2.組合活動を情報公開し、常に区分所有者に伝わるよう努力し、日頃からの良好なコミュニティをつくること。3.組合として管理会社を良きアドバイザーとしてうまく活用すること。4.技術的な分野で、第3者的な立場として建築士など専門家を上手に活用すること等があげられます。これらは、建替えを推進していく場合も共通のポイントではないかなと感じております。
元木:築年数の古いマンションがたくさん増えると何が問題かということですが、まずマンションという所有形態が1戸建てと決定的に違い、自分の所有物を自分で自由に処分できないという事です。共有物を処分する時は共有者全員の合意が必要です。修繕や建替えも民法では全員同意でないとできません。マンションという新しい居住形態ができた時に民法だけでは対応できないため、昭和37年に区分所有法ができ、昭和58年に大規模修繕や建替え決議について全員同意の部分が改正されました。 ここでようやく修繕や建替えというものを意識しはじめたということです。
 それから大量のマンションストックの適切な管理について、国としてマンション管理適正化指針を出したり、マンション管理士という資格を作ったり、あるいは管理会社の登録というような内容で、マンションの管理適正化法が平成12年に成立しました。さらに管理の先にあるものは、やはり建替えです。できるだけスムーズに建替えができるように法律を整備したのが、マンション建替えの円滑化法です。この円滑化法を活用すると、区分所有法に基づき5分の4の賛成で建替え決議をされたマンションでは、マンション建替え組合として都道府県知事認可をしてもらって法人格を得ることができます。それによっていろんな契約がスムーズに結べたり、意志決定ルールが明確になって建替えの事業が進みやすい。それともう一つの要点は、権利変換計画。これは、いわゆる現行のマンションの土地と建物の価値を新しく建設されるマンションの土地持ち分と建物持ち分に変換をするものです。今まで、老朽化等により建替えられたマンションは、ほとんど容積率が余っていますが、今後は、容積率に余裕がなく事業費を自分で持ち出さなければいけないマンションが増えてくるわけです。こういう状況を踏まえ建替えを円滑に進めるために円滑化法ができたわけで、建替え時には、共同施設整備費などに国と地方合わせて3分の2の補助金を受けられる補助制度もあります。また修繕・建替えを判断するマニュアル、建替えの合意形成を円滑にするマニュアルも作っております。大阪市はもっと積極的にいろんな事をやられていますが、全国レベルでも地域レベルでもこういうマンション関係の団体が集まった協議会というのもあり、これらがうまくかみ合って機能していけば、将来的には自己負担を伴いながらも自律的な建替えというものの枠組みができるんではないかと期待をしています。

海野:つづきまして、事例報告をいただいた葛籠さん、池上さんに実際に事業を進めて行く中で困ったこと、またその解決策などをお話しいただければと思います。 
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マンションの円滑な維持管理・再生をめざして



海野:現在、築20年を超えるマンションは約60万戸といわれていますが、これが10年後には160万戸になり、国にとっても大変大きな問題です。そこで、マンションの維持管理を適正に行い、円滑に再生をするため、最近になってマンション管理適正化法・マンション建替え法が新しく制定され、区分所有法も大改正されました。今日は大規模修繕やマンション建替えの経験者をパネリストに迎え、マンションの維持管理・再生について、お話しいただきたいと思います。
八杉:まずはマンション価格の現状をご認識いただきたいと思います。平成11年を100にすると、新築はマイナス7.6%落ち、中古は同22.1%落ちています。平均単価もそれにつれて下がっています。これはあくまでも平均値なので当然上下はあり、それがやはり管理の善し悪しになるかと思います。マンションの資産価値は、住み心地であって快適性の価値です。収益性のための維持管理であるビルと違い、分譲マンションは大規模修繕が近づいてくるまでは、まず外圧がありません。 そうすると維持管理の意識が希薄になりがちです。築15年以上経過しているマンションで、大規模修繕が行われず、長期修繕計画もないマンションは、いくら専有部分がリフォームされていても、近隣の類似マンションの半値以下になる場合もあります。これからのマンションは、維持管理の大競争時代に入っていくことになります。
 資産価値を高める管理組合のあり方は4つあります。
●管理組合と管理会社の信頼関係
管理組合は自己責任をはたし、管理会社は説明責任をはたすという対等な関係で、いい二人三脚ができることが大切です。
●長期修繕計画と修繕積立金とのリンク
長期修繕計画に対して修繕積立金の積立状況を理事会は検討して、集会で全員に説明する必要があります。
●住民のマナーと管理規約の改正
ペット・騒音・駐車場などマナーの問題に関して、住民相互の交流を図るとともに規約を改正できるものはしていく。
●セキュリティの確保
中古マンションは新築と比較して一般的にセキュリティが劣るため、住み心地・快適性・安全性の面からきちんとした対応が重要です。
 コミュニティの形成は建替えの際の合意形成にもつながっていくため非常に大切です。
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平成15年度シンポジウム                「マンションの円滑な維持管理・再生をめざして」

マンションの円滑な維持管理・再生をめざして
8月24日開催の2003年度シンポジウムは「マンションの円滑な維持管理・再生をめざして」がテーマ。大阪市住宅局からの挨拶の後、大規模修繕・マンション建替えを経験された2管理組合からの事例報告があり、続いてコーディネーターに住宅金融公庫大阪支店の海野公共業務課長、パネラーに国土交通省より元木課長補佐をおむかえし、事例報告者や専門家らを交えてのパネルディスカッションが行われました。その要約をご紹介します。
事例報告1:葛籠洋子
 私達のマンションは、昭和56年に入居開始し現在築22年になります。平成6年に第1回大規模修繕を実施するため、平成3年4月に大規模修繕実行委員会をつくり、管理会社とゼネコンと設計監理の専門家の3社に建物調査診断の見積りをとり、最も安い業者へ発注しました。診断の結果、至急に補修が必要ということで同じ年度に、建物調査診断を行った業者に一部改修工事を発注しましたが、満足な出来ではありませんでした。委員会の反省会で、工事見積り上での現地調査もれ、工期の遅れ、工事の手抜きなどがあげられ、我々素人が工事監理をするのは困難だとわかりました。そこで大規模修繕の必要性を勉強するために、全員参加の学習会を開催し、工事見学会に参加し、居住者の理解と協力を得るためには広報紙が一番大切であると感じました。そこで広報紙「マンション元気村」を作成しました。  広報紙の効果もあり、平成4年にもう一度建物調査診断を行いました。その調査方法は、最初に設計監理者が調査診断の目的や手順などの説明をした後、全戸にアンケート調査を行い、管理組合の立ち会いで専門家が調査診断を行いました。それで傷み具合や適切な補修時期と補修概算額を写真付きの書類で提出していただきました。
 診断の結果をもとに補修時期や費用が提示され、修繕積立金が1住戸平均50万円不足することが判明しました。そこで各階毎に説明会やアンケートを実施し、皆さんの理解を得て、一時金を2回に分けて納入してもらいました。
 工事中は施工業者と設計管理者と委員会で2週間に1度打合せを実施し、施工業者から2週間分の工事作業のビデオを見ながらの説明や、次の2週間の予定が報告されるなど3者での質疑応答型で進めていきました。  多くの工事見学会に行った結果、既存の補修だけでなく、改善する事例も知り、玄関にスロープや転倒防止柵を付けたり、道路から1階ホールまで点字ブロック設置、手すりにも点字シールをつけるなど、多くの改修を行って、今はそれらが有効に使われています。
事例報告2:池上和夫
 建替え前の団地は、昭和42年建築で住戸数64、府公社が建てる一般的な小規模団地でした。バブルの最盛期に建替えや増改築が話題になりました。そんな中、等価交換方式で追加資金なしで建替えできるという話を聞き、平成2年4月、区分所有者の有志で建替え検討委員会を設置することになりました。私達は素人なのでコンサルタントを要請することにし、費用が発生するため、管理組合の正式機関として建替え準備委員会を平成3年3月に発足しました。
 コンサルタントとして、設計事務所R社を選びましたが、バブルが崩壊し、約2年間、建替え準備委員会の活動を一時凍結しました。平成5年9月、準備委員会を再開し、コンペを行いデベロッパーA社を仮決定しました。私達委員会は専門的な知識がないため、デベロッパーと二人三脚で進める事にしました。
 まず、A社によりアンケート、基本構想説明会、個別相談会が実施されました。区分所有者のほぼ全員が総論賛成となった平成6年10月、A社及び販売を受け持つB社と基本協定書を締結しました。準備委員会も実行委員会に変わりました。A社と住民間で何度もキャッチボールを繰り返し、コンサルR社のアドバイスもあり、皆さんの納得できる案が出来ました。
 平成7年6月、希望住戸の申込みが行われ、60軒中53軒が新マンションを希望し、7軒の転出者がありました。
 平成7年8月、区分所有者とデベロッパーとの間で「建替え事業推進に関する基本合意書」の締結が完了し、合意形成が成立しました。引越し、管理組合解散、土地売買契約、新マンション購入契約と続き、平成8年3月、工事着手し、平成9年3月に竣工しました。経済状況の変化など様々な問題がありましたが、コンサルタントやデベロッパーと信頼関係を築くことができ、建替えを成功させることができました。
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マンションらいふあっぷ基礎講座


マンションの管理組合運営に関連して、区分所有法改正のポイントや管理会社の役割などをテーマとした講座を開催しました。席者からの「異議なし」の声により提案が承認される。
 「建物の区分所有等に関する法律」、いわゆる「区分所有法」は、一般にはマンション法とも言われており、通常の所有権と比べて、お互いの協力がなければ建物を維持管理していけないという意味で制約がかなりある区分所有という考え方の基本となる法律です。
 マンションでは個人が所有する専有部分と、廊下や階段等の法定共用部分、居住者の利便のために共用とした規約共用部分があります。それら共有部分の維持管理や団体生活の調整をするために管理組合があり、管理者を置くのが原則です。管理運営は、集会の決議と管理規約に従います。その決議については、普通決議と特別決議の2種類があり、一般的には普通決議、つまり過半数の多数決で決めます。特別決議は、規約変更などの重要なテーマのときに行うもので、各区分所有者の頭数と議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。
 次に、改正法の主なポイントを要約して紹介します。
●管理組合の法人化について
 以前は「区分所有者の数が30人以上であるものは、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人」とありましたが、改正により“30人以上”という要件が外れました。
●建替え決議
 建替えは5分の4以上の賛成で決議できます。旧来の様な過分の費用というような客観的な要件はなくなりました。以前は同じ建物の敷地に「主たる使用目的を同一とする」建物を建てなければいけないとありましたが、今回の改正により、隣接する敷地を買い足して建設する場合や、敷地の一部を売却して建設費用に充てることにより建替え事業を行うことも可能となりました。また「主たる使用目的を同一とする」という条件も外れましたので、例えば居住専用だったマンションを店舗付きにすることも可能になりました。
●その他の改正法のポイント
 例えば共用部分が誰かに壊されたときに、管理組合で損害賠償の裁判ができなかったのが、管理者である理事長さん等に委任することにより、その請求が出来るようになりました。また規約の適正化により、区分所有者間の利害の衡平を図ることが定められたので、分譲業者に著しく有利になるような規約は、場合によっては無効となることもあります。
 マンション管理において管理会社は、区分所有者の信頼のもと、管理組合の良きパートナーとして業務を推進すると共に、マンションの使用価値・資産価値を維持保全し、生活の安定と向上のため尽力しています。
■管理委託契約
 管理会社と契約する際に、次の注意点があげられます。
 1.管理委託費は安さだけでなく委託業務内容と委託料の関係をよく確認する。
 2.契約期間は1年とし、毎年更新する。
 3.年に1回や2回発生する費用については、一つの管理会社と包括契約するのではなく、一つ一つ吟味して決定する。
■管理組合会計
 必ず組合理事長の名義で口座を作成し、通帳と印鑑は分離して保管します(場所は金庫が望ましい)。滞納管理費等の督促では、管理会社に対し、3か月滞納で文書による督促、それ以上になると訪問による督促を行い、長期滞納者から返済計画をとるように依頼すればいいと思います(委託契約内容の確認が必要です)。
■長期修繕計画
 原則としては管理組合自らが作成するものですが、管理会社には専門スタッフがいますので、資金計画を含めて作成依頼すればいいと思います。
■苦情対応
 生活意識に起因する問題が一番多い苦情ですが、管理会社で処理できる問題は極力管理会社で処理しますが、そうでない場合は、管理組合に申し出ます。
 円滑なマンション管理を行うためには、管理会社とよく相談していただいて、日常の維持管理をすすめていくことが重要であると思います。
ミニ講座1 管理組合運営の知恵 委託管理会社に競争原理の導入でよい結果が
講師 村本 祥孝(むらもと よしたか)
淀川パークハウス管理組合 理事長

 当マンションは、大阪の北東、豊里大橋の近くに立地しており、住戸数は7棟全体で980戸、商業施設は15店舗のうち、現在は歯医者を含め11店舗が営業しています。424戸分の駐車場は、専用使用権付きの扱いで、マンション竣工時に販売されました。自転車は台数に制限を設けず置け、使用シール代を徴収しています。
 管理組合の活動状況としては、理事22名、監事2名で、理事会は月1回開催されています。管理委託業務は、過去30年間、A社に委託してきましたが、3年前に、これまでの管理状況、委託費を見直し、競争原理の導入によって、非常に良い結果が出ています。
 大規模修繕では、A社から過去30年間の修繕項目が出され修繕項目と周期が一覧表で全部分かるようになっています。
 居住者の広報は「広報誌よどがわ」をマンション竣工当時から発行し続けています。毎月1回第4土曜日に、ボランティア喫茶を開き、クッキー付きでコーヒー等を提供し、居住者のコミュニケーションの場としています。
 このマンションは、ここで育った子供達にとって故郷となるので、誇りと情熱を持って管理組合を運営していきたいと思っています。  
 ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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